転生死神と村娘の異世界冒険記   作:緒方 ラキア

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第12話

「うーん。」

 

リオンは掲示板に貼られている依頼票を見ているのだが、ランクが最底辺のこなせる依頼など限られており、ほとんどが報償金も低い。

まあ、初心者がいきなりドラゴンを倒せと言われても無理なように、地道にコツコツ経験を積んで初めて一流の冒険者になれる。

それよりも問題なのは、リオン()ではなくラダマンティスが納得するかどうかだ。

そのラダマンティスはというと・・・

 

『・・・読めない。』

 

この世界の文字が読めずにいた。

この世界に来て楽だと思った自分を殴りたかった。言語が通じるのに文字が読めないとは。

アイテムボックスをくまなく探したものの、文字解読のアイテムは持っていなかった。

ラダマンティスは転生した時、ゲームと同じ状態で転生した為、その時に装備していた物しか持っていなかったのだ。

となると、残りの装備はラダマンティスの拠点であった『夢想の箱庭(トロイメライ・ガルデン)』に全てあると言うことだ。

その中に、そういったアイテムもあったのだが・・・

 

『後で女神に問い合わせるか。』

 

正直関わるのも面倒だと思いながら、連絡を取ろうとする。

しかし、先程よりも冒険者ギルドが一層騒がしくなり連絡は中断された。

 

『さっきから、何事だ?』

 

「何でも、王国最上位の冒険者が来るらしいわよ。」

 

影にいるラダマンティスの疑問にリオンが答える。

つまり、先程からここに集まっている冒険者は、最高峰の存在を見ようとしている野次馬か。

しかし、ラダマンティスも最上位の冒険者が前から気になっていた。

まあ、女神が言っていた事が確かなら、レベルは50近くだろう。

他にも知っておきたいと思ったラダマンティスは、リオンにその冒険者達の事を受付嬢に尋ねるように頼む。

リオンも同じような考えであったので、受付に向かって話を聞く。

受付嬢は公開されている、情報を素直に話してくれた。

 

曰く、こちらに向かっている冒険者は4名のチームを組んでいる。

一人は『鉄壁』の二つ名を持つ、ガラン・ドロン。

強靭な肉体を持ち、モンスターの攻撃をしのぎ、足止めを得意とするガーディアン。

一人はかつての王国最強の魔法使いと並ぶと言われる、リナース・メルディン。

数多くの魔法を使いチームを支援し攻撃も行うウィッチ。

一人は王国騎士団上がりのイケメン剣士、イザーク・レイスター。

数年前には、第一騎士団に所属しており、ガルナーザに匹敵すると言われたチームの前衛。

一人はチーム最強の召喚師であり、龍に愛された存在、リューネ・ヴァルシオン。

人里離れた『龍の里』で育った彼女は、ドラゴンを召喚できるという特別な力を持っており、実質的にリーダーを務めている。

そしてこの4人全員が白金クラスの実力を持っている、王国切っての冒険者なのだ。

 

「そんな方々が、ここに何の用なんでしょうね~。」

 

受付嬢の言動からすると、ギルドには目的を伝えていないのだろうか。いや、これ程の事態ならば上層部はおそらく知っているだろう。パニックを恐れているのだろうか。

どちらかにしろ、只事ではないだろう。

 

「リオンさんも、もっと実力があれば、冒険に参加できるのにね~。」

 

『ん?どういう事だ?』

 

さらに詳しく聞くと、おそらく4人の目的は、大抵が達成困難な依頼の為に、参加メンバーを募りに来たのだろう。

各国にあるギルドの中の実力者を集めて、依頼を達成するのだそうだ。

これはつまり、実力をそいつらに示せばその依頼に同行できるという事だ。

そこで、ラダマンティスはある事を閃いた。

 

「あの・・・ラダー?何だかとてつもなく嫌な事考えていない?」

 

リオンはそう尋ねる。対するラダマンティスは否定もせず、リオンにその計画を告げる。

 

『ああ、たった今名案を思いついてな、そいつらを挑発した上で決闘に持ち込み、その冒険者どもが無名の新人に打ちのめしされたらどうなると思う?』

 

ラダマンティスの計画は、これから来るその冒険者達に喧嘩売って完全勝利し、威厳や名声を地に落とすような恐ろしい計画であった。

 

「止めなさいよ!そんな計画!!」

 

『何故?手っ取り早く実力を示す為には、この方法が最適かと。』

 

「第一、その喧嘩売るのは私になるでしょう!」

 

『私がいるので、決闘になったとしても勝てますが?』

 

「そうじゃなくて!!」

 

最上位冒険者を打ちのめす事しか考えていないラダマンティスを必死に止めようとするリオンだが、ラダマンティスはそんな事聞かずに、決闘の準備を始める。

ならばとリオンはギルドから出て行こうと歩き出そうとしたが、何故か足がピクリとも動こうとしない。

 

「どうして!?」

 

『ああ、さっき動けないように『影縫い』をしておいたので、しばらく動けませんよ。』

 

最早、ラダマンティスの計画は始まっており、今のリオンに止める手段も力もない。

完全にラダマンティスの計画通りに事は進んでいた。

すると、ギルドの前がやけに騒がしくなった。

 

「あら、どうやら到着したみたいね~。」

 

受付嬢の言葉に、リオンはこの世の終わりを見たような表情を浮かべ、一方のラダマンティスは顔に肉が付いていたら、とても邪悪な笑みを浮かべていただろう。

 

(さて、始めますか♪)

 

(逃げてーーーーーーーーーー!!)

 

しかし、無情にもギルドの扉は開かれるのだった。




影縫い レベル7魔法
・発動した相手の動きを一定時間止める魔法。
止めている内に攻撃したり回復などを行える。
但し、ラダマンティスは他プレイヤーに嫌がら
せする為に使用。

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