次回くらいでこの話を終わらせるつもりです。
全国大会を軽く触れて、名人杯の話で終わるつもりでいます。
「うわぁ、一瞬で老若男女問わず桃色空間に包まれたよ」
開会式の後、イメージキャラクターとしての姿を見せたカミキ姉。
純白に近い衣装に青いヘッドギアをつけている。
唇にうっすらとルージュらしきものがみえることから化粧をしているのだろう。より、彼女の美しさが引き立てられていた。
彼女の開会挨拶で周囲は桃色の空間に包まれている。
ちなみに例外が存在する。
ガンプラ学園とか、俺の周りなどだ。
「流石にギャン子は耐性がついているか」
「何のこと?確かに綺麗だと思うけれど、周りみたいにならないわよ」
「そうだな、あとは隣の絆創膏だけか」
「絆創膏って、俺の事か!?俺はイズナ・シモンだ」
「忘れなかったら覚えておいてやるよ。絆創膏」
「覚える気ないじゃないか……」
隣で絆創膏が何か言っている中、ギャン子が尋ねてくる。
「それはそうと、あなたは大丈夫なの?セカイ君のお姉さん、物凄いファンが増えているわよ」
「あんなの日常茶飯事だ。俺が気にすることじゃないよ」
今も広がる桃色空間にコウサカが悲鳴を上げていたような気がするけれど、諦めなさい。
量産フラグメイカーのカミキ姉なのだから。
まぁ、アイツに悪気はないのだけれど。
そんなこんなの間に対戦表が発表される。
「ウソ!?」
「初日……しかも、相手は」
トライファイターズの対戦相手はオホーツク学園のチーム南北海道。
去年の全国大会ベスト8という記録を出している。
「最悪じゃない!」
対戦相手をみて、ギャン子が絶望の声を上げる。
隣の絆創膏も同じ表情だ。
わかっていないなぁ。
「大丈夫だよ」
「え?」
「どうして、そう思うのかしら」
「傍で見てきたからだよ。アイツらの実力なら去年のベスト8なんて敵にならない。むしろ」
準備運動だ。
フィールドに飛び出すチームトライファイターズのガンプラ。
地区予選の時と彼らのガンプラは姿を変えていた。
カミキ弟のトライバーニングガンダム。
ホシノ後輩のスターウイニングガンダム。
コウサカのライトニングガンダムフルバーニアン。
それぞれの想いを形にしたようなガンダム達がフィールドに飛び出す。
後は暴れるだけだ。
頑張れよ。後輩たち。
初戦を何もなく突破したトライファイターズ。
ベスト8の相手は敵にならないということだろう。
何より三人の連携が前よりも強くなっていたこともある。
どんな敵が相手でもこの三人なら突破して優勝できる。
そんな確信が俺の中に存在していた。
勿論、油断はできない。
なぜなら。
「久しぶりですね、ライバル」
観客席から廊下を歩いていた俺の前に金髪の爽やかな笑顔を浮かべている青年がいた。
こちらに向けて笑顔を浮かべているがその目は獲物をみつめる獣そのもの。
「久しぶりだな、ライバル」
自然と俺の口角が上がっていく。
「まさか、お前が日本の全国大会に来るとはな。頼まれたか?」
「そうです。でも、それだけじゃあない」
微笑む我がライバルは俺を指さす。
「キミが舞い戻ると聞いた。戦えるのなら、この全国大会で腕を見てみたい。そう思いました」
「楽観……いや、腕試しか?」
「そんなところです。貴方とはあの場でもう一度、決着をつけたい」
「……だな、俺もちゃんと決着をつけたいと思っている」
互いに相手とにらみ合う。
「では、僕はこれで」
「なぁ、ルーカス」
去ろうとする我が宿敵、ルーカス・ネメシスへ問いかける。
「ガンプラバトルは楽しいよな?」
「当然です。そして、ライバルと戦う時ほど、楽しいものはありません」
「同感だよ。さて、我が後輩達のライバルはどうなるのか……楽しみは尽きないねぇ」
やはり全国大会は凄い。
ビルドバスターズというチームのガンプラ、トライオン3。
陸、海、空のトライオンが合体して誕生するスーパーロボット、もとい、ZZを基にしたガンプラ。
加えて、ガンプラ学園。
キジマ・シアという少女が使うG-ポータント。
プリマといわれても謙遜のない動きと行動で本牧学園チーム、グレート・Kのカリマ……だったか?が使うヴェイガンギア・Kを短い時間で倒した。
そんな強豪ぞろいに対戦していない俺でもワクワクしてしまう。
彼らの道の行く先がとても気になった。
一人でぶらぶらと森林を歩いているとキジマ・シアとカミキ弟を発見する。
「おーい、カミキ弟」
「先輩」
「……だれ?」
カミキ弟に近づくネコ娘。
「そこのネコ娘と親しくなっていたのか?」
「ネコ娘?ああ、シアのことですか、はい」
頷くカミキ弟の言葉に嬉しそうな顔を浮かべるネコ娘。
どうやらカミキ弟はフラグを建てたらしい。
「ハヤテ・シン、俺の先輩だ」
「……ハヤテ・シン、もしかして、白い悪魔?世界大会でベスト3の実力の持ち主?確か……使用していたガンプラはガンダムデルタカイWW」
「詳しいな」
「あのガンプラ、とても強かったから」
ネコ娘の言葉に俺はひゅうと口笛を鳴らす。
「でも、戦い方が少し乱暴、あれじゃあ、ガンプラが可哀そう」
「可哀そう……か、扱いは気を付けているつもりなんだけどなぁ」
「そう」
ネコ娘の言葉にまだまだ修行が足りないということだな。
少し話をしているとどうやらカミキ弟のことを本気で好きになっているらしい。
しきりに彼へ自分の作ったガンプラを使ってほしいといってくる。
対して、恋愛に疎いカミキ弟は戸惑ってばかりだ。
こういうのを青春というのだろう。
ラル大尉の言葉を借りるとあぁ、尻がかゆい。
その後、ギャン子が乱入。
トライファイターズの次の対戦相手統立学園チーム「SD-R」の三人がやってきた。
彼らはカミキ弟とネコ娘、ギャン子の姿をみて、呆れていた。
それだけならただの挑発で済んだのだが。
「やっぱり、ハヤテ・シンさんには統立学園に来てほしいな」
「そうだね」
「あなたほどのファイターでありビルダーに指導を受けたら僕達はもっと強くなれる」
なんでここまで好意を寄せられているのか全く分からない。
俺が茫然としている間にカミキ弟のセリフを奪ってギャン子とネコ娘が宣言をしていた。
哀れだな、カミキ弟。
しかし、俺がここまで気に入られるなんて初めてのことではないだろうか。
「先輩、先輩、恋愛ってなんですかね?」
「いきなりなんだよ」
カミキ弟に言われて俺は持っていたパーツを潰しそうになった。
話があるということでカミキ弟は俺の部屋に来ている。
明日はチームSD-Rとの闘いだ。
早めに寝ておくべきだろう。
「恋愛ねぇ、カミキ弟はまだ中学生だろ?そのうちわかるようになるさ」
「そうなんですか?」
首を傾げているカミキ弟。
目を見てみる限り本気でわかっていないのだろう。
少し、尋ねてみるか。
「カミキ弟はカミキ姉以外に好きになった人っているか、あ、友達とかそういうのとは別のものだ」
「……ない、です」
「経験あるのみだな。恋愛はとても難しいものだって聞くからな」
「先輩はそういう経験ありますか?」
「あったともいえるし、なかったともいえる。まー、こればっかりは本人の気持ちとかそういうところがあるからどうしようもない」
「難しいなぁ」
困ったような声を上げるカミキ弟。
ま、眺めるだけにしておこう。
楽しみは尽きないな。
「そういえば、先輩は姉ちゃんと付き合っていないの?」
ベキャン。
音を立てて予備パーツが砕け散る。
「何を言い出すんだ?お前」
「だって、ユウマや先輩が言っていたんですよ。あの二人は恋人じゃないのかって、違うんですか?」
「違うわ!アイツとは友達だ。それ以上は……多分、ないさ」
多分、違うだろう。
だが、俺から動くつもりはない。
カミキ姉は人気者だ。
俺みたいな悪魔という異名を持つ奴が触れていい相手ではないのだ。
返答にカミキ弟は納得していない表情をしていたが、そこもいつかは解決するだろう。
それにしても、パーツ、無駄にしちまったなぁ。
チームSD-Rとの戦いはトライファイターズの勝利で終わった。
面白かったのはコウサカが幽霊を苦手ということ。
SD-RのSDガンダムが合体して三つ首のドラゴンになったこと、イオリさんが使ったアブソーブシステムを搭載していたことなど、色々と面白いものだった。
ただ、彼らはガンプラ学園を憎んでいた。
三つ子の長男がガンプラ学園の入試に落ちたことで恨みを抱いていたという。
そして、彼らが俺に執着していた理由。悪魔という異名を持つような戦い方を見たことが原因だった。
悪魔の指導を受ければガンプラ学園を超えられると考えていたという。
「おいしいところを持っていったな、キジマ兄」
「申し訳ありません、ハヤテ・シンさん」
あの三人と話をしていたキジマ兄の前に俺は姿を見せる。
「でも、助かったよ。悪魔の俺が説得したら余計にこじれるかもしれないからな」
「そんなことはありません。貴方はあの時」
「色々あったとしても、俺はその結果をバトルで示した。だから、悪魔なんて言われているんだよ」
「……ハヤテ・シンさん」
「今回、俺は若い連中の邪魔をするつもりはない。だから、キジマ兄、全力でガンプラバトルを楽しめよ」
「勿論です。チームトライファイターズと戦える日を楽しみにしています」
「伝えておくよ。お前のライバルに」
「ありがとうございます」
キジマ兄と別れて俺は部屋に戻る。
部屋の中央には作成したガンプラがあった。
「完成したけれど、こいつのお披露目はしばらく先だな」
純白のガンプラ。
プロトの名前を外したXX。
ガンダムXX。