転生先はガンプラバトルが大人気です   作:断空我

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聖鳳学園高等部二年生です。

――ああ、大変だ。

 

 ホログラフィーで再現されている光球状の操縦桿を操りながら目の前に迫る敵の攻撃を回避する。

 

 今、俺はガンプラバトルをしている。

 

 ガンプラ。

 

 それは機動戦士ガンダムのプラモデルの略称。

 

 “この世界”はプラフスキー粒子というものによってガンプラを操り、動かすガンプラバトルがとても盛り上がっている。

 

 今、俺はガンプラバトルの公式大会に出ていた。

 

 大勢のファイターが入り乱れる乱戦式の大会で目の前にはガンダムSEEDというシリーズに出てくるジンやシグーが立ちはだかっている。

 

 中にはガンプラの主人公が使うようなガンダムの姿もあった。

 

 フィールドに出ているほとんどが基となっているガンプラを自身の手によってカスタムされている機体がほとんど。

 

 その中で俺が使っているガンプラは素組みでシールドや武装に少しばかり手を加えているだけのRGM-89ジェガン。

 

 迫って来るジンのコクピット部分をライフルで撃ち落とし、背後から狙いをつけているジムスナイパーの狙撃を盾で防ぐ。

 

 危ないなぁ。特殊コーティングしていなかったら心臓部直撃でアウトだ。

 

 武装をビームサーベルに切り替えて背中のバーニアを吹かす。

 

 スナイパーがライフルを向けるけれど、遅い。

 

 操縦桿を操ってビームサーベルでスナイパーのコクピット部分を貫く。

 

 ビームサーベルを引き抜いてジェガンを下がらせようとした時。

 

「あぶなっ!?」

 

 遠方から降り注ぐビームの雨。

 

 俺を狙っていた周囲のガンプラが光の中へ消える。

 

 遠くを見ればガンダム00に出てきたヴァーチェの姿があった。

 

「足止めだなぁ」

 

 目の前にいるヴァーチェを含む高出力の武装をしているガンプラ達。

 

 その後方には巨大な小惑星、アクシズの姿がある。

 

 アクシズに突入して敵を倒せば、勝利だが、これはダメだな。

 

「制限時間オーバーって、しゃーないよな」

 

 盾に仕込んでいるガトリングを連射しながらアクシズへ突撃していくガンプラ横目でみつつ、敵を足止めする。

 

「まー、時間は潰せたからいいか」

 

 倒したガンプラの数を確認しながら俺は設置したガンプラと専用のデバイス“GPベース”を取り外して大会を後にする。

 

 建物を出ると壁に設置されているスクリーンにある映像が流れていた。

 

 画面には凄いと言える出来栄えのガンプラとメイジンカワグチから表彰を受けている知的なイメージを持つメガネの少年の姿がある。

 

「はー、つまんねぇ」

 

 肩をすくめながら俺は帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「寝坊した……」

 

 翌朝。

 

 俺は通っている学校へ行くためにぶらぶらと通学路を歩いている。

 

 通学路は俺と同じ学生が一人もいない。

 

「まぁ、大遅刻なんだけどさ」

 

 昨日の夜、寝れないからってガンダムのアニメを一気見したのはよくなかったな。

 

 机で寝落ちしていた。

 

 慌てたところでどうしようもないからカバンを手に通っている聖鳳学園を目指している。

 

 何でも、ガンプラバトル世界大会出場者がいるという有名な高校(入学した後に知った)。

 

 当然のことながらガンプラバトルをするための部が存在する。

 

「最近はプラモデル部に人が流れているけれど」

 

 バトル部に残っているのは俺と後輩のみ。

 

「そういえば、携帯の電源、入れてなかったな……」

 

 ポケットから携帯を取り出そうとした時、路地裏で不良と一人の少年がいた。

 

「ん~?」

 

 不良に絡まれている愚かな少年、と思ったがよくよくみると違う。

 

 絡んでいる不良は気づいていないな。

 

 仕方ない。

 

「おいおい、チミ達」

 

「「「あ?」」」

 

 三人がこちらを睨む。

 

 続いて赤髪の少年がこちらを見た。

 

 その顔を見て少し驚く。

 

 

――少し、似ているな。

 

 

「何だよ、てめぇ」

 

「いやさ、絡む相手は考えた方がいいよといいたくて」

 

「は?」

 

「何だよ。生意気だぞ!てめぇ!」

 

 あ、こっちに矛先むいちゃったよ。

 

 溜息を吐いている間に、三人は赤髪の少年によって倒される。

 

 そして、俺と赤髪の少年はやってきた警官によって連行された。

 

 あれ、巻き込まれた!?

 

 

 

 

「だから、向こうから突っかかってきたんですよ!生意気だって」

 

「右の言うとおり」

 

「三人を二人で相手したの?そっちは無傷だけど」

 

「少しかじっていましたから」

 

「よそ見している間に、この子が一人で倒しました」

 

「柔道かなんか?」

 

「いえ、次元覇王流拳法です!知りませんか?」

 

「お、知っている。他に使う人いたんだなぁ」

 

「本当ですか!?」

 

 この会話、赤髪、俺、警官という順番に行われている。

 

 しかし、この赤髪、俺の知り合いがやっている拳法しているなんて、偶然だよな?

 

「そういえば、キミの方は?この時間、学校だよね?」

 

「盛大に寝坊して通学路に向かっていたところです」

 

「……あ、そ」

 

 俺の言葉に警官が呆れたようにみる。

 

「えっと、ハヤテ・シン君。聖鳳学園高等部二年生だね?」

 

「うっす」

 

「キミ達のこと保護者に連絡したから」

 

「……うぇ!?」

 

「え!?もしかして、事情も?」

 

「当然だよ。全く、名前だけで探すのは苦労したんだから」

 

 呆れた様子の警官。

 

 音を立てて後ろのドアが開いて一人の女の子が入って来る。

 

 腰にまで届く綺麗な髪、シミ一つない綺麗な肌。

 

 澄み切った瞳。

 

 あ、顔見知りだよ。

 

「あの、カミキ・セカイの保護者、カミキ・ミライです」

 

「……あれ、カミキじゃん」

 

「シン君?どうしてここに」

 

「姉ちゃん、この人、知り合い?」

 

 どうやら赤髪の少年は俺の知り合いの身内だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、カミキ・セカイか、俺はハヤテ・シン……お前が通う予定の高等部二年生だ、よろしく」

 

「カミキ・セカイです!よろしく!先輩!」

 

 頭を下げるのは黒い学ランのカミキ・セカイ。

 

 姉のカミキ・ミライに用事があるからということでカミキ・セカイを中等部へ連れてきていた。

 

 頼みを断ると俺が周りの男子たちに睨まれるからなぁ。

 

「失礼します……先生、いますかぁ?」

 

「ん?高等部のハヤテか?どうした」

 

「あ、中等部に転校予定の生徒を一名、連れてきました」

 

「転校生?そんなこと、職員会議で聞いていないぞ」

 

 あれ?

 

 転校するって聞いていたから連れてきたんだが。

 

 俺はカミキ弟をみる。

 

「どういうことだ?」

 

「……実は、一か月前に転校予定だったんですけど」

 

 一か月前!?

 

「何をしていたんだ?」

 

「師匠と修行の旅に」

 

 何じゃ、そりゃ。

 

 俺が呆れていると教師が外へ出ていく。

 

「先輩!」

 

「あれ、ホシノ?なんでここに?」

 

「大会の申請に」

 

「あー、そういう時期だったな。忘れていたわ」

 

「同じバトル部の部員のセリフとは思えないんですけど」

 

 俺の前で呆れた声を出すのは中等部後輩でガンプラバトル部の部長を務めているホシノ・フミナ。

 

 高等部の俺が部長になるべきだと思うだろうけれど、面倒だから押し付け……パスした。

 

「先輩、メールで連絡しておいたと思うんですけど」

 

「ん?あ、携帯、電源、切ったままだった」

 

「もう……」

 

「ハヤテ先輩、この人は?」

 

「コイツはホシノ・フミナ。ガンプラバトル部の部長だ」

 

「ガンプラバトル部?」

 

 首を傾げているカミキ弟。

 

「って、何です?」

 

「え?知らない?ガンダムのプラモデル」

 

「?」

 

 首を傾げているカミキ弟に尋ねるホシノ後輩。

 

 本気で知らないみたいだ。

 

「うそぉ!?」

 

「うるさ!?」

 

 俺の耳元で叫ぶなよ。

 

 隣を見ると信じられないという顔をしているホシノ後輩。

 

「カミキ弟は拳法をしているからな。それに熱中していたら無縁になるのは仕方ないだろ」

 

「ハヤテ先輩もやっているんですか?」

 

「ん……まぁ、たしなむ程度に」

 

「そんなわけないじゃないですか!?ハヤテ先輩は世界―」

 

「カミキ弟!!そういえば、お前は部活とかどうするつもりだ?」

 

「先輩、ここに柔道部とかありますか?」

 

「ない」

 

「じゃあ、剣道部とか」

 

「ないな」

 

「先輩、ここに武道系の部活はないこと、忘れたんですか?」

 

 あ、そうだった。

 

「そんなぁあああ!」

 

 ショックを受けるカミキ弟。

 

 可愛そうに。

 

「じゃあ」

 

 ショックを受けているカミキ弟をみていると隣である提案をするホシノ後輩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺、カミキ弟、ホシノ後輩でガンプラバトル部の部室へ足を運ぶ。

 

 ガンプラバトル部はもともと模型部だったのだが、数年前に世界大会に出場した人がいたことを皮切りにバトル部とプラモデル部に分裂した。

 

 それで、俺達はバトル部の部室へ来ていた。

 

 バトルフィールドの筐体、棚には部員たちが作ったガンプラやトロフィーなどが置かれている。

 

「さてホシノ後輩?カミキ弟、俺、帰っていい?」

 

 うしろを見るとパイプ椅子に拘束されているカミキ弟とガンプラバトルの説明をしているホシノ後輩の姿がある。

 

「駄目です!」

 

「助けてくださいよ!?」

 

「まー、ロープくらいは解くから話だけは聞いてくれよ」

 

「あ、はい」

 

 俺の言葉にカミキ弟は素直にうなずく。

 

 コイツ、純粋だなぁ。

 

「ホシノ後輩も説明していたがガンプラバトルはお前がやっていた拳法などと違って自身の手足は動かさない。代わりにこのガンプラをもう一人の自分のようにコイツを動かす」

 

「もう一人の自分?」

 

「例えとして考えてくれればいい。どうして、ガンプラが動くとかそういう説明はできないから、聞くなよ。このガンプラを使って相手と戦うのがガンプラバトルだ」

 

 俺は使用しているジェガンと専用のGPベースを取り出す。

 

「って、先輩!?私と同じような説明しているじゃないですか!!」

 

「二人で見せた方が面白いだろ?」

 

「そう、ですけど」

 

 荒野のフィールドに立つジェガンとホシノのガンプラ、パワードジムカーディガンが立つ。

 

「軽く動かしてみるぞ~」

 

 カミキ弟へ見せるようにジェガンを動かす。

 

 コイツには武器とかを使わず、ビームサーベルを使う方がいいだろう。

 

 数十分後。

 

 バトルフィールドにてカミキ弟がドムを操っていた。

 

「ま、男の子だよな」

 

「先輩に言われてやる気になっているなんて納得できない」

 

「どういう意味だよ」

 

「だって、見た目不審者な先輩にいわれてやる気出すなんて」

 

「おい、俺のどこが不審者だよ!?」

 

「だったら、その長い髪と瓶底メガネやめたらどうですか」

 

「いいんだよ。これで、地味が俺のモットーなんだから」

 

 ん?誰かからメールだ。

 

「あ!」

 

「駄目!」

 

 顔を上げるとホシノ後輩がカミキ弟の上に覆いかぶさっていた。

 

 あれ?

 

 いつの間にこんな事態へ?

 

 それよりも、言わなければならないことがある。

 

「ホシノ後輩は年下好き……っと」

 

「何を言い出すんですか!!」

 

 後、乱入してきたカマキリことプラモデル部部長とホシノ後輩、カミキ弟の二人がガンプラバトルをすることになった。

 

 そこで俺はまたあのガンプラを目撃した。

 

 俺の師匠、イオリ・セイさんが作ったガンプラと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世界にあの人がいるんですね」

 

「絶対に見つけ出す!」

 

「見つけ出して、逃げないように監禁して、えへへへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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