マテリアル・シンカロン   作:始原菌

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 ▲▼▲

 

 何だかんだ色々あって。

 

 高町なのはと紫宮紫苑は、単なる顔見知りよりは上の付き合いになっている。

 とはいえ深い関係かというとそんな事もなく。委員会や部活動が同じになったので前よりは話すようになった、くらいのものだ。

 間違いなく親友ではないし、友人と言えるかもかなり怪しい――なのはに言わせるとまた違った答えになるかもしれないが。

 

 なので高町家の家族旅行に同行しないのは当然である。

 

 しかも高町家単独でなく、他に付き合いのある家との合同家族旅行であるという。

 頼み込めば確かに断られないかもしれないが。なんせ知り合った理由がほぼフルで魔法絡みなので説明ができない。しなくていい誤魔化しが必要になり、行動に疑いをかけられて制限される危険がある。

 それに()()の付き合いに勝手な都合で突入したら、紫苑の胃がストレスで穴どころか丸ごと溶け落ちるレベルの負荷がかかる。間違いなく死ぬ。確実に死んでしまう。自信がある。確信がある。万が一死ななかったとしても、死ななかったことへの申し訳無さで死ぬ。

 

 ――そうして正論と事実を重ねた理のある説明の結果。

 

 ようやく温泉に付いていきたいと荒ぶるシュテルの説得に成功した。

 紫苑と離れすぎると躯体の維持ができないので、シュテル単独では同行できないのである。

 最終的には、なのはにお土産のリストを渡すことで解決となった。

 ただ、それ以降に家のあちこちに温泉街のチラシやパンフがいつの間にか置かれるようになった(サブリミナル)。あくまで今回は行かないだけで、行く事は微塵も諦めていないらしい。

 とにかく温泉旅行の話はそれで収束となった。

 なった、のだが。

 

 終わった後に、結果だけ見れば。

 無理にでも同行するほうが正解だった。

 

 現在の海鳴在住魔法使い組が抱えている問題は、ジュエルシードの捜索とマテリアルの捜索。そして最近追加されたのが、増えたという新たなる魔法少女。

 なのはは旅行先でその内の2つ――ジュエルシードと魔法少女に同時に遭遇してしまったのである。

 念話を受けて紫苑も直行はしたが、物理的な距離がありすぎた。肝心の戦闘には間に合わず、ジュエルシードは謎の魔法少女が持ち去ったという。

 

「一旦整理しましょうか」

「うん」

 

 放課後の帰り道で頭の上のシュテルに返答する。

 シュテルと紫苑は増えた方の魔法少女に直接は遭遇していない。けれどもなのは達から話は聞いている。容姿、使う魔法の種類、狼の使い魔を連れている――そして行動の内容。

 

「目的はジュエルシードの回収とみて間違いないでしょう。なぜ欲し、何に使おうとしているのかは判りませんが」

「名前はフェイト・テスタロッサだっけ。話を聞く分にはマテリアルの方とは無関係みたいだけど」

 

 余談だが。

 初回の遭遇の際になのはから謎の魔法少女は雷の魔法を使うと聞いたシュテルは、そのまま飛べるのではと思うほど尻尾を高速回転させていた。

 魔力光は青でなく金色と聞いた途端に表情が無になってしまったが。

 最初に期待した分反動が大きかったのか、ため息を吐きながら縁側でしばらくごろごろしていたくらいである。生態が日に日に猫に寄っていっていないか。

 

「今の所、私達に積極的に敵対する理由はありませんが……ナノハが遭遇した2回とも交戦になっています。戦わずに済むとは考えないほうが良いでしょう」

 

 謎の魔法少女――フェイトなる人物の目的がジュエルシードであるならば。ついでとはいえ回収している紫苑達を無視することは無いだろう。

 紫苑としても、目的や理由が明らかになっていない相手に危険物を渡せない。

 何よりもこのチームの決定権を握るシュテルは、どんな理由であれ()()()()()()()()()()()()()などありえない。

 

「今後は対魔導師を想定した訓練も組み込んでいきましょうか」

「うん」

 

 戦え、とシュテルは当然のように言う。

 戦う、と紫苑は当然のように了承した。

 拒否されるとは微塵も思っておらず、拒否するつもりも微塵もない。葛藤も躊躇いも何もなく、ただの確認だった。

 

「ではまず、あそこに見える屋台でたい焼きを買ってください」

「うん?」

 

 

 ▲▼▲

 

『あたし達と話してんのがそんなに退屈なら、一人でいくらでもぼーっとしてなさいよ!!』

 

 とぼとぼ、と。

 高町なのはが一人で帰り道を歩いている。

 普段の快活な様子はどこへやらで、なのはを知る人間が見ればひと目で何かあったと判るくらいには落ち込んでいる。

 

 高町なのはには家族がいる。友人がいる。

 

 本来はプラスに働くそれらが、けれども今回ばかりは僅かながら後ろ向きに引っ張る枷となってしまっている。

 

 原因はフェイトと名乗る魔法少女の存在である。

 

 そもそも高町なのはがジュエルシード集めを手伝っているのは、純粋に誰かを助けるためであり、傷つけないためである。

 だからジュエルシードを巡って争う相手が出てきてしまうと、話が根底から変わってしまう。他人と戦う事になのはは大いに迷うし、悩むし、躊躇う。

 なのはの方は友人を巻き込む訳には行かないので、どれだけ悩んでも決して相談はできない。友人の側から見れば、あからさまに困っているのに誤魔化して一人で抱えるなのはに対して苛立ちを覚える。悩みが深まれば、苛立ちも募る悪循環。

 そうして今日、とうとう友人の側の不満が爆発した。

 些細な言い争い程度ではあるが、友達とのケンカという事実は小学生の心を沈ませるには十分な出来事なのだ。

 

(寄り道して帰ろう)

 

 沈み続けるままの気持ちに、連動するように立ち止まる。

 このまま考え続けていても、落ち込み続けても、何も解決はしない。それでも気持ちを整理する時間が欲しかった。

 

(皆に今の顔見られたくないから)

 

 何より、こんな顔で家に帰ってしまったら。

 今度は家族相手に同じ問題が起こるのではと思ってしまって、それがとても怖かった。

 

 とはいえ別に行きたい所があったのではない。

 ただ時間を潰せればそれでよかったのだ。たまたま見つけた屋台でたい焼きを買ったのだって、帰宅の時間が遅くなったことへの言い訳にするためだ。

 そんな訳で。

 たい焼きを買って、もぐもぐしながら歩いていたのだ。

 

 ――ビュオオオオオオオ

 

 人気のない寂れた空き地でたい焼きが踊っている。

 別にそんな音が本当に鳴っていた訳ではないのだが、そう聞こえてきそうな光景が目に入ってきた。

 いや、いや違う。

 踊っているように見えるだけだ。たい焼きよりも更に凄まじいスピードで動く2つの何かが、たい焼きを奪い合っている。そのせいで中心のたい焼きが、空中でブレイクダンスしているかのような光景になっているのだ。

 

「え、何してるの二人とも……?」

 

 これで荒ぶっているのが見知らぬ人間であれば、無言のままそそくさと通り過ぎたのだが。不幸中の災いにも見知った相手だったのである。

 

「あれ高町さん!?」

 

 人間台風みたいな速度で跳ね回っていた紫宮紫苑が、声をかけられて思わず動きを止める。 それが、致命的な誤りとも知らずに。

 

「隙あり――!」

 

 一閃、シュテゆ・ザ・キャット。

 

「ウ゛ワ゛――――ッ!!」

 

 たい焼きを口にくわえたシュテルが華麗に着地する一方。顔面に大きなバツの引っ掻きキズを刻まれ、もんどり打って倒れる紫苑の絶叫が響き渡る。

 

「何が、何が起きて……!?」

 

 完全に事態に置いていかれ、高町なのはは呆然と呟くのみだった。

 

 

 

「特訓? あれが?」

 

 空き地に転がっていたコンクリートブロックの上に、なのはと紫苑は並んで座る。シュテルは紫苑の頭の上でたい焼き(戦利品)の踊り食いの真っ最中。

 全力困惑のなのはは間違っていない。どう見ても野良猫と早送りでケンカしているだけだったのだから。

 

「ちゃんと特訓ですよ。フェイトという魔導師が雷を主として扱うのなら、()()()()を得意としているはずです。戦闘の速度が上がるということは、判断の速度も上がるということ。『早い戦闘』に慣れておくのは大事です」

 

 もっもっもっ、とたい焼きを頬張りながらであるのに器用にシュテルは喋る。いっそ念話を使えばいいのではないだろうか。

 シュテルの格好が面白い一方で、なのはの顔があからさまに曇る。

 

「高町さん、戦いたくなさそうだね。そのフェイトって人と。2回出会って2回とも一方的に襲われたのに」

「………………うん。何か理由があるって、どうしても思うんだ。悪いことを、する子だってどうしても思えない。根拠はなんにもないんだけどね」

「高町さんみたいな人が『悪人じゃないな』って思ったなら、多分合ってるんじゃないかな」

「そ、そうかな?」

 

 えへへと照れくさそうになのはが笑う。

 紫苑は会ったことのないフェイトの事は何もわからない。だが高町なのはの善性は信じている。感じるものがあったのなら、完全な正解でなくとも決して間違いではないはずだ。

 

「ただ善人なのに、それでも()()()()()()()()()()ってことになる。たぶん話して済む問題なら、最初からそうできる相手だ。でもそうしていない」

「…………そう、なるよね」

 

 はあーとため息を吐くなのは。

 食べ終わったシュテルが紫苑の頭をたしたしと叩く。横の紙袋から新しいたい焼きを取り出して、頭の上に差し出す。踊り食いリスタート。

 

「紫苑くんは、相手の人になにか理由があるのだとしても、戦える?」

「戦える」

 

 即答だった。迷いが微塵も無かった。頭の上のシュテルも頷いている。

 それをすごいなとも、羨ましいな、とも思う。

 だが習いたいとは思わない――高町なのはは、習ってはいけない気がする。

 話してもどうせ無駄と、切り捨てたくはない。それもやり方の一つなのだろうけど、それは()()()()()()()()()では決して無い。

 伝える事を諦めては、いけない。

 わかろうとする気持ちを捨てては、いけない。

 どうしても戦わないといけないのだとしても。傷つけ合う事になるのだとしても。何もわからないままそうするのは、絶対に嫌だ。

 迷いなく戦えるという別の方向性の意思を見て、なのははそう自覚する。

 紫苑達となのはの方向性はきっと根本的に違う。だからこそ、なのはの選びたい、選ぶべき道への朧気な指標にもなりうる。

 

「わたしは、どうしたらいいんだろう?」

 

 夕焼け空を見上げたなのはの言葉は、恐らく紫苑にもシュテルにも向けられたものではない。独り言、呟き――自分自身がどうしたいかという悩みへ潜るためのもの。

 

「やることは決まってると思うよ」

「簡単な問題ですね」

 

 だが横の二人はその手の感傷にさっぱり疎いので、聞かれたと勘違いして普通に返答した。

 

「とりあえず強くなればいい。どうやってもぶつかるんだから。戦いながら話せばいいんだよ」

「そして戦える時間が長くなるほど、ナノハが話せる時間も長くなるという訳です」

「えぇー……」

 

 当たり前みたいなツラで語る炎上系戦闘民族ペア。

 高町なのはは思わず顔を引き攣らせた。

 

 

 ▲▼▲

 

 迷おうとも、迷わずとも。

 事態は誰も待ってはくれない。

 

 ――3()()()の遭遇はその日の夜。

 

 

 紫苑とシュテルの視界で、夜空にオレンジ色の光が昇っていく。

 

 どう考えても自然現象ではなく、魔法によるもの。

 魔力光からして、なのは達の魔法ではない。フェイトという魔導師――の色とも違うが、連れているという狼の使い魔の魔力光に該当する。

 

「仕掛けて来ましたね」

「あれ何してるんだ?」

「魔力流を周囲一帯に撃ち込んだのでしょう。範囲内にジュエルシードがあれば発動するので、結果として位置を割り出した事になりますね」

「市街地のど真ん中でか。無茶するな」

 

 紫苑の足首が燃え上がり、はためいた炎翼が重力を焼き切って身体を浮かせる。

 光柱はなのはとユーノのペアが今日探索していた箇所に近く、紫苑達からはそこそこ遠い。それでも全力で飛ばせば今回は確実に間に合う。

 恐らく例のフェイトという魔導師に、紫苑達もとうとう遭遇することになるだろう。

 

「高町さんと合流しよう」

「待ってください。向こうは恐らく私達の存在を知りません。そのアドバンテージを有効活用すべきでしょう」

「なるほど。初撃で完全に不意を付ける」

「そういう事です」

 

 紫苑の身体と魔法から、色が抜ける。

 炎着状態を解除した事により、飛行魔法も解除される。

 

【Physical extend】

 

 強化された身体能力は、墜落を着地に変える。そのまま周囲の建物を蹴り上がって、手近なビルの屋上へ。そこからはビルを飛び移って移動する。

 通常状態の紫苑は魔法をほぼ使えない。つまりは魔法使いとしての特性が薄い。魔導師相手に忍び寄る場合は、かなり都合が良いといえる。

 風を切りながら進む。

 移動している間にも事態は進行している。ユーノの貼った広域結界がすでに周囲を覆っている。空に昇った光はもう消えているが、今は桜色と金色の光が瞬いているのが見える。

 

「もう始まってる!」

「ナノハなら簡単には落とされないでしょうが、援護が早いに越したことはありません。急ぎましょう」

「わかった! フィジカルエクステンドもう一回ッ!」

 

 更に移動速度が上がる。景色が流れる速度も上がる。

 このまま可能な限り接近し、狙撃ポイントを確保。相手の隙に最大火力を叩き込み、流れを一気にこちらに引き寄せる。

 というのが、当初の目的だった。

 だが。

 

【――――紫苑!】

「炎着ッ!!」

 

 事態を認識して、シュテルは即座に内に引っこんだ。声に伴い中身が変わる。色彩が変わる。魔力が生まれ、炎が噴き出す。

 炎翼が再燃し、はばたく。紫苑を丸ごと包んでも余るほどの、一層大きな炎と化す。得られたのは最大速度。合わせて腕に纏う炎は最大出力。それらを合わせた最大火力。

 

「炎、もう一人――ッ!?」

 

 2つに結んだ金の髪に赤い瞳。黒を主体とした衣装に、黒鉄色のデバイス。

 話だけで聞いていたフェイトという魔導師の姿を、紫苑はここで初めて視認する。フェイトの方も紫苑という魔導師を認識し、驚愕する。

 ちゃんと向き合ってよく見れば、紫苑にもなのはの言いたいことが何となくでも解ったのかもしれない。

 今の紫苑には、ただ見る余裕すらもなかったが。

 そのまま最高速度を維持して、更に加速して――フェイトの横を()()()()()

 

「え、」

 

 困惑の声を上げたのは、高町なのは。

 このまま行けば、業火と化した紫苑の着弾地点に居る少女。

 

「伏せろ!!」

 

 ベースにしたのはヴォルカニックブロー。

 だが実際はとても魔法と言えない乱雑なもの。最大火力による体当たり――着弾。轟音と爆炎が一気に広がり、込められていた破壊力が叩き込まれる。

 高町なのはに、ではない。

 その背後に居た物だ。いつの間にか、誰に悟られることもなく。

 そこに居た鎧姿――()()()に。

 

「紫苑くん!?」

 

 爆発に吹き飛ばされた黒騎士は近くのビルに轟音とともに突っ込む。そして紫苑もまた反動を殺しきれなかったのか、別のビルに轟音とともに突っ込んだ。

 慌てて駆け寄ろうとしたなのはだったが、それよりも紫苑が再度飛び出してくる方が早い。

 

「俺はこっちに専念する! 今回ジュエルシードは手伝えない!」

 

 すれ違いざまにそれだけ言うと、紫苑は炎翼を一層大きくはためかせて更に加速。その先では黒騎士もまたビルから飛び出してきている。

 

『まずい! なのは、ジュエルシードが!』

「――っ、!」

 

 謎の乱入者とアクシデントに驚いたのは、その場に居た全員だ。

 それでも、二人は最適な行動を選択する。

 一人は宿敵に遭遇した紫苑。もう一人は――フェイト・テスタロッサ。

 

「取った!」

 

 フェイト・テスタロッサの目的はジュエルシードの捕獲である。

 誰が何人増えようと、何が起きようと。ジュエルシードを確保できればフェイトの勝利であり、逆に確保できなければ何がどうなっても敗北である。

 故に黒騎士の登場で全員の意識が逸れた瞬間は、最大の好機であった。

 なのはの位置からでは飛ぼうとも撃とうとも間に合わない。ユーノはフェイトの使い魔(アルフ)と互いに抑え合っていて身動きができない。紫苑と黒騎士は問題外。

 

 フェイトを止められる者は誰も居ない。

 思い切り伸ばされた手が、ジュエルシードを掴み取った。

 

 

 

 

 

 

【いっただきま――――す!!】

 

 触れたジュエルシードからそんな意思が伝わってきて、フェイトは困惑で硬直する。

 フェイトに判るはずもない。ジュエルシードと同時に、その外側に取り憑いていた物も()()()()()()()()()()事なんて。

 前触れなくジュエルシードから迸ったのは水色の雷。

 フェイトは、為す術もなく直撃を浴びる。変異体ならともかく。眼前にあるのは剥き出しのジュエルシード。ここまで明確な指向性のある攻撃を受けるなぞ想像していなかった。

 

「ぅ、うあ゛あ゛あああ゛ぁぁぁ――ッ!?」

 

 雷光がフェイトの身体を余すことなく奔ること数十秒。

 放り投げられるように、雷から解放される。まるでもう、用は済んだと言わんばかりに。

 

「フェイト!!」

 

 弾き飛ばされたフェイトが地面に落ちる前に、アルフ(使い魔)がその身体を受け止めた。狼としての姿ではなく、獣の耳と尻尾を残して変身した人間形態。

 

「フェイト! しっかりして、フェイト! 何だってんだ! 一体何が起こったっていうんだい!?」

 

 アルフの叫びには誰も答えない。答えたとしてもきっと聞こえない。

 なぜならここはすでに嵐の最中になっている。ジュエルシードから迸った水色の雷が凄まじい勢いで渦巻いている。余波で周囲の建築物が片っ端から砕けていく。気を抜けば魔導師でも、雷に飲み込まれて無事では済まないだろう。

 雷はひたすらに渦巻いて増大し迸り膨れ上がり――そして収束する。

 今しがた奪い取ったデータを基に、ジュエルシードの莫大な魔力を注ぎ込み、一気に()()が形成される。

 この事態を正しく理解できるのは、()()()()()であるシュテルのみ。

 そしてシュテルを宿す紫苑もまた、この雷には見覚えがあった。

 

「シュテル! あれは、あれはまさか!」

【ええ。ええ! 間違いありません、間違えるものですか! あれは、あれこそが()()()()()()()! その名も――!】

 

 雷が散るたび、朧気な輪郭が確かな像を持ち実体となる。

 容姿、背丈、髪型――その総てがフェイト(本物)とそっくり同一形状。しかし色彩が大きく異なる。金色だった髪は水色で毛先が黒い。ワインレッドの瞳が開かれて、込められた意思に伴ってか、本物よりも釣り上がる。

 

 

雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)! ここに見参ッ!!」

 

 

 名乗り上げに応えるように。

 一際苛烈な雷が、レヴィの周囲を迸る。

 

 






Detonation公開で一回蘇生してたんですが、Detonationが面白くてですね、消化するのに時間がかかってしまってですね。

あとマテリアルの設定が思った以上に変わっててひっくり返るくらいびっくりしました。
とはいえこの話では根本がゲーム版の方で、おそらく最後までそのままです。

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