元新選組の斬れない男   作:えび^^

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最下部にお知らせがありますので、ご一読ください。


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 その後、比留間兄弟を警察に送り届け道場に戻った。医者に左之助をつれていった神谷さんはまだ戻っておらず、かといってこれ以上稽古する気にもなれない。ちょうど日も暮れ始め、中途半端な時間だったため、帰宅することに。帰りがけ、剣心さんからは

「今日は災難だったでござるな。」

 なんて労われてしまった。ほんとその通りである。

 

 

「ただいまー。」

「あら、おかえりなさい、旦那様。」

 

 帰宅時間はいつも通り、夕飯の少し前。今日は、たけさんがお出迎えだ。さよは書斎で仕事中かな?

 

「さよさんじゃなくて残念だったかい?」

「そんなことないよ。誰かが出迎えてくれるだけでありがたいよ。ありがとう、たけさん。」

 

 まぁ、本音を言うとさよが出てきてくれた方がうれしくはあるが。

 その後風呂に入り、さっぱりした後に夕餉を頂きに居間に向かう。

 

 

「おっ、今日は刺身かぁ。しかもトロ。」

 

 この時代、トロは赤身より安い。そもそもマグロが安い。たけさんに言って、鮪の刺身を買ってくる際は、トロを買ってきてもらうようにお願いしている。

 

「竜さん、よくそんな脂っこいモノ食べるね。私はこっちの方が好きだけどな。」

 

 さよの刺身は赤身だ。まぁ、その感覚の方がこちらでは一般的なんだよね。

 

「牛の臓物だとか、舌食べたり。旦那様はゲテモノが好きですからねぇ。」

「ちょ、ちょっと。そんなことないよ!それにモツ煮は二人ともおいしいって言って食べてたじゃない!?」

 

 赤べこ亭で出しているモツ煮は安いので、人を選ぶがそこそこ人気がある。店で出す前に試作品を何度も作った珠玉のレシピだ。試食したさよもたけさんも美味しいって言ってくれてたんだが…。

 

「あたしゃ嫌ですよ。いくらおいしくったって牛の内臓なんて気持ち悪い。」

「私も遠慮したいかな。そもそも竜さんはなんであんなモノ食べようと思ったんだい?」

 

 少し時代を先取りしすぎたか?材料を聞くと忌避する人も多い。二人ともサンマのハラワタは食べる癖に。ちなみに私はサンマのハラワタは残します。

 

「せっかく命を頂いているんだからさ、残さず活用した方が、牛も浮かばれるんじゃないかと思うんだよね。」

「ふーん。」

「だからって、旦那様ほど食い意地張る必要はないと思いますけどね。」

 

 うるさい、ほっとけ。

 

 

 

 翌日、昨日の会話から無性にモツ煮が食べたくなったので、神谷道場のメンバーを誘い、赤べこ亭へ行くことにした。

 赤べこ亭に向かって歩きながら、左之助の怪我の具合を神谷さんに聞いてみた。神谷さんに左之助を運んでもらい、そのままだったのでけがの程度が分からなかったのだ。

 

斬左(ざんざ)の怪我、すごかったらしいわよ。全身打撲に骨折もあって全治1か月。命に別状はないけれど、とても殴り合いの喧嘩でできた怪我に見えないって、医術の先生驚いていたわ。」

 

 先生も余計なこと言うね。

 

「やたら丈夫だったからね。早く終わらせたい気持ちもあったし、手加減しなかったんですよね。」

 

 あはは…。苦笑いしてみるんだけど、笑っているの私だけか。皆神妙な顔しちゃって。

 

 

 

 

 赤べこ亭に入ると、んー?どっかで見たトリ頭が…。

 

「左之助さん!」

「よう、昨日は世話になったな。」

 

 体中に包帯を巻いた左之助が牛鍋をつつきながら酒をのんでいた。こちらに気付くと箸を置き、片手をあげて挨拶してくる。

 

「お主、確か入院の筈では?」

「ケッ、俺の売りは打たれ強さだぜ、こんなもの屁でもねぇ。」

 

 そういうと立ち上がり、元気ですよってアピールし始めた。やせ我慢にしか見えないが、ツッコむのは野暮かな。

 

「まっ、また喧嘩しようや、浜口さんよ。」

 

 私の肩をポンポン叩きながら、いい雰囲気で店の入り口に向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

 あかん、これはあかん奴や。

 

「待て!」

 

 うおっ、思ったよりでかい声がでちゃった。弥彦と神谷さんがビクッてなってる。

 

「なんだぁ?喧嘩ならまた今度…。」

「左之助さん食い逃げは勘弁してください。今日はこの前の食い逃げ代も含めてきっちり払ってもらいますよ。」

 

 お客様の前だったことを思い出し、ニコニコ顔を意識して左之助の肩を掴み向き直る。掴んだ瞬間ビクッてなったな。怪我してるところを掴んで申し訳ないが、それとこれとは話が別だ。

 

「ちっ、ちぃっとばかし、今持ち合わせがなくてよ。」

「お金を持っていないのに、注文したんですか?えっ、なに?払う気もなく食べていたってこと?左之助さん。ちょっとわかるように説明してもらえませんか?」

 

 ないわー。マジでないわー。

 

「ツケ…。そう、ツケてもらおうと思ってだな。」

「ウチはツケ、お断りなんですよ。」

「俺と浜口さんの仲だろ?」

 

 どんな仲じゃ!適当なこと言い追って。これはじっくりお話する必要があるな。表情が崩れないように、注意しながら左之助を見つめる。

 

「弥彦…。アンタ、浜口さんだけは怒らせるんじゃないわよ…。」

「おっ、おう。気を付ける…。」

 

 ひそひそ話聞こえてますよ。まったく、失礼しちゃうね。

 

「そういうことであれば、左之助さん。ちょっと店の奥でお話しましょうか。」

 

 

 

 

 じっくりとお話した結果、左之助からはお金を取ることが難しいと判断し、体で返してもらうこととした。といっても、赤べこ亭でできる仕事なんて大してないんで、神谷道場にて下働きとして働かせることに。原作知識的に、どうせ道場には呼ばんでも入りびたるだろうから、まぁいいかなって思いまして、そんな落としどころにしました。

 こうして神谷道場の5人目の仲間(?)として、左之助が仲加わることになった。




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・この小説の更新は一時停止します、以降は『元新選組の斬れない男(再筆版)』を更新します。たぶん、作者名クリックすると当該の小説に到達できるはずです。
・『元新選組の斬れない男(再筆版)』は転生要素、ドラクエ要素がない小説です。但し、内容的にあまり変わっていません。現在この1話前分まで公開しております。
・当方のわがままでこのような事になり、申し訳ありません。中途半端な状態で再筆、あまり良いことではないと思っています。
・なお、作者は本日までが夏休みでした。悲しいことに、夏休みをこの小説を書くことだけに使用していたため、これから更新速度は遅くなります。ご了承ください。

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