エーテルが目を覚ましたとき、外は夜だった。てっきり翌日の夜が来るまで寝過ごしたのかとも思ったが、疲労の回復具合からしてそれはないと考え直した。
酔いはすっかり醒めていた。
足もとを見ると、エミルがベッドに寄りかかって眠っていた。
半開きになった窓板の間から月の光がさしこんで、穏やかな寝顔が瞳に映し出される。
「……うああ……恥ずかしいいい……」
燃えるような恥ずかしさが込み上げてくる。
「あんなの私じゃないっ……」
足もとの寝顔を見ていると、自らの晒した醜態が思い起こされた。
あれじゃまるで恋する乙女のようじゃないか。脳裏によぎった「恋する乙女」という決まり文句を、エーテルはすぐさま振り払った。そんなはずがない。エミルの存在はあくまで作戦の一部に過ぎない。目的達成のための足がかりに過ぎないのだ。
「ああもう! 忘れましょう」
仕切り直すようにパンと頬を張って、枕を持ち上げた。
かわいらしい、いや、憎らしい寝顔をめがけて、枕を投げ――ようとしてやめた。
代わりに、自分にかかっていた毛布をかけてやった。
(……作戦変更だ。日が昇る前にどっかへ逃げてしまおう)
投げつけるのをやめた枕を適当に放って、エーテルはこれからのことを思い巡らす。行き先をどこにするかが悩みどころだった。
(いっそ教会に忍び込んでみるのもいいな……)
ふと、そんな考えが頭に浮かぶ。
何だかんだ言っても、一人で国境を超えるほどの勇気はない。町の外は魔物が出るし、野盗も出る。彼女のようなうら若い女がたった一人で歩くのは、猛獣の檻のなかに新鮮な肉を
(エミル君とは気まずいし……)
――これ以上エミルと顔を合わせるのは避けたかった。
すうすうと寝息を立てる小麦色の彼に、苦々しい視線を送る。人の心とは分からないものだ。魔法のように操れはしないし、相応の褒美がないと支配もできない。エミルならきっとついてきてくれると信じていたが、見込みちがいだったのか。
(行こう……)
エーテルは決心した。
× × × ×
字数稼ぎのための人物紹介2(読み飛ばし推奨)
●エーテル
身長163cm
体重44kg
髪⇒ 薄紫
瞳⇒ 紺碧
(長所)
隠れ巨乳
(短所)
Sっ気がある
ワガママ
(私見)
お姫様っぽくない。
●アリシア・アーク
身長169cm
体重53kg
(長所)
強い
(短所)
貧乳
つかみ所がない
(私見)
今のところエーテルよりもヒロインっぽい?
●エミル・ヴァレル
髪⇒ 金髪
肌⇒ 褐色
(長所)
将来有望
(短所)
優柔不断
(余談)
登場させる予定のなかったキャラです。もともとエーテルの脱走をサポートするのは、御者の男の役割でした。ちなみに御者の男はエミルほど良い奴ではなく、エーテルの体が目当てでした。
次回へつづく( ˙ө˙)