鳥ウナギ骨ゴリラ   作:きりP

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11 夜の装備

「14……いや15くらいかな?」

「惜しいですね16になります」

 

 この国には雨が降らないのかなんて感じるほど、いまだ天気が荒れるようなことを体験していないモモンガたち一行は漆黒の剣のメンバーと麗らかな日差しを浴びて街道を行く。

 なお今やっているのは暇つぶしという名の年齢当てクイズだったりする。

 

「あははニニャさんはやっぱりお若いですね、じゃあ私はどうでしょうか」

 

 自身としては20代前半を意識して作ったつもりではあるのだが、周りの……いやこの世界の評価はどうだろうと若干ドキドキしながら答えを待つモモンガ。

 

「17……18くらいかなあ? ペテル達と一緒くらいに見えます」

「こらニニャ! それじゃ俺たちの年バレバレじゃんか!」

「あれ? そんなに若く見えるんですか……自分としては22くらいの……あ、ちがう22なんですけどね」

 

 そんな答えを返すモモンガであったがこれは意味が無いかもなんて考えて居たり。この世界の一年がリアル世界と同一とは限らないし、年の取り方も違うかもしれないなんて。

 実際はそんなことも無く日本人らしく童顔に見えるだけなのだが。

 

「妾は! わらわはどうでありんすか!」

「14くらいかなあ?」

「14であるな」

「エンリちゃんよりは年下……俺も14だと思うぜ!」

「14ですね」

 

「ペロロンチーノさーーん! 正解は?」

「は、はい……14さい……です」

 

 シャルティアの問いに顔を真っ赤にしながら(うずくま)るペロロンチーノ。モモンガは馬を引きながら爆笑であったりする。

 

 村の衆総出の盛大なお見送りの中出立したモモンガたちではあるが、その中にンフィーレアは含まれてはいない。冒険者組合と祖母あてに手紙を預かっているが、しばらくカルネ村に滞在するそうだ。

 祖母あての手紙の厚さに必死さがうかがえるのに苦笑してしまったが。

 

 なおモモンガたちは名誉村民であるらしく、村に家を建てないかとお願いされていたりもして、スローライフ拠点としてそれを受け入れている。

 いつかログハウスを建てようだなんて夢を描きながら。

 

 現在の彼らの恰好は村に居た時の素朴な服のまま。何気にこの格好を気に入ってしまっているのもあるが、どうやらエ・ランテル入場の際には当然ながら検問があるらしく、他国から逃亡してきたなんて面倒くさいロールプレイを説明するより楽になるんじゃね? なんて理由でもあったりする。

 アルベドの騎獣だけは朝方歩けなくなることが多い(?)彼女たちの為でもある。

 

「この馬……馬でいいんですよね? 私だけ寄ると避けるような……」

「なんででしょうねぇ? それはともかく私はいくつに見えるのでしょうか!」

 

 そんなニニャのつぶやきを遮るように若干ワクワクとした笑顔でアルベドが爆弾を投入する。なお爆弾と思っているのはアルベドとモモンガを除く者たちであったり。

 美しい上に色気がありすぎるのだ。それでいて今のように子供っぽい仕草をしたりと判別がつかない。地雷を回避しようと口をつぐむ一行であったが、モモンガが正解を教えてくれる。

 

「難しいですかね? 私は18と聞いているんですがアルベドは色気があるからな。私と同じくらいに見えるかもしれんな」

「タブラさ……お父様がそんなことを……あぁ私の前で跪き涙を流していた御方が遥か昔に思えます……」

 

 それはお前の設定がビッチからエッチに変わってて爆笑して(うずくま)っていたただけですと答えそうになったペロロンチーノであるが空気を読んで何も言わない。彼も日々成長しているのだ。

 

「私とペテルとルクルットと一緒であるな!」

 

 まあモモンガ一行が一番驚いたのはダインのその一言だったりして。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ものすごい呆気なく入城出来ちゃったんですがこんなもんなんですかね?」

「俺すげー質問攻めにあうと思ってたんだけど肩透かしだなあ」

 

 そんなこんなで翌日にはエ・ランテルに入城。女性陣は馬鹿正直に質問攻めに合わせる必要など無いので、なんでもありな方向(空飛んで)で入場させている。

 

「モモンガさん達は言っちゃ悪いのですが髪色に違和感はあるけど、どう見ても平民ですし、ここって入城者が多いから荷馬車とか以外はほとんどスルーなんですよ」

「人は2銅貨だけど馬車だとすげー取るんだよな。で……本当にいるのか?」

 

「ええ、おっと、あそこで待ってま……」

「ナンパか? ……モモンガ、殺すなよ? 消し飛ばすだけでいい」

「おう」

 

「まてまてまてまて!! ペテルもダインも止めろ!! ニニャ! あの娘らんとこ行って連れてきてくれ!!」

 

 溢れ出るえげつない程の覇気というか怒気に一瞬周りの空気が歪み、たじろぐ漆黒の剣一行であったが、ルクルットの機転で何とか合流。

 村を救った英雄と呼ばれる力の片鱗を初めて垣間見た瞬間であったが、ルクルットが二度と彼女たちにちょっかいを出さないことを決めた瞬間でもあったり。

 

 

 

 

 

 まず向かったのは当然ながら冒険者組合。漆黒の剣の依頼の完遂報告とンフィーレアの手紙の受け渡しの為だ。

 

「とりあえずお前らも興味あるんだろ? 行こうぜ」

 

 なんて言われて興味がありませんなんて言える異世界転移人がいるだろうか。確かにその仕事に興味はさらさらなくなってしまったが、気になることは気になるわけで、互いの嫁の手をがっちり握りながら冒険者組合に入っていく。

 

「へぇ~……」

「意外と……普通? 荒くれ者が飲んだくれてたりとかはしないんだなあ」

 

 予想より遥かに広い木造建築の一階。室内は明るく、いくつか長椅子なども見受けられるが飲食をするスペースというわけではないらしい。

 奥にカウンターがあり数人の受付嬢が動きを止め口を開けっぱなしなのが気にもなるが、その隣には二階へ上がる階段も見える。

 

「確かどこかの街で酒場を併設してる組合もあると聴きましたが、ここで騒がれたら受付の人たちなんか仕事にならんでしょうね」

 

 ペテルはそんな言葉をペロロンチーノにかけながら受付へと歩いて行く。

 

「おかしいわね? この服では目立たないと思うのだけれど」

「見られているでありんすね」

 

 自身の服をつまみながら首をかしげる女性陣。

 

「しまった……そりゃあのタイミングの村とは違うよな……」

「ロールプレイ続行してたら危なかったかも」

 

 少なからず残っていた冒険者たちに容赦ない熱い視線を向けられる彼女たちの手をさらに強く握りしめる。

 姫プレイをしなかったのは正解だったが粗末な衣装を着ていてもぬぐえない美しさに、どうしたもんだろうと頭を悩ますモモンガだった。

 

 そしてなぜか今自分たちは3階にある会議室に通されている。なんでも結構重要な案件だったらしく組合長に直接口頭で村の様子を説明してほしいそうなのだ。

 受付嬢に自分たちの素性を聞かれ、素直に『村の方達です』と答えちゃったペテルが悪いわけではないし無関係とはいえず、ならご一緒にという言葉に従ってここまで来てしまったのだ。

 

 組合長プルトン・アインザックは見た目屈強な白髪アフロな男性だった。もちろんここでも彼女たちに目を向けて驚かれる一場面もあったが、依頼報告は順調に終了した。

 

「そうか……村からの買い出し要員か……しかし本当に村娘なのか? よく今まで生きてこられたものだ……ああ、ちがう失礼なことを言ったスマン。まぁ王の直轄領である意味幸いだったのか……」

 

 そこから始まる組合長が親身になって語ってくれた話は、ある意味この国の現状を表しているようなもので、違う貴族の領地では『処女税』なんてやりたい放題な話もあったりと、とにかく治安が良いとは口が裂けても言えないので女性たちはとにかく気を付けなさいとのありがたいお言葉だった。

 

「うー俺たち市場とかも行ってみたいんだけど困ったなあ」

 

 シャルティアが傷つけられたら大変だなんて、実際はあり得そうもない事を考えながら発するペロロンチーノの言葉に頭をひと掻きし、漆黒の剣に声をかけるアインザック。

 

「君たちの仕事は完遂したがどうだね? 今日だけでも彼らを護衛してやっては。ある意味村への支援になるし、報酬は出せんが依頼として処理してもいいぞ」

 

「本当ですか! まあそれは無くとも案内する予定でしたからお受けします」

「こいつら危なっかしいからなあ……心配は絡んでくる方なんだが……」 

「……怖かったであるな」

「私少し漏らし……いえなんでもありません!」

 

 当初より冒険者組合、バレアレ薬品店を巡り商店と換金所を紹介する予定だったこともあったが、依頼として評価につながるのはありがたい。

 という事で一つ目の用事を済ませた一行は次なる目的地に向かう。

 なお他の冒険者たちがちょっかいをかけてくるかとも期待……いや警戒していたが、一般人や依頼者になりうる人物に手を出そうとするバカはさすがにおらず、ラノベのあのお約束展開は無かったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘ッ…‥だろっ?」

 

 エ・ランテルを目的の人物と一緒に出立していた冒険者たちが戻ってきた。これでやっと計画に移れるかと観察していたが当のその人物がいない。

 只でさえヤキモキして切れかけていたというのに……その不在を確かめる為と情報収集ついでに嬲り殺そうかと屋根伝いに尾行していたのだが……

 

「目があったのは偶然じゃない……四人全員に気付かれた?」

 

 一般人じゃない……農民のような平素な衣服を着ているが少なくとも女の方は確実に一般人だとは思っていなかった……だが男の方もだと?

 冒険者の方は銀級相応なので無視できるのは幸いだが……チッ、なにを恐れているというの!?

 

「全員笑っていたのはなんなんだよ……」

 

 あまりにも不気味な笑みに鳥肌が立つ。

 っつ!? ぐっ!! 殺す!! 絶対殺してやる!!

 

 や、やるぞ! 絶対やってやるぞと意気込む女性クレマンティーヌであったが膝が笑っていた。

 戦士としての勘が『止めておきなさい。本当にお願いだから止めなさい』と警告している。

 

 なお、その一斉に振り返った四人の表情からなにを考えているかはさっぱり理解できなかったが、

 

(またモモンガ様に気をやる(メス)が! ふふっ、いいでしょう……)

(おやぁ……また面白そうなおもちゃがやってきんしたねぇ)

 

(くそっ!? 忘れてた……それがあったんだ……まだ一回も試していなかっただなんて!?)

(ビキニアーマーだあれ! ビキニアーマーだあれ!!)

 

 そんなの理解できる訳が無かったりする。

 





クレマンさんはマントを羽織っていますが下から見えましたw

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