「そういえば、二人って誰に投票したんですか~?」
「僕は……」
『クーデリア』◄(ぽちっ)
※2019年工事内容※
一部表現の変更、句読点、行間……
クーデリア【*1*】
***アランヤ村・広場***
【*1*】
「僕が投票したのはクーデリアだよ」
「……何よあんた、寝ぼけてるの?」
ジトリとした目つきで、マイスを見るクーデリア。
ある種の趣味を持った人であれば喜び、普通の人だったら嫌な思いをしそうな視線だが、当のマイスは特に気にした様子も無く、ただ単純に思った通りの事を言うのだった。
「寝ぼけてるって、別にそんなことないけど……?」
「そっ。まあ、からかうために嘘を言ったりする奴じゃないからね、あんたは」
クーデリアはマイスから視線を離し、プイッと
と、ロロナが回り込むようにしてそのクーデリアの顔を覗きこんだ。そして、何を見たのかわからないが、いつもの悪気も何も無い笑顔をして口を開く。
「あっ、くーちゃん、もしかして照れてる?」
「なんであたしが照れなきゃなんないのよ。わっけわかんない」
そう言って顔を上げて睨みつけた顔は、確かに照れていない様子で、むしろ……
「あららっ、本気で呆れてる。これはそういう線は無いのかしらねー……」
「ざーんねん」とメルヴィアが言うように、これでもかというほどの呆れ顔だったのだ。
そんな顔をしたままクーデリアはゆっくりと首を横に振る。
「何を期待してるかは知らないけど、思考回路がお子様と同レベルのマイスに何か言われたところで「あらそう」で終わりよ。それ以上に思うことなんて何にもないわ」
「クーデリアさん、いくらマイスさん相手だからってバッサリ言い過ぎなんじゃ……」
「普段のトトリとあんまり変わりないと思うんだけど……ここはツッコんだらダメなのかしら?」
クーデリアへのトトリの一言。それに対するミミの呟きは、多くの人が共感を持てるものだっただろう。
そして、マイスのほうには今いるメンバーで唯一の同性であるステルクが近づき、マイスの肩を叩いた。
「あー……私からどう声をかけるべきかわからないが、そう気を落さなくていいと思うぞ」
「えっ、気を落す? なんで僕が?」
「自分の票を
そうステルクは小声で聞いたが、当のマイスは本当に気にしていないようで、いつも通りのボリュームで喋り続ける。
「無下って言うほどじゃ……。それに、僕の票だってお祭りに来ている人たちの沢山の票の内のたった一票なんですから、そんな一票一票を全部わざわざ気にしてたら大変ですよ? クーデリアみたいに「票は票」ってバッサリとするのが正しいですって」
「いつもの調子で笑って言っているあたり、まぎれもない本心か……。まぁ、キミは相変わらずということだろうな」
「……? よくわからないですけど、ステルクさんがそう思ったならきっと間違い無いと思います」
男同士の会話は、結局あまり意味の無いもののまま終わったのであった。
なんとも微妙な感じで終った男性二人の投票先の話。
一区切りがつき、「お祭りをまわるの、再開しましょうか」というトトリの鶴の一声で一行はあたりの出店に目をやりながら移動をはじめた。
その途中……歩きはじめてからそう経たない頃に、いつの間にかマイスの隣まで来ていたクーデリアがマイスに問いかけた。
「ねぇ、ちょっと」
「ん? どうかした、クーデリア?」
すぐ隣にいたことを別に驚きもせずにマイスは聞き返す。
「参考までに聞くけど……どうしてあたしを選んだのよ?」
「どうしてって……それはまぁ、クーデリアがかわいかったからだよ?」
「カワイイ、ねぇ。それは喜んでいいのか微妙な言葉だけど……まっ、それでいいことにしとくわ」
クーデリアの着ていた水着的に、受け取りようによっては「子供っぽかった」という感想として受け取れなくもなかったマイスの言葉だったが……クーデリアは「やれやれ」といった様子で肩をすくめた後、手をヒラヒラ振って前方にいるロロナの方へと早足で行ってしまった……。
残されたマイスは、よくわからないクーデリアの反応を自分なりに解釈していき……
「怒ってる……ってわけじゃなさそうだったけど、なんだったんだろう? あっ! もしかして自分が選んだ水着の感想を言ってほしかったとか!? なら、悪いことしちゃったかなぁ……」
きっと今までの流れを聞いた人がいれば「それは違うだろ」と突っ込まれそうな結論に達していた。
「……たっく。人を褒めるなら褒めるで、あんな単調じゃなくて、もうちょっと言葉を工夫してほしい所だけど……まあ、マイスならあれくらいが限界かしらね」
「あれ? くーちゃん、良いことでもあった? あっ、何かいいお店でも見つけたの?」
「んっ。ま、そんなところかしらね」