鳥ウナギ骨ゴリラ   作:きりP

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ガゼフさんは前回散々書いたので書きやすいかもしれないw



5 王国戦士長

「お前らあれだよな、結構容赦ないんだな」

「光栄でございますご主人様の御友人様。ですがあなた様の不殺の心得感服いたしました。妹のオルトリンデなどほら……あれは完全に惚れこんだ瞳をしておりますね。どうでしょう側室などは」

「あぁあ、ご所望じゃないです! そんなことより周辺警戒とそいつらの見張りを頼むよ」

「かしこま!」

「こら! グリムゲルデ! 申し訳ございませんご主人様の御友人様。勅命拝命いたしました」

 

「名前どころか個性もあるのかよ……すごいな」

「さっきの長女ブリュンヒルデはモモンガ様のような優し気な方に言葉で責められると興奮するそうでありんす」

「いつ聞いたの!?」

 

 何とか平静を取り戻したペロロンチーノは戦乙女たちと合流。村の者たちの手も借り騎士たちを縛り上げ、ようやく話が出来るように落ち着けるまでかなりの時間がかかってしまった。

 

 そもそも村人の、特に女性陣があんなにも早く起きて戸外に出ようとしていたのは想定外だったのだ。あとで聞いた話では水汲みは女の仕事なのだそうで、偶然だか必然だか狙い撃ちになった形になり、天使たちはなりふり構っていられなかったそうだ。

 

 その結果が敵兵死者20名近く。村人に怪我人はいたものの死人がいなかったことだけは幸いだ。

 

「もう一度言うが、ありがとうペロロン君! それで……モモンガ君とアルベドさんは大丈夫なのかね?」

 

 何故か助けられた村人たちは女性たちを筆頭に笑顔で感謝を伝えに来る者ばかりだ。もう少しあの翼の生えた天使たちを不審がってもおかしくは無いが、確かネムといったか。あの子と一緒に走り回って遊んでいるようにも見える一番年下の天使を見て納得もする。

 そりゃ見た目美少女で悪意のカケラも見当たらないもんなと。

 

 ただあの天使たちを説明するために、『モモンガさんとアルベドの合同召喚術で……テントで今頑張ってるんすよ! 激しく!』なんてぶっちゃけちゃったのは、あいつらが全く出てこないせいだから仕方ないよね! なんて理由だとかなんとか。

 

 それより問題なのは捕らえた騎士たちの素性なのだが、天使たちの中に信仰系マジックキャスターがいたことにより、傷は癒せたのだがまったくしゃべらない。

 いや、違った。うるさいぐらいしゃべる隊長だとか言うのがいたが天使に殴られて気絶している。

 

 シャルティアの魔眼という手も無いではないが、手の内を見せる必要すらないし、ビクビクとペロロンチーノの後ろに隠れ、儚い気弱な姫の演技を頑張っているシャルティアを邪魔することも無い。

 お前昨日村長たちの前でぶっちゃけたよな? とは決して言わない。

 

 その後天使たちが離れた場所にいたらしい予備兵らしきものたちを拘束してきたりと色々あったが、村の奥様方が広場で炊き出しをしてくれているのを見てペロロンチーノはあることを思い出す。

 

「あ……テントに食えるもんあるかも」

「あそこになにかありんしたでしょうかえ?」

 

 そもそもあのテントはモモンガとペロロンチーノが三か月間のレベリングで使用していたものだ。ペロロンチーノも持っていたのだが、単純に役回りというかモモンガが担当していただけで他意は無い。

 ゲーム内でテントなんてそんなに使わないだろうと思うかもしれないが、ドロップアイテムの類が膨大であったのだ。

 そしてゲーム末期であったためレアの類は売りようもない二束三文。むしろ何の価値も無い通常ドロップの方がNPC商人に売りつけられる為に価値があったりしてしまう。

 つまりクリスタルを筆頭に三か月分のレア素材をどうすることもできないままテント内倉庫にしまったままであったのだ。

 

 シャルティアを伴ってテントに戻ったペロロンチーノは、リビングスペースの一角の宝箱のような倉庫を開けて手を伸ばす。頭の中に何がどれくらいあるかという情報が入ってくることに驚愕するが、してやったりとピンク色の座布団のような大きさの物体を取り出した。

 

「お肉……でありんすか?」

「うん。所謂調理素材でバフ料理に使う系の肉だな。数百程あったけどこれ食えるんじゃないかなって」

 

 コック技能がある人であれば他の素材も加えてバフ料理が作れるんだけど、肉は肉だし食えるんじゃないかと考える。

 物は試しだとそれを抱えて広場にいる奥様方にお願いしてみた。

 

 あまりにも巨大な肉にものすごくびっくりして恐縮していた奥様方だったが、この地方独特の料理なのだろうか。先日食べた麦粥のようなものに味付けされて煮込まれたり、塩焼きにしたりと大盤振る舞い。

 先日は苦い顔をしていたシャルティアも笑顔になるような美味しい料理を振る舞ってくれた。

 

 そんなこんなで縛られた兵士たちに見せつけるように昼食を堪能していたのだが、天使たちの報告で事態は急展開を迎える。

 なにやら戦士の一団が迫ってきていると。

 

 詳細な情報を得てその一団にピンときたペロロンチーノは、対峙することを選択。ちらっとテントを見ながらそっちの方を心配しつつも、天使たちに引き続き村人の守りをお願いし、戦士団へはこちらで対応することを伝えた。

 

「感服するばかりですご主人様の御友人様。見てください妹のジークルーネがあなた様を……あれは完全に惚れた瞳をしておりますね。どうでしょう側室にもう一人」

「わかったから! いや、いらないから! 村人の守りは頼むよ!」

 

 自分が突っ込み役に回るとは思いもしなかったなんて考えつつ、まだまだ新しい発見もありそうだぞと考えつつ、シャルティアの手を握り締めてその時を待つペロロンチーノであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 王国戦士長ガゼフ・ストロノーフは村から立ち上る煙を見とめ、自身の騎馬の速度を上げる。

 

「くそっ! また間に合わなかったか!」

 

 それがまさか村の炊き出しの煙だとは思いもしない戦士団は、全速力で村へと侵入。早々に村の中央広場へたどり着き村がまだ健在であったことに安堵の息を吐く。

 

 見とめられたのは三人。村長と思わしき年嵩の男性と、傭兵のような少年。そして村には場違いなドレスを纏った黒髪の美少女が、少年の後ろに隠れるようにしてチラリと目に入る。

 よくよく周囲を見渡せば、広場の物見やぐらに帝国騎士が縛られており、藁をかぶせてはあるが、これも帝国騎士の死体であることが想像される。

 

 いったい何があったのか。いやそんなことより無事であったことの方が大事だ。部隊から馬を進め三人に対峙して声を上げる。

 

「私は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らしている帝国騎士を討伐するために、村々を回っているものである」

 

 瞳を広げポカーンと口を開いた少年傭兵が気になるが、さすがに村人と言う線は無かろうと村長と思わしき男性に声をかける。

 

「村長だな? 無事で何よりだがそちらの……少年少女はいったい?」

 

 もしかしたらあの少年が村を救ってくれたのかもしれないと幻想を抱くも、それは無理であるかと考えつつ答えを待つ。

 なにやら村長に耳打ちされた少年は笑顔を見せて答えてくれた。

 

「はじめまして。俺はペロロンチーノと言います。とりあえず味方とみていいんですよね? この村を助けたのは俺だけじゃないんですけど……先日から居合わせたよしみというかなんというか。とにかく助けが来たのはありがたいです」

 

 どうやら先ほどまではいたのであろう。遠くの住居からの視線も感じるということは、先ほどまでここで炊き出しの最中であったのだろうと察する。そこに仲間の傭兵もいるのだろうなと。つまりは彼……もしかしたら彼女が傭兵団の代表であるのだろうかと考えながら礼を述べる。

 

「この村を救っていただき、感謝の言葉も無い」

 

 偶然居合わせたのかどうかは定かではないが、どう見ても純真無垢な青少年たちだ。その秘めた実力に感服するも頭を下げざるを得ない。

 良かった……本当に良かったと……

 

 だがそこで事態は一変する。一人の青年が近くの見慣れない大型テントから現れたのだ。そして少年と少女を見とめると声を上げる。

 

「ペロロンチーノさん! シャルティア! 助けて! アルベドが動かなくなっちゃって!」

 

 まるで笑いをこらえるようにテントに入っていく二人と、げっそりとした表情の青年を見送ると、その場に沈黙が訪れる。

 

「村長……すまんが説明をお願いする」

 

 ガゼフには全く分からない展開であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼らは大丈夫なのかい? ペロロン君」

「全然平気っすよ。ほら、あそこで肉食わせてますからそのうち回復するでしょう。それよりすいません話の途中で」

「いやなに、村長からある程度の話は聞かせてもらった。あの方々が『翼の生えた女性騎士たちを魔法で召喚して』云々というのは理解し難いのだが……あの黒い翼の女性も?」

「いえ、あれはファッションです」

「ツノのようなものが頭に……」

「アクセサリーです」

 

 自身の鋭い切り替えしに満足気な表情のペロロンチーノであるが、ガゼフが納得しているかどうかは定かではない。

 

 離席時間は十分ほど。さすがに友達の嫁の痴態を見ることが憚られたペロロンチーノはシャルティアに様子を見てきてもらうことに。『おなかぱんぱんでありんしたけど、起きておりました。触るとビクンとなって面白いでありんす』という報告に安堵(?)し、モモンガを一発殴ってから風呂掃除の罰を与えることを決め現在に至る。

 ガゼフに対峙しているのは村長とペロロンチーノのみ、完全に蚊帳の外であり状況が呑み込めてないモモンガとアルベドはシャルティアに任せることにした。

 

「まだその女性騎士の方々を見ていないのだが……お会いすることは可能か?」

「はい。おーいモモンガさんあいつら呼んでくれ」

 

 天使たちは複数の家と村の倉庫にまとまって避難していた村人たちを守るために分かれて警護している。自身が呼んでも来ないだろうが召喚主なら呼べるだろうと。

 

「わかりましたー。ワルキューレ集合!」

 

 声が届くのかなんなのかはわからないが、複数の方向から広場に向けて天使たちが飛んでくる。そしてまたしてもモモンガを……いや今回はモモンガとアルベドとシャルティアを囲むようにして跪く。

 

「ご主人様、残念ながら丁度召喚限界になります。次回お呼びの際はぜひこのブリュンヒルデにも」

 

 言葉の最中にビュン!と上空へ飛び上がるように消えていった。

 

「……え、最後すごい気になるんですけど。今何時だ? 昼時だと思ったけど10時くらいなのかな? それなら召喚時間は12時間なのかな……そもそもこっちの一日が24時間なのかもわからんが」

「もう呼ぶのはやめましょうモモンガ様。あの者は危険です、まだ私だけで大丈夫です!」

「えー、また呼んでほしいでありんす。あいつら結構面白いでありんすよ」

 

「あの……ホントすいません」

「いや……本当に魔法で召喚された者達であったのだな……」

 

 全員で空を見上げながらとかいうおかしな絵面で会話が行なわれていたのだが、丁度そこへ戦士団の騎馬兵からの報告が入るのだった。

 

「隊長! 村を囲うように複数の敵兵らしき者たちが!」

 

 事態は第二の局面を迎える。

 

 

 

 

 




アルベドさんの翼や角は今後誰も触れてこないと思いますが、そういう事でお願いしますw

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