転生先はガンプラバトルが大人気です   作:断空我

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後輩から嫌われています。

――気に入らない。

 

 ライトニングガンダムを操るコウサカ・ユウマは目の前に現れたジェガンに苛立ちを隠せない。

 

 プラモデル部部長とガンプラバトル部がバトルをするということで見に来たユウマ。

 

 そこにいた人物とガンプラをみて、乱入した。

 

「おいおい、乱入かよ、面白いことするな」

 

 ライトニングガンダムの前に現れるジェガン。

 

 特殊なカスタムやコーティングが施されているわけじゃない。素組みに近いガンプラ。

 

 盾に何かギミックが隠されていることはわかる。だが、想像のできる範囲内のもので警戒する必要はない。

 

 問題はあの人が使っているということだ。

 

 それを操っている人を見て苛立ちが募る。

 

 腰にまで届く茶髪の髪をひとまとめにして、瓶底メガネで目を隠している年上の先輩。

 

 現れたビルドバーニングの前に立つジェガンをみて、ユウマはライフルを撃つ。

 

 ジェガンはビームの攻撃を躱すと突撃してくる。

 

 ビームライフルを構えようにも間に合わない。

 

 ビームサーベルを取り出して応戦しようとするが――。

 

「ここまでだな」

 

「え?」

 

 ユウマが驚きの声を上げる中、目の前に人の手が叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が強制的に中断される。

 

「カミキ、何の用事だ?」

 

 メガネを弄りながら俺は乱入。もとい、バトルフィールドに手をのせているカミキへ尋ねた。

 

「セカイ!先生が探していたわよ」

 

「あ、やべっ」

 

 そういえば、こいつ、転校の手続きをほったらかしにしていたな。

 

 すっかり忘れていた。

 

「もう!案内をシン君に頼んだのに、何をしているの?」

 

「んー、俺が頼まれたのは職員室へ案内をするまでであってそれ以降については」

 

「問答無用です!」

 

 カミキによって俺とカミキ弟は襟元を掴まれてずるずると引きずられていく。

 

 あれ、俺、無関係だよな?

 

 怒っているカミキに反論すれば痛い目にあうので俺は沈黙することにした。

 

 罰として家へ夕ご飯を食べに来るように言われた。ここで逆らうなんてことはしない。

 

 賢いんだよ。俺は。

 

 ただ、男子たちにばれたら俺が殺されるけれど。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、カミキ弟、お前が使っていたガンプラ、あれ、どこにあったんだ?」

 

 教師に怒られた俺達(なんで、俺、巻き込まれているの?)は放課後、帰っていた。

 

 何でもカミキ弟はカミキ姉のところで生活するらしい。

 

 ちなみにカミキ姉の住んでいる家は俺の家の隣であるため、必然的に二人で帰ることになっていた。

 

 

――ちゃんとセカイの面倒を見てね!

 

 

 カミキ姉に言われて俺はちゃんとカミキ弟を連れていく。

 

 家の鍵を渡されるって信頼されていると思えばいいのか?

 

「え?トロフィーの中にありました。えっと、ガンプラバトル世界大会」

 

「……あれか」

 

「これ、そんなに凄いんですか?」

 

 俺に見せてくるビルドバーニング。

 

「少し見せてもらっても?」

 

「どうぞ」

 カミキ弟からビルドバーニングを受け取る。

 

 芸術品ともいえる出来栄えのガンプラ。

 

 間違いない。

 

 このガンプラを作ったのは“あの人”だ。

 

「ありがと」

 

 俺はカミキ弟にガンプラを返す。

 

「カミキ弟、これからガンプラバトルをしていく上でそいつを使うなら、一つだけ守ってくれないか」

 

「何です?」

 

「乱暴に扱うな、それだけ」

 

「え、はい!」

 

 俺の言葉にカミキは真っすぐな瞳で頷く。

 

 まだ会って一日と経過していないが、コイツはどこまでも真っすぐで純粋な奴だ。

 

 そんな奴があの人の作ったガンプラで戦う。

 

 それにしても。

 

 

――もう一人の次元覇王流使いか……。

 

 

何が起こるのか、少しばかり楽しみに思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パス」

 

「なんでですか!?」

 

 バトル部の部室に入った俺はホシノ後輩の提案を断る。

 

「わかっているだろ?俺は大会に出ないって、いや、出る気はないって」

 

「でも!セカイ君、先輩がいれば、三人で出場が」

 

「それでいいのか?」

 

 俺の問いかけにホシノ後輩が黙り込む。

 

 ホシノ後輩はある約束を小さいころに交わしている。

 

 その約束を捨ててまで全国大会を目指すのかと暗に俺は尋ねた。

 

 卑怯な言い方かもしれないが約束を反故してまで勝ちにこだわるようなことをしてほしくなかった。

 

「それで、建前は?」

 

「大会に出たくない」

 

「最低です!!」

 

 俺の言葉にホシノ後輩がため息を零す。

 

「もういいです。先輩が出てくれないことはわかりました。人を探します」

 

「……それはいいんだけど、何か、厄介ごとがやってきたみたいだぞ?」

 

 俺はホシノ後輩のうしろを指す。

 

 そこでは額に青筋を浮かべているカマキリ、カマキリに熱い視線を向けている女子、俺を睨んでいるコウサカ・ユウマがいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、こうなったんだか」

 

 バトルフィールドを見ながら俺はため息を零す。

 

 カミキ弟のビルドバーニング、ホシノ後輩のパワードジムカーディガン、そして、俺が使うジェガン。

 

 対する向こうはコウサカ・ユウマのライトニングガンダム、カマキリのイナクト、女子生徒のハイザック。

 

 3on3の大会ルールに則ったガンプラバトル。

 

 観戦している顧問?もとい協力者のラルさんと学園の生徒会長。

 

 俺のすぐ横に通信画面が開いてホシノ後輩の顔が表示された。

 

「先輩……」

 

「負ければ、プラモデル部と統合ねぇ……仮登録という形で三人やっているけれど、この戦いで納得させないといけないとは……面倒だ。帰りたい」

 

「もう!」

 

「はいはい、やるから、悪いけど……コウサカの相手をしないといけないから、二人は組んで行動しろ」

 

「え?」

 

 直後、ジェガンの傍にビームが通過する。

 

「カミキ弟とホシノ後輩は近くの崖で隠れていろ……コウサカはこっちで抑えるから」

 

「は、はい!」

 

 飛来するビームをシールドで防ぐ。

 

 さて、距離がかなりあるから障害物を利用しつつ、接近するのがいいんだろうけれど。

 

「めんどい」

 

 崖からジェガンを飛び出す。

 

 同時に飛来してくるビーム。

 

 盾で躱すことに限界があるから牽制でライフルを撃ってみる。

 

 相手は牽制されているとわかっているからか避けようとしない。

 

 実力があるとこういうことがわかる。まるでニュータイプだ。

 

「これだから嫌なんだよ」

 

 相手が使っているのは改造機体。

 

 次々と降り注ぐビームの雨。

 

 相手をするのは色々と大変だ。

 

 飛来するビームをいくつか盾で防ぐ。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 背中のバーニアを吹かしてライトニングガンダムへ接敵する。

 

 ライトニングガンダムは逆襲のシャアに出てくるリ・ガズィをベースとして作り上げた機体。

 

 可変システムがあるのかわからないが、狙撃が厄介なだけで他に装備はみられない。

 

 だったらぁあああ!

 

 飛来するビームを盾で防ぐ。

 

 ジュッと音を立てて表面が溶ける。

 

 そのまま突き進む。

 

 俺の傍ではCAUTIONというアラートが鳴り響いている。

 

 盾にある程度の加工しかしていないから長時間の防御は無理だ。

 

「だからこそ」

 

『盾を犠牲にしたのか!?』

 

 半壊した盾を投げ捨ててそのままライトニングへ接近しようとした時。

 

「どこだ~、バトル部~」

 

「うぉぉ!?」

 

 俺の前にハイザックが飛び出す。

 

 慌ててライフルを構える。

 

「あ~れ~」

 

 俺が発砲するよりも速くホシノ後輩の狙撃でハイザックが撃破される。

 

「シノダくぅぅぅぅうん!」

 

 カマキリの叫び声が聞こえた。

 

「あ、やばっ」

 

 ハイザックの爆風の中からビームがジェガンの右腕と右足を溶かす。

 

 バランスを崩しそうになりながら空中でとどまる。

 

「やっべぇ」

 

「なんで、そんなガンプラを使っているんだ!!」

 

 コウサカが俺に問いかけてくる。

 

「何を使おうと俺の自由だろ?」

 

「白い悪魔とまで呼ばれた貴方が!!」

 

 ビームライフルの狙撃から逃れようとしているジェガンにライトニングの狙撃が雨のように降って来る。

 

 性能がダウンしていることでビームが次々と掠めてジェガンの装甲が所々、溶けていく。

 

「なぜ、本気を出さない!」

 

「本気ねぇ……」

 

 悪いな。コウサカ。

 

 俺は―。

 

「前座だからさ」

 

 入れ替わるように飛び出してくるビルドバーニング。

 

 さて、あとは任せた。

 

「俺はポイント稼がれないように逃げるから!」

 

 振り返らずに全力で逃走する。

 

 これも戦略というものさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、カマキリが反則をしたことでバトル部とプラモデル部の統合はなくなった。

 

 あとは全国大会出場して優勝を目指す。

 

 ちなみに、コウサカ・ユウマがバトル部に来たことでメンバーが三人となる。

 

 チームトライファイターズ結成される。

 

「だから、俺は用済みのはずだったんだがなぁ」

 

 中庭でカフェオレを飲む。

 

「フミナさんやセカイはシン君を必要としているのよ」

 

「必要?こんなやる気なしに?」

 

 俺の言葉にカミキ姉がほほ笑む。

 

「私からもお願い。セカイ達をよろしくね」

 

 女神のように微笑むカミキ姉。

 

 普通の奴らならそれだけで目がハートマークになるだろう。

 

 俺には通用しないのだ。

 

 普通とは違うのだよ。普通とは!

 

「ま、やれるだけはやるよ」

 

「うふふ」

 

 微笑むカミキ姉から視線をそらしながら俺はカフェオレを飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、知らなかった。

 

 

 

 俺の過去が音を立てて近づこうとしているなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必ず見つけて見せます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃がさないから」

 

 


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