前々から予定していた2作目が完成したので、投稿しました。
この作品も他の作品も両方読んでいただけると私としても、嬉しいです。
評価や感想も私を動かしてくれる原動力なので、お願いします。
『爺ちゃんが死んだ。』
電話越しで女性が受話器を持った青年に話した言葉だった。青年は至って自然にその言葉の返事をした。
「やっぱり駄目でしたか...。葬式はいつありますか?。」
そう青年が聞くと、女性は
『まだ詳しくは決まってないの。けど遺言通り身内だけでやるみたいよ?。大学はどうするの?。』
「来週から2週間くらい休みをとるのでその間でいいですか?」
『分かったわ。そう言っとく。』
「父さん達には俺が連絡しておきます。誰が行くかはこっちで話し合ってみます。ありがとうございました、予定を合わせてくれて。」
『全然気にしなくていいわ。じゃあ葬式の準備とか色々あって忙しいから切るわね。』
「はい、分かりました。すいません。忙しいときに手伝えなくて。」
『気持ちだけでも嬉しいわよ。ありがとね。』
電話は切れた。青年は受話器を置き、その場で独り言を呟いた。
「爺ちゃんが死んだ...。もう、会えないのか。最後に会ったのは正月だったし、先月くらいに顔を見せときゃあよかったな...。」
青年はリビングのソファーに寝転がり、窓をみた。窓から見える景色はビルが乱立している。まるで鉄とガラスで出来た、ジャングルのようだ。青年はその景色をぼーっと見ていると、思い出す。
「父さんに連絡しなきゃ。」
青年は机の上に置いてあったスマホをとり、電話をかけた。電話から出た声は、男性の声だった。
「もしもし?父さん?。」
『お!、龍牙か!。元気にしてるか?。お前が俺に直接電話掛けてくるなんて珍しいな。何の用だ?。』
「爺ちゃんが死んだんだ。叔母さんから連絡がきた。葬式は身内でやるって。」
そう青年が言うと、父親は少し暗く返事をした。
『そうか...。葬式はいつだ?。』
「俺の都合に合わせてくれた。まだ詳しくは決まってないみたい。そっちは誰が行くの?。」
『うーん。こちら側で話してみるよ。まぁ多分俺が行くことになるだろうけど。』
「分かった。予定が決まったら向こうに連絡して。」
『あぁ。分かった。一応お前にも連絡しとくよ』
「ありがとう。」
青年..否..
「飯、作るか。」
そう言って、夕食を作り始める。、薄暗い空はポツポツと雨が降り始めていた。
「さて、何作るか。冷蔵庫は...卵と野菜か...。」
彼は一人暮らしのため、家事のスキルが高い。手先もそこそこ器用なため、模型なども得意である。
「卵と野菜炒めでいいかな?。楽だし。」
米を砥ぎ、炊飯器にかけ、炊いてる間に卵を溶き、野菜を切るなど、手際もよい。そして野菜も全て切り終わったが、まだ肝心なご飯が炊けていないので、野菜をボウルにまとめラップをかけ、溶き卵が入った容器も同じ作業をした。そして、2つの容器をただでさえ腐りやすい時期なので冷蔵庫にしまう。
「さて、炊けるまでテレビでも見てるか。」
龍牙はテレビをつけ、たまたまやっていたお笑い番組を見始めた。テレビに写るお笑い芸人が面白いネタを披露したのに龍牙はそれを真顔で見ていた。
「最近のお笑いは面白くないねぇ。言ってる意味が全く理解できねぇわ。」
そんな独り言がテレビから出てくる誰かの笑い声に掻き消されていった。天気予報でも見るかとチャンネルを変えた瞬間、炊飯器が炊き上がったことを知らせるブザー音が鳴った。
「米も炊けたし、再開するか。」
そうして龍牙は切っておいた野菜と溶いておいた卵を冷蔵庫から取り出し、フライパンを用意した。
フライパンに油をひき、まずは卵を菜箸でかき混ぜながら固まらせる。卵は固まるのが早いので、素早く混ぜる。そして、野菜を入れ、野菜がシナシナになるまで。炒め続ける。少し経つと、殆どの野菜がシナシナになっている。
「味付けは...塩胡椒でいいか。」
味付けに塩も胡椒を適量かける。調味料が全体に行き渡ったら火を止め、皿に盛る。ご飯を茶碗に盛り、箸を用意し、テレビの前のテーブルに置く。そして、コップとあらかじめ冷やしておいた水が入った容器を取り出し、コップに水をつぐ。これで、質素だが夕食の完成だ。
「いただきます。」
どこか寂しそうな声が一つ、部屋の中で聞こえた。
「どれどれ。味は...少ししょっぱいけど、ご飯が進む味だな。」
3杯くらいご飯を食べたあと、食器を片付け、洗う。洗い終わったあと、食器乾燥機にかけ、その間、風呂の準備をする。まだお風呂に入る時間ではないので、テレビをつけ、ニュースと天気予報を見る。
(まさか...爺ちゃんが死ぬとは。あの人のことだし90くらいまではくたばらないとは思ってたけど...。84が限界だったか...。)
『明日の東京の天気はくもりです。降水確率が高めなので、折りたたみ傘を持って行くと安心でしょう。』
そして、ぼーっとしながら風呂に入り、涼んだあと、布団に潜り眠りにつく。こうして都会の夜が開けて行くのだった。
そして、何事も起こらず1週間が経っていった。その日の朝。
「今日か...。準備して、仮眠とって夕方くらいに父さんを迎えに行くかな。」
結局、龍牙の祖父の通夜と葬式に行くのは龍牙の父親のようだ。
そして昼頃。龍牙は車を走らせ1つの大きなビルの地下駐車場へと入っていった。中を回っていると、シャツにデニムというラフな姿をした男性がビルへの出入口辺りで車の中にいる龍牙に向かって手を振っていた。彼は男性の近くに横付けし、エンジンを止める。すると男性は車の中に入った。
「お待たせ父さん。待った?。」
「いや、全然だぞ。さっき出てきたばっかりだよ。」
「荷物は?。」
「今秘書に持ってこさせてる。」
「まったく...。それぐらい自分でやりなよ。」
「いやー、俺が運ぶから大丈夫だって言ってんのにあの子ったら「あなた様の手を煩わせないようにするのが私の役目です。」って言ってさー。運ばなかったんじゃないんだよ?。運べなかったんだよ」
龍牙の父親...
「俺、手伝うから。」
龍牙そう言って車から出て、女性に話しかけた。
「瑠美さん。荷物は全部俺が乗せるんで、大丈夫ですよ。」
「お気になさらず。これは私がやっておきます。」
「全然大丈夫ですよ。これから長いドライブになるんで少し動きたかったのもありますし。」
「あっ、ちょっと...。」
女性...
「むぅ...。私の仕事奪わないで下さいよ。」
「大体これは瑠美さんの仕事じゃなくてこれは父さんの仕事なんで気にする必要なんて皆無ですよ。」
瑠美はため息をした。
「はぁ...。あなたは昔からそうでしたね。いい意味でも悪い意味でも。」
「ま、これが俺の個性なんで。変えることは出来ませんよ。」
龍牙はそれに対し、薄笑いを浮かべる。
「では、行ってきますね。」
「はい、お気を付けてくださいね。」
龍牙は車に戻り、エンジンをかけ、地下駐車場から出ていく。
「さて、龍牙。久しぶりだなぁ。電話だと何回か話したけどな。大学はどうだ?。」
「まぁボチボチってところ。特に面倒事には巻き込まれてないよ。そっちは?。」
「こっちも同じ感じだな。あとは最近まとまった睡眠がとれてないのが問題っちゃあ問題かな?。落ち着いたら溜めておいたアニメを消化しないとな。」
「そうかい。楽しそうだね。」
「そうだぞ!。お前も見ろよ。最近のアニメは腐女子向けのが多いがそれでも面白いのが多い。」
翔一はアニメが大好きである。世間で言うとオタクである。確かに龍牙はアニメは好きだが、父の話を聞いていても、
「ふーん。」
と返すだけである。
「凄く興味が無い反応だな。」
「まぁ、アニメは好きだけど、そこまで興味はないかな。」
「ハッキリ言った!。この人ハッキリ言っちゃったよ!。」
嘘泣きでオタク仲間を増やそうと息子に声をかけるが、断られて涙目になる父(48)であった。
「そんなに増やしたいの?。オタク仲間。」
「社内でも私と話てくれる人自体が少ないんだ...。」
「まぁ、社長だしね。」
こんな父親でも彼は超一流企業の社長である。だが、龍牙にはどんなことをしているのかは伝えてないらしい。超一流企業とだけ聞いているのだが、翔一に聞くと、「言うのが面倒だから言わなくていいよね」っと毎回言うのだった。だが、彼の家族はそのためお金持ちである。だが、龍牙は「家族の顔を使いたくない」と言って一人暮らしをした。
閑話休題
「俺には仕事以外で自由に話しかけてくれたっていいのに...。酷いんだよ社内の皆、昼ご飯に社員と親睦を深めようとして、社員食堂に入ったら。食堂内の皆の動きが止まって凄い顔で苦笑いを浮かべたんだよ?。」
「イメージ的には?。」
「吸血鬼とかメイドとかの時止めみたいだったよ。」
「悲しいね。皆が憧れる社長って。」
「俺もやっていて凄くそう思うよ。」
暫く高速道路を走っていると欠伸が出た。休憩として近くのサービスエリアに止まり、トイレを済ませ、お腹が空いたと言い出した翔一は中にあったコンビニで買い物をしている間、龍牙はアイマスクを付け仮眠をとっていた。
「おーい。龍牙ー。フライドチキン奢ってやったぞーって寝てんのかよ...。2つ食っちゃうか...。」
1時間くらい経った後。眠気を覚まし、再出発した。太陽は西にゆっくりと傾き始め、ラジオは午後5時を知らせていた。
ラジオを聞きながらずっと車を走らせている。
「父さん。」
返事はない。少し気になってバックミラー近くにある、車内が全て見渡せるミラーを展開し、見ると、父は眠っていた。
「まぁ、ずっと徹夜続きだったらしいし、ゆっくり寝させとくか。」
更に1時間後、山道を走り、目的地に到着。山の中だから辺りは森だらけである。数台車も止まっている。龍牙は翔一を起こす。
「父さん、着いたよ。起きて。」
「ん...んぅ?。あぁ着いたのか。ふぁー、よく寝た。勝手に寝てすまんな。久しぶりにゆっくりしたもんで眠気がね。」
「大丈夫。疲れているのは分かってるから、そこを攻めるつもりはないよ。」
「いやー。いい息子を持ったもんだ。まったく、
「そんなに酷いの?、兄さん。」
龍頭...
翔一は車から降りて、花などの準備ながらボヤいていた。
「酷いのなんの、ちょーっとサボってるとすぐ怒るんだよ。自分の仕事をやってからサボれって言われてさー。」
「ふーん。」
「まぁ、その後作業な終われば、話し相手になってくれるし。いやー、アイツの幼女愛には流石にドン引きだわー。だけど頑なに触ろうとせず愛でるだけってのがなかなか面白いわ。」
龍頭もアニメ好きである。特に小さい女の子が好きで、世間で言うロリコンである。
「荷物は全部持った?。」
「あぁ持ったとも。さて出発だ。」
2人は広めの砂利道を歩き、大きな家の前に立った。
「いつ見てもデカいわ。親父の家。」
「馬鹿なこと言ってないで早く行くよ父さん。家がデカいのはいつもと事だし。」
「あっ、こら待てよ。」
玄関に着き、出迎えてくれたのは電話に出ていた女性の声の主だった。
「いらっしゃい、遠くからよく来たわね。」
「お久しぶりです。真理叔母さん。」
「帰ったぞ妹よ!。」
「はいはい。兄さんもおかえり。荷物は兄さんの部屋に置いていいから。」
「それを俺は認めていいのか?。」
「拒否権は無いわ兄さん。強制よ。」
翔一は溜息をつきながら元翔一の部屋に荷物を置いた。
親戚がもう何人かいるという広い部屋に行く途中。とある部屋からひょこっと白く尖った耳と、同じ毛色のもふもふの尻尾をした。狐が出てきた。2人は驚きもせず撫で始めた。
「なんだスミレか。お前も久しぶりだな。」
スミレと呼ばれた狐は嬉しそうに目を細め、龍牙に擦り寄っている。龍牙に懐いているようだ。だが、翔一には懐いていないようで、嫌がりはしないが、翔一のことを気にしていないようだ。
「しっかしこの狐も何でお前に懐くんだろうなぁー。飼い主の親父とお前にめっちゃ懐いてるよな。」
この狐は元々龍牙の祖父、
「スミレ、じゃあまた後でね。」
「キュ〜キュ〜。」
着いてきてと言わんばかりにスミレは龍牙のズボンの裾を噛んで引っ張る。
「そっちに行けばいいのか?。」
「行ってくればいいさ。俺は先に向こうに行ってるがな。」
「わかった。スミレについて行ってくる。」
「おう、向こうには色々話を作ってやるよ。」
「ありがとう、父さん。」
龍牙がスミレに付いていくと、とある部屋に着いた。龍牙は部屋を見渡して何か思い出したのか独り言を喋り始めた。
「ここって確かスミレと初めてあった部屋だったっけ。」
「そうじゃのう。お主と出会った場所じゃ。まだあんなにちいこかったのじゃがのう。いやはや、時が経つのは早いのう...。」
「あぁ、早いね、え!?。うわっ!。」
龍牙の独り言に受け答えしたのは、幼い女性の声だった。龍牙はビックリして、後ろに転んで尻餅をつく。
「いたた...。ん?。君は...誰だ?。」
「何じゃ?、わしか?。お主、すぐにわしの名前を忘れてしまうのじゃな...。」
少し残念そうに落ち込むその声の主はスミレと同じ毛色のセミロングと、尖った狐のような耳。そして同じ毛色のふさふさの尻尾が生えた120cmくらいの、和服を着た幼い少女だった。
どうだったでしょうか?。
1話ということで長くしましたが、流石に毎回ここまでは無理なので、2000~3000文字くらいで投稿したいと思います。5000文字超えたのは初めてです。
それではまた。