天才ゲーマーも異世界から来るそうですよ?   作:alnas

17 / 25
人命救助のTeam

 一台のバイクと、それに乗る男が笑い声を上げながら兵士の集団の間を駆け抜ける。

 それだけ。

 ほんの僅かな接触のみで、バイクが通り抜けた側にいた兵士たちが次々と倒れていく。

 力量の差は歴然だと言うのに、兵士は構わずバイクを操縦する男目掛けて向かっていくのだ。まるで、彼のことしか相手として見ていないかのように。力関係も忘れ、ただ目の前の敵を倒すという意識のみが表面化しながらも。

「にしても多いな」

 いっそかわいそうになるほどの敵を眺めながら、バイク形態になっているレーザーがつぶやく。

「多いだけだろ。数が多いならいろいろな攻略方法を試していればいつか終わりが来る」

 彼を操縦しながら敵をなぎ倒している操縦士であるパラドがレーザーを加速させながらつぶやきを拾う。もちろん攻略の手を止めることなどなく、自分たちをスピンさせながら兵士の集団を蹂躙する。

「自分が言うのもあれだけど、おまええげつねえことするな」

「いいだろ、これくらい。目指すはフルカウントだぜ」

「へいへい、付き合ってやるよ」

 辺り一面、既に倒れた兵士で埋め尽くされているというのに、まだまだ敵は現れる。

 いったいどれだけの兵士が配備されていたのかと思わせる大群は、しかし。

 やはり誰もがパラドのみを視界に収め迫っていく。他の”ノーネーム”の面々を探すことはせず、ただ一心不乱に。

「レーザーを乗りこなすのもできたからな。もういいだろ」

 自分が乗るバイクをひとつ叩いたパラドはレーザーから降りると頭上に出現したエナジーアイテムを弄りだす。

 いくつものエナジーアイテムが縦に横にと動き、やがてパズルを完成させるかのようにまとまっていく。

「こんなもんか。よっと」

『高速化』『マッスル化』『ジャンプ強化』

 パズルの中から三つのエナジーアイテムを使用し驚異的な速度でその場を飛び出したパラドは、自分たちに近づいてきた敵を素早い体当たりで上空へと打ち上げていく。

 中には咄嗟の転機で打ち上げられる前に上空に退避した兵士もいたが、それを嘲笑うかのごとく、再びパラドが動き出す。

「どこに逃げても無駄だ。おまえたちにこのコンボは止められない」

 ジャンプ力を強化されたパラドは、たった一足の跳びで上空に放られた兵士へと接近し、そこを足場にして追撃を逃れた敵へと迫っていく。

 当然、足場にした兵士は地面に蹴り落としながら進むのも忘れていない。

「あらら、こりゃ敵が悪かったな」

 仮面の下で笑みを浮かべながら、残されたレーザーは暇そうにパラドと兵士たちの戦闘を眺めていた。既に彼の出番は終わった。元々、十六夜たちをルイオスが待つ部屋まで送り届ければ作戦は終了したも同義。

 この蹂躙は、必要のない工程なのだ。

「けどまあ、おまえたちもゲームを運営しているならある程度の覚悟は持たないとな。それこそ、ゲーム開発に命をかけられないなら、自分たちに勝てる見込みないぜ」

 一度はゲームに屈した。一度は完全に敗北した。

 元の世界でゲームをクリアすることがどれだけ大変だったか。被害は酷いものになったが、どれだけあの男が本気だったか。許されることではない。許していいことではない。

 だが、それとは別に、ゲームの運営、制作のために文字通り命をかけた男のゲームと比べることすらおこがましい。あの最悪のゲームを戦い抜いた者たちにとってはただの大群など意味を成さない。運営するつもりも、真面目に制作していないゲームなど元から攻略対象ですらなかったのだ。

 それほど、永夢とレーザー、パラドにとってこのゲームはヌル過ぎた。

 だからこそ、経験の浅い十六夜たちを送り出すこともすぐに検討できたし、彼らの今後を思えばと思えたわけだ。

「これで終わりか」

「だろうな」

 コンボを決め、兵士を全滅させてきたパラドが戻ってくる。

 追撃はなく、それどころか周りから聞こえる音は自分たちの話し声だけときた。これは残存勢力はいないと見ていいだろう。

「あとは十六夜待ちか」

「十六夜くんたち、な。彼一人で事足りるって気持ちはわかるけど」

 二人して、”ノーネーム”の仲間が向かっただろう白亜の宮殿へと視線を向ける。

 先ほどと変わって、宮殿の最上階からは多くの音が響いてくる。ルイオスとの戦闘は始まっているのだろうが、果たしてどこまで拮抗しているのか……。

「なあ、レーザー。あれは?」

「あれ?」

 パラドが指差した宮殿の一部分。

 よくよく確認してみると、ヒビが入っているようにも見えた。

「おいおい、中でなにやってるんだ?」

 レーザーは嫌な予感がしたのか、面倒そうな表情を浮かべる。

 隣で待機しているパラドも、手にはマイティブラザーズXXガシャットを握り。

 まるで二人の警戒を読みとったかのように、次の瞬間にはヒビを起点に亀裂が広がっていき、とうとう宮殿を形作っていた壁が吹き飛ぶ。

 そこまでなら特に動くことはなかったのだが、ここで問題がひとつ発生する。壁とは別に、宮殿の中から飛鳥と耀が落下してきているのが見えた。

 更に、追撃と言わんばかりに褐色の光が宮殿の奥から放たれる。光は雲に当たると雲を石化させ、あろうことか落下中の飛鳥たちに向かって落ちてくる。

「はあ!?」

「派手にやったな」

 パラドは大凡の対局を見越していたのか、冷静にマイティブラザースXXガシャットを起動させた。

『MIGHTY BROTHERS XX』

「手伝ってもらうぜ、永夢。大変身」

 いつの間にか装着していたゲーマドライバーにガシャットを装填し、ゲーマドライバーを開く。

『ダブルガシャット!』『ダブルアップ!』

『俺がお前で! お前が俺で! マイティ! マイティ! ブラザーズXX!』

 隣り合わせで集まった粒子が人の形を作り、それぞれ青緑とオレンジを基調としたエグゼイドが姿を現わす。

「「超キョウリョクプレーでクリアしてやるぜ!!」」

 永夢とパラド。

 二人のエグゼイドはそれぞれにガシャットを掴むと、各々即座にガシャットを起動させた。

 パラドは再び仮面ライダーパラドクスへ。

 永夢は――。

『MIGHTY ACTION X!!』

『GEKITOTSU ROBOTS!!』

「大・大・大変身!」

 両手に持つ二本のガシャットをゲーマドライバーに挿入し、ゲーマドライバーを開く。

『ガシャット』『レベルアップ』

『マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションX!』

『アガッチャ! ぶっ飛ばせ! 突撃! ゲキトツパンチ! ゲ・キ・ト・ツロボッツ!』

 ゲキトツロボッツガシャットを使用することによって召喚されたロボットゲーマーと合体し、赤を基調としたロボットのような意匠となり、腕にはゲキトツスマッシャーが装着されたエグゼイドへとレベルアップを果たす。

「ノーコンティニューで、二人を救うぜ!」

「いくぞ永夢!」

 パラドが高速でエナジーアイテムを操作し、

『鋼鉄化』『マッスル化』

 二つのアイテムをエグゼイドへと使用する。

「ナイス、パラド!」

「ああ、行って来い! 頼むぞレーザー!」

『ジャンプ強化』

 バイク形態を保っていたレーザーにもアイテムを投げつけ、そのレーザーにエグゼイドが乗り込む。

「仕方ねえ、飛ばすぞ永夢!」

 落ちてくる石化した雲に向け、出現しているブロックを頼りに空を駆けていくレーザー。

 もちろん、雲をどうにかしなければならないのは当然なのだが、どうにもそれだけでは終わらない。

 先ほど確認された光が再び降り注ぐ。今度はあたり一帯を無造作に、何本も。そのうちのひとつが、宙を漂う飛鳥と耀に迫る。

「まずい……ッ」

「あの光に当たったら……」

 少し前に起きた光景を覚えていたのか、二人の少女が目を瞑る。

『ジャンプ強化』

「永夢たちは忙しいからな。そら!」

 空中で飛鳥たちの前まで跳んできたパラドは、更にもうひとつのアイテムを使用する。

『反射』

 目の前にバリアが展開され、いままさに当たろうとしていた光はそのまま進路を変え跳ね返っていった。

 その様子を確認したパラドは飛鳥と耀を両脇に抱えると、静かに地面に着地し二人を下ろす。

 残るは落下中の雲のみ。

 迎撃に向かった二人を信頼している彼は、なにひとつ心配などないという風にただ立ち、そのときを待った。

 

 

 

 

 

 パラドの助力を受け送り出されたエグゼイドとレーザーは、二人の使用しているガシャットによって展開されているブロックを起用に使い、強化されたジャンプ力を用いながらどんどんと石化した雲――もとい岩塊へと接近していく。

「ったく。追い詰められたのか隠していた駒を使ったのかは知れないけど、宮殿の中だけでやってほしいもんだな」

 移動しながらも、レーザーは愚痴をこぼす。

 本来ならもう自分たちの役目は終わっていたのにこの様だ。とはいえ、救うべき人がいるのなら、やはり彼は走り続けるのだが。

「けど、あれを砕けば終わりだ」

「そういうこと。さあ、もうすぐ着くぜ。あとは頼んだぜ、永夢」

「ああ!」

 移動をレーザーに任せ、エグゼイドはゲーマドライバーに挿入されているゲキトツロボッツガシャットを引き抜きく。

『ガッシューン』

 抜いたガシャットを、今度はキメワザスロットホルダーへと挿入し、上部のボタンを押す。

『ガシャット!』『キメワザ!』

 とうとう、レーザーが岩塊の目前へと到達する。

 エグゼイドはレーザーの上に立つと、腕を前へと向けた。

「みんなの命は、俺が救う!」

『GEKITOTSU CRITICAL STRIKE!』

 腕に装着されていたゲキトツスマッシャーを射出させ、岩塊へと突撃させる。次いで、レーザーの背を蹴り、エグゼイド自身も岩塊へと接近。先に射出させていたゲキトツスマッシャーが岩塊に衝突して亀裂を入れる中、再度、追撃のパンチをゲキトツスマッシャーと共に放つ。

 亀裂が入っていた岩塊は二度に渡る衝撃に耐え切れず粉々になっていく。

 破片はすぐに小さくなり、地上に到達するころには脅威とはなっていないだろう。

「よっしゃ、よくやったぜ永夢」

 岩塊を破壊したエグゼイドを回収したレーザーは、安堵の息を吐きつつ地上へと戻っていく。

 そこには、エグゼイドとレーザーの帰りを待つようにして立つパラドと、傍にはこちらを不思議そうに見つめている二人の少女の姿があった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。