捻くれぼっちの凡校生活   作:シロアリ

3 / 4

話が一向に進まない…

文字は2000字〜を目安にして書いてます。




イワカン

 

 

 

 

 

 

 

 

 お昼休みが終わって、今は次の授業の先生が来るのを待っている。

 ちら、と隣の席に目を向けても、比企谷君はいない。

 一条君と桐崎さんが言い合いになっていた時、気が付いたら彼は教室にはいなかった。

 もしかしたら体調を崩してしまったのかもしれない。

 午前の授業も寝ちゃってたし、寝不足なのだろうか。

 

「はーい、授業始めるぞー。日直は号令かけろー」

 

 

 ガラッ勢いよく教室の扉が開く。一瞬、比企谷君が戻ってきたのかと思ったが違ったようだ。

 

「あれ、比企谷はどうした?誰か知ってたら教えてくれ。小野寺、何か聞いてないか?」

 

 出席を確認していた先生が声をかける。

 誰も知らないらしく、声を上げる人はいなかった。

 

「えっと、私も分からないです」

 

「そうか。まぁいい、じゃあ今日は教科書の──」

 

 そうして、比企谷君がいないまま授業が進んで行った。

 午前までくっついた机には少し隙間が空いている。

 特に何でもないような事のはずなのに、私は得体の知れない不安に襲われた。

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 

 

 

 意識が浮上する感覚がして目を覚ます。

 立ち上がろうとするも無理な体勢で寝てしまったせいか節々が痛んだ。

 思ったより長い時間寝ていたらしく、既に日は傾いている。

 昼間よりは少しばかり冷たい風が吹いていて、寝起きの体には心地よい。

 

 ふと、下から声が聞こえてくる。

 見ると一条と桐崎が飼育小屋でぎゃあぎゃあ騒いでいた。

 あいつらいつも言い合いしてる気がする。

 喧嘩するほど仲が良いとも言うし、きっとあれも青春なんだろう。小町とはしょっちゅう喧嘩してるけど仲良いしな。

 あれ良いよね?合ってるよね?嫌われてたら死にたくなるんだけど?

 

 とりあえず帰るために俺は教室へ戻ることにした。

 

 

 

 

 

 教室に着くと、小野寺と女子生徒が話していた。

 それ以外に人はいない。

 既にオレンジ色に染まり始めている夕日が窓から差し込んで、どこか幻想的な風景を生み出していた。

 まぁただの『放課後の教室』である。

 

「あっ、比企谷君!何処にいってたの?」

 

「あー、すまん。寝てた」

 

「どこか体調悪いの?」

 

「いや、ただ眠かっただけで体調は普通だ」

 

 

 小野寺の横を通り過ぎて鞄に手をかける。

 俺は流れるように無駄のない動きでターンを決めて教室後ろのドアに向かって歩いた。

 今のはなかなか良かったんじゃないだろうか。

 世界一無駄のない動き選手権があったらトップを狙えるとみた。まぁこの思考が無駄そのものなんだけどな。

 

 

「あっ、あのっ!」

 

「じゃあな」

 

 

 小野寺はなにかか言いかけたが、その先を遮った。

 そのまま教室を出て、玄関へと足を進める。

 そうだ、これでいい。これが正しい距離なのだ。

 

 窓の外には飼育小屋が見える。

 つい先ほどまで煩かったあの2人はもう居ない。

 玄関に着き靴を履き替えると、俺は真っ直ぐ帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 ──────────────────

 

 

 

 

 

「それで比企谷、なぜ君は昨日なんの連絡もなしに授業をサボったんだ?」

 

「連絡すればサボっても良かったんすか?」

 

「屁理屈を言うな」

 

 有無を言わさぬ形相で我がクラス1ーCの担任、日原先生は俺を見た。

 表情には若干呆れが入っている。

 今俺は貴重な昼休みを職員室で潰されていた。

 

「ちょっと眠かったんで屋上で寝てました。いやほら、そんな状態で授業受けてたら不誠実じゃないですか、俺は悪くありません」

 

 間違ってはないはず!この言葉を午前の俺に言ってやりたいところだ。

 

「はぁ…」

 

 ついに完全に呆れたらしい。おいやめろ。俺にそんなどうしようもないものを見るような視線を向けんな。

 

「どうだ。まだ2日目だがクラスで友達はできたか?」

 

「いません」

 

 2日どころか中学校3年間で1人も居なかった。いや、一人いたな。ふと甘酸っぱい思い出が蘇る。

 

『友達じゃだめかなぁ?』

 

 あー、これダメなやつだ。友達どころかそれ以降一度も話さなかった。

 あれを友達だというなら、一条たちを除いたクラスの連中全員友達という事になる。

 

「よし。ならきっかけをやろう」

 

「…はい?」

 

「昨日の放課後に一条が来てな。なんでも落としたペンダントを探してるとか。比企谷も探すのを手伝ってやれ」

 

「はぁ!?いやいや無理ですやりませんよ?私物を無くしたのは自己責任です。そこに俺が介入するのはおかしいでしょ」

 

「何を言ってるんだ。クラスメイトに協力するのも友達作りの一歩だろう?ちなみにこれは強制だ」

 

「なんだと…」

 

 察した。これ何言っても無駄なやつだわ。

 

「なにも勉強を教えるだけが教師の仕事じゃあない。悩める生徒に道を示すのもまた、教師の仕事だ。君は性格が捻くれてるが大事な教え子だからな。良い友人関係を築く事でそれが改善されると信じて、サボりの件はチャラにしてやる」

 

「…分かりました」

 

 抵抗を諦め、一つ返事で了承する。

 案外生徒のことを考えている事に感動しそうになった。対象が俺じゃ無ければの話だが。

 ただし、とさらに先生は言葉を続ける。

 

「それすらサボるようなら…分かるな?」

 

「イエス、マム」

 

 一気に視線が鋭くなった。美人なだけにこういう視線には目力が込めらて圧倒されてしまう。

 

「よし、お説教は終わりだ。頑張れよー」

 

 

 踵を返して職員室を後にする。

 失礼しましたと声をかけて扉を閉め、その場を離れた。

 

 とりあえず確定したのは今日から放課後の時間が一条のために消費されるということである。

 ちくしょう、普通に反省文とかの方がまだマシだった。これ普通にペナルティじゃねーか。

 心の中で愚痴りながら、自分でもはっきり分かるくらいに目を濁らせた。

 めんどくさいことは後で考えればいいか。

 そう結論付けて俺は会話に花を咲かせる連中の横を通り過ぎ、屋上を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





女子生徒、ズバリるりちゃん

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。