転生先はガンプラバトルが大人気です   作:断空我

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なんでか、ミライさんがヒロインっぽくなっている。

てか、アニメのミライさんの水着姿が女神に思えて仕方がない。
あんな人、いるのかねぇ。


ビーチで騎士?をやります。

「すまん、耳が遠くなったかもしれない。もう一回言ってくれ」

 

「お願いします!私達が作ったガンプラと先輩のガンプラでバトルしてください!」

 

「地区大会は突破しました。でも、全国大会はもっと強者がいます!どこまで通用するのか、先輩と戦ってみたいんです」

 

「お願いします!」

 

 俺の前で頭を下げるチームトライファイターズ。

 

 彼らの前には地区大会、全国大会に向けて制作されたガンプラが置かれている。

 

 少し前に地区大会の決勝相手宮里学院のGマスターと戦いボロボロだったのだが、見事に改修されていた。

 

 しばらく休養するのかと思っていたのだが……どうしてこうなった?

 

 そんな三人の懇願に俺は何とも言えない表情だ。

 

「別に協力することはやぶさかでもない。だが、俺は世界大会で使ったガンプラは使わないぞ。コウサカ」

 

「わかっています。ですから、先輩がカスタムしたガンプラで構いません」

 

「素組みは駄目なんだな」

 

「当然です。先輩の腕と合うガンプラでなければ、意味がありません」

 

「……わかった。ダメージレベルはCでいいな?三対一でやるぞ」

 

 俺の言葉に三人が笑顔を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プラフスキー粒子が広がるバトルフィールド。

 

 俺と向かい合うのは三機のガンプラ。

 

 カミキ弟のビルドバーニング。

 

 コウサカのライトニングガンダム。

 

 ホシノ後輩のウィニングガンダム。

 

 そして、俺が使うガンプラは。

 

「あれは……ジムカスタム!?」

 

「でも、装備が」

 

 三人の前に降り立つ俺のガンプラ、それはガンダム0083スターダストメモリーズに登場するジムの発展機。

 

 誰にでも扱えるMSと銘打たれている。

 

 本来のカラーリングではなくオレンジ色。

 

 バイザー部分はブルーになっていた。

 

 背中のバックパックも別のものになっている。そして、両手にハイパーバズーカ、足にミサイルポッドを装備している。

 

「さ、始めるぞ。ガンプラバトルを!!」

 

 システムが開始のアナウンスを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、負けた」

 

「何なの?あのジムカスタム……どこから刀なんて」

 

「対ビーム兵装も完璧……狙撃を封じられてしまうなんて」

 

 俺の目の前でショックを受ける三人。

 

 いや、そこまでいく?

 

「お前らが勝利しているくせになんでそんなショック受けているの?」

 

 ダメージレベルがCのため、機体は傷ついていない。

 

 俺のジムカスタム、トライファイターズの機体も傷一つない状態で机に置かれている。

 

 大会が近づいているからあまり傷つけたくないということがあったけれど、ここまで追い詰められたのは久々だなぁ。

 

「先輩!どうすれば、ここまで強くなれますか?」

 

「経験を積め、お前の場合、それしかない」

 

 他の二人は色々と問題があるが、まだ指摘しない方がいいだろうな。

 

「さて、程よい時間だな、俺、予定があるから……休むように」

 

 俺の言葉にコウサカが顔を上げる。

 

「予定?先輩に?」

 

「何だよ。俺に予定があるとおかしいか」

 

「「「はい」」」

 

 三人とも、表に出ろ(涙目)。

 

 俺にだって面倒だが、予定があるんだよ。

 

 本当に嫌なんだけどさ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は私服にサングラスという格好でGミューズへ来ていた。

 

 なんでサングラスか、

 

 それは簡単。

 

「ごめんなさい、待たせたかしら?」

 

 俺と一緒に出掛ける相手がカミキ姉だから。

 

 事の始まりは一週間前。

 

 カミキ姉は読モをしている。

 

 かなりの人気があり、同じ学校かつ友達のフナキ・サトミと一緒に活動しているらしい。

 

 何でも、ガンプラとファッションの融合イベント「東京ガンプラ・コレクション」略して「ガン・コレ」のモデル対抗ガンプラ・ラリーに出ないといけないため、ガンプラ選定と制作に付き合ってほしいと言われたのだ。

 

「それならコウサカに頼めばいいだろうに……アイツは東の代表と言えるような奴だろ?」

 

「コウサカ君に頼めばいいかと考えたんだけど、全国大会が近いから……だから、シン君に」

 

「そこで俺に矛先が向いた理由がわからん……」

 

「ねぇ、どうしてサングラスをしているの?」

 

「予防策だよ。これ以上、学校で話題になりたくない」

 

「話題?」

 

 首を傾げるカミキ姉。

 

 コイツ、本当にわかっていないみたいだ。

 

 最近、コウサカとカミキ弟たちと絡む影響でカミキ姉と会話する機会が多くて、付き合っているのではないかと一部の男子が勘繰り始めていた。

 

 女子たちも黄色い声と視線をこちらに向けてきている。

 

 「大変だね~」とカミキ姉の友達、フナキ・サトミから揶揄われた。

 

 本当にこういうのってもっとイケメンな奴の方がいいんじゃないのか?

 

「どうしたの?」

 

「別に~……今更なんだけど、カミキ姉は」

 

「ミライ」

 

「……は?」

 

「ミ・ラ・イ」

 

 自身の名前を何度も繰り返すカミキ姉。

 

 その目はジト目で唇を尖らせている。

 

 溜息を吐いた。

 

「わかったよ。ミライ……」

 

 コイツ、急に名前呼び強要してきたな。

 

 面倒だなぁ。

 

「てか、手伝いは呼ぶからな。それでいいよな?」

 

 俺とカミキ姉はGミューズへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、色々なガンプラがあるのね」

 

「ガンダムといっても何作品もあるからなぁ……」

 

 相変わらずガンプラの山だよなぁ。ここ。

 

 俺とカミキ姉はその中からガン・コレイベント用のものを選ばないといけない。

 

「ちなみに、そのガン・コレだっけ?に出すガンプラに規定とかないんだよな?」

 

「ええ、大丈夫」

 

 といっても。

 

「カミ……ミライが使うガンプラだからなぁ。遠距離系は論外だから」

 

 俺は置かれている一つの箱を選ぶ。

 

「無難なのは、こういうのだよな」

 

 彼女へ見せるのはガンダムOOにて主人公刹那・F・セイエイが使っていたダブルオーライザーだ。

 

「近接……ブレードなんだが」

 

 あの顔だと、お気に召していない様子だ。

 

 男なら興奮する要素が多いんだけどな。

 

「女性向けでいけば、あとはノーベルガンダムとか」

 

「凄い、ガンダムがセーラー服着ている……あら?」

 

 側面のラベルをみてカミキ姉は顔を引きつらせていた。

 

 そこでは口のようなものをあけて不気味な姿をしているノーベルガンダムが描かれている。

 

「まー、セーラーガンダムなんて言われているけれど。バーサーカーシステムが搭載されているから不気味なんだよなぁ」

 

 それにしても、ノーベルガンダムがダメとなると。

 

「ザクレロなんて選んだらとんでもないことになるな」

 

 ザクレロ、

 

 機動戦士ガンダムに登場したMA。

 

 見た目がおそろしい怪物の顔をしている。

 

 ちなみに俺が手に取ったザクレロは世界大会出場者が使用していた記念品だ。

 

 余談だが、俺がザクレロを手に取ったことでカミキ姉は青ざめていたことを記しておこう。

 

「それなら、これしかないだろうな」

 

 最終的に俺とカミキ姉が選んだのはベアッガイ。

 

 元々はガンダムに登場するアッガイをクマにした可愛いガンプラだ。

 

 バーサーカーシステムもないし、初心者でも扱いやすい。

 

 何より。

 

「本人が滅茶苦茶、気に入っているからよしとしますか……さて」

 

 カミキ姉が会計を済ましている間に携帯電話を取り出す。

 

 電話をかける。

 

「どっかで尾行しているだろ?」

 

『な、何のことですか!?』

 

「別にいいや、ここからバトンタッチだ。制作の方を手伝え」

 

『……何を企んで』

 

「後輩へ花を贈ってやるのも先輩の務めってやつだよ」

 

 俺の言葉に相手が喜んでいることがわかる。

 

「何より……俺は自分の命が惜しい……お前の傍に、いるんだろう?アイツら」

 

『はい』

 

 頼むから怯えた声を出すなよ。

 

 マジでわかるんだからな。

 

 気配というか殺意というか、あ、嫉妬か。

 

 そんな類を向けられていたら嫌でも理解できる。

 

「とにかく、これ以上、俺がタッチすれば命がない……現に」

 

 顔を上げるとものすごい勢いでやって来る奴が一名いる。

 

 ありゃ、瑞鶴だな。

 

「一名が既に来た。後は任せた。可能なら骨を拾ってくれ」

 

『え、先輩?ハヤテ先輩!?先輩ぃぃぃいいいいいい!?』

 

 その後、飛び込んできた瑞鶴によってGミューズ内による緊急デートがスタートした。

 

 俺の財布がカッスカッスになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

 ガン・コレイベントに俺は後輩たちを連れてきていた。

 

 ビーチに設置された特設会場で水着姿のモデルとそれぞれが作ったと思えるガンプラを手に現れる。

 

「うわー、綺麗~」

 

「いただけないな。どれもガンプラの造りが甘い」

 

「ユウ君、見るところ違うから」

 

「少し、意外だな」

 

「何がです?」

 

「いや、ホシノ後輩もこういうのに憧れるんだなぁと失礼ながらガンプラバカの類かと思っていたから」

 

「失礼ですよ!私だって女の子なんですから!」

 

 怒る後輩へ謝罪をしているとカミキ姉がフナキとやってくる。

 

 二人とも肩にベアッガイをのせていた。

 

 ちなみにフナキのベアッガイがベーシックに対してカミキ姉のベアッガイは真っ白だ。

 

「流石はコウサカだな。あのガンプラ、中々の出来栄えだ」

 

「当然です。僕はアーティスティックガンプラの出場者ですから」

 

「いけぇ!姉ちゃん、やっちまえ!」

 

「セカイ君、違うから……」

 

「……」

 

「おい、カミキ姉をみて、鼻の下伸ばすなよ」

 

「な、の、の、伸ばしていませんよ!そういう先輩は!?」

 

「伸びているか?」

 

「……いいえ」

 

 ちなみにカミキ姉もフナキもビキニ姿。

 

 カミキ姉は純白で清楚なイメージが強い。

 

 だからファンも増えるんだろうな。

 

 実際、会場もカミキ姉の登場で白熱している。フナキの方もかなり人気あるらしいけれど。

 

 

 俺としてはもう少しくびれがいえ、何でもありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と後輩たちは控室に来ていた。

 

 この後のガンプラ・ラリーの応援をするためだ。

 

「ガンプラバトルも姉ちゃん、頑張ってな!」

 

「正確には……ガンプラ・ラリーなんだけど」

 

「ラリー?」

 

 首を傾げるカミキ弟に俺が話そうとした時。

 

「自然を舞台にしたレースだよ」

 

 ドアを開けてやたらと決めポーズをとった肌黒の青年がやってきた。

 

「「何だ、あのチャライの」」

 

 あ、カミキ弟と被った。

 

「人気ロックグループ、三代目スゴックのボーカル、リーダー、TAKUよ。さっき、スペシャルライブしていたでしょ?」

 

「あー、何かやたら熱い曲歌っていたな……ん」

 

「良いステージだったよ。華麗なキミの姿を見ていたら歌詞のフレーズが浮かんできたよ」

 

「……」

 

 何してんの?

 

 TAKUというチャライの、壁に手を当ててカミキ姉へほほ笑む。

 

 いわゆる壁ドンだ。

 

「ど、どうも」

 

「名前は?」

 

「カミキ……ミライです」

 

「オッケー、キミの事務所には許可を取っておく。イベントが終わったら僕と一緒に食事へ行こう」

 

「おいおい、人気ボーカルがモデルさんを口説くなよ。ファンが見ている前で」

 

 俺はカミキ姉の手を掴んでこちら側へ引き寄せる。

 

「何だい?キミは、見たところ、部外者のようだけど」

 

「こいつの友達だよ。あと、ファンでもあるかな?」

 

 カミキ姉を守るように俺と後輩たちが前に出る。

 

「そもそも、人気者がこんな好き勝手なことしていいのかよ?」

 

「当然だよ。何せ、僕は有名人!だからね!」

 

「うわ、自意識高い」

 

「有名人だからこそ、ある程度の節度というのは持つべきなんじゃないの?」

 

「ほう、言うね」

 

「まぁ」

 

「先輩は世界大会出場者だぜ!!」

 

「同じ有名人として我慢できないんですよ!先輩は!」

 

「……さらっと、人の個人情報バラすんじゃない。あと勝手に人の気持ちをねつ造しない!」

 

 後輩たちを半眼で睨む。

 

「ほー、ならば、特別枠としてキミもガンプラ・ラリーに参加したまえ、ミライ君をかけてね。優勝した方がディナーへ招待できるということにしよう」

 

 はい?

 

「参加資格は僕から働きかける。ちなみに、僕は三度の飯よりもガンダムという作品が大好きでね。ガンプラも作る。プロが跣で逃げ出すほどでね」

 

 気のせいか?

 

 目の前のTAKUの姿が連邦軍の一般兵になっているぞ。

 

「コイツ、マジか」

 

「ウソ……」

 

「大丈夫だ!先輩なら楽勝だ!」

 

 カミキ弟。

 

 お前、姉が賞品扱いされていることに関しては何も言わないんだな。

 

 俺のうしろで姉が滅茶苦茶、動揺しているぞ。

 

「てか、いいのか?俺、参加しても」

 

「だ、大丈夫よ。許可が下りたみたいだから」

 

 携帯を見て答えるのはカミキ姉とフナキのマネージャーの人。

 

 許可下りたんだ。

 

「それよりも、ハヤテ、アンタ、ガンプラ……持ってきているの?」

 

 フナキの問いかけに後輩たちが動揺する。

 

 海で遊びに来ているのにガンプラを持っているのか、答えは。

 

「持ってきているぞ」

 

 俺はカバンの中から暇つぶしで作ったガンプラを取り出す。

 

「まさか、こんなところで使うとは思わなかったけどさ」

 

 どうせだし、少しだけ手を加えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、ガンプラ・ラリーを開始します!なお、特別ゲストとして三代目スゴックのボーカルTAKUと去年の世界大会ベスト3という記録を保持している白い悪魔ことハヤテ・シンが参加するぞぉ!」

 

 司会者の言葉に歓声は二つに別れる。

 

 一つはTAKUのもの。つまり女性の者ばかり。

 

 もう一つは男性と女性が混じっている。ガンプラファンのものだ。

 

 どうやら俺のことはまだ記憶に残っているらしい。

 

 変装、もっと考えないとな。

 

 ステージは巨大な湖と小さな島がある自然。

 

 飛行システムを使わずゴールへ到着したガンプラの勝ち。

 

 何というか、女の子の中に男子二人って、うくなぁ。

 

 しかも、モデルばかりだし。

 

 俺は瓶底メガネの奥で目を閉じながらGPベースとガンプラをセットする。

 

 ラリーで使うガンプラはジム・クゥエル。

 

 地球連邦内に存在していたティターンズで使われていたというジムの発展型。

 

 飛行ユニットが使えないということで脚部に小型ローラーを仕込んだ機体だ。

 

 この中で脅威と言えるのはTAKUの作ったガンプラとカミキ姉のママッガイくらいか?

 

 ママッガイはコウサカが手伝っていたから完成度はかなりのもの。

 

 TAKUのガンプラは一目見てもわかる。かなりの出来栄えだ。

 

 ガンダムが好きというのはウソじゃないらしい。

 

 あの∀油断できない。

 

 レース開始のブザーが鳴り、多くのガンプラが飛び出す。

 

「さて……」

 

 アクセル全開で行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールドへ飛び出すジム・クゥエルとママッガイ。

 

「カミ……ミライ、弟に操縦技術、習ったな?」

 

「うん!それにしても、シン君のガンプラも速いね」

 

「仕込んできたからな。色々と……っと?」

 

 鳴り響くアラート。

 

 俺達が見上げると無数のミサイルが降り注いでくる。

 

「なして?」

 

 驚きながらママッガイとジム・クゥエルは回避していた。

 

「攻撃!?どうして」

 

『TAKU様!』

 

 後ろを向けば他のレース参加者の七割ほどがこちらに攻撃してきている。

 

 気のせいか、桃色のオーラが∀へ向けられていた。

 

「約束するよ。あの二機を倒したらいくらでもデートしてあげる」

 

『はーい!』

 

「汚い!イケメンって汚い!!」

 

 有名人。

 

 いや、イケメンって汚い!!

 

 この場合。

 

「ミライ、許せ!」

 

「え?きゃああああああああああ」

 

 衝撃で悲鳴を上げるカミキ姉を湖へ突き落す。

 

「雑魚さん、こちらだよ!」

 

 マシンガンで牽制しながら逃げていく。

 

 殴り合いの必要はない。

 

 レースなのだからゴールすればいい。

 

 俺やTAKUがゴールせず、カミキ姉がゴールすれば問題ないのだ。

 

「だが……」

 

「お先に」

 

「なっ!?」

 

 同じように水面へ飛び込むターンA。

 

 見れば、盾をボードのようにして進んでいた。

 

「おいおい、こんなこと考えるのかよ。本当に、最・悪だよ!!」

 

 近づいてきたガンプラを踏み台にして空高く舞い上がる。

 

 メガネが邪魔だ。

 

 瓶底メガネを投げ捨てる。

 

 一瞬、黄色い悲鳴があがった気がしたが……。

 

「こういう無茶なんかしないんだけどなぁ!」

 

 大きく舞い上がるジム・クゥエル。

 

 腰部分に装備していたナパームを水面に落とす。

 

 爆風の勢いを利用して小島に到着。

 

 そのまま走る。

 

「ショートカットするにしても、少し乱暴だったな」

 

 システムがダメージを告げてくる。

 

 だが、しかし。

 

「男にはやらねばならぬときがあるのだよ!」

 

 見えてきた水面へナパームを投げる。

 

「使わせてもらうぜ!」

 

 盾を足元に乗せてそのまま飛ぶ。

 

 水柱でバランスを崩しそうになりながら次々とナパームを落として陸地を目指す。

 

「見えた!」

 

 砂浜ではママッガイに襲い掛かる∀の姿がある。

 

「なに!?」

 

 驚きの声を上げている∀の顔を蹴り飛ばす。

 

 ジム・クゥエルはボロボロの盾を投げ捨てて振り返った。

 

 そこではママッガイが背中に攻撃を受けて倒れている。

 

 襲撃を受けたのか。

 

 ミニサイズのプチッガイがママッガイに触れていた。

 

 あー、これはヤバイ。

 

「遅れてやってきて姫様のナイト気取りかい?そんなのは百年速いよ」

 

「あー、お前、死んだな。うん」

 

 少しジム・クゥエルでお灸でも据えてやろうかと思っていたけれど。

 

「俺は離れる」

 

「は?」

 

 戸惑う∀へ警告はしておこう。

 

「普段温厚な奴ほど、怒らせたら怖いってこと、身をもって知るといいさ」

 

 倒れているママッガイを担いでその場を離れる。

 

 

 

 

 

 その後、TAKUのガンプラは大事なところをプチッガイによる次元覇王流蒼天紅蓮拳によって倒される。

 

 尚、会場の、いや、みていた男子たちは自分の大事なところを押さえたことはいうまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、最後の最後で優勝できなかったのは残念でしたね?」

 

「別にいーんだよ。俺は優勝目的で参加してねぇし」

 

 ホシノ後輩、俺、カミキ弟は浴衣で海岸の花火を見ていた。

 

 あの後、レースはカミキ姉の優勝……ではなく、美魔女モデルのカリンさんとやらが優勝した。

 

 子持ちらしいけれど、そんな姿を感じられない美貌だった。

 

 旦那さん、誇らしいだろうな。

 

「けど、先輩の活躍が見れると思ったのになぁ」

 

「あのなぁ、今回の俺は真面目に脇役だ。主役はミライだよ」

 

「……そういえば、先輩、いつからミライさんのこと、名前で呼ぶように?」

 

「…………忘れろ、ホシノ後輩、俺はアイツのことをカミキ姉としか呼ばない」

 

「だったら俺のことを名前で呼んでください!」

 

「その方がいいかもな、よし、お前のことを」

 

「シン君?」

 

「いえ、何でもありません」

 

 後ろからやってきたカミキ姉に俺は首を振る。

 

 気のせいだ。

 

 後ろにママッガイのスタンドなんてみえなかったんや。

 

「ホシノさん、セカイ、シン君を借りてもいいかな?」

 

「「はい!」」

 

 あれ、俺の許可は?

 

 俺はカミキ姉に手を引かれて歩き出す。

 

 ちなみにカミキ姉の浴衣は似合っていた。

 

「今日はありがとう」

 

「別に、あのイケメンが気に入らなかったから参加しただけ……というのは建前で、友達の手助けだよ」

 

「……最近、変わったね。シン君」

 

「そうか?」

 

「うん!うしろ向きだったシン君だけど、今は前向き」

 

「……なんともいえないところだ」

 

 適度に命の危機を感じることが前向きになっているなんて、絶対、違うと思う。

 

「それに、今日のシン君はかっこよかったなぁ」

 

「気のせいだろ?いつもの瓶底メガネ……って、あれ!?」

 

 顔を触ればいつものメガネがないことに気付いた。

 

 どこいった!?

 

「悪い、メガネを」

 

「はい」

 

 俺の前に現れる普段の愛用品。

 

「カミキ姉が持っていたのか?」

 

「ミライ!」

 

「……どうも」

 

 カミキ姉の持っているメガネを取ろうとしたら手を遠ざけられる。

 

 なして?

 

「ちゃんと名前で呼んでくれないと返してあげません」

 

「わかった、ちゃんと呼ぶから、返してくれ」

 

「もう……そろそろこのメガネを外してもいいんじゃないかな」

 

「そういうわけにもいかない。色々と面倒なことがあるから」

 

「でも」

 

「姉ちゃん!そろそろ飯行こうぜ~」

 

 ナイスタイミングだ。カミキ弟。

 

「さて、お腹すいたなぁ、飯代は割り勘でやるからうまいもの食べようぜ」

 

「……仕方ないわね」

 

 カミキ姉と俺はやって来る弟たちを連れて晩飯を満喫した。

 

 魚介類はとてもおいしかった。

 

 特にアナゴがよかったな。うん。

 




ジム・クゥエル。
機動戦士Zガンダムで登場するジムの発展機体。
本来は搭載されていないナパームを無数に所持していることと、盾が通常よりも大きい。
加えて、脚部の裏にレース用にローラーが装着されている。

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