ちょっと間が空いてしまいましたが無事に更新できました。
それはそうと、平ジェネFみなさんはもう見ましたか? 自分は見てきたのですが、いろいろ懐かしかったり執筆意欲が刺激されたりで、仮面ライダー単体でなにか書きたくなりましたね。
また年末に観に行こうかと。
では、今回は短めですがどうぞ。
貴利矢の元に、何人もの人が押し寄せてきてから数分。
落ち着きを見せはじめた黒ウサギは、集まった面々を見ながら一枚の紙を取り出す。
「そいつは?」
「十六夜さんたちの書き置きです。まずは読んでください! それで読んだら協力してください! 一大事なのですよ!?」
促されるままに目を通す永夢と貴利矢。
「なになに? ……ハハッ、こいつはまずいな。自分もコミュニティのトップだったら冷静じゃいられないわ」
「ちょっと貴利矢さん!? 笑ってる場合じゃないですよ! 早く十六夜くんたちを追いかけないと!」
「あー……だな。流石にこれは真面目に追わないとダメか」
全員の視線が集まる先。
一枚の紙には、祭典に参加することと、彼らも後から必ず来ること。そして、祭りのことを黒ウサギたちが黙っていた罰として今日中に問題児三人を捕まえなければ、永夢と貴利矢を含めた異世界からやってきた五人全員が脱退する旨が書かれていた。
「これ、僕たちも強制っぽいですね」
「あの子らがこういった性質の悪い冗談を言うとは思えねえ。やっぱり本気なんだろうよ」
「祭典のことを隠していた点は失敗でしたね。僕もいま初めて知りましたし」
と、指示を仰ぐように黒ウサギに目を向けるが、当の黒ウサギは純粋な永夢の言葉に地味に傷つけられていた。ついでに現実的な貴利矢の言葉も痛いようで、頭を抱えている。
「誰だって隠し事をされれば多少なりとも腹は立てるし、下手をすれば信用を失う。当然のことと言えばそれまでだけど、凹んでる間に十六夜くんたちはどんどん遠くに行っちまうぞ」
再び貴利矢から放たれた言葉に、黒ウサギのウサ耳がピクピクと反応を示す。
その様子に、貴利矢が永夢にもなにか言うように動作だけで促す。
「僕たちも十六夜くんたちを捕まえるのに協力しますから、行動を始めましょう?」
更に耳の反応が増え、やっとのことで抱えていた頭が前を向く。
「ほ、本当でございますか!? 十六夜さんたちに賛同して途中で裏切ったりとかは!?」
「しませんよ。ね、貴利矢さん」
「そりゃ、自分たちはしてる余裕ないからな。ここを追い出されたら野宿だぜ、野宿」
現状を鑑みても、“ノーネーム”以外のコミュニティに入る考えはない。
いずれは帰る道を模索しなければならないし、なにより未知の場所では信用できる者たちの存在がどれほど重要かなどわかりきっている。この場所を自ら手放すなど、愚策も愚策。
「まだまだここでお世話になる気満々だから、さっさと十六夜くんたち全員捕まえて仲直りしようぜ」
「べ、別に喧嘩をしたわけではないのですが……でも、ありがとうございます、貴利矢さん」
しかし、あながち鬼ごっこと称した貴利矢の言葉も間違いではなかったわけで。
「まとまったのなら話は早い。十六夜たちが三人結託して動くというのなら、私たちも四人で協力して彼らを捕まえるとしよう」
話を聞いていたレティシアが他の三人に声をかける。
「で、ですがレティシア様。私たち4人で行くにはコミュニティの全財産でも足りるかどうか……こどもたちのことや、今後のことだってありますので」
「むっ……そうだったな。すまない、忘れてくれ」
元はと言えば、十六夜たちに祭典の話を隠していたのは路銀を捻出できない問題が念頭にあったからなのだ。そのような経緯もあって、今回の問題を引き起こしている。
そう、貧乏は辛いのだ。
「財産……つまり金ってわけだ」
貴利矢が唐突に走り出し、自分の部屋へと戻っていく。
何事かとしばらく待っていると、小さな袋を手にしながら戻ってくる。
「黙っていたおかげで十六夜くんたちにも気づかれてなかったんだが、それが裏目に出るっていうんだからどうしようもないよな」
ちょっといい笑みを見せながら、持ってきた袋を黒ウサギに投げて寄越す。
受け取る際にチャリン、と音が鳴ったが、黒ウサギはそれどころではなく、貴利矢と袋に何度も視線を向ける。
「あー、いいよ、さっさと開けちゃいなって」
「貴利矢さん、あれって?」
「パラドにはバレてたみたいだけど、活動資金的な?」
朝の会話を思い出しながら、バツが悪そうに永夢とは視線を合わせずに答える。視線を合わせれば最後、永夢の中で補足説明をしているパラドの言葉も相まって凄いことになっている彼の目を視界に収めてしまう。
なんて考えていると、ウッキャー!! と特大の悲鳴が響く。
「どうしたのだ、黒ウサギ」
「見てください、レティシア様!」
二人して袋の中を覗き込んでは驚いたような声を発する。
「貴利矢さん、こ、ここここれはいったいどうしたのでございますか!?」
「疑うつもりはないが、まさか汚い手を使ったのではないだろうな?」
言いながら、二人は袋の中身を取り出しながら質問を重ねる。
握られていたのは、何枚もの金貨。永夢と貴利矢は知らないことだが、その枚数はコミュニティの全財産よりも多い。
「ちょいといくつかの店主を煽ってゲームをしてきただけさ。正当な勝利品だ。来たるべきときのための活動資金集めをしてたんだが、こうなっちまったら仕方ねえ。それだけあれば今回の祭典への資金難? も解決するだろ」
「い、いいのですか? これは貴利矢さんが個人的に勝ち取ったものなのでは?」
不安げな表情のまま、黒ウサギは尋ねる。
無論、いいわけではない。この資金は永夢を元の世界に帰す方法を見つけるための軍資金に成り得るはずのものなのだから。それでも、貴利矢の中では彼女たちを見捨てるという選択はとうに無くなっていた。
「いいから行こうぜ。あんたらがいなくなると自分たちも困るんだよ。だから十六夜くんたちも連れ戻すぞ。ついでに、祭典も楽しんでから帰ってくるとしよう。永夢もいいよな?」
「もちろんです。十六夜くんたちも悪気があったというより、多分隠し事をされていたことに拗ねていただけだと思います。仲直りしたら、みんなで楽しみましょう」
「お、言うねぇ。さすが将来の小児科医。こどもの考えることは理解できるってか?」
「貴利矢さん、少しいいですか?」
「…………ああ」
黒ウサギとレティシアに一言断りを入れ、距離を取る二人。
「また一人で動いたんですか?」
「あー……まあ、そうなるな。って、怒るなよ。だいじょうぶだって、自分の方でも引き際や相手は選んでるから。な?」
ギフトゲーム巡りのためにたまに1日中出かけたりしていたのは怒られても言い訳できないが無茶しすぎかと聞かれれば否である。
「はあ……今更貴利矢さんの行動を制限できるとは思っていませんし、する必要もないとは思っています。僕たちはいつだって、貴方に救われてきましたから。信じてますよ?」
「もちろん。もうおまえを裏切るような真似はしないって。そら、行くぞ」
「はい!」
二人が戻って来ると、こどもたちにいくつかの約束事を聞かせていた黒ウサギもそれを終えたのか、準備万端とばかりに頷く。
「しかし、十六夜たちも無策ではあるまい? 私たちが追いついたと知れば本気になって逃げる可能性がある。キミたちがなにやら話し合っているうちにコミュニティ中を探してみたが、金庫の中身に手を出した様子はない。大方、白夜叉に頼み込んでいるだろうことは想像に難くない。さて、どうする?」
聞いた先。話を聞いていた永夢たちに問いかけるが、
「なんだか、自分たちは参謀かなにかと思われている気がするけど、気のせい?」
貴利矢は答えるよりも自分の疑問を優先した。
「ふふっ、どうだろうな? だが、私たちもキミたち二人を大いに頼りにしているということだけは確かだ」
「ほお。なら、期待には応えないとな、永夢」
「はい。おそらくですが、十六夜くんたちは機動力のある十六夜くん、耀ちゃんの二人のどちらかが飛鳥ちゃんを伴って二手にわかれる可能性が高いような気がします」
パラドと考えを重ねながら、永夢とパラドは二人で作戦を立てていく。
「それに、人の多い場所に逃げられでもしたら、彼らの力だと周りへの迷惑も予想されますよね?」
この発言には、聞いている全員が無言で頷くしかなかった。黒ウサギなんかは力強く何度も首を縦に振る始末だ。
「けど、んなこと言っても多分逃げると思うぜ、あの子たち」
「僕もそう思います。なので、遭遇した瞬間に手を打ちます。みなさんには、その一手を打ってからは全力で三人を捕まえてください」
「だいじょうぶでしょうか?」
「捕まえられるかどうかはわかりませんが、周りへの被害だけは保証します。あとは、一度だけなら通用する手がありますから」
走りながら、貴利矢にだけ聞こえる声で作戦の一部を伝える。耳を傾けていた貴利矢は、悪どい笑みを浮かべ、永夢も手段を選ばないよなぁ、などとつぶやいていた。
「永夢さんがそこまで言うなら、黒ウサギはお任せするのですよ」
「そうと決まれば、急ぐとしようか。この速度では十六夜たちに追いつけないだろうからな」
「永夢は自分に乗れ」
歩みを止めず、先を行く二人に追いつくべく貴利矢はガシャットを起動させる。
『BAKUSOU BIKE!!』
「二速。変身」
『ガシャット』
ゲーマドライバーにガシャットを挿入するやいなや、即座にゲーマドライバーを開き、周りに展開していくパネルを蹴り抜く。
『ガッチャーン!』『レベルアップ!』
『爆走! 独走! 激走! 暴走! 爆走バイク!!』
永夢の隣に、レベルアップによってバイク形態となった仮面ライダーレーザーが並ぶ。
「さあ、飛ばすぜ!」
「行きましょう、貴利矢さん、パラド。超キョウリョクプレーで!」
「ああ。十六夜くんたちを捕まえるぜ!」『十六夜たちを捕まえるぞ!』