エーテルちゃんはひとりぼっち   作:菓子ノ靴

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chapter 4 - 4 私じゃない

エーテルが目を覚ましたとき、外は夜だった。てっきり翌日の夜が来るまで寝過ごしたのかとも思ったが、疲労の回復具合からしてそれはないと考え直した。

酔いはすっかり醒めていた。

 

足もとを見ると、エミルがベッドに寄りかかって眠っていた。

半開きになった窓板の間から月の光がさしこんで、穏やかな寝顔が瞳に映し出される。

 

「……うああ……恥ずかしいいい……」

 

燃えるような恥ずかしさが込み上げてくる。

 

「あんなの私じゃないっ……」

 

足もとの寝顔を見ていると、自らの晒した醜態が思い起こされた。

あれじゃまるで恋する乙女のようじゃないか。脳裏によぎった「恋する乙女」という決まり文句を、エーテルはすぐさま振り払った。そんなはずがない。エミルの存在はあくまで作戦の一部に過ぎない。目的達成のための足がかりに過ぎないのだ。

 

「ああもう! 忘れましょう」

 

仕切り直すようにパンと頬を張って、枕を持ち上げた。

かわいらしい、いや、憎らしい寝顔をめがけて、枕を投げ――ようとしてやめた。

代わりに、自分にかかっていた毛布をかけてやった。

 

(……作戦変更だ。日が昇る前にどっかへ逃げてしまおう)

 

投げつけるのをやめた枕を適当に放って、エーテルはこれからのことを思い巡らす。行き先をどこにするかが悩みどころだった。

 

(いっそ教会に忍び込んでみるのもいいな……)

 

ふと、そんな考えが頭に浮かぶ。

何だかんだ言っても、一人で国境を超えるほどの勇気はない。町の外は魔物が出るし、野盗も出る。彼女のようなうら若い女がたった一人で歩くのは、猛獣の檻のなかに新鮮な肉を(つる)すに等しい行為だ。そして何より――

 

(エミル君とは気まずいし……)

――これ以上エミルと顔を合わせるのは避けたかった。

 

すうすうと寝息を立てる小麦色の彼に、苦々しい視線を送る。人の心とは分からないものだ。魔法のように操れはしないし、相応の褒美がないと支配もできない。エミルならきっとついてきてくれると信じていたが、見込みちがいだったのか。

 

(行こう……)

 

エーテルは決心した。

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×  ×

 

 

 

 

 字数稼ぎのための人物紹介2(読み飛ばし推奨)

 

 

 

 

●エーテル

 

身長163cm

体重44kg

 

髪⇒ 薄紫

瞳⇒ 紺碧

 

(長所)

隠れ巨乳

 

(短所)

Sっ気がある

ワガママ

 

(私見)

お姫様っぽくない。

 

 

 

●アリシア・アーク

 

身長169cm

体重53kg

 

(長所)

強い

 

(短所)

貧乳

つかみ所がない

 

(私見)

今のところエーテルよりもヒロインっぽい?

 

 

 

●エミル・ヴァレル

 

髪⇒ 金髪

肌⇒ 褐色

 

(長所)

将来有望

 

(短所)

優柔不断

 

(余談)

登場させる予定のなかったキャラです。もともとエーテルの脱走をサポートするのは、御者の男の役割でした。ちなみに御者の男はエミルほど良い奴ではなく、エーテルの体が目当てでした。

 




次回へつづく( ˙ө˙)


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