転生死神と村娘の異世界冒険記   作:緒方 ラキア

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第14話

私達はとある依頼を遂行する為に、問題の場所が近いエルダを訪れた。

この依頼、初めは新人の冒険者達が担当していたのだが、その依頼で出立したのを最後に行方不明となってしまった。

そしてその依頼を受ける冒険者全員が、依頼を受けたその日に行方不明になるという以上事態が起こっていた。

冒険者ギルドもこの異常事態の真相究明の為に、私達のチーム『シルバームーン』が対応する事となった。

 

「まぁいつもみたく、さくっと済ませましょうや。」

 

「ガロンは呑気。」

 

「今回の依頼は骨が折れそうですしね。」

 

他愛のないパーティーメンバーの会話を聞き流しながら受付へと足を進める。

 

「ギルド長を呼んでくれる?」

 

「はい、しばらくお待ち下さい。」

 

受付嬢は奥瘰へと消えてゆく。

リューネはギルド長が来るまでどうしようかと考えていると、自分に近づいてくる者に気付く。

振り向けば少女がこちらを見ていた。

 

「こんにちは。」

 

「?・・・こんにちは。」

 

そこにいたのは見るからに新人と思われる少女であるが、リューネが疑問に思ったのは少女の雰囲気である。

普通私達のような最上位の冒険者チームに近付いてくる者は、最上位という後ろ楯を欲する者や純粋に憧れを抱き一目見ようとする者達が多い。

 

だが目の前の少女は違う。

 

この少女からは何も感じられない。

明らかな異常な雰囲気にリューネは覚えがあった。

 

「(まさか洗脳されている?何でこのタイミングで?)」

 

腰に差してある短刀(ナイフ)に手を伸ばすが彼女の言葉で寸前のところで止める。

 

「良いのですか?そんなことして。」

 

「っ!?」

 

要するに目の前の彼女はメッセンジャーであると同時に人質でもあるということか。

 

「(厄介なことになったわね。)・・・要求は何かしら。」

 

彼女はニッコリと笑う。ただの笑みの筈なのに、今のリューネには酷く不気味に見える。

 

だがそれがどうした。

 

私は白金クラスの冒険者リューネ・ヴァルシオン。

こういった類いの脅迫には数えきれないほど経験してきた。

 

「(私は脅しになんて屈しな・・・)」

 

「私と試合してくれませんか?」

 

・・・ん?

 

「えっ?・・・試合?」

 

「では外でお待ちしていますね。」

 

そう言い残し、少女は外へ消えて言った。

 

「・・・一体なんなのよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ギルドの裏には冒険者が利用できる大型の試合会場がある。

形状はスペインのコロッセオによく似ている。

会場はかつて『預言者クーリア』と呼ばれる放浪の魔術師によって建設されたもので、外部から内部に至るまで様々なギミックが存在する。

この施設がある為、このエルダでは冒険者を志す者が多く、質の高い冒険者が数多く育成される。

リューネもその中の一人だ。

 

かつての下積み時代を思い出しながら足を進めると、中央のリングには先程の少女が待ち構えている。

 

「さあ始めましょうか。」

 

「その前に一つ質問良いかしら?」

 

きょとんと首をかしげるリオンにリューネは続ける。

 

「どうしてこの施設の利用許可が取れたの?」

 

この施設はギルドの許可がなければ利用できない。新人はまず利用はできない筈なのだが。

 

「あぁ、さっきのお姉さんが快く(・・)利用許可を取ってくれましたよ。」

 

やはり何かしら受付嬢を操ったのだろう。

一応リューネは自分が脅迫を受けていることは他のメンバーにも話しておいた。リューネに何かあれば仲間が動く。

しかし、時間稼ぎもここまでか。

相手の情報を掴もうにも操られているであろう彼女は昨日訪れたばかりの新人。操っている存在は確認できない。

状況はハッキリ言って悪い。

 

「(だからといって逃げる訳にはいかない。龍族の誇りにかけて!)」

 

そうしてリューネもリングに上がる。

周りを見渡すが罠を仕掛けている気配はない。代わりに目に映るのは、リューネが試合をするとの情報を聞きつけた野次馬冒険者達だ。仲間もその中で目を凝らしている。

 

「人が随分集まって来ましたね。」

 

「そうみたいね・・・」

 

「では僭越ながら私が審判を努めさせていただきます。」

 

いつの間にかさっきの受付嬢が現れた。

なんというステルス性の高さだ。

 

そして互いに距離を取って向かい合う。

リューネは速攻で召喚魔法を使えるように己意識をMPに集中させる。

対するリオンの方は落ち着いている。というよりも何かをしている雰囲気もなく、ただその場に立っているだけである。

 

「それでは・・・始め!!」

 

開始の合図を聞き、直ぐ様両手を地面につけ魔方陣を展開させる。

 

召喚(サモン)!ホワイトコドラ!」

 

輝きが増した魔方陣の中央から体長4メートルほどのドラゴンが召喚され、ホワイトコドラと精神的な繋がりが感じられる。

レベル25のホワイトコドラはラダマンティスにとっては完全な雑魚モンスターであるが、この世界の人間にとっては敵に回れば厄介なモンスターであり、味方につけば非常に頼もしい存在である。

 

「行け!ホワイトコドラ!!」

 

命令を受けたホワイトコドラは真っ直ぐリオンに向かって突進してゆく。

 

そして対するリオンはというと・・・

 

「いやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!?」

 

突然身を翻し逃げ出した。

 

「・・・はぁ?」

 

予想外の出来事だらけで何度目のセリフだろうか。

呆気に取られる試合の始りだった。

 


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