弱体モモンガさん   作:のぶ八

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前回のあらすじ

モモンガさん達の手によりビーストマン死に絶える!
そして近い将来、世界中が大変な目に遭う!


浮遊都市編
ギルド拠点


 浮遊都市エリュエンティウ。

 

 かつて世界を支配したと伝えられる八欲王が作りし都市。

 元王国の都市エ・ランテルよりはるか南の砂漠の真ん中に位置する場所にそれはある。

 浮遊都市とも呼ばれているものの、厳密には都市とその上に浮遊した城を指しての総称としての名であり都市そのものが浮いている訳ではない。

 だがその都市は砂漠の真ん中にあるとは思えない程に豊かで発展している。

 砂漠の真ん中にありながらその都市だけ周囲から切り取ったかのように景色が違う。木々は茂り、大地だって枯れた砂ではなく、しっかり踏みしめる事の出来る大地になっている。

 他の都市のように周囲を何メートルもある大仰な塀が囲っているなどという事はなく、簡単な柵や土壁が都市の周囲を囲っている。外からの脅威を防ぐというよりも、ここまでが都市ですよと現しているだけのもの。

 頭上に浮かぶ天空城からは無限の水が流れ込み、都市の至る所が水路で満たされ景観を彩っている。昔の現実世界に詳しい物ならば「水の都ヴェネツィア」のようだと形容するだろう。

 

 そしてこの都市の頭上にある浮遊した城こそがかの八欲王のギルド拠点であり、その下に位置するエリュエンティウと呼ばれるこの都市は八欲王が世界を支配した際に首都とされた場所。

 八欲王亡き後もこの都市だけは侵略を受けず、また独立を保ったままである。

 その理由は都市全域を魔法結界が包んでおり、あらゆる外敵から都市を守っているからだ。

 付け加えて言うならば、今まで何者かの攻撃を受けた事が無い訳ではない。しかし前述のように侵略と言えるような脅威にさらされた事は一度も無い。あるいは戦いと呼べるステージに立てる者が存在しなかったというべきか。

 都市全域を包む魔法結界がこの世界においては非常に高度で、並大抵の者では打ち破れぬという事も要因の一つであろう。

 だがかつてその魔法結界に阻まれず侵入出来た猛者達も存在するが浮遊する城から放たれる魔法によって残らず殲滅されている。

 都市全域を包む強力な魔法結界、侵入者を殲滅する城からの攻撃。

 しかしそれらすらも霞む点が一つ存在する。

 

 それは30人からなる都市守護者と呼ばれる者達の存在である。

 

 この世界において桁違いとしか形容できぬ魔法の武具に身を包んだ都市守護者達。

 その強さはかの神達に並ぶとまで称されるがその真偽は不明である。なぜなら現在生きている者の中で彼等の戦いを知る者はいないからだ。その強さは八欲王同様、伝説に謳われるのみである。

 だが八欲王の伝承に詳しい者達は彼等の存在には謎が多いと語る。

 彼等はその全てが八欲王に忠誠を誓う者として伝えられているが、その忠誠を捧げる者は個々によって差異があるらしいという事だ。

 まるで八欲王の中で派閥が存在するように彼等は8人のいずれかへと忠誠を捧げているという。

 しかしならばなぜ彼等は八欲王が互いに争った時に誰も介入しなかったのか。

 もし彼らが介入していれば結末はまた違ったものになっていたかもしれないのに。

 一つの仮説としては彼等は都市を守護する為に存在する者達であり、それを優先したからという説が有力である。己が役目を全うする以外に彼等が動く事は無いのだと。

 だが本当にそうなのだろうか。

 事実として彼らがこの世界において戦ったという記録は存在しない。

 30人の都市守護者が存在すると語られる裏で、その存在についてもわずかながら懐疑的な意見が存在する。

 しかしそのどちらであろうとも関係ないだろう。

 歴史上、エリュエンティウの平和が脅かされた事など一度も無いのだから。

 また、仮にその気があったとしてもこの都市を脅かせる者などこの世界のどこにもには存在しない。

 いや厳密に言うならばこの世界の頂点に座する真なる竜王たちならば可能かもしれない。

 だが結果として八欲王に恨みを抱いている筈の彼等でさえエリュエンティウには一切干渉していない。

 それは八欲王本人達で無いから関係無しと判断しているのか、それとも彼等でさえ警戒するべき何かがあるからなのか…。

 いずれにしろこの平和が続く以上、都市守護者達の真偽について語る必要などどこにもない。

 ただ伝説として人々の拠り所であればそれで十分なのだ。

 真実など、誰も知る必要は無い。

 

 

 

 

「ここがエリュエンティウ…!」

 

 モモンガが感嘆の意を込め呟く。

 広大な砂漠を難なく踏破したモモンガ一行の前にあるのは砂漠の真ん中にポツンと存在する一つの都市。

 だがもっとも目を引くのはその都市の頭上に浮遊する巨大な城であろう。

 その城の下部から都市で最も大きいであろう建物、もはや塔とでも呼ぶべき建築物。それへと大量の水が流れ落ちているのが都市の外からでも目にする事が出来る。

 

「あそこから流れ出てる水が水路に流れ都市中へと送られている。都市の中を歩けば至る所に水路があり、その上へと橋がかけられている。生活のすぐ側にこれだけの水が溢れている都市など世界を探してもそうないだろう。知らない者が見れば海辺の都市と言われても信じる程だろうな」

 

 モモンガの呟きにそう答えたのはイビルアイ。

 彼女はかつてこの都市に来た事がある。それは二百年も昔の話、今では十三英雄と呼ばれる者達と共にだ。

 その時、十三英雄のリーダーは力を求め都市の上に浮く巨大な城へと足を踏み入れた。しかし城の中へと足を踏み入れたのはリーダーただ一人で他の者達は誰一人として入城していない。

 正確には入城しようとしたが城の警備の者達に止められたと言った方が正解であろう。

 城の入り口を守っていたのは強大な力を持つゴーレム達。会話も通じずリーダー以外が入城しようとすると敵対行動と見做され攻撃を受けた。

 しかしリーダーだけが例外だった。

 それはプレイヤーだからなのか、それとも何かしらの手段を講じていたからなのかは分からない。

 さらに言うならばイビルアイはリーダーの真相については多くを知らない。

 知るのはツアーやリグリット、その他の一部の仲間達だけだ。それはあまりに衝撃的であり、ツアーをもってしても受け入れがたい事実だった。だからこそ仲間達から泣き虫と可愛がられていたイビルアイには語られることは無かった。

 

「ここがエリュエンティウですか…! す、素晴らしい…! 都市を覆うほどの巨大な魔術結界…! これだけの魔力をどうやって維持しているのか…! どういう術式を組んだらこんな事が出来るのか全く想像が出来ません…!」

 

 デイバーノックはただただ目の前に広がる結界の素晴らしさに心を奪われ、貪欲にその結界を舐めるように目を走らせる。

 

「もう都市は目の前なんだ、さっさと行こう。敵対行動や都市内で魔法を使わなければ特に問題は無い。都市への入場も結界を通り抜けられるかどうかが全てだ。門番もいるが特に気にする必要はない」

 

 思いを馳せる三人を急かすようにズーラーノーンが言う。

 

「なんだ貴様、思ったより詳しいじゃないか。流石は秘密結社の長とでも言うべきか。もしかして来た事でもあるのか?」

 

 怪訝な様子でイビルアイがズーラーノーンへ問う。

 

「いいや、ただまあ長い時を過ごしていれば色んな情報が入ってくるからな…。お前の言う通り伊達に組織の長をやっていたわけではないという事だ。とりあえず行こうじゃないか。都市を前にして話し込むというのもおかしな話だ」

 

「そうですよ! ズーラーノーンさんの言う通りです! 行きましょう!」

 

「ああっ! お、お待ち下さいモモンガさ――ん!」

 

 ノリノリで歩を進めるモモンガに慌ててデイバーノックがついていく。

 それを見たイビルアイとズーラーノーンもやれやれといった様子で後ろに続いた。

 

 

 

 

 都市に入るのは驚くほど簡単だった。

 門番はいたものの、他の都市のように細かいチェックや身元確認等は一切無かった。ただ門番に促されるままに順番に門を通るだけだけだった。

 イビルアイ曰く、八欲王の残した都市を守る結界により一部の種族や敵対者は入れないようになっているらしい。

 モモンガはそれを聞いて驚いていたがそれでこの五百年、特に問題は起きていないらしいので誰も気にしていないのだという。

 大きな問題が起きると城からゴーレムが派遣されるようでそういった事も抑止力になっているのだろう。

 

「しかしやはりこういう場所でもアンデッドは肩身が狭いですねぇ」

 

「そりゃ、な。アンデッドを受け入れてくれる場所なんて中央大陸へ行ってもまずないだろう。俺も今までそんな場所は見た事が無い。だからこそ秘密結社なんて作る事になったんだからな」

 

 モモンガとズーラーノーンが苦笑しながら話す。

 モモンガ達は難なく都市へと入場したがアンデッドである彼等は本来であれば結界に弾かれ入る事は出来なかった。しかしそれはモモンガのアイテムにより偽装する事で解決できた。イビルアイだけは自前の装備で必要なかったが。

 

「少なくとも俺達は真っ当な方法で入ってる訳じゃないから目立つ事は出来ないが…、気にする必要もないだろう。この都市の奴等は結界を信じ切ってる。アンデッドが入っているなんて誰一人想像していないだろうよ」

 

「少し心は痛みますけどしょうがないですよね。別に悪い事する為に入ってる訳じゃないんですし」

 

「…そうだな、その通りだ」

 

 含みのある声でズーラーノーンが呟く。

 だがそれに気付かないモモンガは「アイテム借りる時にバレたらどうしましょう?」とオロオロしている。

 ズーラーノーンだけはその心配が無用な事を知っているがそれは口に出さない。

 

 モモンガの方はオロオロとしながらも頭の中は冷静そのものだった。

 このエリュエンティウの存在、そしてなぜこの世界においてプレイヤーと思しきリーダーだけがアイテムを借り受ける事が出来たのか。

 

(ずっと気になっていた…。なぜリーダーだけがアイテムを借りれた…? 他にも欲しがる者などいくらでもいるだろうに…。やはりプレイヤーだからか? しかし腑に落ちない。誰が貸し出す許可を出した、いや出せるんだ? もうこのギルドを支配していたプレイヤーはいないというのに…。そもそもだ、プレイヤーがいなくなったギルド拠点はどうやってそれを維持している? この都市を魔法結界で守る代わりに収入を得ているのか? まて、ユグドラシル金貨じゃなくてこの世界の硬貨を拠点運営の費用として使用できるのか? 物価の違いは? 恐らくあの城の防衛機能を動かすには莫大な金貨が必要だろう。貯えがある? いや、何百年もそれが続くものか。もし仮に物価の違いでギルド拠点の維持費が低コストとかいう状況でもない限り…)

 

 かつて自らの支配していたナザリック地下大墳墓を思い出すモモンガ。

 己一人の稼ぎで維持する為には様々な防衛機能をオフにしなければならなかった。ゲーム内の額としても決して安いものではない。いや、高いとさえ言えるだろう。ギルドの維持とは簡単なものではないのだ。仮に仲間の残した財産を投入したとしても何百年も持つだろうか。

 持たないだろう。

 それはナザリック地下大墳墓という拠点がユグドラシルでもトップクラスの拠点であり、また初見クリアや課金などでさらに上限が引き上げられているせいもある。

 なぜモモンガはエリュエンティウを見てナザリック地下大墳墓を引き合いに出したのか。

 それはエリュエンティウが、いや、その頭上に浮遊する城が心当たりのあるものだったからだ。

 もちろん確実とは言い切れない。なぜならモモンガはその実物を見た事も無ければ諍いを起こした事も無かったからだ。

 しかし考えれば考える程、そしてこれがプレイヤーのギルド拠点だったという事実を加味すると結論は一つしか導き出せないのだ。

 

(アースガルズの天空城…! まさか本当に拠点ごと…! だが、もしこれがそうならば八欲王とは…!)

 

 アースガルズの天空城。

 

 それはユグドラシルでも知らぬ者がいないほどに有名な拠点の一つだ。

 空高くに浮遊するという特性上、他の拠点とは一線を画す。基本的にゲーム内では空を飛べる高さの上限が決まっている為、この天空城より高く飛ぶことは出来ない。

 つまり防衛において一方的に頭上から攻撃できるというアドバンテージを有する。これが出来る拠点はモモンガの知る限り他に存在しない。ユグドラシルで最も堅牢な拠点の一つと言って差し支えないだろう。

 だがもちろん良い事づくめではない、一つだけ決定的なデメリットが存在する。

 

 圧倒的なコスパの悪さだ。

 

 防衛のオンオフなどとは別で、常に城を浮かせ続けねばならずその消費は強制なので最低額の維持費だけでもバカにならないとモモンガは伝え聞いた事がある。

 だがもしそうであるとするならば、この世界でどうやって維持費を捻出するのか。

 かつてズーラーノーンに聞かされた言葉が脳裏をよぎる。

 

『これは友人から聞いた話だが、八欲王は複合ギルドというものだったらしい。八人からなるギルド。その証としてギルド武器は8つに別たれたとか』

 

 ギルドを複数のチーム、あるいは個人で折半する機能だ。そういうシステムがユグドラシルには存在した。

 これのメリットとしては拠点の機能を最大限に使う事が出来るにも拘らず、出す費用はそのチームの数で割れるという事だ。シェアハウスのようなものだろう。

 デメリットとしてはギルド武器がそのチーム分、存在する事になってしまうという点だ。防衛の意味においては拠点崩壊の為のきっかけがいくつもあるようなもの。しかも玉座の間を除けば同一の部屋に保管できないという制限の為、各自がそれぞれ防衛の部屋を作るか持ち歩かなければならず非常に危ういと言えるだろう。

 他には乗っ取りや裏切りなど様々な問題を孕んだシステムであり、円満に最後を迎えた複合ギルドはそう多くない。

 とはいえ現状そのプレイヤー達が存在しない以上、維持費をシェア出来るかどうかなど関係無いわけでコスト問題は解決していない。

 

 そのように様々な考えがモモンガの頭を掠めるが最後に辿り着いたのは、一つの仮説。

 

(エリュエンティウは…、いやアースガルズの天空城の防衛機能は本当に今も生きているのか…? もちろん低レベルなトラップ等が生きている可能性は十分にある…、しかし…。十三英雄の…、プレイヤーだった彼だけが天空城へと入城できアイテムを貸し与えられた…、それがどうにも引っかかる)

 

 もはやそれはモモンガの中で確定と言ってもいい程に固まっていく。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()…!? いや、入るのが初めてだとしてもユグドラシルの拠点…、その多くの防衛機能が動いていないとすれば攻略は容易い…! 元ユグドラシルプレイヤーであれば拠点攻略のセオリーは十分承知しているだろう。それに上級レベルの警報が作動しなければ高レベルモンスターの感知も掻い潜れるだろう…。何よりこの都市全域を覆う魔法結界…、そもそもこれは低レベルモンスター等を排除する為の結界だ…。皆の手前アンデッド偽装のアイテムは渡したが恐らく一定以上のレベルがあればそもそも反応しないだろう。これが都市中の者から全幅の信頼を置かれていると聞いた時は驚きを隠せなかったな…。もしアースガルズの天空城が健在ならばもっと遥かに強力な結界を張る事だって可能だった筈だ…。恐らくだが天空城はこの都市から利益を集めるシステムを確立しているのだろう、その為に都市へと水を落とし結界で庇護する。納得のできる答えだ。しかしその実、生命線である都市を守る結界のレベルは決して高くない。つまりは…)

 

 すでにモモンガは確信していた。

 アースガルズの天城、それはもはやかつての力を有していない。

 レベルの下がった今の自分でも十分攻略出来るだろうと。

 恐らくアイテムを借り受けたというのは言葉の綾だ。十三英雄のリーダーも天空城を攻略してそのアイテムを掴み取ったのだ。ならばモモンガもそれに続いて何の問題があるのか。

 拠点を荒らす事になるのは申し訳ないとは思う。

 しかしその主はもうこの世界にいないのだ。

 

(敬意は払う。拠点を無駄に荒らす事もしない。だが、攻略をするなと言われる筋合いはないぞ…! 攻略をされてこその拠点! それを返り討ちにする事こそが拠点を持つ者の本懐だろう。俺とてそこで迎撃され、敗れるならば本望だ)

 

 その天空城は全盛の姿ではないがそれでもモモンガの心を躍らせるには十分だった。

 記憶が蘇る。

 拠点に攻め入った事も、また攻め入られた事も。

 しかし腐ってもユグドラシル最高峰の拠点の一つ。

 防衛が生きてなくとも何人のNPCがいるのかわからない、その強さも。

 

(100レベルNPC…。まぁいるだろうな…。普通に考えれば今の俺のレベルで拠点攻略など無謀の極み。しかし当時誰よりも弱かったとされる十三英雄のリーダーでさえ攻略出来たのなら、レベルの下がっている俺だって十分に攻略出来る筈だ…! 少なくともリーダーの存在はそれが可能なルートが存在している証明…! だが最大の心配事は…、もしそのリーダーがアイテムを全て持ち出していたら…、うん、流石にそこまではしてないと信じよう。仮にもし多くのアイテムを持ち出せているならこの世界のレベルを考えればもっと話題になっている筈…。話を信じるならば十三英雄のリーダーは魔神を倒すのに必要な程度のアイテムしか持ち出していないと推測できる…。しかしそれはそれで欲が無いな…。いや、それだけしか持ち出せなかったと考える方が自然か…)

 

 考えが巡る程に期待で胸を膨らますモモンガ。

 その瞳にはギルド、アインズ・ウール・ゴウンの長であった頃の輝きが確かに宿っていた。

 

 アーズガルズの天空城を支配したギルド。

 それは間違いなくユグドラシル最強のギルドであっただろう。

 なぜならそれは、たっち・みーを除いた8人のワールドチャンピオンからなる伝説のギルドだったからだ。

 ユグドラシル史上、最も有名なギルドであり、またあらゆるプレイヤーから最も羨望の眼差しを受けたギルドでもある。それはモモンガとて例外ではない。

 今は衰えたといえ、誰もが認める最強のギルド拠点を攻略するなどプレイヤー冥利に尽きるだろう。

 

 サービスが終了してからその機会が訪れるなど、誰が予想できようか。

 

 

 

 

 エリュエンティウの都市の端に一つの古ぼけた孤児院があった。

 端といっても都市全域に水は流れ緑の木々も元気に羽を揺らしており、決して居心地が悪い場所ではないのだ。それはこのエリュエンティウという都市がどれだけ恵まれ、また管理が行き届いているかの証明でもある。

 孤児院の子供達も餓えてなどいない。

 裕福な暮らしとは言えないが清潔な衣服に身を包み、腹を満たし、柔らかな布団で眠る事が出来るのだから。

 その中で今日も無邪気な子供達の声が響く。

 

「ねぇシスター、絵本呼んでよー」

 

「うるさいなー、私は今忙しいんだよ。あっちで勝手に遊んでろ」

 

「ぶー。シスター昨日もそう言って相手してくれなかったじゃん。たまには絵本呼んでよ」

 

「だから無理だって言ってんだろ、気持ち悪くて立てねぇんだよ」

 

「あーっ! 昼間からお酒飲んでるの!? ダメだよ! 神父様に注意してもらわなきゃ!」

 

「ばっ! や、やめろ! チクるんじゃねー!」

 

 そう言って走る女の子をシスターと呼ばれた金髪の女性が追いかけるが時すでに遅し。ドアを開けたそこにはすでに神父が立っていた。

 

「またお酒ですか、シスタークレマンティーヌ」

 

 やれやれといった様子で初老の男性が声をかける。

 

「べ、別に酒くらい飲んだっていいだろ! ていうかさ、やっぱ私無理だって。シスターとかガラじゃないし子供の相手もできねーよ」

 

 憮然とした態度で修道服に身を包んだクレマンティーヌが言う。

 

「行き倒れてた私を助けてくれたのは感謝するけどさー、シスターの真似事なんて性に合わないんだよ」

 

「貴方が目を覚ました時にも言ったでしょう。私も便宜上シスターと呼んでいますがそういった仕事はしなくてもいいと。ただ私一人では子供達に手が回らないのでそれを手伝ってもらいたいだけですよ」

 

「だから無理だって言ってんだろ! ガキのお守りなんてやった事ねぇーんだよ!」

 

 チンピラのような表情で凄むクレマンティーヌに飄々とした様子で神父は答える。

 

「何事にも最初というものはありますよ。それに私が見た所、子供達は大分あなたに懐いているように見えますが? 貴方が来てからまだ数日しか経っていないというのに」

 

「ハァ!? 馬鹿言えよ、なんで私に懐くんだよ。ここにきてからまともに面倒なんて見た事ねぇぞ。ただ知らない人間が来たから物珍しいだけだろ」

 

「フフ、そうかもしれませんがね。他の大人と違って本音で話してるのが子供には分かるんでしょう。貴方の態度は良くも悪くも一切の忖度が無い。何よりここにはあの子供達以外には私のような老人くらいしかいませんからね。やはり子供達からすれば新鮮なのでしょう。あまり個々に付き合ってあげられる時間も取れませんでしたし。貴方の言う通り年長の子供達は最初怯えていた様子もありましたが小さい子が貴方にじゃれつくのを見てそれも薄まってきていますしね。良い傾向です」

 

「何がだよ! 面倒事押し付けてんじゃねぇぞ!」

 

「少しくらい良いでしょう? 子供の面倒を見るだけで衣食住に困らないんですから。第一派手に仕事をする訳にもいかないのでしょう?」

 

 見透かしたような神父の言葉にクレマンティーヌの表情が硬くなる。

 

「な、なんでそれを…!」

 

「はっはっは! 様々な事情を抱えてこの都市に流れ着いて来る者はたまにいるんですよ。その傷、そしてその装備を見れば貴方がどういう人間か多少は分かるつもりです」

 

「ふーん…。そんな奴をこの孤児院においといていいのかな? その内子供を殺すかもしれないよ?」

 

「この都市で問題を起こす事はオススメしませんね。貴方もこの都市については耳にした事くらいあるんじゃないですか? 目立ちたくないならば大人しくしておくのが賢明です」

 

「チッ…!」

 

 結局クレマンティーヌは神父に口で勝つ事は出来なかった。

 なぜなら神父の言うようにこの都市で問題を起こす事は決して賢いとは言えないからだ。

 この治安と行き届いた管理により行方不明者等が出ればすぐに問題になる。なによりこの魔法結界によって悪事が露見する可能性もあるのだ。魔法には詳しくないがこの規格外の魔法で覆われた都市で問題を起こそう等とは流石のクレマンティーヌにも思えなかった。

 何より今はほとぼりが冷めるまで姿を隠す必要があるのだ。問題は絶対に起こせない。

 行き倒れて死ぬ前にこの孤児院の神父に拾われたのは本当に僥倖だった。

 子供の世話、クレマンティーヌは真面目にやっていないがそれをするだけで食べ物と住む所にありつけたのだから。最初は裏があるのかと疑ったがエリュエンティウの防衛力、治安や生活水準の高さを見れば怪訝とでも言うほどでは無い事がわかった。

 クソがつくほどのただのお人よし、偽善にも似たそれに反吐が出るが利用できるものは利用した方がよい。

 クレマンティーヌならば冒険者の真似事でもっと稼げるだろうが目立つわけにはいかないという現状良い手とは言えなかった。

 そういう意味でも労せず生活に困らなくなった現状は本当に運が良かったのだ。

 

「では夕ご飯までの間、子供達のお世話お願いしますね」

 

 そうしてクレマンティーヌの新たな苦難の日々が始まった。

 

 

 ――翌日――

 

 

「シスター、遊んでよー」

 

「遊んで遊んでー」

 

「だっこー」

 

 何人もの子供達がクレマンティーヌに纏わりつく。

 

「離れろガキどもっ!」

 

「やだー!」

 

「やだもんねー!」

 

 クレマンティーヌの恫喝になど怯まずキャッキャと子供達は笑う。

 

 

 ――翌日――

 

 

「シスター、今日は天気良いから散歩行こうよ」

 

「やったー! シスターと散歩だー!」

 

「私準備してくる!」

 

「お、おい! 私は行くなんていってねぇだろ!」

 

 その時クレマンティーヌの視界の端にいってらっしゃいというふうに手を振る神父の姿が見えた。

 

「あ、あのクソジジイ…!」

 

 

 ――翌日――

 

 

「「「シスター!」」」

 

「待て待て、どうせお前らの言う事は分かってるんだよ。ここは取引と行こうじゃないか?」

 

「取引?」

 

「あぁ。私が神父のジジイに言われてる買い物を代わりに行ってこい。そしたら遊んでやるよ」

 

「本当!? 約束だよシスター!」

 

「ああ、約束だ」

 

 

 ――翌日――

 

 

「「「ねぇシスター!」」」

 

「待て待て、遊んでやりたいのは山々なんだが洗濯が…」

 

「皆で手伝うよ! そうしたらすぐに終わるよ!」

 

 

 ――翌日――

 

 

「「「今日こそ遊ぼうシスター!」」」

 

「ぐぅ、ちくしょう…無理だ…。今すぐ甘い物食わねぇと動けねぇ…。何か作ってくれ…」

 

「クッキー焼いてあげる! 私得意なんだよ!」

 

 

 ――クレマンティーヌがこの都市に来てから十数日後――

 

 

 また子供達を良い様に使ってサボッているクレマンティーヌ。ふとその後ろに神父が歩み寄る。

 

「おかしいですね…、あれは貴方にお願いしたと思っていたのですが…」

 

「げっ! い、いや違うんだよ、ガキ共がどうしてもって言うからさー…」

 

「ふむ…」

 

 神父は考え込むような、しかし優し気な顔をして。

 

「まぁいいでしょう。子供達は楽しそうにしてますしね…。どうやらどうにかして貴方に遊んでもらえるように試行錯誤するのが面白いんでしょうか。なかなか子供心というのは分かりませんね…」

 

「な、なんだよ文句でも…」

 

「別にありませんよ…。過程はどうあれ子供達の世話をしてくれているようですしね。しかし意外と貴方にはシスターが似合うかもしれませんね」

 

「は、はぁ? 似合う訳ねーだろ、適当な事言ってんじゃ…!」

 

「「「シスター!」」」

 

「ほら子供達が呼んでますよ。今日の買い物は流石に荷物が多いのでね、貴方も着いて行ってくださいね」

 

「わぁーってるよ。流石にガキ共に重い荷物持てって言うのは酷だしな」

 

 そう言って渋々ながら引率するように子供達を連れて商店街へと向かうクレマンティーヌ。

 丁度この日、四体のアンデッドがエリュエンティウへ現れていた事など彼女には知る由もなかった。

 

 

 

 

 エリュエンティウの中心には都市を横断するように巨大な川が流れており、その両岸は店舗や出店で溢れている。さらにその巨大な川の真ん中にかかる橋は橋とは思えない程に広く、広場のようだと形容できる程に大きい。煌びやかな装飾で端々まで彩られており最も人々が賑わう場所の一つである。

 橋の欄干には数々の御伽噺の英雄達がモデルとされている像が立ち並んでおり、その中心には小振りな舞台が設置されている。本格的な劇場で演じられるものとは別に宣伝目的のものや出し物等が盛んでそれを楽しみに足を運ぶ者も少ない。

 もちろん両岸に立ち並ぶ様々な店舗を行き来するのに利用されるのが主で人の往来が途絶える事は無い。

 

「ねぇシスター、今日もあの出し物やってるよ。私あれ好きー」

 

「えー! 僕まだちゃんと見た事ないんだ、ちょっとくらい見てもいいでしょ?」

 

「疲れたー、おんぶー」

 

 人混みの中で大きな荷物を抱える一人のシスターが複数の子供にそのような言葉を浴びせられながらジャレつかれていた。

 

「ダ、ダメだ、ダメだ! こんなんいつでも見れるだろ! 私はとっとと買い物終わらせて帰りたいんだよ! ていうか勝手に乗っかるな! こっちは荷物だけで精一杯なんだよ!」

 

 そのシスターは必死に纏わりついていた子供達を振り払うが子供達はキャッキャッと楽しんでいるだけだ。

 

 大勢の人々による活気と賑わい、さらには天空城の守護の元にあるという安心感と治安の良さ。餓えも暴力も差別だってこの都市には存在しない。

 もはや楽園としか言いようがないその都市で彼女は悪夢に邂逅する。

 

「シスター! 孤児院までかけっこだよ!」

 

「あ、バカ! こんな人混みで走るんじゃ…!」

 

「きゃあっ!」

 

 シスターが注意している最中にそれは現実となった。

 子供の一人が深々とフードを被った一人の男とぶつかってしまったのだ。もちろん男が動じる筈など無く、倒れた子供へ困った様子で手を差し出していた。慌ててシスターはその子供へと駆け寄る。

 

「だから走るなって言ったろ! わりーな、アンタ。怪我…、は無いと思うが何か壊れたり汚れたりしてねーか?」

 

 仮にあっても弁償する気など欠片も無いが形式上だけでも聞いておこうとシスターが口を開く。

 しかしフードを被った男、その下には奇妙なマスクがあった。

 そのマスクの下、瞳がある部分だが影になっていて全く窺う事は出来ない、まるで存在しないのではないかという程に。

 だが不気味なその様子とは裏腹にマスクの下からは確かに驚愕という感情が伝わって来た。

 

「な、なんだよ…。私の顔に…」

 

「…クレマンティーヌ」

 

「っっ!!!」

 

 その一言で全身の肌が泡立ち、また背筋が凍るような恐怖を感じた。

 その声はシスター、いやクレマンティーヌにとってはよく知る声だったからだ。クレマンティーヌにしか聞こえない程に小さな声で呟かれた言葉だったがそれは死の宣告のように彼女の耳に張り付いていた。

 

「まさか生きていたとは…! 死んだと聞いていたがな…!」

 

「……!」

 

 声を発しようにも魚のようにパクパクと動くだけで喉から音は出ない。心臓は高鳴り、動揺で思考も纏まらない。血液は体内を逆流したように強く波打ち、吐気が奥からこみ上げてくる。

 ただ一つだけ脳内にあったのはなぜこいつが、その想いだけだった。

 

「め、盟主…」

 

 聞き間違える筈など無い。秘密結社ズーラーノーンの長にして、帝国を滅ぼすと同時にクレマンティーヌを使い潰そうとした憎き相手だからだ。

 しかしクレマンティーヌが動揺しているのと同時にズーラーノーンもその実、動揺を隠せないでいた。

 

(馬鹿な…! なぜここにこの女がいる…! モモンガの口から確かに殺したと聞いたぞ…。まさか、この俺に嘘を…、いや、クレマンティーヌが何かしらの手段で切り抜けたと見るべきか…。チッ、モモンガの間抜けめが。プレイヤーでありながら現地の者程度をみすみす逃がすなど…。しかし、どうする? モモンガ達と顔を合わせられたら面倒だ…。こいつが何か証言する事があれば俺の嘘が全てバレる…! ここで殺すか…?)

 

 殺気は出していないが、その佇まいからクレマンティーヌは身の危険を確かに感じていた。

 

「どうしたんですかズーラーノーンさん、子供がぶつかったようですが大丈夫ですか?」

 

 ズーラーノーンの後ろから優し気な声がかけられた。

 その声で再びクレマンティーヌの全身に緊張が走る。姿こそこの位置から見えないがその声も知っていたからだ。

 王都を滅ぼし、帝国をも恐怖に陥れた邪神。

 勘違いで有耶無耶のうちに逃げ出す事が出来たが一歩違えばあの邪教集団のようにクレマンティーヌも無残に殺されていただろう。

 

(な、なんでこいつも…! しかもズーラーノーンさんって…! ま、まさかあのアンデッド、盟主と手を組んだのか…! さ、最悪だ…! ま、まさか次はここエリュエンティウで事を起こすつもりか…!)

 

 クレマンティーヌの脳裏を最悪な想像が掠める。

 盟主の考えは分からないが盟主が当初の予定どおりこのアンデッドを手中に収める事が出来たのなら、間違いなく良からぬ事が起こる。

 

「なんでもないよモモンガさん。子供が転んでしまったから心配してただけだ、先に行っててくれ」

 

「? そうですか、わかりました」

 

 そう返事をしてモモンガ達はこの場を後にする。

 残ったのはズーラーノーンとクレマンティーヌ、あとは子供達だけ。

 

「に、逃げ出した私を殺しにきたのか…?」

 

 震える声でクレマンティーヌはズーラーノーンへと問いかける。

 しかしその解答が可笑しかったのかズーラーノーンの声に喜々とした色が見えた。

 

「ハハッ、お前を殺す為だけにここまで追ってきたと? 思い上がりも甚だしいな…。貴様など取るに足らないゴミの一つに過ぎん…。ここで会ったのはたまたまだよ…」

 

「……」

 

「ただまぁ…、お前が生きてるとちと面倒だ…。余計な事を喋る前に口を封じておきべきか…」

 

「わ、私は、と、取るに足らないゴミじゃなかったのか? そのゴミの為にここで問題を起こすなんてアンタらしくないな…」

 

「ふむ…」

 

 クレマンティーヌの言葉でズーラーノーンは逡巡する。

 

(私の裏の顔を知っているこいつは少し面倒だ…。モモンガや他の奴等と出会う事があれば私の本性が暴露されかねない…。しかしことこの期に及んでこの都市内で面倒事を起こしてまで排除する必要が本当にあるのか? 天空城はもう目の前だ…。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。俺の正体や目的が露見しようが何ら差し支えない。精々があと数時間、クレマンティーヌとモモンガ達が出会わなければそれで済む話…)

 

 しばらくして再びズーラーノーンが口を開く。

 

「お前の言う通りかもなクレマンティーヌ。計画の完遂はもう目前、お前に構って面倒を増やすのは確かに得策ではない…。いいだろう、どこへなりと消えろ…。しかし次にその顔を見せる事があればどんな理由、場所であれ殺すぞ」

 

「……!」

 

「そうなりたくなければすぐにこの都市から逃げ出すんだな、逃げるのは得意だろう?」

 

 嘲笑するようにズーラーノーンが笑う。

 

「あんたが…、強いのは知ってる…、あのアンデッドも…。でもいくらアンタ達でもこの都市を落とせると思ってるのか? 竜王達でさえ手を出してこないこの地、かの八欲王が作り上げた都市だぞ…。あの天空城には桁外れの強さを持つ都市守護者って奴等がいるんだろ…、いくらアンタ達だって…」

 

「ハハハハハハハッ!」

 

 クレマンティーヌの言葉を遮るようにズーラーノーンの笑い声が突如響く。心底おかしいような、それでいて心底腹立たしいような。

 

「滑稽だな! 歪んで伝えられた歴史など何の価値も無いというのに! 己の信じたい物だけを信じ! 他の可能性など想像もしないのだろう! こんな場所で! 天空城の庇護などと有難がってる愚か者どもには似合いの末路よ!」

 

「な、何を言っている…?」

 

「もう一度忠告しようクレマンティーヌ。死にたくなければすぐにこの都市を出た方がいい。ああ、もちろん余計な事を騒ぎ立てるなよ。そうすればどんな目に遭うか説明する必要など無いだろう? まぁこの都市の愚か者共と心中したいと言うなら話は別だがな…」

 

 その目線、眼下には瞳こそないがそこからは強い意志と殺気が確かに放たれていた。

 それは雄弁に余計な事をすれば殺すという意思をクレマンティーヌに理解させた。クレマンティーヌも馬鹿ではない。ズーラーノーンがここで何をするのかもはや明らかだ。

 

「……っ!」

 

 クレマンティーヌは無言で立ち上がると荷物をその場に降ろし、足早に立ち去ろうとする。

 

「シスター! 待ってよ、この荷物どうするの?」

 

「…っ! わ、私は用事を思い出した! それはお前らでなんとか運べ!」

 

 投げやりにクレマンティーヌが叫ぶ。

 

「そ、そんなこんな沢山の荷物無理だよぅ…」

 

 しかしもう返事は無く、子供達の声など聞き入れずクレマンティーヌは姿を消した。

 恐らくそれが最も賢い選択だろう。

 やがてこのエリュエンティウは死の都市になる。ズーラーノーンが何をするかなど分からないがそれだけは理解できたからだ。

 

 しかしこの選択はクレマンティーヌだけでなくズーラーノーンの命運まで分ける事になる。

 もしズーラーノーンが後にこの時の選択をやり直せるとしたら間違いなくここでクレマンティーヌを殺していただろう、多少の面倒事があろうとも。

 だがこの時点ではそれを察する事など出来る筈もない。

 死の恐怖に怯えたままクレマンティーヌはこの都市を立ち去ろうとしていた。

 

 

 

 

 モモンガ達は天空城の真下でそれを見上げていた。

 目の前にあるのは流れ込んで来た無限の水を受け止める塔。横から内部へと入れるようになっており、その中心には移動の為の魔法陣が敷かれていて左右には二体のゴーレムがそれを守護するように佇んでいる。

 

「というかここからどうするんだ、正面から行くのか? 私はここから先に進んだ事はないからどうやって交渉すれば良いかなど知らないぞ? この結界は浮遊する城の正門前へと通じているらしいがリーダー以外はこのゴーレムに止められ入る事は出来なかったんだ」

 

 イビルアイの言葉を受けモモンガが口を開く。

 

「恐らく私の予想ですが、十三英雄のリーダーはアイテムを借り受けた訳では無いと思います」

 

「なっ! ど、どういう事だ! リーダーは確かに借り受けたと言っていた! 仮にそうでなければこのゴーレムはもちろん、城にいる者達にも止められるだろう!」

 

 驚きを隠さずに叫ぶイビルアイを落ち着かせながらモモンガが言葉を紡ぐ。

 

「恐らくですが…、私の予想ではゴーレムの知覚をすり抜けるアイテムか何かを持っていたのではないかと疑っています。恐らくそのアイテムは一人分しか無かったため十三英雄のリーダーは一人で向かったのでしょう」

 

「そ、そうなのか…? い、いや確かにリーダーが魔法陣へと足を踏み入れてもゴーレム達は反応していなかった…。私達は彼がぷれいやーだからこそ特別待遇を受けていたのではないかと思っていたのだが…。そうでは無かったというのか…?」

 

「それは分かりません。実際に特別扱いをされていた可能性は0ではありませんから。しかし城との行き来が出来るとされている場所は公式にここのみ…。そもそも他に天空城へアクセスする方法もなければ連絡を取れる手段も無い。そのリーダーが事前に許可を取るというのは少々考えにくいです」

 

 そうしてモモンガはイビルアイ達に自分の考えを述べる。

 十三英雄のリーダーがどうやってアイテムを持ち帰ったのか、その可能性と手段。

 そしてこれから自分達がしなければならない事はこの天空城を攻略する事なのだと。

 

「ほ、本気かモモンガ…! あ、あの城をどれだけの者達が守っているか誰も知らないんだぞ…!」

 

「私はモモンガさんを信じます。モモンガさんが出来るというならば出来るのでしょう」

 

「俺もモモンガさんに賛成だな。そもそもアイテムを簡単に借り受けたなんておかしい話だとは思ってたさ。だが肝心の攻略方法はどうするんだ? まさか真正面からこのゴーレムを粉砕して進むつもりじゃないだろう?」

 

「ええ、勿論です。そんな事はしません」

 

 もしモモンガに表情があればニタリと笑っていたに違いない。

 

(この魔法陣を守護しているゴーレムはアイアン・ゴーレムの一種。ゴーレムの中では中位程の強さか。今のレベルを考えればここで魔力を無駄に使いたくはないし下手に戦うと増援が呼ばれる可能性もある…。一か八かだが…)

 

 三人の顔を見渡しモモンガが再び口を開く。

 

「正々堂々、搦め手で侵入します」

 

 モモンガの指は空を指しており、それが何を意味するかイビルアイ達にはすぐに理解出来なかった。

 

 

 

 

「ま、まさかこんな方法で…!」

 

 驚きを口に出したのはデイバーノック。

 しかし今は互いにその姿を認識する事は出来ない。

 なぜならモモンガの魔法により四人とも不可視の魔法で姿を消しているからだ。

 

「こ、こんな方法で城まで飛んで行く気かモモンガ! 気付かれたら撃ち落とされるぞ!」

 

 イビルアイがそう叫ぶがモモンガはすでにスキルで召喚した骸骨の魔法使い(スケルトンメイジ)でその安全を確かめており、不可視の魔法なら城まで無事に行ける事を確認済みである。ちなみに召喚した骸骨の魔法使い(スケルトンメイジ)は到着した段階で消している。モモンガのいない時に骸骨の魔法使い(スケルトンメイジ)が何かの罠を作動させては目も当てられないからだ。

 

「ハッハッハ! こんな原始的な方法で行くとはな! と言ってもモモンガさんの魔法が無ければ成立しない作戦だが…」

 

 愉快というふうにズーラーノーンの笑い声だけが響く。

 《フライ/飛行》の魔法で空を飛び続ける彼ら四人の高度はどんどん上がっていき、やがて城が目の前という程に近づいてくるとその周囲を無数の何かが飛んでいるのか視界に入って来た。

 

矢の鷹(アローホーク)か、低位のモンスターなので不可視化状態である今ならば接触しなければ気付かれる事はありません」

 

「こ、このモンスターを知ってるのかモモンガ! は、初めて見たぞ!」

 

 モモンガの言葉にイビルアイが驚く。だがそれもしょうがない事だろう。ユグドラシル産のモンスターである彼等はこの世界においてこの場所にしか存在していなかったのだから。

 矢の鷹(アローホーク)

 しなやかな蛇のような胴体に長い首と尾を持つ。胴体の中央は丸く膨らんでおり、そこから黄色い羽毛の生えた上下二対の翼が生えている。頭部は黒く、ノコギリのようなギザギザした歯と四つの目がある。

 その特徴的な外見と共に腐肉漁りとも呼ばれるそれらは飛行する事に特化しており、生涯地上に降りることなく生きるとされている。

 噛みつきで攻撃するほか、尻尾からは電撃を放ち遠距離での攻撃手段も持つ彼等は初心者からすれば面倒くさい相手だろう。レベルにして10程だが対空手段の少ない内は苦戦を余技なくされる。

 

(天空城の周囲のみをひたすら飛んでいるな…。恐らく天空城における自動POPモンスターなのだろう。という事は矢の鷹(アローホーク)が飛んでいるこの場所からは空中ではあるが天空城のエリアという事だな…)

 

 さらにモモンガ達が城に近づくにつれ他のモンスターの姿が見えてきた。

 次にその姿を確認できたのは黒い煙(ベルカー)

 こちらは矢の鷹(アローホーク)よりも手ごわい。

 翼の生えたその黒い姿は魔物じみていて恐ろしげである。しかし体が半ガス状態であるため風が吹くたびにその姿は変わり続ける。その身体の性質とは裏腹に爪や牙を固体化して戦う。煙の体を駆使して相手を包み込み攻撃をする事も出来るがユグドラシル時代は取るに足らないものだった。

 

(懐かしいな…、たっちさんと会う前はこの手のモンスターも一人で戦って苦戦してたっけ)

 

 少し昔を思い出すモモンガだが今は思い出に浸っている場合ではない。

 城の周囲には低位のモンスターしかおらず、また城からの迎撃も無いとはいえ油断は出来ない。

 この城に降り立ち侵入してからが本番なのだから。

 

「デイバーノックさん、イビルアイさん、ズーラーノーンさん! 城の中心にある巨大な主塔の二つ手前にある建物のバルコニーから侵入します! 付いて来て下さい! すぐに探知魔法を使い安全を確保しますが何があるかわかりません! 十分に注意して下さい!」

 

 そうしてモモンガ達四人は無事侵入を果たした。

 

 アースガルズの天空城。

 それは白亜の宮殿と呼ぶほどに荘厳で美しかった。

 透き通るような白い壁と装飾、また大理石で作られた輝くような床が印象的である。

 浮遊しているとは思えぬほどに巨大なその城は何棟もの城が積み重なっているかのように巨大だ。

 どれだけの数の部屋、間があるのか外からは想像もつかない。

 地上にあるどんな建物すらも霞む程で、筆舌に尽くし難いその光景に()()は息を呑む。

 もしどうしても言葉にしろと問われればただ一言。

 

 『神の宮殿』。

 

 それ以外に形容する言葉など存在しないだろう。

 

 

 

 

「いつまで着いて来るんですか?」

 

 召喚した鳥のようなモンスターの背に仰向けに寝ながら海上都市の彼女が横を飛び続けるリグリットへ問いかける。

 

「協力してくれるまでじゃ! というよりお主はどこへ向かおうとしてるんじゃ…」

 

 長時間≪フライ/飛行≫の魔法で飛び続けるのはリグリットをしても一苦労だった。これがこのまま続けばやがて魔力が切れ置いていかれてしまうだろう。

 

「しつこい人ですね…、あれだけ協力は出来ないと言ったのに…。それに目的なんてありませんよ、ただ思うがままに飛び続ける。飽きるまでね」

 

 頑として譲らないリグリットに海上都市の彼女はやれやれと言った様子で答える。

 

「このままではお主も百年の揺り返しに巻き込まれるぞ! ぷれいやー達とて皆が仲間という訳ではあるまい!? 少なくとも儂の見立てではお主は悪人ではない…。儂等なら手を取り合える筈じゃ! もし協力してくれるならば儂がツアーに、いや竜王に話を通そう。生き残った竜王達がどう思うか分からんが儂の知り合いの竜王ならばお主を悪いようにはせん筈じゃ」

 

 説得とも懇願とも受け取れるリグリットの言葉を海上都市の彼女は一切受け取ろうとしない。

 

「竜王か…。あれは酷い奴等だった…、八欲王達の気持ちも分かるというものです」

 

「な、何を言うておる…? 八欲王が世界を汚したからこそ竜王達との闘いになったのだろう…?」

 

「ああ、歴史はそう伝えられているのでしたっけ? 酷いものです…。貴方も竜王と仲が良いなら聞いてみればいい。当時の生き残りであれば全てを知っている筈でしょう? まぁどこまで真実を教えてくれるかは分からないですが…」

 

 海上都市の彼女の言葉にリグリットがたじろぐ。

 確かに自分はどこまでツアーの事を知っているのだろうかと思う。

 十三英雄の仲間として共に旅をした時は気のおけない仲間だと思った。後にその正体が竜王だと判明した後もなんやかんやあったが上手くやれていると思った。

 何よりツアーは世界の事を誰よりも考えている。その秩序を守る為に力の多くを割いている、それは紛れもない事実なのだ。それに深く賛同したからこそまだ付き合いが続いていると言っても過言ではない。

 しかし八欲王との闘いに関して深く聞いた事は無かった。

 そもそも己の種族を殺し尽くした者達の事を聞いてよいのか、何より歴史に伝わる事が事実ならば改めて聞く必要などないと思っていたからだ。

 

「竜王が…、いやツアーが何か隠し事をしているとでも言うのか…!」

 

「ツアー…、ああ何か聞き覚えがあると思ったらもしかして竜帝の子か…。直接会った事は無いが…、そうか。まだ生きていたのか…。ならば彼も大変だな、親の尻ぬぐいとは…。同情は出来るが…」

 

 海上都市の彼女の言葉はどれを取ってもリグリットの心に棘を残す。

 この世界で人として長い時を生き、多くの事を知っていると自負している彼女でさえ理解が追い付かない。

 それどころか疑念と影を落としていくばかりだ。

 

「お主は何を…、いやどこまで知っているのだ…? 竜王達の事…、そしてぷれいやーなる者達の事も…。そもそもお主らは何なのだ…、何が目的でこの世界へと…」

 

「……」

 

 リグリットの言葉に考え込むように海上都市の彼女が黙る。

 しばらくして紡がれた言葉は――

 

「かつていた世界でもそうでした…。歴史の裏には壮大で深い事柄が隠れている等と誰もが思うけれど実際はそうじゃない。紐解いていけばいくほどそれは単純な問題へと帰結する。それはこの世界でも同じですよ…。全ては竜王達が…、いや竜帝が招いた事です。怒りや呆れこそすれ、力を貸すなんてとてもとても…。何より自分が…」

 

 怒りを通り越し、そうして諦念まで行き着いたような表情で彼女はただ淡々と語る。最後に何かを言いかけたその言葉は飲み込みながら。

 

「だから放っておいて下さい。もうこの世界には関わりたくないし、この世界がどうなろうと、いや、この身さえもどうなろうと構わない…。もう思い残す事など無い…、希望だって存在しないんです…。この願いだってきっと叶わない…。どれだけ眠り続けてもこのまま永遠に孤独のまま…。希望を追い求めて絶望に行き着くくらいなら…。それを味わう前に消えてなくなりたいんです」

 

 深い失望と淡い希望。

 だがそれが彼女をかろうじて人たらしめている。それこそが消え入るような彼女の精神に残る感情であり残滓。

 

「思い残す事は本当に無いのか…? かつてお主にも仲間がいたのじゃろう? ならばあの海上都市は! ギルド拠点とも呼ばれるあそこは仲間との思い出が詰まった大切な場所では無いのか! それが滅ぼされても…、それが無くなってもお主は本当になんとも思わないのか!?」

 

 もはや彼女に何を言っても無駄であろう。

 リグリットとてそれは理解している。しかしそれでも考えうる限り彼女の気を引こうと彼女の関心を買おうと思いつく限りの言葉を口にする。

 しかし次の言葉でリグリットは何一つ彼女を説得できる材料が無いと思い知るのだ。

 

「海上都市…か。あれは自分のギルド拠点じゃないですよ。ただそこにいただけで、あれは借り物。本当の持ち主たちはとっくの昔に死んでいるんですから」

 

 海上都市の彼女。

 己のギルド拠点でもない場所で永い間眠り続けていた。

 

『ルルイエの館にて死せるクトゥルフ、夢見るままに待ちいたり』

 

 この言葉は世界中のクトゥルフ教信者がクトゥルフの石像への礼拝時に捧げる誓言として用いられている。

 さらに墓碑銘ともなっているこんな一節がある。

『そは永久に横たわる死者にあらねど測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの』

 簡単に言うならば、今眠っている古き神は死んでおらずいつか復活するのだという予言である。

 かつてこの海上都市を作ったギルドは熱心なラヴクラフト信者達だった。

 ロールプレイの一種であり、その夢や願望の為だけに様々な設備と共にこのギルド拠点は作られた。しかしそれらの役目は果たされる事もなく、また製作者である彼等もそれを果たす事なくあっけなく死んだ。

 ただ彼等が死んだその後、ギルド拠点とは一切関係の無い筈の彼女がまるで彼等の願望を満たす様にここで眠り続ける事になった。

 彼女がこの文言に詳しい筈も無く、ただ意味も分からず、眠る為に作られたこの場所を間借りしていたにすぎない。

 しかし何たる皮肉か。

 彼等の死後、それも何百年も後のこの世で、無関係の筈の彼女の存在によって彼等のロールプレイはここに完成をみたのだ。

 人の身でありながら彼女はルルイエの揺り籠により寿命を超越し、存在しえない筈の未来まで生き永らえた。

 (プレイヤー)たる彼女の復活により、ルルイエの館は役目を果たしたのだ。

 

 

 ただ一人リグリットを除き、彼女が眠りから醒めた事を知る者など世界中のどこにも存在しない。

 

 

 

 

 そこは広く、高い部屋。見上げるような高さにある天井。壁の基調は白で、金を基本とした細工が施されている。

 天井から吊り下げられた複数の豪華なシャンデリアは七色の宝石で作り出され、幻想的な輝きを放っていた。

 壁にはそれぞれ違った文様を描いた大きな旗が、天井から床まで計41枚垂れ下がっている。

 金と銀をふんだんに使った部屋の最奥には十数段の低い階段があり、その頂には巨大な水晶から切り出されたような、背もたれが天を衝くような高い玉座が据えられていた。

 背後の壁にはギルドサインが施された深紅の巨大な布がかけられている。

 

 ここは玉座の間。

 ギルド、アインズ・ウール・ゴウンの拠点たるナザリック地下大墳墓の心臓部とも言える場所である。

 

 その玉座の間において、空の玉座の横に立つ一人の女性が唐突に足を踏み出した。

 

「アルベド、どこへ行くのです?」

 

 声をかけたのは玉座の階段の下で膝をつきながら待機していた屈強な老執事。その視線は僅かに怒りがこもっていた。後ろに待機しているメイド姿の女性達も無言のまま老執事と同様の視線を向ける。

 

「モモンガ様の帰りが遅すぎるわ。私の知る限りこれだけの期間モモンガ様がナザリックにご帰還為さらなかった事など一度も無いのよ」

 

 だがそんな視線など意にも介さずアルベドは凛としたまま歩みを進める。

 

「しかしこの場を動けと言う命令は下されておりません。勝手に動いては主人の反感を買いますよ」

 

「そうねセバス。でももしモモンガ様の身に不測の事態が起こっていたら? 私達に命令を下したくとも連絡出来ない何らかの理由があったら? リアルに帰られているだけならまだいいのだけれど…、今回はナザリックの外へと出て行ってから帰って来ていないのよ。これが何を意味するか分かる?」

 

「そ、それは…」

 

 アルベドの言葉にセバスは気圧される。

 不敬などという気持ち以前にその言葉の意味する事に恐怖したからだ。

 

「私とて勝手に動くのは承知の上。でもモモンガ様の安全の確認くらいはするべきでしょう? これから第五階層に向かい姉に探知魔法を使用してもらいます」

 

「ですがアルベド。至高の御方たるモモンガ様に我らの使う探知魔法が意味を為すのでしょうか?」

 

「その質問はもっともね…。確かにいくら姉が探知魔法に特化してるといってもモモンガ様の前では全て遮断されてしまうかもしれない。でもそれならそれで構わないわ、少なくともモモンガ様が健在なのは分かるのだから」

 

「なるほど…」

 

 アルベドの言葉にセバスは深く頷く。

 

「ただ同時に周囲への警戒も必要でしょうね…。もし外で何かが起こっているのならモモンガ様を救う為にナザリックの全力をもってお救いに出なければならない…」

 

「…!」

 

 その言葉でセバスと後ろに控えるメイド達に緊張が走る。

 

「余計なお世話であり、モモンガ様の不興を買うようならこの命を以って償いましょう。でももしモモンガ様の御身に危険が迫っているならどんな手を使ってでもその身をお救いするべきでしょう? 最も優先するべきはモモンガ様。仮に不敬と断じられてもシモベとして為すべき事を為しましょう。その時はセバス、貴方にも力を貸してもらうわよ」

 

「…もちろんです。もしモモンガ様の身に危険が及んでいるようであれば我らが命に代えてもその身をお守りしなくては!」

 

「そうよ、セバス。その為にも姉の探知魔法が必要なの」

 

 そうしてアルベドは玉座の間を出て第五階層へと向かう。

 アルベドの姉であるニグレド、彼女の探知魔法でモモンガの安否を確かめる為に。

 

 しかしこのニグレドの探知魔法によりナザリック中が震撼する事になる。

 アルベドはもちろん、その情報が齎されるとナザリック中が阿鼻叫喚で満たされた。

 それは彼等が発狂し暴走するに足る十分な理由であったのだ。

 

 なぜならこの時モモンガは――

 

 




モモンガ一行「拠点攻略だぜ!」
クレマン「やばそうなので逃げます」
海上都市の彼女「竜王たちはクソ」
アルベド「きちゃった…」

また更新に時間がかかり申し訳ないです…
GWでついに時間が取れました!
そしてやっと最終章です、本当はエリュエンティウの描写にもっと時間かけたかったんですが長くなると思ったのでバッサリカットしました(現状でも長いですが…)
そして海上都市のくだりはオバロ原作の「夢見るままに待ちいたり」の一文からです。唐突なクトゥルフ押しは決して趣味を出したのではなく原作で使用されたその文章から海上都市のコンセプトはこうなのではないか?と推測したものです
前にもありましたがクトゥルフ云々の話はストーリーには直接影響しないので軽く読み飛ばして貰えればと思います
今回はまだ最終章としての掴み程度ですが最後まで頑張っていきたいと思います!

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