霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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第4話

やって来ました博麗神社。

忘れられて寂れて所々瓦は剥がれ落ち汚れがとても目につく、なんてことはなく、ちらほらと汚れている箇所はあるものの、そこまで目立つものはなく、清掃は行き届いているように思える。

 

「ようこそ、と本来、私の立場では言うべきではないのだけれど、一応客であることには違いないのだから、挨拶くらいはしておきましょう。久しぶりね、紫。藍も久しぶり。子育てしてるみたいなのにやつれていないみたいだけど。そこの子供はなんとなく疲れてるように見えるのは気のせいかしら?初めまして、可哀想なあなた」

 

「はじめまして。びゃくろく(白鹿)です。ひと()にく()しみでせいちょう(成長)できると()りました」

「あら、親に対してなかなかの皮肉ね。」

「このあか()ちゃんはわし()そだ()てた……」

「こんな子供にここまで言わせるなんて、あんた達何してんの?まあいいわ。白鹿君、ちょっとこっち来なさい」

 

指示されたように博麗の巫女さんの近くへ歩いて行くと途端に巫女さんが消えた。

 

「夢・想・封・印(物理)!」

 

地面が割れる音と重い何かが風を切る音、擬音で表すならドゴォッ!とズバッ!かな。そんな音がして振り返って見たら、さっきまでいたはずの母さんたちがどこかに消えて、残ってるのは拳を振りぬいた格好の博麗の巫女さんだけ。

 

え?赤ちゃんはどうなったのかって?

さっきからずっと背負ってますよ、俺が。だって俺が背負ってないとぐずるんだもの。これには親の面目丸潰れで母さんたちは苦い顔してたけど気にしない。

 

「さてと。白鹿君、中に入りましょうか。案内するわ」

かあ()さんたちは?」

「いいのよ。ほっとけばそのうち帰ってくるから」

「りょーかいです」

 

どれだけ強い力で飛ばされたかは先程の音と地面のひび割れでなんとなく想像できる。

少なくともアニメとかで星になる表現とか、TASさんの動きとか、そういったレベルのヤベエ速さで飛んで行ったのだと思う。

 

例えどれだけ飛ばされようとも、紫母さんにとってはあってないようなもの。スキマを使えばたった一歩で長距離を移動できる、多少語弊はあるが好きな時に好きな場所に簡単に移動できる、神出鬼没な能力。それが紫母さんの『境界を操る程度の能力』である。

物理的な境界を操れるのはもちろんの事、概念的な境界ですら操れるこの能力はチートと言っても過言ではない。

 

そんなチートな母さんとその式神の二人なら大丈夫だろうと確信したところで、澄み渡る青い空に向かって敬礼し、泣く泣く(嘘)博麗神社の中に入っていく。

 

生前も神社の中に入るなんてなかったので、どんな神聖な場所なのだろうかと少なからず期待していたのだが、特にそんなことはなかった。普通にどこにでもあるかのようなちょっとだけ平均より貧相な、良く言えば清貧な日本家屋だった。

 

「そこでゆっくりしててね。お煎餅も好きなだけ食べちゃってていいから。この子も連れて行くから1人になるけど泣かないで待ってるのよ?」

「泣かないよ!」

「すぐに紫達も来るだろうし、しばらくしたら私達も戻ってくるから。じゃあねー」

 

赤ん坊をその手に抱き、今から出ていく博麗の巫女。冷静に考えればこの博麗の巫女は博麗霊夢の可能性がある。さっき母さんたちに使った夢想封印も強力そうだし。可能性は高いだろう。

 

「…………」

 

ダーー!もう落ち着かねえなあ!よその家に1人とか落ち着かねえよ!煎餅食ってていいって言ってたけどどれくらい食べていいものなの!?とりあえず一枚だけ食べてみよう……。

何これ!??めちゃくちゃ美味しいんですけど!?いや、今まで煎餅なめてましたわ。これまで食べてきた煎餅は煎餅じゃなかったと思うレベルでヤヴァイ。

 

「ちょっと、食べすぎはだめよ?お夕飯入らなくなるわよ?それに、私だって食べたいもの残してもらわないと困るわ」

「紫様。本音、溢れてますよ」

「あら、ごめんあそばせ」

 

いやそれで誤魔化されないよ。よしんばできたとしても、それは余程の馬鹿くらいだろう。

慣れてはいるけど、本当に突然出て来るんだよな。初対面の人とかにやったら絶対驚くぞ。

 

「そういえば、あの巫女はどうした?白鹿、どこに行ったか知ってるか?」

()らない。しばらくしたらもど()ってくる、って()ってた。あか()ちゃんも()れてくって」

「そう。ならもう儀式を始めているのね」

「ぎしき?」

 

え?何?儀式って何するの?何体か生贄に捧げて召喚でもするの?星の合計数を合わせるの?デミスでも召喚しちゃうの?ここら一帯を焦土にするの?更地に変えたいの?

 

「儀式と言ってもそこまで難しいことをするわけじゃないわ。身を清めて、祝詞(のりと)といわれるものを読めば終わりよ」

「へー」

 

数分後

 

「お待たせ」

「早かったな」

 

シャワー浴びて本読みするにしては割と早くに戻ってきた霊夢さん(仮)と赤ちゃん。どうやら髪は適当に拭いているみたいで、まだ少し濡れているようにも見える。

 

「お煎餅なくなったから買ってきて~」

「戸棚にまだあるから自分で持って来い……」

「それならもう食べちゃった」

「おれのきゅうかく(嗅覚)けもの()()み!」

 

こういうのって、多少不味くっても一回口にすると止まらなくなるからな。なくなった瞬間みんなで家宅捜査しちゃった。まあ、すぐに見つけたけど。

 

「…………」

「申し訳ない……」

「おいしかった!」

 

にこやかに殴られました。

 

「ったく、どういう育て方したらこうなるのよ……」

「申し訳ない……」

「そういえば、その子の名前は?もう教えてくれてもいいのでしょう?決まり事も終えたようだし」

 

痛い。頭おさえてうずくまってたら母さんたちが話してる。待って、(話しに)置いてかないで。名前って何?霊夢さん(仮)の名前?

 

「この子の名前は霊夢、博麗霊夢。霊魂の霊に夢で霊夢」

 

つまり霊夢さん(仮)は霊夢さん(仮)じゃなくて、霊夢さん(偽)で赤ちゃんが霊夢(真)ということですね!分かります!やーい!偽物!

 

「いたい……。なんでなぐられたの……?」

「直感よ」

 

どうやら博麗の巫女には第6感が備わっているらしい。




タイトルでネタバレしてるからなあ……
城之内死す!よりもひどい……

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