ファンタシースターオンライン2~Stardust Dreams~ 作:ぶんぶく茶の間
……それから放課後となり、私達は雨宮先生との約束通り、職員室へ行く事になった。
けれど私達はそこへ入室すること無く、廊下で待たされている。
中をのぞいてみれば、先生は一度ご自分の席へ戻られたあと、廊下へと戻って来た。
「わりぃな、書類忘れちまってたんだわ」
「書類、ですか?」
「ああ。まあ詳しい話は後でな」
後ろ頭を掻いた先生はにっと片頬の口角をあげつつ、私達は職員室の隣にある談話室へ通される。
「――さて、いきなり本題だ。上條」
「はい」
「あん?」
「………」
雨宮先生は苦笑いを浮かべながら後ろ頭を掻いた。
「えーと……。ここなら憂人と祈でいいか、な?」
「その方がよさそうですね」
「仕方ねぇな」
私はすんなり頷き、憂人くんは不承不承といった様子でため息混じりに了承する。
「んじゃ。祈、いきなりだがこいつらの部活に入ってみる気はないか?」
「部活動、ですか?」
「あぁ。活動内容はまぁ……そうだな、AR、VRを共通してPSO2をプレイすることなんだが、目標として例を挙げるならアークスコンバットだ」
「はあ……。とにかく、PSO2をプレイすることを目的とした部活動、ということですか?」
「まっ、今のうちはそんな捉え方でいいわ」
雨宮先生は談話室の窓際へ移動し、懐から煙草を取り出して火を点けた。憂人くんは眉間に皺を寄せたあと、私の名前を呼びながら雨宮先生が見えないように遮って、アークスコンバットと呼ばれるものについて説明してくれた。
「アークスコンバット、通称AC。AR空間で行われる一種のスポーツ競技だ。これにはいくつか種類があって、12対12のチームデスマッチ、12人のパーティでクリアタイムタイムを競いあう
「殆どが対人戦なんですね」
「そうだな。コンバットっていうのも元々闘争って意味だから、ある意味こういう種目になるのも仕方ないんだよ」
なるほど、と私は相槌を打つと、進堂さんが補足した。
「ちなみにあたし達が目指すのはバンクェット。なんせまだ同好会の状態だから、やろうにもあと二人足りないんだよねー」
「……あと二人?」
その場に居る学生は憂人くん、進堂さん、城之内さんと私を入れた四名。それであと二人とはどういうことだろう?
「ああ、今ちょいと休学してる奴入れて五人な。ちょうど上條の隣ん席のヤツだよ」
「あ……」
城之内さんの言葉にそこで納得がいった。昨日も今日も空席だったのはそれが理由だったんだ。
「祈が来てくれれば五人になって、来週の部活動紹介のときに胸張って登壇できるわけ!」
「もちろん誰でもいい、ってわけじゃないからな。従兄の憂人も居るわけだし、やりやすいと思ってよ」
ふーっと雨宮先生は煙草の煙を窓の外へ吐く。
「それにお前さん……あ、いやワリぃ。こいつはオフレコだったな?」
「へ?」
きょとんとした私は憂人くんの脇から雨宮先生の方を見ると、彼はそっぽを向いてしまう。
「とにかく祈、俺達と一緒に部活しないか?」
そこで憂人くんが私へともう一度訊ねてくる。
「……えっと……」
私は皆さんの顔を見回した。
……正直まだ本当に始めたばかりだし、装備面も、戦闘技術も全く安定していない。
けれど、彼らはそんな私を人数合わせとしてではなくて、ちゃんと
だったら――迷う必要なんてない。
「――こちらこそ、よろしくお願いします」
「――!」
目の前に居る憂人くんの目を見つめながら、私はそう宣言した。
彼は目を見開かせて、口を軽く開いた。
「……いいのか、そんな簡単に決めちまって?」
「はい。仲間が信じてくれるのなら、仲間の想いに応えなければなりません。それが今、私のすべきたった一つの事です」
雨宮先生はふっと笑いながら煙草の火を携帯灰皿でもみ消してそれを懐へ入れると、よし、と呟いた。
「おーし、んじゃ入部希望の書類はエスカで送っておくから、寮のプリンターで印刷して提出してくれ。詳しい連絡事項は明日伝える。集合は朝7時、寮前だ。外泊の準備をしておくように」
「……外泊、ですか?」
それぞれが疑問符を浮かべたところで雨宮先生はおう、と頷き、それ以上は何も聞けそうになかった。
「ひとつアドバイスしておくと、動きやすい格好かつジャージなんかは禁止だ。いいな?」
私達はその言葉に頷きつつ、本日は解散となった。
◇
……それから夕食は私の部屋でみなさんと一緒に食べて、提出書類を共有スペースで印刷し、記入を済ませたあと、PSO2へログインすると、すぐさま憂人くん――カミトくんと合流した。
今日は私のマイルームで集合となり、夕食を大量に食べたせいで腹痛を催したらしいフェザーさんは遅れてやってくるとアリーザさんから聞くことになった。
「もったいないことするよねぇ、あいつ」
「ンとだよ、もうちっと落ち着いて食えばいいものを」
私のマイルームは金銭的な都合で一部屋。本来なら三部屋にすることができるらしいけれど、どうしても家具にお金を掛けている暇もないので、部屋を広くして、最低限の家具を置く形でなんとか落ち着かせた。
デフォルトのマイルームに食器棚やアイランド型のキッチン、その前にテーブル席を置き、窓際にはカーペットを敷いて座卓、テレビ、ソファなどを置くと言った感じだ。
……正直、上條家のリビングに似せてレイアウトを考えたので、私とカミトくんにとってはあまり違和感のないものに仕上がったと思う。
カミトくんはソファへ腰かけ、アリーザさんはカーペットへ直に座りながら二人してテレビを見ている。
一方で、どうしてか私の部屋へやってきた雨宮先生――ラカムさんは、長い黒髪を掻きあげながらテーブル席の背もたれを抱く形でカミトくんたちと同じようにテレビを見ていた。
「みなさんお待たせしました、海底レモンのジェラートです」
「おっ、きたきた」
私は私でキッチンにて簡易的なお菓子をつくり、みなさんへと配膳する。
カミトくんは待ってましたというようにソファから立ち上がってそそくさとキッチンへとやってきた。
「というかイノリさ、どこにいても本当にブレないよねぇ……」
「? なんのことです?」
遅れてやってきたアリーザさんはジェラートのカップとデザート用のスプーンを手にひとくち食べたあと、キッチンの台に身体を預けながら私を見てくる。
「自覚がないってところがまた……」とついに溜息を吐かれてしまった。
「?」
小首をかしげながら洗い物を済ませた私は、水道の栓をしめてリンドウさんの斜め前の席へ座る。
「あ、そういえばラカムさん。先ほど送っていただいた入部希望の書類なのですが、提出は明日の朝でいいんでしょうか?」
「おう。それで構わん。仕事が早ぇなあお前さんは。従兄のお前も見習ったらどうだ」
「うっせ。つかこいつをお前呼ばわりすんな」
かたん、とカミトくんが私の隣に腰掛けて、対面のラカムさんを睨めつけたあと、もくもくとジェラートを食べてゆく。
……なんというか、二人を見ていると近所に居るお兄さんと、昔からお世話になっている男の子みたいな雰囲気だ。
ゲームの中だし、そういう事は横に置いているのかな?
「そういえば、先生もPSO2をされるんですね。驚きました」
「あ~……。ここでは先生はよさないか、こっ恥ずかしいんだよなこっちが」
「ふふ、はい。わかりました」
ラカムさんは苦笑いを浮かべながらスプーンでこめかみのあたりを照れくさげに掻き、私は小さく笑いながら頷く。
「ゆう……カミトくんとは元からお知り合いだったんですか?」
「知ってるもなにも、俺の実家とこいつの家、近所だからよ。付き合いが長いんだわ」
な、とラカムさんがカミトくんへ同意を求めると、彼は仏頂面になりながら「……………ああ」と長い沈黙の後に返事する。
「そうだったんですか……だからこんなに」
ウィイイ……がたっ!!
『――だから反抗期みたいな感じだったんだな!!』
『………』
ぜはーっ、ぜはーっ! と激しく息を切らしながら笑顔で私のマイルームへやってきたフェザーさんは汗だく状態で、カミトくん達は何もなかったように会話をつづけてしまう。
「えっ……えっ!? なんの反応もしてあげないんですかっ!?」
私はその場から立ち上がってみなさんを見ると、「いやだってフェザーだしなァ……」「まぁそういうヤツだし……」「遅刻する奴が悪い」という反応を見せる。
「と、とりあえずフェザーさんどうぞお席へ……」
「いいんだ……遅れるオレが悪い……ただ、あの飯は本ッ当に美味かったんだッ! それこそ走りだした箸が止まらないほどにっ! 後悔はしていない!!」
ぐっと何かに耐えるように目をつむりながら握り拳を作ったフェザーさんは、ジェラートを取り出した私を見てそそくさとラカムさんの隣の席へ腰かける。
「……なんか、今日一日でルドガーに餌付けされた気分。こんな生活いいかも……」
はむはむとジェラートを食べ続けるアリーザさんはほわぁと幸せそうな顔をしながらカミトくんを見た。
「ねぇカミトさあ、ほんとにこの子うちにくれない?」
「ダメだ」
即答だった。周りから「おお……」とどよめきが走り、こと、とフェザーさんの横にジェラートのカップを置いた私は苦笑する。
「アリーザがダメなら俺に――」
「死ね」
「………」
ああっ、だめだ今のカミトくんに何か言おうものならすぐ断られるに違いないっ。あの目は総てを否定する瞳だっ。
フェザーさんはフェザーさんで「いっただっきまーす!」と先ほどの夕食時にも聞いたテンションで合掌し食べ始めるという平常運転。
(本当にみなさん濃いなぁ。私なんか霞んで見える)
かくいう私も、アリーザさんの隣に立ってジェラートを食べ始めるのだった。
「さて、なんだかんだでこうして集まっちまったわけだし、連絡事項は口頭伝達でいいか」
デザートを食べ終えて、私は洗い物をしている中、ラカムさんが話を切り出した。
そして例のごとくフェザーさんはジェラートを5回もおかわりしたので現在進行形で状態異常。テーブルに顔をくっつけながら身体を震わせ、額に脂汗を滲ませつつラカムさんの方を向いている。
「……フェザーお前大丈夫か」
「ああ……問題ないぜ……さあ、もっとくれよ……デザートをよぉ……!!」
「もうやめとけお前」
ふーっとラカムさんはタバコの煙を吐きだすと、ぽんっとフェザーさんの頭に手を置いた。そしてフェザーさんは撃沈。
「明日の金曜日、朝七時に集合したあと、公用車でアースガイドの東京支部へ行く。んでもって、9時から草津へ移動。そこで所用を片付けたら各自自由時間だ。まっ、その時間はお前さんらの力量に掛かっちゃいるんだが」
「あの、それでは宿泊施設などは……?」
私は集合時間になった場合、どこへ集まればよいかを確認しようと思い、軽く挙手して訊ねる。
「あぁ、それならすでに俺が手配済みだ。旅費などはうちの学園で出るようになってる。ちなみにランクとかにはあまり期待すんなよ?」
「はあ……」
から返事をすると、アリーザさんも手を挙げる。
「はーい。じゃ次あたし。なんでいきなり草津? というかあたし達普通の運動部系って事になってるんだよね?」
「だーから用事があるんだっての。部活の件については運動部系なのは間違いない。まぁ新しくできた部活なうえちょいと特殊だからな、お前らの部は」
「……そりゃそうだよな」
ふむ、とカミトくんが唸り、アリーザさんは納得したように小さく頷いた。
VRゲームで公式的な大会があるとしても、結局はゲームだ。その点を踏まえると、顧問の雨宮先生も監督責任のようなものを含めて立ち場も危ういだろう。
彼は短くなったタバコを私の出した灰皿でもみ消すと、ふぃーっと息をつく。
「それじゃ最後は俺から。自由時間についてだ。……お前の所用、あと俺達の力量って言うのはどういうことだ?」
カミトくんが本題を切り出す。するとラカムさんは「おう……」と言って二本目のタバコを取り出して火を点けた。
雰囲気が一瞬で変わった。私達も気になっていた部分であろうその単語に、その場が静まり返る。
フェザーさんは伏せていた顔を上げ、カミトくんは腕を組んで背もたれに身体を預ける。
私とアリーザさんは、二人で静かに彼の言葉を待った。
「ふーっ……。こいつは移動時間に話しておくべきことだったんだが、こうなっちまった以上説明するしかねえなあ……」
彼はがりがりと後ろ頭を掻いたあと、ポップアップウィンドウを開いて誰かと連絡を取った。
「今一番説得力のあるやつを呼ぶ。その間にざっくりとした説明をさせてもらうとするか。――全員今から学園の中庭へ集合するように。服装は動きやすいものにしとけよ?」
ラカムさんはそう言い残して、そそくさとログアウトしてしまった。
◇
私達は寮の前で合流すると、出入り口にはすでに雨宮先生がタバコを吸いながら待っていた。
そのまま「行くぞ」と言われて続くと、先ほどの集合場所、清雅学園校内の中庭だった。
人気のないそこには一人の先客がおり、雨宮先生の顔を見るや早々に溜息をついてしまう。
「遅いぞ雨宮。呼びつけておいた自分が遅れるとはどういうことだ」
「いやぁすまんすまん。一服してたら遅れちまった」
雨宮先生も私服姿で、本日は当直だったということが分かる。けれど、彼をけしかけたはしばみ色の髪に茶色の髪をした女性はスーツ姿だった。恐らく、残業帰りなのだろう。両腕を組んで片眉を吊り上げ、怒っているそぶりを見せている。
「誰かと思ったら片桐先生じゃないですかー」
「あ、ああ……。生徒を連れてきていたのか。ならなぜ早く言わない」
「言わせてくれる雰囲気じゃなかったもんでな」
ふーっと雨宮先生はタバコをあさっての方向へ吹かしたあと、携帯灰皿でそれをもみ消した。
「すまない、早とちりだったな」
「別に気にしちゃいねーよ」
彼は両肩を竦めた後、彼女の謝罪を含めて険悪なムードは収まる。
「――さて、こんばんは四人とも。上條さんは……そうか、初見だったな。私の名前は片桐莉奈。
「昨日からお世話になっています、上條祈と申します。こちらこそ、よろしくお願い致します」
お互いに挨拶を終えた後、片桐先生は私達を見回してからふむ、と雨宮先生を見た。
「彼らの様子を見るからに、まだ説明はしていないようだな?」
「おう。明日の朝配っちまうより今の方がいいと思ってな」
ああ、そこで憂人くんを盾にしないあたり、本当にいい先生だなあ……。
なんて思っていると、片桐先生は「そうか」と言って中庭の中央にある噴水の淵へトランクを置き、それを開く。
そこには、四つの携帯できる機械のようなものが納められていた。
「先生、それなに?」
「ああ。これから説明する。そう急くな進堂」
進堂さんの質問に片桐先生は苦笑いを浮かべ窘めた後、そのトランクを私達のもとまで持ってきて、左から順に取って行くようにと指示されて各自受け取ってゆく。
やや丸型で、手の平にしっかりと収まるサイズ。
赤いカバーに黄金色の獅子の紋様が模られたそれはみなさん同じデザインで、両脇にある小さなボタンを押すとかしゃんと音が鳴り本体が開かれる。
「これは……がらけー、というものですか?」
「まぁ、通信機器ではあるんだけどな……」
そこらへんもしっかり説明する、と雨宮先生は言ったあと、こほんと片桐先生が小さく咳払いした。
「それは次世代型戦術
「……なるほど」
色々と気になる単語が混じっていたけれど、今は片桐先生の説明に納得した風を装わなければならないと判断した私は、恐らくこのあと貰える資料に目を通さなければと思った。
それに――私の《ARCUS》の適性が高かったことで、憂人くんと同じクラスになれたというのなら、どこか納得がいく。
そして雨宮先生が私達へ振り返り、一歩前へ出ると、こう告げた。
「こうして清雅学園は、この《ARCUS》適性者としてお前達5人を見出した。けどな、やる気のない者や気の進まない生徒に参加させるほど、予算的に余裕があるわけじゃない。それと、本来学ぶ事になるものよりも更にハードなカリキュラムになるはずだ。クラスも変わる。校舎含めて、全部だ。それを覚悟してもらった上で部活を始めるかどうか――改めて聞かせてもらうか?」
雨宮先生の言葉に、その場の全員が押し黙ってしまう。
きっと、それぞれが思い描いた未来があるだろう。ここは恐らく、人生の岐路でもある事はわかっているはず。
私は周りのみなさんと視線を交わし合う。
そんな中、片桐先生は「ああ」と声をあげた。
「ちなみに辞退しても、VR部は本来の形で発足され、カリキュラム、そしてクラスなども現状のままでいられる。どうか安心して欲しい」
……そうは言うけれど、それじゃあきっと雨宮先生達の立場も……。
それに――私も前へ踏み出す機会を失ってしまう。そんな気がした。
(だったら――)
私は今一度目を伏せながら、自分の過去を思い返す。
向き合わなければならない過去。真っ直ぐに進むと誓った未来。
……そしていつか、
――私は一歩、前へ出た。
「え――」
「――ああ」
左隣に居た進堂さんは驚きの声をあげ、右隣りに居た憂人くんは穏やかな声音で、まるで「そうだよな」と言うように呟いた。
「――上條祈。参加させていただきます」
「い、祈……!?」
進堂さんは驚いて私の名前を呼ぶ。私は半身で笑みを浮かべて振り返った。
「一番乗りは君か。なにか事情があるようだな?」
「いえ……我儘を言って行かせていただいている学園です。自分を高められるのであれば、どんなクラスでも構いません」
「ふむ、なるほど……随分男らしいな」
ふふっと片桐先生は初めて柔らかい笑みを浮かべる。そして左の方からパンッ! という拳を手の平に打ちつける音が響いた。
「ハハッ……そういう事なら、オレも参加させてもらうぜ! 元から強くなるためにこの学園に入ったんだしな! 臨むところだ!」
私の次に腹痛から回復していた城之内さんが一歩前へ出る。
「――俺も同じく。こういう事になってる以上、遣り甲斐のある道を選びたい」
そして憂人くんも。彼は穏やかな表情で私と視線を合わせると、お互いに小さく笑い合った。
するとつられたように進堂さんもバッと右手を上げて前へ出る。
「あ、あたしも参加する! これも縁だと思うし、みんなとなら上手いことやってけそうな気がするから……!」
「ふふっ……」
「まあ、な」
「おう!」
私はくすくすと笑い、進堂さんは頬を朱に染めて私の肩を掴んで揺する。憂人くんも同じように微笑みながら頷き、城之内さんは満面の笑みを浮かべた。
「決まり、だな。そんじゃあお前ら、これからビシバシしごいてやるから、楽しみにしてろよ――!!」
『はい!!』
雨宮先生達はいちど視線を合わせた後、お互いに私達を振り向く。視線を向けられた私達は、しっかりとした“意志”を持って大きく頷くのだった。
†
――同時刻・清雅学園・学園長室――
そんな彼らのやり取りを、一人の赤毛の青年と、体躯の良い初老の男性は見守っていた。
「やれやれ、まさかここまで異色の顔触れが集まるとはのう。これは、色々と大変かもしれぬな」
初老の男性は長く伸びた白い髭を撫で、赤毛の青年は笑いを押し殺す。
「クク、確かに。――だがこれも、
「ほう……?」
初老の男性は赤毛の青年を見ると、彼は優しい赤い瞳を浮かべながら、
「ひょっとしたら、コイツらこそが“光”になるかもしれねえ。動乱の足音が聞こえるこの世界に於いて、対立を乗り越えられる……唯一の光に――」
そう、言った。
第一章、完。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます!
現在第二章執筆中のため、またお時間を頂いてしまいますが、どうかこれからの祈ちゃん達をよろしくお願いします!