家の家族は獣耳   作:しらす丸

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どうもしらす丸です。
暫く手がつけられなくて本当にすいませんでした!。まだ生きています。
私の生存報告も兼ねてお送りします。


夜空よりも綺麗な笑顔

気付けばもう龍牙の祖父、誠二郎の葬式から1週間たった。龍牙は自宅で1日ゆっくりしたいため、翔一は仕事のため、明日には帰ることになった。

そんな日の昼間。

2人と真理以外の親族は帰った。真理はずっと誠二郎の介護をしていたため、この家に住んでいるのだ。そんな真理も今は買い物で出掛けていて不在である。つまり、家に居るのは龍牙と翔一だけになる。龍牙は真理が帰ってくる時間までは人間の姿でいても大丈夫と言った。真理には帰ってくる頃には連絡してくれと伝えたので、完璧である。

 

「ふぅ〜。やはりこっちの姿の方が楽でいいのじゃ。」

「よくあるアニメみたく動物の姿の方が楽とかじゃないんだな。」

「ふむ、わしは神じゃぞ翔一よ。空想の人物と一緒にするでない。」

「あくまでも神の切れ端だろ…。」

「なんじゃと!?。踏み潰すぞ翔一!。」

「はっはっは!!。やってみろ!。その小学生みたいな小さな足で踏み潰してみろよ!。」

「わしは子供ではない!!。」

「ははは!!あっ…ちょ!、痛い痛い痛い!。片足で太もも踏むの止めて!。結構痛い!。」

「ははは!。わしを馬鹿にした罪じゃ!。このこのこの!。」

「なにやってんの2人とも…。」

 

縁側でくつろいでたスミレと翔一のくだらない喧嘩を見ながら龍牙は溜息を1つ、初夏の空に溶かした。

 

「そんなことよりもスミレ。」

「なんじゃ龍牙。今はそれどころではない。こやつがわしを子供扱いするのじゃ!。」

「父さんもいったん止めて。真面目な話をするから。」

「おう!。分かったぞ!。この話はまた後日だな!。」

「はぁ…。で、スミレ。お前はどうするんだ?。俺について行くのか、ここに残るか。」

「龍牙はどちらがいいのじゃ?。やはりわしがそちらに行くと迷惑かの?。」

「資金的な問題は気にしなくていい。兎に角自分の意思で決めてくれ。」

「わしがここに残ったらお主はどうするのじゃ?。」

「俺は一旦東京へ戻る。スミレはここに残って真理叔母さんの世話になることになる。」

「けどさ、神社から離れてもいいのか?。」

 

翔一がスミレに質問を投げた。

 

「そこは気にせんで良い。わしは元々神の一部だったとはいえ。もう完全な個体じゃ。完全に分離しておる。」

 

実は彼女は誠二郎がスミレを拾った神社で祀られていた神の力の一部なのだ。そのことを詳しく聞かされたのは誠二郎の葬式が終わってから3日経ったころのことだった。龍牙はスミレから、翔一は龍牙から彼女は神ということは聞いていたので、そんなに驚きはしなかったらしい。

閑話休題

龍牙が話し始めた。

 

「で、どうするんだ?。ここに残るか、俺について行くか。どうするか決めてもいいぞ。何なら父さんの会社は?。」

「うーん。すまないがうちは多分無理だな。ほら、マスコミの目とかあるし、何よりも家にはあのロリコンもいるしな。」

「兄さんのことだね…。」

 

龍牙は苦笑いした。

 

「それで、わしはなんの選択肢があるのかの?。」

「取り敢えず上がっているのは、俺の家に来るかここに残るかだな。まぁ後はこれから1人…1匹かな?…で暮らすことになるな。どうする?。」

「うーむ…。今夜までには決断をしようと思うから待ってくれんかの?。」

「うん。ゆっくり考えるといいよ。」

「それは助かるのじゃ。」

 

龍牙は久しぶりにゆっくりした時間が流れていくように感じた。空を見上げると、青い空に雲がゆっくり流れている。

 

「久しぶりだな。こんなにゆっくり空を見上げるのは。」

 

龍牙は独り言のように呟いた。

 

「そうなのか?。」

「うん。勉強が忙しくてね。空を見る機会なんてないのさ。」

「ふむ…。そうなのか…。」

 

スミレはなにか考えるように頷いた。

 

「スミレ、俺、少し寝るよ。」

「分かったのじゃ。わしも一緒に寝るとするかの。」

 

スミレは狐の姿に戻り龍牙の横で眠り始めた。龍牙もそれに釣られるように眠り始めた。

 

「おーい、2人とも。アイス食べるか…って寝てるし…。あれ?。なんかデジャヴ…。」

 

 

時間が経ち、日は沈み始め、辺りは橙色に染まってゆく。龍牙は真理に起こされ。3人で夜ご飯を食べた。その夜ご飯で、真理は誠二郎の介護が必要なくなったため、翔一と龍牙が帰り、準備をした後、この家を出るらしい。つまり、スミレは龍牙について行くか真理について行くかのどちらか、もしくは1人で生きることを選ぶことになったのだ。

そしてその日の夜。

 

「龍牙。少し外に行きたいのだが、いいかの?。」

 

龍牙は真理に事情を話し、スミレと外に出た。

 

「なあ龍牙。今宵はとてもいい空じゃの。」

「ああ。そうだな。」

 

暗い空に水飛沫のように瞬いている星を眺め、スミレは話し始めた。

 

「それで、スミレ。真理叔母さんから聞いたんだけど、俺と父さんがここを出たら真理叔母さんもここを出ることになったんだ。どうする?。」

「そうなのかの…。うむ。これで決まったのじゃ。」

 

スミレは龍牙の前に立ち、話した。

 

「龍牙。お主は前に成長しろとわしに言ったの。わしもこれを機に成長してみようと思ったのじゃ。」

 

2人の間に涼しい風が吹いていく。

 

「まだわしは主様のことを信じておったのじゃ。まだ生きてるとこの家で待っていればいつか帰ってくるとな。」

「……。」

「だが、結局わしはまだ主様の死を認めていなかったのじゃ。あんなに近くで見たのに…。わしはただ単に現実を直視出来なかったのじゃ。わしはとんだ愚か者じゃ…。」

 

スミレは自虐的に笑った。

 

「だからわしは成長する。しっかりと現実を見ると決めたのじゃ。だから龍牙。わしはお主について行くことにする。あのときわしにあの言葉をかけてくれたお主なら大丈夫じゃ。これからは龍牙。お主が私の主じゃ。これから沢山世話になるの!。」

 

スミレのその笑顔は夜空の星よりも綺麗に眩しく輝いていた。

 

「ああ。こちらこそよろしく頼む。」

 

龍牙はスミレと違い、優しく微笑んだ。




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