姉がラスボスらしいので腹パンを目指す事にした!   作:緑化

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二話 光り輝く雄々しき銀の流星(アガートラム)

空は晴天、晴々とした空に向けて飛び立つ巨大な影、ボーイング787ー9。

 

見る間に空へと上がりその姿が見えなくなる。

 

そのボーイング787ー9の眼下には日本 成田空港。

 

空港内にあるコーヒーカフェ。店内のカウンター席に座る全身黒のライダースーツを着た男性が店員からコーヒーが入った容器を受け取り片方に口をつける

 

 

「……コーヒーはアメリカの味の方が好みだな」

 

 

瞳に掛かる前髪に背に届くぐらいの黒髪の下にはサングラス。

 

まさに全身黒づくめ、見る人が見れば某フルダイブオンラインゲームのブラッキーみたいだと言うだろう

 

 

「兄さん、おまたせ」

 

 

黒のライダースーツにスレンダーな身体を包ませた少女が茶色の髪を揺らしながら男の隣に立ち男と同じサングラスの下で柔和な笑みを浮かべた

 

 

「待ってないさ」

 

 

少女はカフェラテの入った容器を受け取り歩き出す男に並ぶと一口飲む

 

 

「…味は?」

 

 

「日本の勝ち」

 

 

「……ちっ、当たりはカフェラテだったか」

 

 

「コーヒーは?」

 

 

「アメリカ」

 

 

やれやれと肩を竦めながら容器に口をつける男に少女はしょうがないなぁと笑うと同じく容器に口をつける。

 

そうしてしばらく観光がてらモールを歩き、飲み物を飲み終えた二人は駐車場へと辿り着き赤いバイクへと跨がる

 

 

「しっかり掴まってろよ」

 

 

「りょーかい」

 

 

男の運転でバイクは走り出し数分もすると潮風が吹いてきた。

 

その風を感じながら少女がヘルメットの下に着けたマイクを通して男に話しかける

 

 

『久々の日本はどう?』

 

 

『さてね……ただ…』

 

 

『ただ、なに?』

 

 

『……平和でいい国だったんだなって』

 

 

流石は世界水準で平和な国なだけはある。こんな平和な国で生まれた幸せを子供の頃は理解していなかったんだなと思ってしまう

 

 

『……そうだね』

 

 

『暗い雰囲気はここまでにすっか! 跳ばすぞ!』

 

 

 

バイクをウィリーさせてから一気に加速されると背後からひゃあ!と可愛らしい悲鳴を耳にしながら道を走っていく。

 

二人の目指す場所は一つ、最近人気の女性ソングユニット、ツヴァイウィングのライブ会場だ

 

 

 

────

 

 

ライブ会場 入口前

 

 

『えぇー!? 来れないってどうして!?』

 

 

『急に親戚の人が怪我しちゃって今からお見舞いに行くってお父さんが』

 

 

人の列が長蛇の列と化している中で少女が声を上げているのを周りの人が見ているが少女はそれに気付いていない

 

 

『未来がチケットくれたんだよ? わたしあんまり知らないのに〜…』

 

 

『ゴメンね、けど絶対に楽しいから楽しんできて。それじゃね、また学校で』

 

 

『うぅ〜 わかったぁ、また学校でね』

 

 

「わたし呪われてるかもー…」

 

 

 

通話を切りスマホを仕舞うと少女は溜息を吐いて落胆した声で呟いた。

 

少女の名は立花 響、ツヴァイウィングのライブに親友の小日向 未来から一緒に行こうと誘われて今日ここに居る。

 

しかし少ししてせっかく来たのだから親友の分まで楽しんで帰ろうとポジティブに考えることにした。

 

少女はまだ知らない今日という日が少女の人生を大きく変える日になることを

 

 

 

────

 

ライブ会場 スタッフ専用通路

 

 

ライブ開始まで残り少ない事もあり通路を歩くスタッフ達は慌ただしく動いている。

 

その中で通路の隅に座り白のマントで頭から全身を隠す少女が居た。

 

少女の顔は緊張と不安に包まれ祈るように手を合わせていた。

 

そんな少女を後ろから少女と同じく白のマントを纏った赤毛の少女が

抱きしめる

 

 

「つーばさー なんだ緊張してんのかー?」

 

 

「か、奏!? そ、そりゃ緊張もするよ……こんなに大勢の人達がいっぱい私たちの歌を聴きにきてるんだもん…」

 

 

天羽 奏と風鳴 翼、この二人こそ今日の主役であるツヴァイウィングの両翼である

 

 

「確かにこの待ち時間ってのはもどかしくて困るよな。こっちは早く思いっきり暴れてやりたいってのによ」

 

 

 

緊張している翼とは対照的に奏の声からはライブが待ち遠しいと言わんばかりの熱を感じた。

 

そんな奏を見て感化されたのだろう翼の顔からも緊張と不安が薄れていく。

 

奏も翼の様子に気付いたようでニカッと活発的な笑みを浮かべて見せた

 

 

 

「二人とも準備は出来ているか?」

 

 

そんな二人の元にライオンの様な頭髪に赤いスーツ姿の男性が歩み寄って声をかけてきた。

 

彼は風鳴 弦十郎、二人が所属するある組織の司令官である

 

 

「いつでもいいぜ! 早く暴れてやりたいぐらいだ!」

 

 

「私も大丈夫です、叔父様!」

 

 

「よし、なら思いっきりやってこい!」

 

 

「「おう!/はい!」」

 

 

弦十郎の言葉に二人は力強く頷くと手を取り合いステージへと向かっていく。

 

その後ろ姿を見送ってから弦十郎はスマホを取り出すと通話を始める

 

 

『そっちの準備は?』

 

 

『いつでもオッケーよん。今日は歴史が動く日になるわよ…くしゅん!』

 

 

『風邪か了子君?』

 

 

『違うわよー きっと誰かが噂してるんじゃないかしら?』

 

 

『その噂の出所はアイツかも知れないな』

 

 

『ふふっ、まさか。あの子はアメリカで元気にやってるはずよ。ここにいる訳ないわ』

 

 

それもそうかと弦十郎は笑うと通話を切り地下へと向かっていく。

 

そして運命のライブが始まる

 

 

 

 

 

 

────

 

 

ライブ会場近くのコンビニ

 

 

「いやー 思ったより時間かかったな」

 

 

コンビニの駐車場に停めたバイクに腰掛けながら笑うと横から少女が怒鳴ってくる

 

 

 

「かかったなじゃないよ!? もうライブ始まってるよ!? 呑気にコンビニでお茶買ってる場合じゃないでしょ!」

 

 

「だったら俺が買ったお茶を返せ」

 

 

「日本茶って美味しいね兄さん」

 

 

右手を少女に向けると少女は知らないとばかりにお茶の入ったペットボトルに口をつけていく。

 

たくっ、コイツは。しかし確かに道を調べもしないで気の向くままバイク走らせてたのは失敗だったな、反省

 

 

「さてライブ会場までもうすぐだ。それ飲んだら行くぞ」

 

 

「はーい」

 

 

炭酸が入っていた空き缶をゴミ箱へと投げ捨て見事ホールイン、ナイッシューである。

 

それを見ていた少女が真似してゴミ箱へとペットボトルを投げると見事、外れて地面に落ちた

 

 

「ぷーくすくすw ねぇ、いまどんな気持ち? 真似して外していまどんな気持ち?」

 

 

「兄さんのイジワル!」

 

 

顔を真っ赤にしてペットボトルを拾いに行く少女を横目に彼は目的の場所へと視線を向ける。

 

だいぶ離れた此処からもドームの天井が天使の羽の様に広がっていくのが見えた

 

 

「すっげー ギミックだな、おい」

 

 

金かかってんなぁとか思っていると爆発音がしてからドームの方向から黒煙がいくつも上がっていく

 

 

「後ろに乗れ! 行くぞ!」

 

 

それを見て彼は戻ってきた少女にヘルメットを投げ渡してから自分もフルフェイスのヘルメットを被り少女が後ろに乗ったのを確かめながらバイクを急発進させてドームへと急ぐ。

 

そうしてドームを視認出来る距離まで来たらドーム内から大勢の人達が何かから逃げる様に走っていた

 

 

「兄さん、あれ!」

 

 

一体何が有ったのか? そう思考を巡らせるより早く少女が答えを指差す。

 

空中に漂う塵、とある存在が現れた時に必ず発生する現象だ

 

 

「ノイズ!?こんな街中でかよ!」

 

 

 

ノイズ、13年前の国連総会で、特異災害として認定された未知の存在であり、人間のみを大軍で襲い捕まえた人間を自分もろとも炭素の塊へと転化させてしまう人類共通の認定特異災害だ。

 

空中に塵が舞っているのは既に犠牲者が出ている証でもある

 

 

 

「一気に突入する! 掴まってろよ!」

 

 

少女が腰に回していた両腕に力を入れたのを確認してバイクの速度を上げてライブ会場の入口へと続く段差を登っていく。

 

ブレーキングと共に後輪を滑らせ車体を入口の正面に向けると加速させウィリーで入口の扉を突き破り中へと入る

 

 

 

「…酷い、こんなに人が…」

 

 

そこには炭素の塊が至るところにあった。

 

それはノイズに寄って無情にも炭素化してしまった人達だろう

 

 

「戦闘音だ、まだ終わってないぞ!」

 

 

戦闘音に導かれるままにバイクを走らせ二階席へと続く段差でフルスロットル

 

 

 

───生きることを諦めるな!

 

 

此処からは聴こえない筈の声が聴こえる、それは今にも死にそうな少女へ向けての命の在り方を伝える声

 

 

 

───だめ! 歌ってはだめ! 奏ぇぇ!!

 

 

 

聴こえてはいけない悲鳴が聴こえる、それは共に戦ってきた親友の覚悟を知りながらも生きて欲しいと願う悲鳴

 

 

 

「セレナ!!」

 

 

 

限界まで速度を上げたバイクは唸りを上げて段差の終わりと共に会場へと文字通り宙を舞い飛び込むと同時に背後の少女、セレナがバイクを足場に更に高く跳躍した

 

 

 

 

───Seilien coffin airget-lamh tron

 

 

 

その声をその場にいた全ての者が聴いた。

 

それは聖詠、歌を力としシンフォギアを装着する為の聖なる調。

 

瞬間、セレナの周りに円形のエネルギーフィールドが展開されると銀色の輝きを放ちながら身体の各所に銀色の装甲を装着していく。

 

そして輝きが弾けると同時に中からシンフォギアを装着したセレナが飛び出してくる

 

 

 

「てぇやぁ!!」

 

 

 

──INFINITE†CRIME

 

 

 

左腕部ユニットからアームドギアである短剣を引き抜き、それに連なって引き出された無数の短剣を周囲の空中に展開、一斉に投擲する。

 

投擲された短剣は奏へと迫っていたノイズ群を貫き塵へと変えていくとセレナが奏の前に降り立つ

 

 

「大丈夫ですか!? 怪我は?」

 

 

「…え? あ、ああ、それほどじゃないよ」

 

 

「よかった。あとはワタシと兄さんに任せてください」

 

 

「…兄さん? アンタはいったい?……後ろだ!!」

 

 

状況を理解できていない奏の目に入ったのはセレナの背後から襲い掛かるノイズ六体の姿が銃声と共に塵へと変わる瞬間だった。

 

いったい何なんだ? 更に困惑する奏とセレナの横に赤いバイクをドリフトさせて停める男の姿

 

 

 

「油断大敵だぞセレナ」

 

 

「ありがとう兄さん。先に行くね」

 

 

「俺もすぐサポートに入る。翼を頼む」

 

 

短い話を終えるとセレナは地を駆けて未だノイズと戦う翼の元へ

 

 

 

「な、なぁ! アンタらはいったい何なんだ!? どうしてノイズと戦える!? どうして翼のことを知ってる!? いったい…」

 

 

「時間が無いから細かいことは後で全部話してやるから今はこれを使え」

 

 

困惑状態で声を荒げる奏で男は緑色の液体が入ったハイジェッター(ピストル注射器とも言う)を投げ渡す

 

 

 

「何だよ、これ?」

 

 

「LiNKERだ、日本の粗悪品とは違うアメリカ製だ。そいつを打ってあの子を守ってろ」

 

 

彼が指差す方には瓦礫の山に背を預けて横たわる少女の姿があった。

 

それはこの場の誰も今は知らない少女、名は立花 響。

 

ライブ中に現れたノイズの襲撃により逃げ遅れてしまっていたのだ。

 

その胸からは夥しい量の出血が見受けられる

 

 

「おそらくは心臓付近から出血してる、止血をしとけ。救護班も向かっているだろうからノイズをさっさと片付けてあの子を救護班に渡す」

 

 

 

「ま、待てよ、それならアタシも一緒に戦えばもっと早くノイズどもを倒せる!」

 

 

 

こんなことぐらいで根を吐いていてどうする? アタシは何のためにノイズと戦う力を得たんだ? こんな悔しい思いをするためか? こんな惨めな気持ちになるためか? 違う! 絶対に違う!

 

アタシはノイズを倒すんだ、誰かの槍になるために!

 

 

 

「LiNKERも有るんだしこいつを射てばアタシもまだta…いだっ!?」

 

 

 

戦える、そう言おうとした奏の胸倉を掴み男はヘルメット脱ぎ捨てながら頭突きを食らわせた

 

 

 

「お前はあの子に生きることを諦めるなと言ったな? その言葉を言ったお前が命を無駄に晒してどうする!! 惨めだろうが悔しかろうが生き抜け──」

 

 

 

 

──それが諦めないってことだ!!

 

 

 

 

その言葉は何の抵抗も無く奏の胸に響いた。

 

この人になら任せられる、何の迷いも無く思えるほどに。

 

夕焼けを背にして髪を風に揺らす彼の姿はとても力強い物に感じた

 

 

 

「翼を…お願いします」

 

 

先程まで感じていた悔しさも惨めさも今では少しも無い。素直にこの人を頼ることが出来る

 

 

「任された」

 

 

頭を下げて頼む奏にそう答えた彼はアクセルターンでバイクの向きを変えてノイズの元へとバイクを加速させていく

 

 

「アタシはアタシの役目を果たすんだ」

 

 

気合いを入れ直せ天羽 奏!

 

彼の背を見送った奏はバチンと両手で自分の頬を叩く、その顔にはもう死を覚悟していた戦士の色は無い。

 

今の彼女の顔には生きることを諦めない者の決意が宿っていた

 

 

 

 

 

「どけどけ雑魚ノイズが!」

 

 

 

セレナと翼の元へとバイクを走らせる彼の進行方向状にワラワラと群がるノイズを見た彼は左手を背後へと回してどんな手品を使ったのかウィンチェスターM1887を取り出して銃口をノイズへ向けて発砲した。

 

その行為はノイズの事を知る者ならば滑稽にさえ見える行為だ。

 

ノイズには現代科学で作られた武装は一切通用しないと言うのが常識だからだ。

 

しかしそんな一般常識なんぞ知るかと言わんばかりに発砲された散弾はノイズの身体を穴だらけにした後に塵へと返していく。

 

ウィンチェスターM1887は世界初レバーアクションを採用したショットガンである。

 

大抵の人ならターミ○ーター2のシュワちゃんがバイクに乗りながら使ってるよで分かるぐらいにはメジャーなショットガンである。

 

そのウィンチェスターをスピンコックと言われる技術でリロードして発砲。

 

リロード、発砲、リロード、発砲、リロード、と最後の一発を装填した彼はバイクから前方へと跳躍して一斉に襲い掛かってきたノイズを回避すると空中で身を捻り銃口をバイクへと向けて発砲。

 

散弾はエンジン部と燃料タンクを貫きバイクは爆発を起こしてノイズを一掃した

 

 

 

「早かったね兄さん」

 

 

爆風の勢いを利用してセレナの背後に背中合わせで降り立つ

 

 

 

「可愛い妹分のためですからー お兄ちゃん頑張ったよー」

 

 

「わーい、セレナ嬉しいー」

 

 

「むかついたから撃っていいか?」

 

 

「兄さんが始めたのに!? それならこっちも言うけどバイクあんな壊し方してマムに怒られてもフォローしてあげないからね!」

 

 

 

あ、やべっ、忘れてた。あのバイク、教授の金でレンタルしたんだったわ。

 

……セレナを引き込もう、うむ。そうとなれば早速、買収だ

 

 

「セレナさんや日本のケーキバイキング行きたくないかね?」

 

 

「行きたい!」

 

 

チョロれー! セレナさんマジ、チョロいっすよねw!

 

 

「よっし、商談成立。そんじゃさっさとノイズ片付けるぞ!」

 

 

「わかった!」

 

 

銀の短剣を右手に構えるセレナと両手にウィンチェスターを構える彼が弾かれるように一斉にノイズへと駆け出した

 

 

 

「……あの二人はいったい…」

 

 

その光景を間近で見ていた翼は戦うことも忘れて見入っていた。

 

まだまだ拙いところは見受けられるが銀の短剣を扱い、時には無数の短剣を放ち、時には銀の短剣を蛇腹剣にして振るうセレナ。

 

そして何よりも謎なのがセレナの側を一定の距離を保ち続けながら二丁のウィンチェスターを巧みに扱い彼女の危ない所を何度も救っている

 

 

「何故、彼はシンフォギア無しでノイズを倒せるのだ…!?」

 

 

 

装者であろうセレナがノイズを倒せるなら話しは分かる。

 

だが彼がシンフォギア無しで戦っていられるのが理解出来ない。

 

実はシンフォギア無しでもノイズを倒す方法は有るには有る。

 

ノイズは位相差障壁と呼ばれる障壁を持ち、自身が存在するという比率を自在にコントロールすることが出来るのだが、このコントロールにも弱点が有り攻撃をする時は物理的干渉を上げなければならない為にノイズの攻撃時ならカウンターで倒すことが出来るのだ。

 

もしくは間断無く広範囲攻撃を行えば倒すことも出来る。

 

だが大軍で現れるノイズに前者は触れれば炭素化されてしまう相手にノーミスでカウンターを決め続けるなどという神技が必須で後者は周りへの被害が尋常ではない。

 

それがシンフォギア無しの者が戦う上での最低限の準備なのだ。

 

だと言うのに彼は普通にショットガンを撃ちノイズを撃ち倒し、リロードが間に合わなければ新たな銃を何処からとも無く両手に握り銃弾の雨でノイズを穴だらけにしていく。

 

果てには蹴りでノイズを転倒させ銃弾で撃ち抜くなど物理的干渉を容易く行っている。

 

装者と同じだけの身体能力を有し、ノイズの位相差障壁を容易く破る戦い方、これではまるで──

 

 

 

「まるで装者ではないか…!」

 

 

 

翼の困惑を余所にノイズ達は彼を最大限の脅威と判断したのかセレナを無視して群がっていく。

 

人型ノイズが彼の逃げ場を塞ぎ伸し掛かり彼の姿が見えなくなっていく。

 

そこに大型ノイズがその巨体で彼を人型ノイズごと押し潰すべく飛び上がる

 

 

「兄さん!!」

 

 

セレナが短剣を投げ放ち人型を貫くが間に合わず大型ノイズの下敷きになってしまう。

 

その光景を見ていた誰もがもう彼は助からないと思った

 

 

 

──剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)!

 

 

 

静かにだが力強く歌い上げるセレナ以外には。

 

祝詞は力となり彼の元に集う

 

 

 

 

──我が魂喰らいて奔れ、銀の流星!

 

 

 

声がノイズの中から聴こえた瞬間、莫大なエネルギーが風となりライブ会場を駆け抜けノイズの肉体を風船のように膨れ上がらせていく

 

 

 

 

──一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)!

 

 

 

 

暮れた夜空に銀の流星と化した彼がノイズを粉砕して銀の暴風と共に空高く駆け上がった。

 

その光景を誰もが見た。

 

銀の粒子を弾きながら姿を現した彼を。

 

銀色の髪をなびかせ一際、輝く銀色の左腕に銀の短剣を持つ彼の姿を

 

 

(…銀色…の…流星……)

 

 

それは血に濡れた少女の目にも見えたのだ。

 

光り輝く雄々しき銀の流星が

 

 

 

 

 

 

 


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