エーテルちゃんはひとりぼっち   作:菓子ノ靴

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「世界樹神話」は本筋から少し逸れているので、
読みにくければ飛ばしてください ( _ _);

「大魔導士叙事詩」から「ユスティヘル家史書」までは、
読んでいただければ幸いです (^_^


chapter 1 - 7 え、生きてるけど?

――世界樹神話。

天と地と海のない暗黒の空間に、女神エモニがいた。女神エモニは、虚無の深淵に「神の園」を創造した。神の園の泉から、慈しみの女神エレオス、怒りの女神スィモス、幸福の女神エフティヒアが生まれた。女神エレオスは、サヴマスモス、イクトス、ピスティの三柱の女神を生む。女神スィモスは、パソス、フォボス、アフティの三柱の女神を生む。女神エフティヒアは、ドロピ、メタニャ、リピ、ディスティヒアの四柱の女神を生む。

不幸の女神ディスティヒアは、美しい青年プセマの姿で、女神エモニと結ばれる。二人の間には十七の悪魔タナトスが生まれた。プセマはエモニのもとを去る。ディスティヒアは傷心のエモニに、三大女神エレオス、スィモス、エフティヒアがプセマを(たぶら)かしたと嘘の進言する。怒り狂ったエモニは、神の園にタナトスを放った。

女神たちの戦争は、千年続いた。草木が枯れ果て、海が干上がり、山が砕け散り、神の園は地獄になった。これを見かねた大天使アリスィアが、雲の上から降りてきた。アリスィアに真相を告げられたエモニは、自らの罪を罰し、女神たちに許しを乞うた。こうして戦争は終結したが、エモニが呼びかけてもタナトスたちは破壊を止めなかった。嘆いたエモニは自らの命を絶ってしまった。女神たちは母であるエモニの体を、かつて泉のあった地に埋めてやった。するとそこから天を衝かんばかりの巨木が生えてきた。

女神たちはその巨木のことを、世界樹と呼んだ。

その世界樹の天辺に、大地を乗せ、人間を造った。けれど世界樹の外は地獄が広がっているので、人間たちが大地から落ちないように、魔物を放った。

 

 

――大魔導士叙事詩。

歴史を(さかのぼ)ると、人間というのは脆弱な種で、跳梁跋扈する魔物たちにとっては恰好の獲物でしかなかった。魔物が住み着かない平らな大地を見つけ、そこに身を寄せ合い暮らしたのだ。

時が経ち、村は町へと、町は国へと姿を変えたが、人間はまだ、魔物の影に怯えながら暮らしていた。そしてある時を境に、森や山に餌をなくした魔物たちが、平らな大地に下りてくるようになった。抵抗空しく、次から次へと人が食われていく。日を追うごとに死者は増え、王国が堕ちるのも時間の問題――そう思われた時、遠い東の地より二人の魔導士が現れた。

大魔導士レイアと、弟子のディオリスである。

二人の魔導士は「魔法」という不可思議な力を使って、魔物たちを退治してみせた。魔導士たちは英雄として王国に迎え入れられた。神秘の力に魅せられた王は、魔導士たちに「魔法」の教えを乞うた。こうして魔法は、人々に伝わった。自衛の術(すべ)を身につけた人々は、魔物の脅威に怯えることも前より少なくなった。人間たちの版図は、平らな大地を出ることこそなかったが、拡大の一途を辿っていった。

だが、不幸は訪れた。

魔導師ディオリスの反逆だ。

ディオリスは大魔導士レイアを殺して、師の秘術であった不老不死の魔法を我が物にした。さらに魔物の軍を率いて、王国に攻め込んだ。

人間たちは魔法を武器に戦った。

戦争はしばらく続いた。やがて不死王ディオリスを滅ぼすために、大魔導士レイアの、五人の高弟たちが立ち上がる。五人の高弟は、大魔導士レイアに授けられた聖なる光の魔法を使い、ディオリスを見事討ち滅ぼした。

不死王ディオリスを討った五人の高弟には、王から領土と爵位が与えられた。これが今日の五つの公国と五人の公王となる。

 

――公開処刑の記録。

クルト歴三百七年。赤い空の日。

不死王ディオリスの公開処刑が行われた。

処刑台に括り付けられたディオリスは、狂ったように哄笑していた。

火がつけられると、群衆はざわめいた。

ディオリスの哄笑は、いつまでたっても鳴り止まなかった。

 

――語られぬ歴史。

不死王ディオリスは、全身を焼かれても死にはしなかった。

五人の高弟は王に命じられるまま、ディオリスの体を教会地下の隠し部屋へと移した。

腕を切り刻んで、眼をくり抜いて、脚を千切って、心臓を貫いて、窒息させて、頭を潰して、毒を飲ませて、首を斬り落として、酸を浴びせて……壮絶な拷問の末、ディオリスはようやく事切れた。

ディオリスの死を告げると王は大変喜び、五人の地位を約束した。

……ただ一つだけ、五人には隠していることがあった。

それはディオリスが最期に残した言葉だ。

(なんじ)らの末裔にこの不死王、転生せし時、世は再び闇に包まれるであろう』

もしもこの中の誰かの子がディオリスの意思を継いでいたならば、その時は、他の四人の手でそれを討とうと、五人は誓いを結んだのであった。

 

 

――ユスティヘル家史書。

クルト歴七百九年。次女のエーテル・アルレット・ベル・ルネッタ・ユスティヘルが高熱を出す。随一の祈祷師が寄こされるも、謎の奇病により処置できず、享年三歳で死亡。

 

 

エーテルは本から顔を上げた。

「――は!?」

 

本を置いて、馬鹿げたことだと思いながらも、自分の体をあちこち触ってみる。

 

「……はっ? え? 何言ってるの?」

 

素っ頓狂な声が、書物庫の暗闇に響いた。

 




次話、バトルシーンです( ˙ө˙)

なんとなく、
ネット小説として「やるべきこと」を、やっていない気がします。
そして薄々ですが、ネット小説ってもっと展開が早いんじゃ?
と感じながら書いています ( _ _);
どうかご容赦下さい ( _ _);

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