転生死神と村娘の異世界冒険記   作:緒方 ラキア

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第11話

雲一つない晴天の中、歩き続ける人影が一つ。

リオンは町へと続く道を一人で歩いていた。いや、一人ではない。

いつもの如く、影の中にはラダマンティスが周囲を警戒しながら潜んでいる。

現在二人は、村から離れた町に向かっていた。目的はリオンが冒険者になる為だ。

 

「見えたわよ。」

 

リオンがそう言うとラダマンティスは、影から頭だけを出す。

見えてきたのは、壁に覆われた街、『要塞都市エルダ』だ。

全体が円型になっており、東西南北にそれぞれ門が存在する。王国と帝国の国境のど真ん中に存在するこの都市は両国の人々が暮らしている、大変珍しい都市である。

門の前に並ぶ人々や馬車の列にリオンとラダマンティスは並ぶ。これは内部に危険物を運ばせない為の検査の列である。

やがて、リオンの番が回ってくる。

検査と言っても、門兵が部屋で質問をすると言う簡単な者だ。ラダマンティスは門兵の質問に答えるリオンを見ながら、早く終わらないかと、人間だったらあくびが出るほど、影の中で退屈に待ち続けた。

 

やっと検査は終わり、リオンは門をくぐり抜けた。

 

「バレないのね、ラダマンティスは。」

 

影の中のラダマンティスに、リオンはこっそり話しかける。

 

「・・・検問が甘過ぎるぞ、普通なら気付くぞ。」

 

ラダマンティスのプレイしていたオンラインゲームは、街などの安全地帯(セーフティ・ポイント)では攻撃系のアイテムや武器は、ストレージから全て取り除かなければ、絶対に入れないシステムになっていた。

この世界の検問は、現実世界よりも甘いんじゃないかとラダマンティスは感じるが、魔法が存在するのでそう変わりはない。ただ、ラダマンティスのような存在を想定していないだけである。

せめて、壁には防御魔法を付与しておけよ。これ絶対人に化ければ入れるぞ。

 

「それよりも、早く行きましょ。」

 

現在ラダマンティスとリオンは、この街の『冒険者ギルド』に向かっていた。

この要塞都市エルダは、付近の森や村で発生するモンスターを退治する『冒険者』がよく集まる所なのだ。

リオンのように、冒険者になりたい者達はまずここに訪れる。

リオンはギルド目指して街中を歩く。その影の中からラダマンティスは辺りを見る。

客寄せをする店主、魚の活きの良さを見せつける魚屋、武器を高値で売り付けようとする武器屋、酒を飲み交わす人々、皆が生き生きとしていた。

騒がしいが、悪い気はしなかった。

 

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リオンはギルド建物の前にたどり着いて、躊躇いなく扉を開けた。

扉を開けると、中の冒険者達が一斉に目を向けてくるが、リオンは一切気にする事なくカウンターに向かってゆく。

これも村を出る前にラダマンティスに鍛えてもらったお陰であった。

カウンターにたどり着くと、受付嬢と対面する。

 

「いらっしゃいませ、本日はどのような要件でしょうか?」

 

「冒険者になりたいのだけど。」

 

「かしこまりました。では、こちらの用紙に記入をお願いします。」

 

リオンの言葉に受付嬢はしっかりと対応していく。リオンは項目を全て書き終え、受付嬢に差し出す。

 

「はい、大丈夫ですね。では、こちらはギルドからの支給品になります。」

 

渡されたのは、プレートとカードであった。

プレートは冒険者のランクを表示する物である。銅→青銅→銀→金→白金の順になっており、功績やモンスターを討伐する事などで階級は上がり、難度の高い依頼を受ける事が出来る。

カードは身分証明である。これは、他の都市などに入る際に提示したり、自分の討伐したモンスターや功績を、ギルドでまとめられたプロフィールを閲覧するなどに使う。

二つを受け取り、リオンはギルドを後にした。

 

説明の中で紹介された女性限定の宿屋にリオンは入る。

料金を払い鍵を受け取って、部屋に入るとリオンはベッドに飛び込む。

影からラダマンティスも出現し、首を回したり、伸びたりと、人間らしい行動をする。

 

「なんとか、冒険者にはなれたわね。」

 

「ですが、なっただけでは意味はない。これからどうするか。」

 

「とりあえず、今日はここまでにしましょう。」

 

「では、私はこの街を見て回るので、後はよろしくお願いします。」

 

「わかったわ。」

 

「とりあえず、このクローゼットにあなたの装備は置いてあります、それでは。」

 

「行ってらっしゃーい。」

 

ラダマンティスは再び影に入り、出掛けて行った。

そして、リオンはベッドで転がりながら、待つことにした。たぶん、夕飯までには必ず帰ってくるだろう。

 

(今日の晩御飯何かしら?)

 

彼女の胃袋は、ラダマンティスが完全に握っているのであった。

 

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影から影を移動しながら、ラダマンティスは街を駆け回る。

やがてたどり着いたのは、この街の共同墓地であった。

昼間だと言うのに、やけに怪しい気配の漂う場所であったが、アンデットのラダマンティスにとっては、心地よく感じていた。

 

「ここなら、問題なさそうだな。」

 

そう言うと、ラダマンティスは魔法を詠唱し始めた。

ラダマンティスを中心に魔法陣が浮かび上がり、詠唱が終わると共に魔法陣は消えた。

 

「これでよし。」

 

満足げにそう言うと、ラダマンティスは墓地を後にした。

 

「5日後が楽しみだ。」

 

表情があれば、今世紀最大の邪悪な笑顔を浮かべているだろう。

迷惑プレイヤー『死神ラダマンティス』のイタズラは、この世界でも平常運転であった。




夕飯時

ラダマンティス「今日はハンバーグです。」

リオン「本当に美味しいわね、あなた良い嫁になれるわよ。」

ラダマンティス(・・・)

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