周囲一体を埋め尽くすような、濃密な妖力を纏う山。本来ならば、この様な異常な山ではないが、今宵は正しく妖怪の山であった。
そんな異常な山へと歩を進める執事とセーラー少女が居た。外見のみならば、少女に仕える執事だろうが、少女の方が執事の右後方三歩ほど位置に張り付いていた。
つまり、少女の方が執事に仕える身であるという証である。
「あの山には巌蔵爺さんが拠点を張ってる。巌蔵爺さんと戦闘になったら近づいてきた者達を通さないように。もし、私達の闘いに巻き込まれたら確実に巻き込まれるので」
「わかりました」
緋蓮は考える。
もし、自分が邪魔をする者達を停めきれなかった場合、主はどう声を掛けるのだろうかと。自分に文句を言うのか、それとも罰を与えるのか、と。
しかし、自分は知っている。主は
自分としては、手抜きを良しとはしない。主のことが好きであるから、寧ろ手抜きをする者達には険悪感を感じている方の派閥だ。好きというのは、もちろん雌としてだが。
「曲者!」
主の代わりに対処しようとするが、主の手で制される。
主の顔を見上げれば、キリッとしていて格好がよいく、若干体温が上昇するのを自身で感じ取れる。
相手を観れば、白銀の短髪で耳が生えていて、臀部付近から一房の尻尾を携えている。その手には青竜刀に似た太刀を持ち、もう片方には鉄板をそのままドーム状にして持ち手を取り付けたような盾を持っている。
「巌蔵爺さんの子孫よ、私は君達の始祖に呼ばれて来た者だ。邪魔をするのは得策ではないぞ」
「失礼しました!」
白狼天狗の少女、犬走椛は思う。
もし、目の前の執事以外がこの言を吐いたならば、問答無用で斬りかかっていたであろう。この執事から発せられる気配は、我らが長である人物と同質で異質のモノを纏っているのだ。さらに言えば、今夜に限り、争い事を好まぬのに我らの長が、山を覆い尽くす程の妖力を解放させたのだから。たとえ一端のモノだとしても、普段はこの様なことは絶対にしない人物なのだから。
しかし、椛は気づいていない。目の前の人物、ゲートキーパーが来たということは、外の世界にはもう門前に立つものがいないという事実を。そして、彼女の長を含め、頂に立った者が認知されていないのを含めて4人になったことを。認知されていない、封印された尼さんが目覚めたとき、何が起こるかは誰も想像がつかないであろう。もしかしたら、何も起きないかもしれないが。
また、門を開ける可能性がある者が一人居るということも彼女はわかっていないだろう。
──閑話休題──
「案内します。御仁。御名前を伺っても?」
「畏まらなくて良いよ、私はちょっと特殊な人間なだけだからね」
「人……間………?」
「なぁにがちょっとじゃ。5000年も生きている人間がちょっとなら、儂ゃあ粉微塵じゃわい」
「久しいね、巌蔵爺さん。元気にしてたかな? といっても、その様子じゃあまだ全然族長交代なんてありそうもないね」
「お主に爺さんと呼ばれるとむず痒ゆぅなってくるわ! 儂ゃあまだ3502歳じゃて、お主のように5200前後の年寄りとは比べるなんぞ烏滸がましい。まあよい。お主に試して貰いたい者も居るで、さっさと終わらせてこい」
「そっちについてはツバサ達を送ってるよ。此方は此方で背比べといこうじゃないか」
「グァハッハァ! 久しぶりに揉んで貰おうかのぉ!」
これから此処で起きる闘いは、頂に立つ者の試合。
周囲など気にせずに、破壊を振り撒くモノへと昇華された業を打ち合う、常識外の闘い。
巻き込まれたものは皮膚の一片も残らずに消滅する。
止められるとするならば、同じく頂に立った者のみ。
例え妖怪の賢者と謳われていようとも、止めることはできない。
超常なる闘いが幕を下ろした
後書き
前回の
1000歳以下の女性とは付き合うことはない。
というような発言についての補足。
もし、五十代の男性が、二歳の幼い子に興奮してる場面を目撃したら?
私ならば、一本背負い極めてから腕菱木十字固めで利き腕貰ってから、痛みで悶絶しているところに顔を滅多メタに踏み抜いてから玉潰して、それから通報します。
アズマさん的にも似たような考えとさせていただいています。
まあ、アズマさんの場合はもっと(体を)軽くすると思いますが。
なので、別にアズマさんは熟女好きなわけではありません。
後書き終わり!