とらんあんぐる組曲 作:レトロ騎士
Ich tue so, selbst wenn die Welt einst?rzt.
Solange Sie seien mit mir.
Ich liebe Sie, liebe Sie, liebe Sie...
◇
二人きりの旧校舎の屋上で。
少年と少女は寄り添い、語り合う。
「先輩……本当にだいじょうぶですか?」
「ああ…あとでちゃんと病院に行くとしても――いまはもう少しこのままで」
フェンスに寄りかかり、肩を並べて座る二人。風は冷たかったが、触れ合っている部分は温かい。
爆発音を立ててしまった以上、しばらくすれば誰かがやってくるかもしれないが――それでも、命を賭けて取り戻した、二人のこの時間は譲れない。
ほんの少しの蜜月を、今は大事にしたい。
「色々言わなくちゃならないことがあるけど――ごめんな、さくら」
「……ゆるしません」
すねたように、さくら。
「もう二度と――こんな危険なことはしないでください。でないと――」
「でないと?」
「もう、血を吸ってあげません」
どうだ、といわんばかりに上目遣いで少年の瞳を覗き込む。
かつては己の宿業として、嫌悪すらしていた異形の行為。
だけど、いつしかそれは、二人の絆を育む愛おしい行為へと変わっていった。
だからこその、その可愛らしい脅迫だ
「……はは、それは嫌だな」
真一郎が、きゅっと、さくらを抱き寄せる力を大きくする。
小さな少年の、その大きな抱擁に身をゆだね、さくらはめを閉じて彼の暖かさを感じる。
このまますべてを許したくなるが、今はダメだ。
この愛しい人がもう無理をしないように、ちゃんと「めっ」と叱らなくては。
「約束、してくれますか? ほんとうに、もう危険なことはしないって誓ってくれますか?」
「……ああ、少なくても、君と、何時か生まれる子供を守る為以外には、しない」
「ちょっとずるいですけど……わかりました。それはきっと私も同じだと思いますから」
はあ、とため息。
そういわれては、何もいえなくなる。
自分も、真一郎のためなら、どんな危険なことでもするだろうから。
さて、お説教が終わったなら、今度はご褒美の時間だ。
そう思うと、さくらは手を伸ばして、少年の頬に添えた
そして、そのまますっと、さくらが真一郎の顔を覗き込む。
「どうしたの?」
何もしないまま、じっと自分を見ているさくらを不思議に思ったのが、真一郎が首をかしげた。
さくらは、ふふっと小さく笑って、
「……約束してくれましたから、ご褒美に血を吸ってあげます」
「ちょと……いまは、どっちかっていうと俺の方が足りないんだけど……?」
「ダメですよ。ほら、こんなに血が流れてるんだから」
その場所を、指でなぞる、確かに血液が少し付着しているが――
「イヤ、ですか?」
「……ううん、そこなら大歓迎」
目を閉じて、
言葉では、足りない想いを唇に。
想いを届ける交響曲 ~終~