更新が止まってる作品に関して、近日中には絶対に投稿します!
謝罪になってしまいましたが…気を取り直して。
この作品は気休めに書き上げたものですので続きません……多分(笑)
それでもいい方は、どうか最後の一文字まで楽しんで頂ければ幸いです。
さて、俺は今現在一つの異常に巻き込まれている。
俺の周りは見渡す限り、木、木、木。冗談抜きで木しかない。
この場所には全くもって見覚えがないが、ここに俺がいる原因については一つだけ思い当たる節がある。
先程…いや、この表現は正しくないかもしれない。
確かに俺の体感ではあの場面は先程かもしれないが、実際には違うだろう。
まぁこの事に関して考えるのはここで一旦止めよう。終わらない気がする。
まぁ、こんな事を言ってる時点で気づいたかもしれないが俺は一度死んでる。
人間死ぬときはあっけないものだ。俺も生き汚く末期がんという病にかかった状態で生き続けたが、死ぬ瞬間は『今から死ぬんだな』と納得すらしていた。
で、俺は親戚や友人に見守られながらこの世から旅立ったんだが……
『
気づけば素晴らしい棒読みで俺に語り掛ける少女が目の前にいた。
いやまぁ…うん。正直ビビった。だって死んだと思ったら生きて(?)て、更に語り掛けられてるんだぜ。
しかも言ってることも現実的ではない。俺が入院中好んで読んでた小説みたいだ。
さて、異世界転移や転生系の小説が好きな方々に聞きたい。
もし、自分が大好きなシュチエーションに自分自身に遭遇したらどう思うだろうか?
体験したいに決まってる。
そんな俺は一つ返事で受け入れ、冒頭に戻る。
異世界なのか、俺が生きていた世界かどうかはまだ分からない。
まぁ当たり前だ。幾ら森林伐採で木が減ってきているとはいえ、木が密集した場所ぐらい日本にはある。知床とか…いや知床は駄目だ。サバイバル技術なんてない俺が身一つで知床なんかに放り出されたとしたら野垂れ死ぬか、熊かなんかに喰われるかだ。
そんな未開な地じゃないことを祈りながら取り合えず立ち上がろうとし、下に向けた視界の中に変な物が映り込んだ。
地面についた手の横辺りをふさふさのなにかがあった。
よく見たら尻尾み見える。形は昔見た狼の尻尾そっくりだが何故か毛が淡い水色だ。
恐る恐る両手を近づけ一息に握りしめた瞬間、
「ひゃん!!?」
背筋を例えようのない強烈な感覚が駆け巡り、無意識に甲高い声が…声が?
俺の声は高くない。高くしてもこんな綺麗な少女や幼女のような甲高い声はでない。
それに…俺は人間だ。なのに尻尾を握りこんだ瞬間に俺が何かを感じた。
頭を駆け巡る嫌な予感を抑え込み、力の抜けそうになる左手を喉に。右手を俺の
「そん、な…」
両手が体の部位に触れた瞬間思わず暗い声が漏れた。
左手が触れた喉には、有る筈の喉仏がなかった。逆に右手には先程触れた尻尾の感触が。
慌てて喉に触れた左手を俺の大事な息子がある部位に這わせる。
「ない…」
なかった。それはもう綺麗さっぱり消えていた、俺の息子が。
崩れ落ちそうになる体に力を籠め、両手を耳がある筈の部分に当てるが…なかった。
慌てて手を上にスライドさせる。
「あった…」
ふさふさの耳が。
体からついに力が抜け、俗に言うorzの体勢になる。
場所も分からない場所に放り出されるのはまだいい。ある程度は覚悟していた。
だが、だが神様…神様よ…
「TS人外転生とかないだろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
俺の心の底からの叫びが場所もよく分からない森の中に響き渡った。
ある程度神様への愚痴を叫び罵倒し落ち着いたところで俺は周りを散策することにした。
落ち着いたからということもあるが、出来るだけ早く飲み水を確保しようと思ったからだ。
だから決して叫びすぎて喉が渇いたというわけではない。
散策を始めたのはいいが…正直言ってこの森を一人で散策するのは怖い。
情けない話だが、何かが飛び立つような音がする度に体がビクッとなってしまう。
まさかこんな状況で自分が怖がりだということを初発見することになるとは……はっきり言って全然嬉しくない。
プラスどころかむしろマイナスでしかない。
ビクビクしながら進む。男としては本当に情けない限りだが許してくれ。
この怖さはどうしようもない。
ガサガサと音をたてながら暫く進むと、俺の獣耳に水独特の音が聞こえた。
やった!水だ!
1人でいる恐怖など水の前ではどうやら吹けば飛ぶようなものらしい。
あんなに慎重に行動していたのも忘れ、水の音がする方へかけた。
水の音が強くする方へ暫く駆けると、小さい湖に出た。
本当に小さい湖だ。多分…直径100もない。
湖の淵に駆け寄り、顔をつけるように飲む。
ごくごくと一口二口と水を飲むごとに体が満たされるような気がした。
しばらく飲んで満足した後、顔を水から揚げる。
ふーと一息つきながら顔を拭い、ふと気になって湖を覗き込むと…そこには美少女…いや、人によっては美幼女とも呼ぶだろう女の子がいた。
尻尾と同色の狼耳。尻尾や耳と同色の、肩程で切り揃えられた艶のある髪。
キメ細かく、初雪のように白い美しい肌。幼くも、将来を思わずにはいられないプロポーション。
絶世のとしか表現することの出来ない整った端正な顔立ち。
目は怠そうにに少し瞼が下りており、半眼になっているが、これは俺の生前からだ。というか、生前から引き継いだ(?)のはこれだけか…。
訳も分からず内心でパーフェクトと呟いてしまうぐらい綺麗だった。
…よく考えたら…これって俺か……。
ペタペタと顔を触る美少女の俺。一部のマニアが見れば鼻血を噴き出すかも…。
なんて余計なことを考えていた俺に、突如強烈な圧迫感が襲った。
訳も分からず動悸が早くなる。心臓が痛い。心臓がある辺りを左手でギュッと握りしめ落ち着かせようとする。
息が荒い。全然収まらない。恐怖が大きくなる。
恐怖を振り払おうと、周りを見回し、
「ッ!!?」
体が恐怖で跳ねた。咄嗟に空いた右手で声を押し殺そうと口を塞いだ。
いた。湖の反対側に…この圧迫感の正体であろう
ドス黒い、禍々しくすら感じる肌。そこに浮き出した血管のような紫色の肌。大きく裂けた口に長く尖った耳。そして、何よりも目を惹く俺の胴程もある異常に太い両腕に、それを彩り、凶悪さを増幅させている長く鋭利な爪。身長は…周りの風景から考えて2メートル半ぐらいだろうか。大きいか大きくないかは正直微妙だが、小柄になってしまった俺からすれば恐怖でしかない。
こんな場所に何をしに来たのかは分からない。あんな化物が水を飲むためだけにここに来たのかと言われたら首を傾げるしかない。
目尻に涙が浮かぶのが分かる。漏れそうになる声を必死に押し殺す。
逃げないといけないことは分かっている。だけど…だけど、体が全くいうことを聞いてくれない。
逃げようとしても体は震えるばかりだ。
あっちへ、とっととあっちへ行けと内心で祈るしかない。
そんな俺の内心など知ったことはないとばかりに異形がこちらを向き……そらすことが出来ず、見続けることしか出来ない俺と、目が合った。
「あっ…」
恐怖に引き攣った声が漏れた。何故なら、異形が、化物が、俺と目が合った瞬間に、口を釣り上げたからだ。まるで…『ミツケタ』と言わんばかりに……。
「う…うぁぁぁぁぁ!!」
恐怖が体を突き動かした。体の硬直はいつの間にか解けていた。
ただひたすらに、涙すら拭わずに化物のいる位置と反対方向に逃げた。
駆けだす瞬間に見えた化物は、こちらの恐怖を煽るようにゆっくりと動き出していた。
あれから、何時間たったのだろうか?
転生当時から何故か着ていた服は、あちこちに引っ掛け、転んだせいであちこちが破れていた。
息が荒い、体力も限界に近い。だけど…こびりついた恐怖が足を動かし続ける。
更に数十分程たったのだろうか?流石に蒔いただろうと思い止まると、急激に疲労が襲ってきた。
思い体を引きづり、近場の気に背中をもたれさせる。
荒い息を落ち着かせようと必死に呼吸を繰り返す。
取りあえず息も落ち着いてきたからここから離れよう。
と顔を上げた先に奴がいた。こちらを真っ直ぐと見つめる脳裏にこびりついて離れない異形が。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
なんで!どうして!ここはホラーゲームじゃないんだぞ!なんで目の前にッ!
内心で何かも分からない何かを罵倒しながら再び背中を向け、全速力で逃げようとした瞬間、
何か、力のようなものが背後で膨れ上がり、
「がッ!!!??」
背中に強烈な衝撃と痛みが走り、木っ端のように吹き飛ばされた。
痛い痛い痛い痛い!!?
強烈な痛みに蹲る。今まで一度も感じたことのない強烈な痛みに化物のことも何もかも頭の中から吹き飛んでいた。
それが悪かったのだろう。
「鬼ゴッコハオワリカ?」
いつの間にか化物が目の前にいた。もう喉が引き攣って声すら出ない。
声は聞こえるが、奴の顔は見えない。辛うじて視界に映り込むドス黒い足が否が応にも俺の恐怖を煽る。
恐怖で震えるしかない俺の髪が引っ張られ痛みを与えると共に俺の体が宙に浮く。
「弱小妖怪ガテマヲカケサセヤガッテ」
涙で歪む視界の中で化物の顔だけがドアップで映し出される。
「うぁ…あぅ…うぅ……」
恐怖で言葉も出ない俺を見て、何が面白いのか化物が口を吊り上げ、強烈な力で木に体を叩きつけられた。
「がはッ‼!!」
自分の口から血が吐き出されるのが痛みで歪む視界の中で見えた。
地面にズルズルと落ちそうになる俺の体を、化物の蹴りが木に縫い留めた。
また自分の口から血が吐き出されたのが分かった。だけどもう、体が満足に動かない。
もう一度強烈な力で俺の体を蹴り抜き、吐血させた化物はとうとう俺の首に手をかけ、絞め上げ始めた。
「ぅ……ぅぐぅぁ……ぁぁ」
俺は…こんなところで死ぬのかな…
悔しい…こんなところで死ぬのも…それに対してなにも出来ない俺自身がみっともない。
こんなところでゲームオーバーなんて…と自重気味に吐いても状況は好転することはなく、徐々に意識に霞がかかりだす。
俺の意識が完全にブラックアウトする瞬間、赤色の髪が見えた気がした…。