家出したホムちゃん。マイス君の家に転がり込んで……さぁ、それからどうなっていくの? ってお話。マイス君視点になっております。
※2019年工事内容※
誤字脱字修正、特殊タグ追加、一部表現の変更、句読点、行間……
【*5-2*】
***マイスの家***
「「いただきます」」
二人でソファーに並ぶようにして座り、声を合わせて言う僕とホムちゃん。
目の前のテーブルの上にはそれぞれ半分ずつにした『サンドウィッチ』と『フルーツサンド』が。『パン』に挟んでいる中身が違うだけの料理だけど、食べてみると全然違う……そんな料理たちである。
そんな料理を昼ゴハンにしている僕たちだけど……ホムちゃんが家出してウチにお泊まりするようになってから3日目になっている。
「はむっ……もきゅもきゅ」
「おいしい?」
「……んくっ。はい、おにいちゃんの料理はとても美味しいです」
「あははっ、それは良かった!」
ホムちゃんの感想を聞いてから、僕も『サンドウィッチ』に一口かぶりつく。
……うんっ。ホムちゃんの言う通り、今回のは一段と美味しく出来ている気がする。
それにしても、だ。
僕はモグモグ口を動かしながら、隣にいる小さな口で少しずつゆっくりと食べ進めているホムちゃんのほうを見た。
アストリッドさんの所から家出をしてきたホムちゃんなんだけど、
例えば……
――――――
*朝*
朝日が昇り出すのとほぼ同時刻に起き、僕は身支度をすませて家の前の畑仕事を始めるんだけど……
畑仕事をしている最中に、気付けばいつの間に起きたのかホムちゃんが。
僕にいつもの朝の挨拶に来た村のモンスターたち。ホムちゃんは畑を囲う簡易的な柵の外で、その子たちに順番にブラッシングをかけてあげていた。
ブラッシングを一通り終えたホムちゃんは、そのまま家の中へと戻っていった……。
そして、僕が畑仕事を終えてひと息つくころ……
「おはようございます」
柵の外からそう
僕が挨拶を返しながらそばまで来ると……
「お疲れ様でした。これをどうぞ」
そう言ってタオルと水を手渡してくれる。
お礼を言いながら受け取り使わせてもらっていると、手で家のほうを示しながらホムちゃんが言う。
「お食事の準備は済ませてあります。以前、おにいちゃんに教えてもらった料理に挑戦してみましたので、一緒にいただきましょう」
――――――
*昼*
お祭りを中心とした村の運営関係のこと。そして、ここ最近忙しくなってきている『学校』関連のこと。
最近の、僕の日中の仕事はその辺りだ。
そのために僕が家で色々したり、村の中をあちこち移動したりする中……ホムちゃんは僕のそばに居て色々手伝ってくれた。
簡単な書類整理から、軽い荷物の運搬、教科書の誤字脱字の校正……などなど。
そして、僕が家の外で村の人たちなんかと打ち合わせ等をしていて手伝えそうなことが無い時は、村のモンスターの健康チェックや村の人たちとの
そして、お昼
朝とは違い
「ホムもお手伝いします」
……と、一緒にキッチンに並ぶことが多い。
とはいえ、以前からなーのゴハンの準備とかそういうことを一緒にしたりもしていたから、その延長だと思う。
――――――
*夜*
今日の仕事を終えて、一緒に作った晩ゴハンを食べて……
それから先の夜は、僕一人の時は主に眠気が来るまで薬の調合や装飾品の生産をしたりしてたんだけど――
「今日はみゅうが一番元気が良かったです。なーから生まれた頃は一番身体が小さかったのに……あっ、あとそれと――」
――ホムちゃんがいる時はもっぱら「お喋りの時間」になっている。
内容は、今日あったことや明日どうするか、はたまた突然の関係無い話題だったりと種類は様々。
テーブルを挟んでソファーとイスで対面に座ったり、ソファーに二人並んで座ったり、
そして、どちらかが眠たくなると……
「名残惜しいですが明日もあります、今日は寝てしまいましょう。戸締まりを確認しましょう」
というわけで、身支度を整えてから僕は二階へ、ホムちゃんは『離れ』へと向かう。
最後の最後、裏口から出て行くホムちゃんが、本当に名残惜しそうにコッチをチラチラと何度か見てきて、それから……
「おにいちゃん……もし……いえ、おやすみなさい」
そう言って小さく手を振ってからホムちゃんは裏口から『離れ』へと寝に行く……。
――――――
それがここ最近の僕たちの一日なわけだけど……
(うーん、特に変わった様子はないんだよね)
基本的に、前に素材集めでウチに立ち寄ってそのまま数日滞在していた頃と、大きな差はない日常だった。
というか、ホムちゃんは本当に良い子すぎる。
昔からそうではあったんだけど、『学校』関連で以前よりも忙しくなっているせいか、より一層実感できてるような気がする。
家出なんかしちゃってるから――偏見かもしれないけど、荒れてしまって暴力的になったり口が悪くなったり――いわゆる「グレる」なんてことになってるんじゃないかと心配しちゃってたんだけど、それは僕の杞憂に終わった。
そんないつものホムちゃんだからこそ、なんでアストリッドさんの所からどうして家でなんてしてしまったのかが分からなくて、心配になってしまう。
普段の行動から何かを避けたり嫌ったりと、何かに過敏に反応するようであればソレに何かヒントがあるって推測できるんだけど……そんな様子は無くってどうしようもなかった。
日常の様子から分からないなら、直接ホムちゃんから聞くしかないんだけど……
「どうして家出したの?」って聞くと、難しい顔をして押し黙ってしまうんだ。
もしかしたら根気強く、根掘り葉掘り聞いて問い詰めてしまえば何か分かるのかもしれない。……けど、黙ってしまった時のホムちゃんの
家出の理由を知らないことには、ホムちゃんの生活環境を改善してあげられないんだけど……それはわかっていても、あんな顔をするホムちゃんに無理矢理聞くっていうのは僕には出来そうもなかった。
(うーん……でも、このままっずーっと
ホムちゃんより一足先に『サンドウィッチ』を食べ終え、続いて僕は『フルーツサンド』へと手を伸ばし――――「バァンッ!!」とノックも無しに開け放たれた玄関戸に一瞬ビックリしてしまいながらも、そっちを見た。
「ほむちゃんがいるって本当っ!?」
ロロナだった。
ツェツィさんの「トトリちゃん大好き!」に負けず劣らず、ロロナもホムちゃんのこと大好きなんだから。
(ホムちゃんのほうもロロナの事は嫌いじゃなさそうなんだけど、ちょっと淡白な感じが……って、あっ)
色々考えながら、その思考の中心付近にいた今僕の隣に座ってるホムちゃんに目を向けると……口元あたりの右頬に『サンドウィッチ』の中身の潰した『ゆでタマゴ』がちょんとついていた。
「あー! 本当にいたー!? ずるいよマイス君っ! ホムちゃんのことひとりじめ――」
「こんなところに……はいっ、とれたよ」
「あっ……すみません、気付きませんでした。ありがとうございます、おにいちゃん」
「あはははっ。気付かないくらい夢中になってくれてたなら、ちょーっと嬉しいんだけどなぁ?」
「ホムとしては、おにいちゃんの料理のひとカケラを無駄にしてしまったことが嫌だったので……今からは気を付けます」
「聞いてよっ!?」
―――――――――
ホムちゃんの一件でプンプン怒っていたのに、タイミングの問題で僕らがちょっとスルーしてしまってイジケテしまったロロナ。
そんなロロナのことをなだめつつ……聞くまでも無く大体わかってたロロナが来た理由を改めて聞いた。やっぱり「ほむちゃんがいるって聞いたから!」だけだった。
そして、逆に「どうしてほむちゃんがいるの? 素材集め?」って聞いて来たから、ホムちゃんと一緒に家出のことを説明した。
すると、ロロナはひとしきりアストリッドさんへの不満を口にした後……ホムちゃんに
「それじゃあ、昔みたいに私のアトリエに来ない? 師匠、私が師匠を探してたこと知ってるだろうから、わざわざ捕まりに来るような真似はしないと思うよ」
ロロナの提案に、ホムちゃんはわずかに眉間にシワを寄せ、ほんの少し首をかしげて考えるような仕草をした。
……けど、相手がアストリッドさんだって考えると、ロロナの目をかいくぐってスイスイーっと侵入&拉致くらいしてみせそうで、あんまり「アトリエだから」っていうのは効果は無い気がする。
(あれ? じゃあなんで、アストリッドさんは今『
アストリッドさんのことだし、移動時間は一瞬だろう。そのうえ、僕としては
だから、侵入してホムちゃんのことを連れ戻すことなんて朝飯前だと思うんだけど……?
「マスターのアトリエで、ですか……」
僕がそんなことを思い考えている最中、ホムちゃんがポツリ、ポツリと言葉を漏らしはじめ……段々としっかりとした言葉になっていく。
「可能性は
「やったー! ほむちゃん、ご
「ばんざーい!」と両手を高々と上げるロロナと、いつも通り涼しい顔をしているホムちゃん。
まぁ、僕としては、ホムちゃん自身がどうしたいか決めるべきことだから特別どうって思ってるわけじゃない。
……でも、ホムちゃんの呟いてた
僕の気のせい、かな……?