Re:ゼロたちと始める異世界生活   作:黒鉛

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取り返したモノ、そして……

 今回、俺が成すべきことはアッシュと偽サテラの盗まれたものを取り戻し、エルザの襲撃を回避する。

 それが容易でないことは二度目の時に実感した。

 でも、やるしかない。

 

 俺は、今度こそ彼女を助けてみせる。

 

 

 

「……つまり、なんじゃ? お主はそこの嬢ちゃんの盗まれたものがここにあると思って来たのか」

 

「そそ、こういう場所に詳しい知り合いがもしかするとここにあるかもって言ってたからな。そいつ、何回か小さな子供をここで見たって言ってたから」

 

 アッシュはこっちの話を一切聞く気はなく、店をじろじろと探っている。

 

 ……だが、今のところは順調だ。

 前回は彼女のもとに返すということに拘り過ぎていた。

 だからこそ、今回はアッシュのものを返してもらうついでに高価そうだから欲しいという体でいけば問題ないはずだ。

 この体は異世界に来たばかりの新品そのもの。

 切れるカードは沢山ある。

 

「んで、この魔法器なら彼女の持ってた物と同等の価値があるって聞いたから、俺は別にこんなの要らねえし、金持ち様なら恩は売るに限るからな」

 

「……なるほど、確かにこれと同等の価値があるものを持ってるならそこらの貴族の可能性は高いか」

 

 ロム爺は納得したように頷いた。

 しかし、今考えると先に携帯のカードを切ったのは失策だったかもしれない。

 先に切るならお菓子やこの服とかから始めたほうがよかったかもしれない。

 第一盗まれたものがもし小さなちんちくりんのペットとかなら俺は本当に大損しただけになる。

 それだけは避けたい。

 死ぬかもしれないと分かっていても死ぬのは御免だ。

 

「あとは、多分その盗まれたものを持ってるだろうフェルトが来てからじゃな」

 

 酒の件を回避するために序盤に長々と話していた。

 多分、俺の予定じゃ……。

 

 トントン

 

 誰かが戸を叩いた。

 間違いない、フェルトだ。

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「スケルトンに」

 

「落とし穴」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「クソったれ」

 

 以前同様に戸が開かれ、フェルトが入って来た。

 偽サテラを巻くのに時間がかかったと説明したあとに、俺の方を見て……

 

「……ロム爺、アタシは大口持ち込むから誰も入れとくなって言ったろ?」

 

 そう言う事も分かっている。

 そして、今度こそ失敗するわけにはいかないんだ。

 

「あーー!! やっと来たわねこの泥棒野郎!」

 

「げっ……先回りされてたのかよ」

 

 フェルトは状況を察したらしく、しまったという仕草をした。

 

「追いかけて来るのが一人だからって安心したのが悪かったか」

 

「悪いことは言わないわ。盗ったものさっさと返しなさい」

 

 アッシュが懐から銃のようなものを出した。

 ……銃!!?

 

「……この喋るのだろ? 私じゃ手に負えないって薄々感じてたから返してやるよ」

 

 そう言って渋々とアッシュの盗まれたものが返され……んん?

 

 

 

「モデルA! 大丈夫だったの?」

 

「アッシュ!! ……ったく、袋の中は汚いし埃まみれだし汚いし散々だったぜ」

 

 ……なんだあれ。

 あれもペットかなにかなのか?

 

 

「……なんじゃありゃ」

 

「ロム爺もそう思うか? ……多分あれが噂のお宝ギルドが探してたレア物だと思うんだけど、全く使いものにならねえしありゃハズレだな」

 

 フェルトは偽サテラの徽章を出した。

 ……これだ。これを狙わない手はない。

 

「………うおぉ!! すっげぇ綺麗だな!」

 

「うおっ、……だから誰も入れ込むなって言ったんだよ」

 

 そして、一気に話に持ち込む。

 これで変に疑われずに話を持ち込める。

 

「実は俺もレア物には目がなくてな、この魔法器と交換っていうのはどうだ?」

 

「アタシは高く売れるならどっちでも構わないぜ。……交渉相手は兄さんだけじゃないからな」

 

「……他にも取り引き相手がいるってことか」

 

 もちろん知っているし、これの価値も把握している。

 それを利用しない手はない。

 

「相手側がいくら出そうが、こっちはとっておきの魔法器があるんだ! これより高い値を出そうなんて相手は、俺みたいなコレクターかそのなんとかギルドぐらいなもんだ!! 」

 

「……随分な自信だな。そんだけの価値があるのか?」

 

「儂も魔法器はさばいたことがないが、その交渉はお前さんがかなり利があると思うぞ」

 

「へへ、俺はこんなもの必要ねえからな」

 

 いい感じだ。今回は何が起こるか分からないと思える分色々と作戦は練れる。

 

 もっと信用を得るために、次の一手……

 

 

 

「ちょーっと待ちなさい。話を切らせてもらうわ」

 

 と、ここでいきなりアッシュが……。

 

「ひっ」

 

 一瞬、変な声が出る。

 それは、アッシュの明らかな敵意によるものか、それとも……。

 

 

「あんたたち、これはどういうことかしら?」

 

 ……謎のカプセルの中で眠るボロボロの紅い人間を見てのものかはわからない。

 

 ただ、俺は恐怖を覚えた。

 覚えてしまった。

 

 

 ――俺の中で、大きな歯車が動いた気がした


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