ラダマンティスは、ある程度の嘘を交え、説明した。
「そうか、ラダマンティス殿もなかなかの人生を歩んでいるようだ。」
そんな中、話をまとめて出来たカバーストーリーはと言うと、
元々自分は、平凡な人間であったがある
魔界でそれなりの強さと地位を手に入れるが、精神は人間のままであった自分、悪人意外は殺す事が出来ず、魔族からも煙たがられ、魔界を追放された。
その後、誰も自分を受け入れてくれず、一人で森の中をさ迷っていたら、存在が消えかけている所をリオンに助けられ、村まで付いて行くと帝国騎士の殺戮現場に遭遇。
騎士に恩人のリオンが刺されたため、その場にいた帝国騎士を皆殺しにした。
暴れ狂う自分をリオンが止め、暴走させないために、自分と契約し、今はリオンが自分を制御している。
というものだった。
・・・嘘と真実がめちゃくちゃに混ざり合っている。どうしてこうなった?
しかも、何か団長だけでなく団員達も同情の眼差しを向けてくる。村長なんて目に涙を浮かべている。
こんなつもりなんてなかった。罪悪感で胸が締め付けられる。
「騎士達の装備品は、どうなったのだろうか?」
ガルナーザはそう尋ねてくる。
先程聞いた話から推測すると、今回の極秘作戦には貴族が裏で絡んでいる。そうでなければあまりにもタイミングが良すぎる。
おそらく襲ったのが帝国騎士だと言う証拠が欲しいのだろう。その証拠を手に口実を作り、帝国に戦争を仕掛けるつもりなのだろう。
騎士達の装備品は全てラダマンティスが回収している。
だが、ラダマンティスは渡すつもりなど毛頭ない。
戦争になれば、一番被害を受けるのは国民だ。リオンは戦争になると各地の男達を徴兵し、戦場に送り出すと言っていた。
そうなれば、男手を失った村はまず無事ではすまないだろう。
「貴様は、民を殺す気か。」
ラダマンティスは威圧感のこもった声で言う。
ガルナーザは目を見開く。図星か。
「民を守るための騎士団が聞いて呆れる。貴様の行為が民を殺していることに気付いていないのか?人間。」
ラダマンティスは高圧的な態度と口調で話す。
周りの団員は、武器に手をかけ始める。
団長はたいそう信頼されているようだ。
しかし、ラダマンティスは更に続ける。
「人間、貴様の今の地位は何で出来ている?民の屍か?やはり、王国を統べる者は無能だらけか。」
ラダマンティスの言動をリオンが止める前に、ラダマンティスの目の前に剣が向けられた。
「何だ?人間。」
「私の事はいくらでも侮辱されようとかまわない・・・、だが、いくら村の救世主であるラダマンティス殿であっても、王国陛下を侮辱するのは許しておけない!」
そこには、絶対な忠義を捧げる一人の戦士がいた。
「そうか・・・、ならば死ね。」
とてつもない殺気が吹き荒れ、ガルナーザが気付いた時にはラダマンティスの鎌が迫っていた。
咄嗟に後ろに飛ぶ、空気を切り裂く音が先程いた場所で響く。
体勢を整え、剣を構える。
「ほぉ。あれを避けたか。」
ゆっくり死が迫って来る感覚にガルナーザは襲われる。自分に戦い方を教えてくれた師匠より遥かに強い。
ラダマンティスに勝てるイメージが全く浮かび上がらない。
ラダマンティスはゆっくり歩き出す。その姿はまさに死神そのものだ。近づくだけで鼓動が速まり、冷や汗が溢れてくる。
団員達が自分の前に立とうと動き出すが、ガルナーザは止める。
「来るな!お前達は、そこで見ていろ!!」
「しかし・・・!」
「これは、俺の戦いだ!」
ガルナーザはラダマンティスを見据え、剣を持つ手に更に力を込める。
正直、ガルナーザは逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。だが、引くわけにはいかない。
「逃げない事は、誉めやろう。今から私は本気を出す、その攻撃を受け止められれば、先の無礼を取り消そう。だが、止められなければ待っているのは死だ。」
「望むところだ!」
ラダマンティスはゆっくり鎌を構える。
リオン、村長、団員達が固唾を飲みながら見守る。まるで時が止まったように二人は動かない。
ガルナーザの頬から汗が流れ、その滴が地面に落ちた。それが合図となった。
ゴゥ!と黒い影が動き、風が吹き荒れる。
ラダマンティスはガルナーザの目の前に瞬時に移動し、そのまま鎌を振り下ろす。
だが、そのわずかに速くガルナーザは動いていた。
「おおおぉぉぉーーーーーーー!!」
見事な横凪ぎがラダマンティスに迫る。
ガキン!
ラダマンティスの鎌はガルナーザの背中のわずか数センチのところで止まっおり、ガルナーザの剣はラダマンティスの頬骨に当たっていた。
ゆっくり鎌を下げる。同時にガルナーザも剣を引く。
「私の負けです。団長殿。」
うぉぉーーー!
団員達の歓声が爆発した。口々に団長を称える。
「しかし、ラダマンティス殿は硬いな。この剣が通らないとは。本当に私の勝ちで良いのだろうか。」
「いえ、頬骨に少し傷が入りました。十分ですよ。」
ラダマンティスは自分の左頬骨を指指す。そこには確かに二センチほどの傷とも言えぬ傷があった。
「自分よりも強い存在に会ったのは、これで三人目だ。」
ラダマンティスはその言葉が気になったが、それよりも先にしなければならないことがあった。
「ガルナーザ殿、先程の無礼を許して欲しい。あなたの忠義を捧げる王を侮辱した事は決して許されない事だ。もし、許せないと言うなら私を殺してもかまわない。」
ガルナーザは、黙ってラダマンティスの謝罪を聞く。そして、ガルナーザは言う。
「いや、ラダマンティス殿の言った事はだいたい当たっている。戦争となれば、まさにそのとうりになる事は、明白だ。私も、そうなる事は避けたい。だが、その手段がないのだ。」
ガルナーザは悔しげに呟く。団員達も暗くなる。
そこで、ラダマンティスは提案をする。
「ならば、こうしましょう。」
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騎士団は馬にまたがり、村長とリオン、ラダマンティスに別れの挨拶をする。
「それでは、失礼する。・・・ラダマンティス殿、本当にあれでよろしいのでしょうか?」
ラダマンティスは右手を上げ、かまわないと伝える。
ガルナーザは迷っていたようだが、迷いは一瞬、覚悟を決めたようだ。
「では。」
ガルナーザを先頭に、走り始めた。騎士団は見えなくなるまで、こちらに手を振っていた。
「本当に良かったの?」
リオンが隣で、そう尋ねる。
「かまわないよ。」
「そう。」
沈み始めた夕日を静かに二人で眺める。やがて、リオンは語り出す。
「私、冒険者になる。」
「あなた達の戦いを見てはっきりした、私もあなた達ように強くなりたい。」
リオンは決意の眼差しを向けて言う。
「だから、私と一緒に冒険者になって欲しいの。お願いします。」
リオンは頭を下げる。
ラダマンティスの答えなど、すでに決まっている。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」
ラダマンティスは右手を差し出す。リオンも右手を出し、握手をする。
ここから、二人の冒険は始まりを告げる。赤い夕日が二人を明るく照らしていた。
リオン「そういえば、あなた全然本気出してなかったじゃない。」
ラダマンティス「いえ、本気でしたよ。」
リオン「どこが?」
ラダマンティス「私はただ、本気で
確かに、ラダマンティスは本気を出すとしか言っていない。
それを聞いたリオンは、ラダマンティスの底知れなさを感じるのだった。