鳥ウナギ骨ゴリラ   作:きりP

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今更だけどこれ連載に変えた方がいいのかな? 短編も入ってるからこのままでいいのかな? 分離して投降すると見る人が面倒くさいと思ってこうしたんだけど、まぁなんか言われたら変えようと思いますw



6 異世界ホームラン競争

「モモンガ様、あれも天使なんでありんすか?」

「うん、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)だな。でもあれは野盗とは言わないよなあ?」

「確かに盗賊の類ではありませんね。軍隊なのかしら?」

「お前らそろそろこっち来て座れー。相談始めるぞ~」

 

 まるで電車内で外の景色を眺める子供のような光景だが、膝をついて窓の外を覗き見る三人のうち二人はまるで状況が呑み込めていない。

 シャルティアの説明ではペロロンチーノの雄姿しか語られていないからだ。

 

 現在四人は村長宅を間借りしているのだが、先ほどまでいたガゼフ戦士長はペロロンチーノと村長との会話を終え出立している。

『できれば……村人を守っていただきたい』との言葉を残し答えも聞かず死地に向かって行った。

 

 ―――未知数な力を持っているかもしれないが少年が一人に、病弱であるかのように白い肌の華奢な美少女。ふらふらとよろけるように歩いていた虫も殺したことが無いようなとてつもない美女と、ゲッソリと頬がこけてはいるが優しさが服を着たような笑みでその女性を献身的に支える青年―――

 

 ぶっちゃけガゼフの想像はほとんど幻なのだが、そのような手合いに共闘を申し出るほど彼は鬼ではなかったのだ。

 

「モモンガさん……最初に要点だけ言うと『人を殺す覚悟』ってやつ……アレ舐めてた。ラノベとかでは馬鹿にしてたんだけど結構厳しかったよ」

 

 手がすっげー震えちゃってさなんておちゃらけながら、今朝がた起こった出来事を順序良く詳細に説明していくペロロンチーノ。

 最初の一言で大声を上げてしまいそうになったが、モモンガは最後まで何とか黙って話を聞くことができた。

 シャルティアがまるで聖母のような表情でペロロンチーノの横に侍っていたことにも理由があったりする。

 

「ぐっ!? すいません、俺がいない間にそんな思いをさせちゃって……」

「いやいや殺してはいないぞ。そもそも俺らの行動自体が行き当たりばったりなんだからモモンガさんのせいってわけじゃないって」

 

 今はもうなんともないよと朗らかに笑うペロロンチーノ。その瞳に嘘は無い。

 それでもと追いすがろうとしたモモンガであったが、それを止めたのはアルベドであった。

 

「……正直お二方の気持ちが理解できていないのが私だけ(・・・)だというのが悔しくてなりません。ですが今は時間が無いのではないかと察します。ペロロンチーノ様、行動方針を」

 

 自身の膝を爪が食い込むほどに握っていたモモンガの手をギュッと包み込むようにして、アルベドはそう言葉を挟み込む。

 

「アルベドの言う通りだ。俺たちは村を野盗から守ると決めて行動してたのに、なんだこれ? ってくらいに規模がでかくなってきたからな」

「小目標は『食料調達』……でありんしたのに戦に巻き込まれておりんす」

「ですね……接触ついでに野盗をふん捕まえても良しって考えだったけど……国と国の争いに関係しているみたいな」

 

 なんでこんなことになってるんだと嘆きそうになるが、ここでもやはりアルベドはぶれない。

 

「つまりは村を救うという確定事項の元に行動されるのですよね? モモンガ様、お願い致します」

「ふぁっ!?」

 

 思わず変な声を上げてしまったモモンガであったが、考えてみればここで逃げ出すというのは憂いを残す選択であり当然ない。ペロロンチーノも当然そう考えてはいるだろうが、吹っ切れない理由があるとすればその経験のせいだろう。

 本来なら蚊帳の外だった自分の選択肢は『ペロロンチーノの考えに全て従う』というものだったのだが、それは相手を思いやる気持ちだったとしても、ある意味投げっぱなしの行為だ。

 逃げないというのはつまり戦うということで、それを酷な経験をしたペロロンチーノに言わせるというのは避けたい。

 

 ああそうか、だからアルベドはいつもと違ったそんな態度であえて俺に選択権を振ったのか、とハッとする。

 

 過程を省いてはいるがモモンガが選択した方が……いや、モモンガならもっとうまい解決策を提案できると確信しているのだろう。

 もしかしたらそれに『モモンガ様の恰好良いお姿を私も拝見させていただきたいです』というシャルティアを羨む思いもあったのかもしれないが。

 

 頭良すぎる上に信頼が天元突破してんぞと考えながら、長考に瞳を閉じていたモモンガはペロロンチーノの顔を見つめなおす。

 ドンと来い! といったいつもの朗らかな笑顔に安心して言葉を紡ぐことにした。

 

 

「よし、プランBで行きましょう」

「ねぇよ!? じゃなくてわかんねぇよ!!」

 

 

 両者瞳を滲ませ笑い出す。いつも通りの空気感が戻ってきた瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかあれをやることになるとはなあ。でもこの世界で通用するならいっそメインの攻撃手段にしてもいいかも? 俺も出来るのになんで忘れてたかなあ」

「なんの話でありんすか? それよりモモンガ様が心配でありんす……」

「見えないけどアルベドが付いてるから大丈夫だって、それより来るぞ。今回はさくさく狩ってやるから安心しろ」

「戦場は遥か下でありんすが狙い撃つのでありんすか?」

「いや、この空が戦場になるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 村の包囲網をこちらに引き付けることは出来たが膠着状態……いや完全に劣勢だ。反転して戻ってきた部下たちも、力量的には負けてはいないのだが、天使たちや飛んでくる魔法にどうすることもできていない。

 かくなるうえは指揮官を狙うしかと目標を定めた直後、ガゼフの横まで走りこんでくる人影を見受け、それが部下ではないと気づいて驚愕する。

 

「あなたは!? 確かモモンガ殿! 何故ここへ!」

「ストロノーフさん、天使たちは全部私がやります! そしたらどうにかなるんでしょう?」

 

 何の変哲もない金属の棒を握り締め、青白い顔をしながらも鬼気迫る程の覇気。彼がどれほどの実力の者かは知れないが、村人を守る人員をこちらに割くわけにはイカンと声を上げる。

 

「モモンガ殿! 御助力ありがたいが貴殿は村へ」

 

 そう告げるガゼフの言葉を遮り届いた言葉は、まるで自身を鼓舞するかのような悲痛な雄叫びだった。

 

 

 

「私も……俺もやってみないとですね……友達の隣に立てんのですよ!!」

 

 

 

 歯をガチガチに食いしばって緊張はしているものの、その目は引いて堪るかと、本気だと訴えかけているようで。

 

 不思議と彼をまるで10年来の親友のように信頼してしまう自分がいた。

 

「狙うは敵指揮官! 突貫する!!」

「続きます!!」

 

 

 

 

 

 

 走る、走る、走る。

 

 距離的には300mもないはずだ。ただそれを阻むのは無数の天使たち。敵兵45名のうちほとんどが第三位階の使い手のマジックキャスターである陽光聖典。

 その人数と同じ数の天使たちが、一体、そして二体と数を増して迫りくる。

 

 だがそれは私の相手ではない。

 

 まずはと一体の天使がガゼフと並走するモモンガに向けて剣を前方に向けながら突っ込んでくるが、一閃。その金属の棒で下から掬い上げるようにぶちかます。

 

 『カキーン!』といい音がしたかと思うとその天使は影も形も見当たらない。

 

「なるほど……頼もしい!」

 

 何が起こったんだと考える前に思わず笑みを浮かべてしまう。聴きたいことは生き残ってから聴けばいいと改めてすべてを無視して……いや全てを任せて走る。

 続けざまに二体の天使が両脇から迫りくるも、モモンガは素早いステップで『カキーン! カキーン!』とその天使たちを打ち上げていく。

 

「よしっ……怖かったけど大分動けるようになってきたな」

 

 なんて小さな声を漏らすモモンガの横では荒い女性の鼻息が聞こえたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと! さすがモモンガさん、狙いばっちりだぜ!」

「な、なんなんでありんすか!?」

 

 上空ではシャルティアに跨って飛んでいたペロロンチーノが、打ちあがってきた天使たちを次々と撃ち抜き、光の破片へと変えていく。

 

「これモモンガ様がやっているのでありんすか? またとんでもなくスゴイですけど面倒なことを……そのまま倒さないのは?」

「ああ、俺のリハビリも含んでるわけだ」

 

 というか対人の場合、横に吹き飛ばすという不殺を考えたモモンガの策だったわけだが、表向きは今度こそカッコイイ自分をシャルティアに見せるためにモモンガが提案してくれたということになっている。

 そもそも王国戦士を支援するだけならモモンガの魔法でどうにか出来るのだが、レベリングに必要な魔法しか取っていなかった彼は、新たに低位階の滅多に使わないような捕縛魔法なりを選択しなければならないということになるそうだ。

 そんなことを早口で捲し立てていたモモンガの真意は別にあったのだが、単独で迎撃すると言う彼の言葉には全員が驚きを隠せなかった。

 

 スパーンと一撃で花開く光の環はまるで花火大会の様相であるが、シャルティアがうっとりと見つめるのはペロロンチーノであったりして、その作戦は成功のようである。

 それでも疑問に残るのはあの鉄の杖だと考えるシャルティア。持っているのは以前あのテントで教えてもらっていたのだが、何故そんなものを持っていたのか疑問であったのだが、ペロロンチーノの言葉が解消してくれた。

 

「俺とモモンガさんのペアはさ、ちょっと特殊なんだ。普通なら後衛二人なんてペアはまず組まない。でも俺たちにはそれしか出来なかったからいろいろ工夫したりしてたんだぜ」

 

 そう言ってペロロンチーノは弓をさっと装備換装。飛び上がってきた天使を撃ち抜くと、まるでピンボールのように同じ軌道で降下していき、モモンガたちの背後の地面に叩きつけられ消滅する。

 

「ありゃ、ぶつかったら死ぬのか……そりゃそうだよな。でもこの武器もモモンガさんの『金属バット』って名前の杖も攻撃力は殆ど無いんだ」

「……ヘイトコントロールでありんすか?」

「お! いいとこ突いてくるな。俺たちはさ大量の敵を一まとめにして倒してきたんだけど、数が増えてくるとまとめきれなくて抜け出てきちゃう敵が出てくるんだわ」

「うーん……つまりペロロンチーノ様がまとめた敵からこぼれたのがモモンガ様のもとに行くのでありんすね? それを打ち返すのでありんすか」

「そう、『お手玉』って戦法に近いかな? 俺も範囲や直線貫通攻撃があるわけで、敵モンスターを纏めるのに結構便利なんだ」

 

 まあ混雑した狩場でやったら掲示板に晒し上げだけどなんて呟きながら、いまだ打ちあがってくる天使たちを、またしても装備換装してサクサクと狩っていく。

 本来は養殖……いや相手にのみ経験値を与えるために無傷でまとめる為、または被弾しない為の策であったのだが、上手い説明が浮かばず、ペロロンチーノはそのことには触れてはいない。

 

 そして一際大きな天使が浮かび上がってきたことで地上での戦闘は終焉を迎えるのだった。

 





そろそろ連続投降が止まりますw すまんのw

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