マイスのファーム IF【公開再開】   作:小実

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『豊漁祭《下》 【*1*】』


「そういえば、二人って誰に投票したんですか~?」

「僕は……」


『トトリ』◄(ぽちっ)





※2019年工事内容※
 細かい描写の追加、一部表現の変更、句読点、行間……


『トトリ』ルート
トトリ【*1*】


***アランヤ村・広場***

 

【*1*】

 

 

 

「僕が投票したのはトトリちゃんだよ」

 

「へぇ、わたしに……わたし!?」

 

 自分を指差しながら目を丸くするトトリ。よほど予想外だったのか、周りのみんなをチラチラ見ながらワタワタし始めた。

 

「わ、わわわ、わたしなんかよりも、おねえちゃんとかメルお姉ちゃん、あと先生とかのほうが全然キレイですよ!? ね? マイスさん、今から変えちゃいましょう!!」

 

「そうは言われても、もう投票しちゃってるし、集計も終わってるからどうしようもないよ。それに、僕のたった一票が動いたところで一位は変わったりしないだろうから、どっちにしろ意味がないよ?」

 

 よくわからないことを言いだしちゃってるトトリを「まあまあ」と諫めるマイス。だが、彼の言っていることはなんだか微妙にズレていた。トトリが気にしているのはそういう所じゃないだろう。

 

 

 と、騒がしい本人たち以外の面々も、その騒がしさに(じょう)じてあれこれ言い出すのだった。

 特に、投票した相手がトトリということもあってか、メルヴィアはノリノリである。

 

「ほほぅ……マイスの好みが、まさかトトリみたいな子だったなんてねぇ」

 

「ええっ!? メルヴィ何言ってるの? マイスさんがトトリちゃんをだなんて……!」

 

 メルヴィアの言葉に真っ先に反応を示したのは、トトリ大好き、ツェツィだった。彼女は驚きつつも、そのことを否定するようなことを言った。

 だが、そこで「そうよねー」と引き下がるメルヴィアではない。ニヤニヤしながら、まるでツェツィの反応を楽しんでいるかのように話しだす。

 

「でもそうじゃない? あれだけ女の子が集まってる中でわざわざトトリを選ぶんだから、少なからず好意はあると思うんだけど?」

 

「そんなっ! ウソ!?」

 

「まっ、実際に本人に聞いてみればいいんじゃないかしら?」

 

 慌て始めるツェツィに対し「トドメ!」と言わんばかりにたたみかけるメルヴィア。その一手は、悪ふざけにしてもストレート過ぎるものだった。

 

「ねぇねぇマイス。マイスって、トトリのこと好きなんでしょー?」

 

 これにはツェツィだけでなく、トトリも、他の周りにいる人たちも大半が「何言ってるの!?」と驚きの表情を見せた。

 メルヴィアとしては、マイスが肯定しようとも否定しようともちょっと顔が赤くなったりでもしたら、そこからいじれる。さらに、それに対するトトリの反応を……さらにさらに、そのトトリの反応を見たツェツィも……といった具合に楽しみ放題なわけである。

 

 ……が。

 

 

 

「うん、好きだけど?」

 

 

 

 マイスも直球も直球、ドストレートだった。それも恥ずかしがったりせず、いつも通りに。

 

「「ええっ!?」」

 

「いやぁ、まさか即答とはねぇ……」

 

 これにはヘルモルト姉妹も驚き、聞いたメルヴィアさえも驚くどころか若干(じゃっかん)引いていた。

 

 他の面々も驚いている人が多かったが……一部、そうでもない人たちもいた。

 その一人、クーデリアがため息をつきつつ呆れ気味に口を開いた。

 

「そりゃそうよ、だってマイスだもの。当然に決まってるじゃない」

 

「ウソっ!? ま、まままっマイスさんがわたしを……って、え? それってどういうことですか、クーデリアさん?」

 

「勘違いさせるのもかわいそうだから、さっさと説明しようかしらね」

 

 「めんどくさいけど」と付け足して言ったクーデリアは、そのままマイスに向かってこんな問いかけを立て続けに投げかけ始める。

 

「マイス。ロロナは好き?」

 

「好きだよ?」

 

「ホムは好き?」

 

「うん、好き」

 

「じゃあ、ステルク(元騎士)は?」

 

「……ステルクさんはいい人だし、嫌う理由はないと思うんだけど」

 

 

 ロロナやホムだけで無く、同姓であるステルクに対しても何のためらいも無く「好き」と言い切るマイス。

 

「じゃあ、ピアニャのことはー?」

 

「うんっ、ピアニャちゃんのことも好きだよ」

 

「そっかー! えへへ、ピアニャもマイス好きー!!」

 

 最後に乱入して来たピアニャの頭を優しく撫でるマイス。

 ……まあ、ここまでくれば誰でも察しがつくだろう。

 

「ええっと、もしかして……?」

 

「そうよ。メルヴィアが聞こうとした「好き」とマイス(こいつ)が言ってた「好き」っていうのは、意味合いが違うわ」

 

 昔からマイスと面識のあるメンバーは「そうだよね」といった様子で、うんうん頷いていた。

 ……が、その中の一部が顔を赤くしている。もしかすると、()()()()一緒になって勘違いしてしまっていたか……もしくは、()()()()トトリちゃんと同じような勘違いをしてしまった経験があるのかもしれない。

 

 

 そして、トトリたちはと言えば……。

 

 

「あははははっ……なんていうか、マイスさんらしいと言えばらしいような……?」

 

「確かにそういう男女の関係とかには(うと)そうな雰囲気はあるわよね。……けど、なんだかちょっと面白く無いわよねぇ」

 

「はぁ……とにかく、トトリちゃんが盗られなくてよかったわ」

 

 残念がっているメルヴィアはともかくとして、ヘルモルト姉妹もとりあえず落ち着きを取り戻したようだった。

 

 

「それじゃあ、わたしを選んだ理由って……?」

 

 ふと疑問に思ったことを、トトリは口にした。すると、マイスはまた躊躇(ためら)ったり恥ずかしがったりすることもなく、いつもの調子でその理由というものを喋りだす。

 

「今とか普段のトトリちゃんって、おっきなヘッドドレスとかヒラヒラの服とかが特徴的で、そのあたりが全部無いトトリちゃんが新鮮に思えて、なんだか印象に残ったんだ。それで……」

 

「つまり、水着だとかスタイルがとかじゃなくて……ギャップ?」

 

「そんなこと無いよ? 水着の青色がなんだかしっくりきてカワイくて……いつもピンクがベースの服着てるけど、きっとトトリちゃんは青い服も似合うんだろうなって新しい発見もあって面白かったよ!」

 

 マイスはおおよそ二十代後半。目覚めていないにしては遅すぎ、()れるにしては早すぎる気がするのだが、全く下心の感じられない綺麗な笑顔でそんなコメントをしたのだった……。

 

 

 

「なんだか、ジーノくんと同じかそれ以上に、マイスさんも子供っぽい気がしてきたような……。なんだかちょっと残念かも。せっかくおねえちゃんやメルお姉ちゃんに勝てたんだから、ウソでも「綺麗だった」とか「セクシーだ」とか言われてみたかったのに……」

 

 トトリもトトリで、「自分以外の人に投票すべき」とか言っていた割には注文が多く、なおかつ思った通りでなければ不機嫌そうに口をとがらせていた。

 ……彼女ももう華の十七歳。難しいお年頃というやつなのかもしれない。

 


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