転生死神と村娘の異世界冒険記   作:緒方 ラキア

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第3話

その日は、薪を拾うため森の中にいた。

 

リオン・ムラサメ

 

この大森林の中にある『マルト村』に住む村娘だ。

この村で彼女は一人で暮らしている。

娘が一人暮らしでいるのには訳があった。

 

彼女の母は、優れた『魔法使い』であった。父はこの村一番の戦士であり、両親どちらとも村人達から慕われていた。

リオンが生まれ、それは幸せな生活であった。

だが、ある日母が亡くなった。

その後、父は王宮で騎士をするために村を離れることになった。

リオンは最後まで父に付いて行こうとしたが、迎えにきた騎士に阻まれ、行けなかった。

 

リオンには才能がなかった。

二人の娘でありながら、ステータスは一般人と変わらなかった。

そのため、彼女は一人村に残された。

 

もう父別れてから3年が経った。父はどうしているだろうか。ちゃんとご飯食べているだろうか。

村の人達が助けてくれるから私は大丈夫だが・・・。

 

そんな事を考えながら薪を探し、森の中を歩く。

だが今回は、いつもより深く森に入っていた。

それに気付いて帰ろうとしたその時。

 

『そこに誰かいるのか?』

 

頭の中に声が聞こえた。

だがどこにも人はいない。

 

『すまないが、私の頭と首を繋いでくれないだろうか?』

 

繋ぐ?どういうことだ?疑問を持ちながら、声のする方を見る。

そこには頭蓋骨が落ちていた。しかも、話かけてきた!

声を上げ、思わず逃げようとするが。

 

『時間がない。とにかく、その頭蓋骨を首に近づけてくれ!頼む‼』

 

相手は切羽詰まっているようだ。そして少し考える。もし、このまま逃げたらどうなるか。

確実に呪われる未来しかない。未来永劫祟られる。

彼女は返事をして、手を震わせながら頭蓋骨を持ち、恐る恐る首に近づける。

かなり近づけた時、相手の体が動き始めた。

すると相手からとてつもないオーラが吹き出してきた。まるで、逃れられない絶対的な死が具現化したような姿がそこにはあった。

 

闇色の真っ黒なローブ。頭蓋骨の眼窩から青い光がこちらを見ていた。

 

ああ、短い人生だった。

彼女は意識を手放した。

 

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とりあえず、彼女を放っておく訳にもいかず見つけた洞窟の中に寝かせた。

念のため回復薬(ポーション)を用意しておく。備えあれば憂いなしだ。

しかし、なぜ彼女は気絶したのか?

 

すると彼女が目を覚ました。

 

ラダマンティスは彼女に声をかけた。

 

「起きたようだな。どこか悪いところはないか?」

 

ラダマンティスは紳士的に優しく声をかける。

すると彼女はこちらを向き、ラダマンティスと目が合うと・・・

 

ものすごいスピードで後ずさった。

 

え?・・・何で?

 

「ああああああ、あなたどうして!!わたわた、わわわ、私をどうするつもり!!」

 

・・・おもいっきり警戒されている。

とにかく落ち着かせるため、再びこちらから声をかける。先程よりも優しい声と口調で。

 

「落ち着いてください。私は何もいたしません。」

 

「嘘おっしゃい!魔族が何もしないなんて。絶対何かする気でしょ‼」

 

魔族?何のことだ?

 

「とにかく安心してくれ、私はここから動かないから。」

 

「・・・本当に?」

 

ラダマンティスは頷く。

 

「まずは、助けてくれてありがとう。」

 

「ああ・・・。いえ・・・。」

 

「私はラダマンティスだ。君の名は?」

 

ラダマンティスの質問に彼女は小さな声で答えた。

 

「リオン・ムラサメ」

 

うむ、いい名前だ。しかし、『ムラサメ』か。

この子も同じプレイヤーなのか?それとも、プレイヤーと何か関係があるのだろうか?

 

「魔族じゃないなら、何なのよあなた。」

 

「ああ。私は・・・」

 

これを言えば納得してくれるだろうと答える。

 

「死神だ。」 

 

・・・あれ?また固まった?

彼女は気絶した時と同じ表情をして、

 

「やっぱり魔族じゃない!しかも、三魔将クラスのバケモノじゃない!!」

 

「エエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

どうやら話を聞くと、この世界では人間と魔族は敵対関係らしい。

魔族とはアンデット・悪魔・その他もろもろなどの者達のことを指し、自分のやっていたゲームでいうところの属性が悪寄りなプレイヤーやモンスターのことだろう。

いやいや、私は魔族ではない。

ゲームではプレイヤーを狩りまくってレベルを上げ、自分の戦っていたモンスターを他のプレイヤーに押し付けたり、レアアイテムが手に入ると言って誘き寄せたプレイヤーを不意討ちで倒し、周りから非公式ボスとして恐れられていただけだ。

 

・・・あれ?魔族の要素しか感じられない。

 

ああ、さらに距離が。

仕方ない、なるべくアイテムは消費したくなかったが、致し方あるまい。

アイテムボックスに手を伸ばし、お目当ての物を探す。

そういえば、何なのためらいもなく力を使えている。アンデットになったから精神が変わってしまったのだろうか?

そう考えているうちに見つけた。

 

取り出したのはティーカップとティーポットであった。

 

どちらとも美しい金の模様が彫られ、見た目から高級感があふれ出る一品である。

目の前の彼女は何処からともなく、アイテムを出したことに驚いたようだが。

 

ラダマンティスは手際よく準備していく。

スキル補正によってうまく出来る。

 

あっという間に紅茶ができた。

ティーカップに紅茶を注ぐ。

そして、彼女に差し出す。

 

彼女は警戒して飲もうとしなかったが、紅茶の香りに誘われていた。

とどめにお手製のクッキーも出した。

うむ、我慢している顔も可愛い。癒される。

 

数分後、クッキーと紅茶を美味しく頂くリオンの姿がそこにはあった。

 


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