手が動くなら、何度でも殺してみせる 作:二刀流に憧れた中二病
SAO終了というのは、打ち切りの事ではありません。
では、どうぞ。
シキside
大規模攻略作戦開始時に転移し、俺達は第75層のボス部屋の前に居た。
「諸君、では行くぞ。」
ヒースクリフがボス部屋の扉を開く。
____ゴゴゴゴゴ
中に入り、ボスの姿を確認しようとする。だが、ボスの姿が何処にも見当たらない。
「上よ!」
アスナさんがそう言った瞬間皆を見上げ、ボスの紅い目を見ていた。
そのボスの体は、およそ全長100mはあるのではないかと推測するが、兎に角大きい。
「総員!シキ君がボスへと到達する為の道を作り、守るのだ!」
『オオォォォォォォ!』
俺は素早く奴の死線を見つける。奴の体中に刻まれている。一番早く片付けられる線を見つけ、そこに向かう。
「さて、仕事の時間だ!」
俺は只ひたすらに駆けていく。ミスは許されない。いや、
「しない!」
味方が道を開けてくれている。そして、足止めを。これなら、俺は奴を"殺せる"。
___そこから一気に加速していく
先ずは....一本目ッ!
なぞる
二本目ッ!
なぞる
そして、これが三本目!終わりだぁぁぁぁぁ!
「フンッ!」
____チャキンッ
そして、奴はHPバーが一気に消え、ポリゴンと化し散った。
「よし!」
『オオオオオォォォォォォ!!!』
全員が歓喜の声を上げる。さて、一休みするか....
「ふう.....」
「ご苦労だったシキ君。君のお陰で死者が出ずに済んだ。」
「気にしないで下さい。俺に出来るのなんて殺す事だけなんで。」
俺は一つ質問をする事にした。
「ヒースクリフさん。少しいいですか?」
「どうしたのかね。シキ君。」
「ちょっと、お聞きしたいんですが.....なんで貴方は何時もボス戦でも何でもHPがイエローにいかないんですか?」
「ッ!?」
釣れた。よし、後は
「ハァッ!」
黒い剣士の人が突然ヒースクリフさんに斬り掛かる。すると....
何かに阻まれる。そして、ヒースクリフさんに表示されたのは
【immortal object】
不死存在、破壊不能オブジェクト。
やっぱり、どうにも線と点が見えにくい訳だ。最もなんでまだ少し見えるのかは俺のスキルに秘密があるんだが.....
「ヒースクリフ、いや、茅場晶彦。これはどういう事だ?」
「因みに、何時から気付いていたのかね?」
「前のお前とのデュエルの時からだ。前から怪しいとは思ってたが、確証が無かった。」
「では、何故そうだと確信したのかね?」
「明らかに最後の動きが速すぎる。それが不自然だったからだ。」
「全く、感がいいと言うのも考えものだ....そうだ。私こそが茅場晶彦だ。だがキリトくん。君は少し勘違いをしている。」
「どういう事だ?」
「私は茅場晶彦であってそうではない。私は茅場晶彦がこの仮想空間上に残したら残像思念体でしかない。」
「そうだったのか...」
「そして、私は本来最上階で待ち受ける筈だったこのソードアート・オンラインのボスでもある。」
つまり、あいつの意識は既に仮想空間上にしか居ない、そして、奴は今まで俺達を観察する為に態態プレイヤーに紛れたんだ。
「さて、それで君はどうしたいのかね?キリト君。」
「俺とここでデュエルで勝負しろ。初撃決着モードでだ。」
すると、急に体が動かなくなる。
「邪魔が入らない様に麻痺を掛けさせてもらった。いいかね?」
「......分かった。」
「キ.....リト.....君.....!だめ.....!」
「やめ......ろ!.....キリの字!」
俺は何でも殺せる、とは言っても今は状態等は殺せないようだ。くそっ、動けたら、ヒースクリフを直ぐに倒せるのに....犠牲を出さずに済むのに....
「それでは、始めよう。キリトくん。」
「ああ。」
その言葉を合図に、カウントが始まる。
____10
____9
奴が、不死を解除するのが見える。
____8
____7
「ヒースクリフ、悪いが一つだけ頼んでいいか?」
「何かね?」
____6
____5
____4
「俺がここで死んでも、アスナが自殺しないようにしてくれないか?」
「ダメだよ!キリトくんッ!」
「良かろう。彼女はセルムブルグから出れないようにしておこう。」
「助かる。」
____3
____2
____1
____0
「殺すッ!」
キリトさんがヒースクリフを斬る為に全力で疾走する。
「ハァァァァァ!」
「フンッ!」
ヒースクリフはソードスキルを作った本人な為に、動きが全て見切られてしまう。だがらキリトさんは自分の剣技だけでやろうとしている。
「セイッ!ハァァ!」
「......」
ひたすらに剣が弾かれる音が鳴り響く。不味い。キリトさんのスタミナが.....
いや、きっとやってくれる筈だ。今は祈るしかない。
「クソッ!ハァァァァァ!」
とうとうキリトさんがソードスキルを発動させる。システムの動きに更に自分の力で加速を付け、速度を上げていくッ。
「ダァァァァァ!」
「フンッ、フンッ」
だが所詮はシステムの動き、ヒースクリフに防がれてしまう。
「ハァ!」
最後の一撃が終わる。
「隙が出来てしまったな?キリトくん。」
「ッ!?」
「フンッ!」
キリトさんが剣で防ぐも、結晶のような剣は先端が無惨にも折れてしまった。
「あ.......」
「では、さらばだキリトくん。」
「くっ!」
次の瞬間、キリトさんに剣が突き刺さると思っていたが、それは突然の事だった。
「あ、アスナ!?」
そう、アスナさんが飛び出したのである。あの麻痺を抜け出すのにも相当苦労しただろう。だが、それ程までにキリトさんへの愛があったという事だろうか.....
「な、なんで」
「体が、動いちゃって.......キリトくんには、死んでほしく、なかったの.....」
「お前が死んだら意味がない!」
「大好きだよ、キリトくん......生きてね.....」
そう言い残し、彼女はポリゴンと化し、
____パリンッ
散った。
残されたのは、彼女の愛剣のみだった。
「.........」
その剣を、キリトさんは無くなった左手の剣の代わりにしていた。
「.......」
全く覇気のない動きでヒースクリフに斬り掛かる。
「......彼女が命をもって守ったものも.....これで終わりだ...」
そうして、ヒースクリフはキリトさんに剣を突き立てる。
「........だ」
キリトさんが消える寸前の筈なのに何かしようとしている。
「まだだぁ!うわぁぁぁぁ!」
「......」
ヒースクリフは一瞬驚いた表情をした後、また無表情に戻り、甘んじてキリトさんの一撃を貰っていた。
「見事だ......キリトくん。」
そして、奴が消える。
「これで.....いいんだよな、アスナ?」
剣を眺めながら、そう言う。
そして、キリトさんも散っていった。
アナウンスが流れる。
『現時刻をもって、本ゲーム、ソードアート・オンラインのクリアを確認しました。これより、生存プレイヤー全員のログアウトを開始します。』
その音が流れても、喜ぶことは.....出来なかった。
「キリの字......何で死んじまうんだよ!俺達ダチだろーが!」
「キリト....お前ってやつは.....畜生....」
キリトさんの知人だと思われる二人が深く悲しんでいる。
俺は関わりこそ無かったものの、彼の勇姿は沢山聞いていた。だからこそ、悲しくなってしまう。
俺達がそう悲しんでいる内に、ログアウト処理が始まった。
キリトside
俺は奴を倒した。ボスを、倒した。
「これで......いいんだよな、アスナ?」
そう言うと、僅かに彼女の愛剣の宝石部分が輝いた気がする。
そして、俺の体はポリゴンと化し、散った。
俺は何故か、また目を開けられていた。
「ここは......」
夕焼けが見え、アインクラッドが見える。
「キリトくん.....?」
後ろを振り返ると、そこには俺の愛した彼女が居た。
「アスナ.....?生きて、るのか?」
「うん。私は生きてるよ。」
「良かった....!」
思わず抱きしめる。
「長々に絶景だな。」
俺達が抱き合っていると、突然声が聞こえてきた。声の方を見ると、そいつは居た。
「茅場晶彦....」
取り敢えず、俺はこいつに質問してみた。
「茅場、何でこんな事をしたんだ?」
「.....子供の頃に夢を見た。その夢には、とてつもなく大きい黒い浮遊城が出てきていた。私は、子供の頃に夢で見たそれを実現したかったのだ。」
「それだけの理由で.....」
「さて、あれを見てくれ。アインクラッドだ。あれは時期に崩れる。今頃アーガス本部にてゲームデータ等全てのデータの削除処理が行われている。」
「あの中に居た人達はどうしたんだ?」
「しっかり、生存プレイヤー全員ログアウトを完了させたよ。」
「そうか......」
「ここももうすぐ消える。最後に現実に戻る前にアスナくんに話をしておいてはどうだね?私はもう行くからね。」
「ああ、分かった。」
そう言うと、あいつは歩いていき、消えていった。
「じゃ、じゃあ改めて。」
「結城明日奈です。歳は17歳です。」
「桐々谷和人です。歳は、多分先月で16。」
「年下だったんだね.....」
「俺も今初めて知ったよ.....」
「じゃあ、そろそろお別れだね.....」
「アスナ....」
「愛しています。」
「ああ......」
最後に二人で抱き合い、そして、唇を触れさせる。
気付くと、俺は久しぶりの感覚を感じる。これはもう現実に戻った証拠だ。
だが、そんな事よりも、俺は早く、彼女のもとへ行かないと.....
「あ......す.......な」
よろめきながら立ち上がり、自分の部屋を出ていく。今気付くと、髪の毛もかなり伸びている。
さて、早く、向かわないと
「あす.......な.....」
そう言いながら、俺はただ歩く......
シキside
俺は目覚め、感覚が戻るのを感じていた。どうにも仮想世界に慣れすぎて、新鮮に感じる。さて、そこはどうでもいいんだが.....
俺は、とてつもなくやばい事を理解してしまっている。
俺の目には、この部屋中のモノに、赤い線と点が見えている。
「な.....んで......まがん......うつってんだよ........」
まだ感覚に慣れていないせいで、オンオフが出来ない。はあ、全く。茅場晶彦は飛んだ置き土産をしてくれたな。
お陰で吐き気がする。
まあ、この目があっても俺は俺だ。取り敢えず今は、現実に帰った事を素直に喜んでおこう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
SAO編短くてすいません!どうしても途中介入だと短くなりました。
では、評価等、していただけると嬉しいです。
また、次回お会いしましょう♪