覚り妖怪と骸骨さん   作:でりゃ

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さとりside
2章 始まります。


第15話

あの星空から3日後。

 

ようやく新しい住まいに引っ越しが終わった私達は、この新生地霊殿で生活を始めました。

今朝は一家揃って朝食です。

今日はトーストにハムエッグ、サラダにコーンスープです。お燐は最高ですね。

今度は私が作ってみましょうか。

 

 

「…そう言う訳で、守護者の皆さんへ挨拶回りをしようと思います」

「突然ですね、さとり様。…もしかしてあたい達も行くんですか?」

「いいえ、とりあえず私だけで回ってきますよ」

 

私一人じゃ怖いんですけどね。口には出しませんけど。誰かに付いてきて欲しいのですが、生憎各階への転移指輪はひとつしか持ってないのです。

 

「うぅ… 付いて行きたいんですけど、あの人達怖くて… あたいとかうっかり範囲スキルに巻き込まれて死にそうですよ」

「お燐は怖がりだなー。(うつほ)に任せなよ!あたしが皆吹き飛ばしてあげるって」

 

止めなさい、絶対に。

きっと余波で私が死にます。

 

「大丈夫ですよ。各守護者に連絡は行っているはずですから無下にはされないでしょう、多分」

 

「それでお姉ちゃん。誰んとこから回るの?」

 

こいしがトーストにジャムをたっぷり塗りながら聞いてきます。

 

「…こいし、ジャムひと瓶は使いすぎです、お空が真似するから止めなさい。 …そうですね、近くから順番に行きましょう。まずはアウラさんとマーレさんからですね」

「アウラなら昨日わたしと一緒に遊んだよ? マーレは部屋で寝てたみたいだけど。それでいいんじゃないの?」

 

いつの間に仲良くなったんですか、この子は。妹の意外なコミュ力が妬ましいです。

 

「そういう事じゃないんです。こういう挨拶はキチッとやらないとダメですよ?」

「ふーん。そんなもんかねぇ」

 

適当な返事をして実はよく聞いていないこいし。心配そうな顔で食事も手に付かなそうなお燐。ジャムが無くなってて悲しい顔のお空。

どう見ても団欒の光景ですね。はい。

正直ここに私が入ってるのがまだ信じられませんが、ここは慣れていくしかありません。

 

 

「朝食が済んだら出発しますので、後はよろしくお願いします。私はアインズさんにもう一度連絡しておきますので」

「へーい」「分かりました」「はーい!」

 

 

では、行きましょうか。

と、出発前、玄関でお燐に呼び止められました。

 

「あ、さとり様。あいつはどうします?」

「あぁ、彼ですか… 彼には見廻りとペット達の世話でもお願いしておいて下さい」

 

私達が顔を向けた方向には、一体の死の騎士(デス・ナイト)が立っています。さすがに大盾も大剣も持っていませんが、お燐はまだ怖がっていますね。気持ちは分かりますよ。

 

彼は、カルネ村騒動で召喚された、あの死の騎士(デス・ナイト)です。アインズさんは時間で消えるものとばかり思っていましたが、何故か一向に消滅しない彼の扱いに困っていました。あわや処分か、という所を丁度引っ越しで人手が必要だった私が引き取ったのです。

 

実際、彼はかなり有能です。力は強いし命令は良く聞く、アンデッド特有の疲労無効で休み無しに働ける、と良いとこばかり。これ労働力としては最高です… 見た目を何とかして派遣事業でもすればいい稼ぎになりそうですね。

 

とりあえずこの死の騎士(デス・ナイト)さんには素材となった騎士の名前を戴いて、確か… サイトウさんと名付けました。今も掃除や門番、ペットのお世話もお任せできる優秀な人材です。

 

「サイトウさん、私は少しお出掛けしますから皆をお願いしますね。」

 

サイトウさんは重い籠手を着けた骨の指を器用に曲げて「OK!」と返事してくれました。ふふっ、頼もしいですね。

 

 

───────────────

姉のアウラ・ベラ・フィオーラと、弟のマーレ・ベロ・フィオーレ。

二人で第6階層の守護者であり、ぶくぶく茶釜さんが製作したNPC達。

男の子らしい方が姉で、可愛い女の子の方が弟ですよ?

私もユグドラシル時代にも何度かこちらの巨大樹に遊びに来ていたのでよく見かけていました。

 

今も巨大樹に居るようですね。

指輪の力で入り口まで転移したところ、アウラさんが出迎えてくれました。

 

「こんにちは。アウラさん」

「こんにちは、さとり様。今日来られるとは思ってなかったですよ。ささ、こちらへどうぞ」

 

巨大樹の中に案内された私は、前に座っていた席を見つけたのでそこに座りました。

 

「ちょっとお待ちくださいね、今マーレを呼んできますので…」

「あぁ、別に無理に起こさなくても平気ですよ。そんなに長居はしませんから」

 

しかし、アウラさんは大きな声で弟さんを呼びつけます。

 

「…マーレ!早く来なさい!さとり様がお待ちだよ!」

「…い、今行くよ、お姉ちゃん…」

 

か細い返事が返ってきて、暫くするとアウラさんそっくりな顔のどう見ても女の子がやって来て挨拶しました。

 

「こ、こんにちは、さとり様。お待たせしても、申し訳ありません…」

「気にしないで下さい。突然来た私が悪いんですから」

「い、いえ、そんな至高の御方に悪いだなんてそんな…」

 

等とお決まりのやりとりから始まり、最近のナザリックの生活から昔の話まで話題は尽きず和やかに挨拶は済みました。

 

「…では私はそろそろ次の方に挨拶に行きますね。お時間取らせてすみませんでした」

「い、いえ!とんでもない!私もすっごく楽しかったです!また、遊びに来て下さい」

「ありがとう、アウラさん。聞けばこいしも此方に遊びに来てるとか。今度はうちにも遊びに来て下さいね?」

「はい、是非!」

「マーレさんも、良かったらまた」

「あ、は、はい。僕も楽しかったです。また、ぶくぶく茶釜様のお話、聞かせてください…!」

 

二人に見送られ、私は次の階層、コキュートスさんが守る第5階層に向かいました。

 

…次もこんな風にスムーズに行けばいいんですがね? いきませんか。そうですね、私の悪い予感は必ず当たりますから。

 

────────────────

第5階層。実のところ、ここは来たくなかったんですが。

何故ならばここは氷河、寒いのです。そして私は寒いの苦手なんです。

 

それでも、以前ならここは吹雪が吹き荒れる極寒地獄だったのですが、今は維持費削減の為カットされています。エフェクトは起動させてるだけコストかかりますからねえ。

それでも一面の雪世界、寒いものは寒いです。冷気無効の装備でも持ってくれば良かったですね…

 

それはまあ、いいのですが。

 

「あはははっ!寒いねお姉ちゃん!寒い!あははは!」

 

何故か、隣には子犬のように走り回るこいしがいます。

姉は何も面白くないですからね、こいし。

 

第5階層に着いたとき、前の方に何処かで見覚えある黒い帽子が雪の上を動いていました。

気になって近寄ってみるとこいしが雪に埋まっていました。なぜに…

 

理由を聞いてみると自分もコキュートスさんと話してみたい、とのことで。このまま放っておくと遭難しそうなので連れていくことにしました。

 

 

あぁ寒い… コキュートスさんが住む大雪球はまだですか…

歩きながら、前を楽しそうに転げ回る妹について考えます。

 

こいしの考えは読めません。

…正確には、心は読めるのですが他のことを考え始めたかと思うとまたすぐ同じ事を思ったりする為、読心が追い付かないのです、まるでひっきり無しにテレビのチャンネルを変えているかのように。

 

集中して見ていれば分かるのでしょうが、うっかり目を離すと今のように予想外の行動をとられてしまいます。

このまま外の世界に出すと、冗談抜きで蝶々を追いかけたまま帰ってこなくなりそうで怖いです。

やはりこの子は、暫くナザリックで様子見ですね…

 

 

暫く進むと大きな白いドームと、何か動く物が。

…おや、あの蒼白く輝くボディは…?

 

「コレハ、サトリ様、コイシ様。御足労痛ミ入リマス」

 

特徴的に響く声で丁寧な挨拶を頂いたこの昆虫人間が第5階層守護者コキュートスさんです。

2.5メートルほどの二足歩行の昆虫を思わせる巨体には常に冷気を纏っていて、体や尾全体に鋭いスパイクを持ち、4本の腕にはそれぞれ大振りな武器を握っています。うーん、強そうです。絶対に喧嘩したくないですね。

 

どうやら外でトレーニング中だった様子。邪魔しては申し訳ありませんので挨拶しましたら帰りましょう。

 

「こんにちは、コキュートスさん。お父様から連絡が来ているかと思いますが、改めてご挨拶に参りました。お忙しい所すみませんね」

「オオ、コレハ、勿体無キオ言葉。申シ訳アリマセヌ、少シ鍛練二身ガ入リ

過ギ時間ヲ失念シマシタ」

「構いませんよ、お時間は取らせませんから…」

 

それから暫くは定番のやり取りが続きます。実のところ彼の製作者、武人武御雷さんとはあまり交流がなかったものですからそちら関係は話題が作れないんですよね、期待に沿えずごめんなさい。

 

彼の武人然とした態度も私には合わないものですし、ここはそろそろおいとまさせて貰いましょう。

話題に乗れなかったお詫びに、何か希望が無いか聞いておきましょうか…

 

「コキュートスさん、そろそろ私は行きますが、何か私に望む事などあれば遠慮なく言ってくださいね」

 

軽い気持ちの提案でしたが、彼の心を見た瞬間、私の顔色は真っ青になりました。

か、彼の口から出る前に止めないと…!

 

「あの…!」

「ソレハ、アリガタイ!実ハオ願イシタイ事ガアリマシテ!」

 

凄い勢いで乗ってくる蟲人間。

あ、だめだ。間に合いませんこれ。

彼は視線を、私から雪遊びしているこいしに移し。

 

「是非トモ、コイシ様ト一度オ手合ワセ願イタイノデス」

 

駄目です。と、言おうとしたのですが。

 

「ん?手合わせ?試合?殺試合?いいよ!やろうやろう!」

「オオオ!アリガトウゴサイマス!」

 

こいしの方が乗り気でした。

なんでこの人たちはこういう時だけ私の思考速度を超えてくるんだろう…

 

あれよあれよと試合の打ち合わせが進んでいきます。審判は私。責任者も私。万一何かあれば雷骸骨に怒られるのも私。

 

「どうしてこんなことに…」

「ホラ、お姉ちゃん。合図合図!」

 

こいしが手に短刀を握りながら催促してきます。はいはい… 私は雪原の広い空間にPVP用の結界アイテムを展開しました。この中なら一度だけ死んでも無効になります。こっちの世界では試してませんが大丈夫でしょう。多分。

 

「…試合は相手の武器が急所に当たったら終了。怪我を負った時点でも終了します。武器は自由、魔法やスキルは無し、制限時間は結界が解ける10分間。では、どうぞ」

 

ギャキッ!

 

やる気の無い合図にも関わらず凄まじい勢いでぶつかり合う互いの武器。

 

どうやら開始と同時にコキュートスさんの首を狙ったこいしの短刀を、彼は2本の武器で防御、残った方の得物でこいしを狙うがその時には既にこいしは射程外に待避済み、の様です。その後接近して二人で激しく打ち合っていますが、実に楽しげです。

 

あ、すみません、私もう目で追えないので解説を止めていいですか?

 

私の弱点というか欠点ですが、1対1なら集中して相手の動きを読めますが、複数になるとそれができません。

なので私は集団戦では完全に役立たずなんです。普段ならさっさと後方支援に回ってます。ここら辺が私がソロ活動してた理由でもあるのですが…

 

私の思考が明後日の方に飛んでいる頃、戦況が動きました。どうやらこいしが力で押され始めたみたいですね。

仕方ありませんか、こいしの本来の戦術は魔法とスキルで足留めしてからの急所狙いですし。甲殻で全身守られたコキュートスさん相手は分が悪いでしょうね。

…大振りの一撃を受けきれず、こいしが吹き飛びました。

…ここまでですか。

 

「そこまで!」

 

丁度結界の効果も切れたらしいです。

コキュートスさんに引き起こされたこいしが私の元に走ってきます。…見た目でダメージは無さそうですね、よかった…

 

「負けちゃったー。ざんねーん」

「お疲れ様、こいし。どこか痛いところはない?大丈夫?」

「平気だよ。お姉ちゃんは心配症だよね」

 

コキュートスさんも白い息を吐き出してから此方にやってきます。

 

「アリガトウゴサイマシタ、サトリ様、コイシ様。久シブリニ良イ鍛練ニナリマシタ」

「コキュートスさんもお疲れ様です。こいしの相手をして貰ってありがとうございます」

 

私の言葉に暫し沈黙した彼は、少し考えた後でこう返した。

 

「イエ、コイシ様ノ動キハ素晴ラシイ。コレホドノ強サヲ持ツ者ハ、ナザリックデモソウイナイカト… シカシ、コレデハ御守リノ必要モ…」

 

その声には何故か残念そうな響きが含まれていたので、私は少し気になって彼の心をよく見てみました。

 

…あぁ、彼は護るべき姫君を求めていたんですね。ちょうど至高の御方の御息女も出来たことで彼的には良い庇護対象と思ったのでしょう。

まぁ実際には自分に優るとも劣らない戦闘狂だったのですから、彼の心境は複雑でしょうね…

 

「──オオ… 姫… 爺二オ任セヲ…」

 

自分の世界に入ってしまいました。

困りましたね。…これって武御雷さんが設定した性格なんですかね?

 

私がどうしたものかと考えていると、こいしは無邪気に彼に駆け寄りました。

 

「ねぇ、コキュートス!さっきの技凄かったよ!」

「…ソレホドデモ、アリマセヌヨ」

「わたしにもできるかな?教えて貰ってもいいかな?」

「! 勿論、良イデストモ。爺ガオ手本ヲ見セマスゾ!」

「わーい!爺大好き!」

「ホッホッホ!」

 

…解決してしまいました。

…凄いでしょう? さすが私の妹です。

多分、無意識なんでしょうけど。

 

「…夕飯までに戻ってくるのですよ、こいし。 コキュートスさん、すいませんが後はよろしくお願いしますね」

 

はしゃぎながら人外の動きをする妹を、蒼銀の蟲人間さんにお任せして、私は次の守護者のもとに向かうことにしました…

 

────────────────

 

「ようこそ、いらっしゃいんした!ゆっくりしていってくんなまし。…今、紅茶を用意させんすから」

 

シャルティア・ブラッドフォールン。

ナザリック第1~3階層「墳墓」の守護を任された階層守護者で、吸血鬼の祖たる「真祖」の少女。

 

その戦闘力はナザリックでも最上級のものと聞いています。喧嘩を売ったら私なんて以下略です。

 

…今は私を甲斐甲斐しくもてなしてくれていますが。

 

「いえ、お気になさらずに。挨拶にお伺いしただけですから…」

「そうでありんすか?まぁそれなら、少しお話しんしょう」

 

シャルティアさんと私は細工の施された豪華な客椅子に座りました。

彼女は長い銀の髪と、真紅の瞳を持つ端正な顔立ちをした少女の姿をしています。外見年齢的には14歳位で、私とまぁ同じ歳に見えますね。

製作者はあのペロロンチーノさんで、設定も盛りに盛られているようです。

 

盛られていると言えば彼女の胸パッド。盛りすぎでしょう、あれじゃ走ったらズレるでしょうに…

 

「何か?」

 

止めておきましょう。女の勘は色々鋭いですから。

 

それから恒例のやりとりと挨拶をすませましたが、私もちょっと疲れてきたのか挨拶だけのつもりが雑談になってきてしまいました。

 

「…そういえば、シャルティアさんもアインズさんには積極的ですね」

「えぇ!あの御方は正に美の結晶でありんす!白磁器の様に輝くお身体に、腰の砕けそうなあの黒いオーラ… 考えただけでもう───」

 

考えなくていいです、ピンク色の思考が流れ込んできますから。しかし、死体愛好家(ネクロフィリア)ですか。あの鳥人間も業の深い性癖を与えましたね。

 

「あ。勿論、さとり様も美しいでありんすよ? その人形の様に涼しげなお顔が…

痺れそうで… あぁ、いい…」

 

しかも両刀ですか!目が怖い!私はノーマルです。なんとか空気を変えなくては…

 

「え、えぇと、そうです!アルベドさんとは仲はあまり良くないのですか?この前も大声で喧嘩していましたが…」

「あぁ、あの女… 身の程弁えずアインズ様の正妻を狙うでありんすから… でもお仕事には差し支えさせませんので、ご安心くんなまし」

 

そこでシャルティアさんは溜め息をつきました。どうしたの?と視線で聞くと、良く聞いてくれたと話始めます。

 

「あの、さとり様、ひとつお聞きしたいことが…」

「はい。どうぞ」

「アインズ様は、やっぱり胸の大きな女性がお好みなのでありんすかねぇ…」

「───!」

 

実際のとこ、あの人は大きいのが好みな事は、ギルド内の女性陣には有名なことでした。ばらしたのは誰、とは言いませんが。

 

「そ、そうですね。そこら辺は好みですから…」

「や、やっぱり… 実はわたし、ある秘密を持っていて…」

 

いいです。知ってますからそれ。わざわざ心を読まなくても、さっきアウラさんが教えてくれましたし。

しかし、ここで雰囲気を暗くしてもアレですから、少し慰めましょう。

 

「大丈夫です、シャルティアさん。男性が持つ好みなんて結構すぐ変わるものですよ? それにこの異世界ならユグドラシルに無かった体型を変える霊薬なんかも見つかるかもしれません」

 

私の言葉に、パァっと顔を輝かせるシャルティアさん。

 

そして、そのまま私の()()()()を見て。

 

「仲間… で、ありんすね…!」

 

今!どこを見て言った!胸ですね!

確かに、私もそんなに、ありませんけど!

 

「仲間に引き込まないでください!私はそんなに悲観してません!」

「そんなに悲しまないでくりゃんせ。さとり様ならきっと大丈夫でありんす。妹様を見ればまだ希望はありんすによりて」

 

 

 

───その言葉に私はある重大な事を思い出しました。

 

あの時、こいしを止めるため《心臓掌握(グラスプ・ハート)》を放った時、私はあの子の胸を掴んだのですが。

 

───私よりあった。

 

おかしいです。確か私が最初設定した時は、適当だったとはいえ私と同じくらいの体型にしたはずなのに、いつこんな差がついたのですか。転移ですか。転移の影響ですか!

 

「シャルティアさん」

「…はい」

「私も協力しましょう。この世界で一緒に希望を探しましょうね」

「素晴らしきお言葉でありんす…!」

 

私はアルベド(強敵)さんに負けないために、シャルティア(同類)さんと手を組むことにしました。

 

 

「では、そろそろお暇しますね。長々と失礼しました」

「そんな… お引き留めしたのはわたしでありんす。お顔を上げてくんなまし。

今日は本当に楽しくて… 」

 

そして、シャルティアさんはしおらしく顔を赤らめた後、もじもじと声をかけてきました。

 

「あの、もしや不敬かもしれませんが、宜しければわたしと「友だち」に、なってくれんせんか…?」

 

…ちょっと不意をつかれました。心を見せて貰うと、どうやら本気で友達を求めているようです。い、意外と純なのですね…。

 

「えぇ、勿論です。私も貴女とお友だちになりたいです。よろしくお願いしますね、シャルティアさん」

「まぁ!本当でありんすか!?至高の御方に友だちとか本当にお許しになられるのですか!?」

 

私は少し困った様に微笑んで返します。

 

「貴女が望んだのですよ? それにお友だちならもう少し気軽に接して欲しいですね」

「わ、分かりました…でありんす。これからはもっと気軽…にでありんすね?」

 

まぁいいでしょう。仲良くするに越したことは無いですし。

 

「では、名残惜しいですが私はここで。また遊びに来ますね」

「お待ちしておりますわ。さとり…様」

 

先は長そうです。

 

 

 

「さて、次は階層を下がってデミウルゴスさんですね。あぁ疲れました…」

 

口ではこう言っていますが、シャルティアさんと話した後、何故か疲れは綺麗に消えていて、心の奥が軽くなっているのを私は感じていました。

 

何故でしょう?




オマケ
その日の朝。
『あ。アインズさん?今日は守護者達に挨拶に行きますからお仕事お休みしますね。後はよろしくです』

一方的に《伝言》打ち切られたアインズは執務室で叫んだ。

「仕事初日から、サボりかよ!」

突然の怒声にメイドはまた涙目になった。




暫く更新は2~3日ごとになりそうです。

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