転生死神と村娘の異世界冒険記   作:緒方 ラキア

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第2話

「おお。」

 

目の前に広がる景色は見渡す限り、草原であった。

吹き抜ける風がとても心地よい。

 

そして、改めて自分の今の姿を見る。

 

虚無から取り出したような漆黒のローブ。常時闇属性の攻撃を半減する、お気に入りの装備である。

そして、自分の手を見る。

だが、そこには自分の見慣れた人の手ではなかった。

 

骨。そう、自分の手が骨になっているのだ。

そして、アイテムボックスから手鏡を取り出し自分を見る。

見事な頭蓋骨である。眼窩の中には青い光が揺らめいていた。

 

杉下のゲームキャラクターの種族は人間ではなく、アンデットの死神であったのだ。

 

「チェック」

 

手鏡をしまいステータスを確認する魔法を自分にかける。

すると、目の前に自分のステータスが浮かび上がってくる。

 

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・ラダマンティス 種族(アンデット) レベル100

 

《ステータス》

・HP86820

・攻撃49720

・MP98670

・防御13268

・素早さ52360

 

《スキル》

・闇渡り

・グラビティーワールド

・冥獄の門

安息の息(レストブレス)

     ・・・他

 

《職業》

・冥府の番人

・魂を狩るモノ

・死神

・料理人

・ティーマスター

     ・・・他

《寿命》なし

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確かに自分のステータスだ。

だが、《寿命》という項目ははじめて見る。

アンデットだから寿命がないのはわかるが、これは必要なのか?

もしかすると、死神だということが関わっているのだろうか?

 

しかし、ステータスに問題はなさそうだ。

さすが、女神様。

すると、女神から着信が来た。

 

『無事に着いたようですね。』

 

「ええ、ありがとうございます。」

 

『この先に森林があります。その中に村がありますので、まずはそこに行ってはどうでしょうか。』

 

ふむ、確かにこの世界の人間に接触する方がいいか。

 

「そうします。ありがとうございます。」

 

女神様との連絡を切って歩き始めた。

 

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しばらくして、歩くと時間がかかりそうだと思い、飛行(フライ)の魔法を使って移動していた。

地面スレスレで飛ぶのは、結構面白い。

そして、飛びながら森林の中をかけまわる。

 

だが、急に目の前に子供くらいの黒い人陰が飛び出して来た。

 

ゴブリン。ゲームモンスターであった。しかも三匹。

 

うむ。これは自分の実力を試すチャンスだ。

そう思って、アイテムボックスから武器を取り出す。

 

出てきたのは、2メートルほどの死神の鎌であった。

 

『冥界神の鎌』(デスサイス・ハーデス)

 

ラダマンティスのメイン武器である。オンラインゲームの中でも、入手困難とされる伝説クラスの代物である。

 

「チェック」

 

先ほどと同じように、ゴブリンのステータスを確認するため魔法を使う。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・ゴブリン 種族 (ゴブリン) レベル5

 

《ステータス》

・HP300

・攻撃450

・MP60

・防御23

・素早さ43

 

《スキル》なし

 

《職業》なし

 

《寿命》40年

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・・・・・。

・・・は?

 

思わず二度見した。

あまりにもステータスが低く過ぎる。ゲームでもここまで低くはなかった。

他の二匹も見るが、どちらも似たような数値であった。

異なることは、寿命の長さくらいか。

 

あまりのステータスの低さに、自分の魔法がおかしくなったのだろうかと固まっていると、一匹のゴブリンが襲いかかってきた。

 

だが、はっきり言って遅い。

 

まるで、スローモーションのように動いて見える。

そして、襲われたと思った瞬間、もう反射的に体が動いていた。

 

ラダマンティスの攻撃は目で捉えることはできないほどであった。

 

襲いかかったゴブリンは自分が斬られたことに気付かず、絶命した。

 

二匹のゴブリンは何が起こったのかわからず、その場で固まってしまった。

だが、追撃させないために、すでにラダマンティスは踏み込んでいた。

 

そして、残ったゴブリンは上半身と下半身が別れ、崩れ落ちた。

 

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「聞いてないですよ。あんなに弱いなんて。」

 

愚痴を言いながら歩く。

先ほど、女神様に連絡の魔法を使って話をしながら歩いていた。

 

『確かに大変似ている世界だと言いましたが、同じ世界だとは申して下りませんよ。』

 

くそ、ああ言えばこう言う。先ほどから言いくるめられていた。

 

なぜ、女神様があのステータスを用意したのかわかった。

この世界では、一般人もモンスターもレベルが低く、最強と言われる者でもレベル50らしい。

用意したステータスでもここで十分やっていけるだろう。

いやむしろ、その用意されたステータスの方が良かったのかもしれない。

今の自分は、この世界の低位モンスターならば、デコピンで倒せる。

もしも、自分が本気の力を使えば、厄介なことに巻き込まれるのは明白だ。

はっきり言って、面倒事に巻き込まれるのはいやだ。

・・・一人で旅を続けようか。

 

そう考えていると、周りのことを気にしていなかったのだろう。

 

彼は道に落ちていた石に盛大に躓いた。

 

だが、悲劇はそこで終わらなかった。

 

そのまま倒れた先は崖であり、体は重力に引かれていく。

 

「アアアアアア‼」

 

魔法で飛べることも忘れ、空中でもがきながら落下してゆく。

そしてそのまま木に突っ込んで行く。

 

木の枝に当たる。それもすごい当たる。

 

そして、一部の枝が当たり所が悪く、ラダマンティスの頭が外れた。

頭と体が離れたまま地面に落ちた。

 

・・・ヤバい。このままじゃ、ヤバい!

普通、死神が死ぬことはない。だが、意識が消えることはある。ゲームではアンデットは首を斬られた場合、一定時間動けなくなる。

時間内に首を繋げばいいけれど、出来なければそのまま死亡になる。そして、自分は動けないため誰か他の人にしてもらう必要がある。

 

しかし、ここには自分以外誰もいない。

5分以内に首を繋げなければ死ぬ。

女神様はここには来れない。状況はわかっているはずだが、基本女神様はこの世界にあまり関わらないとさっき言っていた。

つまり、女神様は助けてくれない。

なんとかしなければ!

 

・・・・・

 

あと1分しかない。

ああ、意識が遠退いてゆく。ここで第2の人生終了、ゲームオーバーか・・・。いや、すでに人じゃないか。

 

だが、ふと足音が聞こえた。

この際なりふりかまっていられない。

思念(テレパス)の魔法を使って話かける。

 

『そこに誰かいるのか?』

 

「え?頭の中に声が、誰?」

 

どうやらうまく繋がったようだ。

 

『すまないが、私の頭と首を繋いでくれないだろうか?』

 

「え?頭?・・・って骨~‼」

 

どうやら落ちていた(自分)に気付いたらしい。

まあ、端から見れば白骨遺体遺棄現場に遭遇したようなものだろう。さらにその頭蓋骨が話かける。もはやホラーでしかない。

だがそんな事を気にしている場合ではない。

 

『時間がない。とにかく、その頭蓋骨を首に近づけてくれ!頼む‼』

 

「ひっ!?わ、わかりました。」

 

どうやらうまくいった。相手は頭蓋骨を首に近づけてくれた。

体の感覚が戻ってきた。指を動かす、首を回す。問題なし。

意識もはっきりしてきた。

そして、自分の前に立っている者を見る。

 

そこにはいかにも村娘といった少女がいた。

 

うむ、可愛い。栗色の髪、整った顔立ち、歳は14か15ぐらいだろうか?

このまま成長すれば、誰よりも美しくなれるだろう。

おそらく、この子が助けてくれたに違いない。礼を言わなければ。

 

「ありがとう。おかげで助かった。」

 

・・・・・あれ?

反応がない。どうしたのだろうか?

 

ラダマンティスは少女に近づく。

すると、気付いた。

 

「立ったまま、気絶している‼」

 

これが二人の出会いであった。


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