霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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今回から数話はまったり日常編です。

あと今回は直接的な表現は控えてますが、性的な単語を連想させる言葉が含まれますので、読む方はご注意ください。
といっても会話の一部に含まれているだけで、エロい描写は皆無ですがwww


第33話

紅霧異変がひと段落し、俺達はまたそれぞれの日常に多少の変化を感じながらも生活していく。

 

「霊夢ー!朝ごはんできたからそろそろ起きろー!」

 

異変解決の時には勇ましく戦っていた霊夢はただの寝坊助に戻ってしまっている。台所から霊夢を呼べば、返事はなく、物音も聞こえない。霊夢のことだ、まだ夢の中、布団の中なのは明らか。朝食を盛り付けて割烹着と三角巾を外して霊夢の寝室に向かう。部屋の中は必要最低限の家具しか置かれてない寂しいものだが、私物はあまり持ち合わせる主義ではない霊夢にとってはこれが普通である。

 

部屋の中央に敷いてある布団で気持ちよく寝てる霊夢に音をたてないようにゆっくりと近づく。起きているときの霊夢であれば確実に気が付いているが、寝ているときは全く警戒していないので、起きているときならすぐに気づくようなことでももし普通に足音を立てながら歩いたところで簡単に起きることはない。

 

「霊夢!起きろ!もうお天道様も元気に仕事してるぞ!」

 

布団を引っぺがし霊夢を起こす。夜中に寝返りをうった影響か寝間着が肌蹴て他人には見せられない程度には扇情的な恰好をしているが、厭らしい気持ちにならないのは血縁ではないとしても俺たちが兄妹だからだろう。

 

 

「むぅ…………」

「おら!起きろ!起きなさいっての!」

 

布団を引っぺがしたら呻き声を上げるだけだったため、肩を揺らし強引に夢の世界から浮上させる。いい加減にしてもらわないと朝ごはんが冷めちゃうし、もう少し強引な方法でもいいかもしれないな。

 

「早く起きないと最終手段に出ちゃうぞ」

「んん…………」

 

霊夢は顔を枕に押し付けてくぐもった声を出す。これは起きてるな。だが返事はなしで起きる気もなし、か。いいだろう最終手段だ。

 

まずは霊夢の両足、掴みやすい足首辺りを掴む。進行方向を確認しつつ…………

前進!

 

「ちょっ熱っ!待って!ねえ待ってってば!」

「待ーちーまーせーん。そのまま居間まで摩擦熱に苦しみながら運ばれなさい!」

 

はっはっはっ!苦しめ苦しめ!俺があくせく働いている間ぐうすか寝ててイライラした、なんてみみっちいことはないけどせっかく暖かい朝ごはん出来ているのに、冷めてしまったら美味しさが半減しちゃうし、何より家族には一番美味しい状態の物を食べてもらいたいからな。

 

「さあ、召し上がれ」

「…………いただきます」

 

さっき引きずったのが良かったのか、いつもは寝ぼけながら食べる霊夢が、はっきりと意識を覚醒させた状態で朝ごはんを食べている。ふむ、明日からも引きずって起こそうか。

 

「白鹿、もし明日もさっきみたいな起こし方で起こしたら、一生口きいてあげないから」

「なら、毎朝ちゃんと起きてほしいものだな。それとも朝食は俺の分しか作らなくてもいいのか?口きかなくなったら、毎食俺は自分の分しか作らないぞ?最悪毎日3食の内一食くらいは平気で抜くぞ?おかずも何品か減るかもしれんなぁ。漬物と米だけになるかもなぁ。それでもいいのか?ん?」

 

こちとら毎食毎食おかずが被らないように栄養が偏らないように、脳内のレシピのリストと現状の釜土でもできる料理をリストアップして作ってんだから、それくらいの気苦労は知ってもいいだろ。いやむしろ、花嫁修業をさせるなら今の内から家事全般をさせるべきか?でもなあ結婚かぁ、させたくないなあ、でもさせてあげたいなあ。とりあえず保留で。こういうのはなるようになるだろ。

 

あと後半言ってることは冗談じゃなく本気。釜土で作るの面倒くさいし時間かかるし、手間かけたくないから本当に食事回数減らしそう。こういう時手間も時間もかからない電子レンジでできる冷凍食品って超便利なんだなってしみじみ思うわ。早く幻想入りしないかな。

 

「わかったわよ。明日からはちゃんと起きるから。だから明日からもちゃんと朝ごはん作ってよね、お兄ちゃん」

「任せとけ。でもお前も女の子なんだから多少は料理覚えといた方がいいんじゃないか?」

「嫌よ面倒だわ。もし婿を見つけられなかったら一生独り身かお兄ちゃんを婿にするから問題ないわ」

「ふざけんな。血縁ないっつっても、赤ん坊の時から面倒見てたようなやつを、俺は嫁に貰いたくないぞ。それに俺はせめて一緒に台所に立ってくれるような女の子が好きだから、料理してくれない霊夢は恋愛対象外だ」

 

だが霊夢はやらないだけで、やろうとすれば料理できるんだよな、それも俺より上手に。霊夢は才能の塊だからな、どの調味料をどれくらい入れればいいか直感で判断して、それで美味しい料理作るんだから、毎日料理作って研究している俺のプライドを傷つけてくるからな。いや、料理作ってくれるのは嬉しいんだけどね。

そもそも、料理作る以前に妹の裸見て欲情なんてできないし、母親目線で痩せすぎてないかとか、贅肉が付きすぎてないかお肌は荒れてないかとか確認したり、成長してるなぁと感慨深くなるだけな時点で結婚なんて無理。いざそういうことを致すとなったときに罪悪感やらなんやらで間違いなく絶対萎える。

 

「というか霊夢は好きなやつとかいないのか?霖之助さんとか顔も整ってるし優しい性格してるし、婿に取るなら優良物件じゃないのか?」

「あの人昼行燈みたいだし魔理沙がご執心じゃない。魔理沙からの略奪愛なんて、そのあと魔理沙とも霖之助さんとも関係がこじれそうだし私嫌よ」

「じゃあ他に誰かいないのか?人里にもよさそうな人なんているだろ」

「いないわね。そもそも男の人で名前覚えてる人なんてお兄ちゃんと霖之助さんくらいよ。私の人生男の人と縁がないんじゃないかしら?」

 

男で名前を覚えてる人が身内含めて二人だけとは、我が妹ながらなんと灰色の人生か。下手したら女の人の名前も憶えている数が片手で足りそうだ。もうちょっと他人と関りを持たせたほうがいいのかな?

 

「私のことはいいとして、お兄ちゃんはどうなのよ?私や魔理沙、紫や藍、それに寺子屋の教師に稗田当主、あとはあの吸血鬼の所とかかしら?ちょっと考えただけでこれだけいるんだからより取り見取りじゃない?」

「んー、確かに結構美人はいるけどなあ、なんかこうピンっとくる人がいないんだよな。あれか、身内が美人だから無自覚に結婚、というか恋人に求める基準が高いのかもな。というかさらりと自分と紫と藍を入れるな」

「だって私と結婚するのが一番周囲の反論がないじゃない?今もこうして一緒に暮らしているわけだし」

「いやいや、次期博麗の巫女はどうなんだよ。お前と事を致すのは嫌だぞ」

「別にそんなの紫がどこからか持ってくるでしょ。だからそういう厭らしいこともする必要はないわ」

「なんだよ霊夢。今日はやけにグイグイくるじゃないか。もしかして俺に恋愛感情でも持ち始めたか?」

 

結婚とかそういう話を話題にしだしたのは俺だけど、今日は霊夢のアピールが激しい。というかこんなの初めてなんですけど。そろそろ思春期だから恋愛に興味を持つのはおかしいことじゃないけど、流石に身内同士で関係を完結させないでほしい。

 

「そんな訳ないじゃない。ただの保険としての話よ。むしろ第二、第三案と言ったところかしら、独身、結婚、白鹿、くらいの順番で。…………ご馳走様でした」

「お粗末様。せめて第一案に結婚を持ってきてほしいものだな。じゃあ皿洗いしてくる。霊夢は今日の予定は?」

「特にないわ。魔理沙に誘われたらどこか行くかもだけど、それまで境内の掃除でもしとくわ。お兄ちゃんは?」

「寺子屋で授業。この前の宴会で先生に手伝ってもらったからな。そのお礼に行ってくる。多分昼も戻ってこれないかもしれないから、申し訳ないけど昼は適当に済ませてくれ」

「わかったわ。夕飯までには戻ってこれるのね?」

「どうかな。日の傾き次第では稗田の御当主にこの前の異変について報告しておこうと思ってるからな。あんまり遅くなるようだったら、夜も作って食ってくれ」

「夜は妖怪が活発になるんだから、夕方には迎えに行くわ。それで夕飯は作って頂戴」

「了解」

 

互いの予定を確認したので、立ち上がって皿を洗いに行く。

 

さて、今日も一日頑張るZOY!

 

 




いつも感想、誤字報告ありがとうございます。励みになってます。

朝食食べて喋って終わり、という本当に何もない回でしたwww
春節異変の章までは多分こんな感じで進んでいくと思います……。

あと気づいたらお気に入り件数が千件突破してました。多くの読者の方々に読んでいただき誠にありがとうございます。これからも精一杯頑張っていきたいと思います。

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