霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お待たせしました!今回もあんまり話が進まない………。

完全にスランプになりました。まったく文字が進まない(; ω;)


第19話

霧雨店では買う物はなく、もし買ったとしても魔理沙にどこに行ってたのか気付かれるので、お札を卸す量だけ確認して、本来買う予定であった食材を買っていく。顔馴染みの店ばかりなので幾らかまけてもらいながら、買い物を終わらせていく。人里自体そこまで広いという訳ではないので、大体30分くらいで予定していた物以上の物を買うことができた。途中で知り合いにも何人も会い、同年代の子どもたちも俺と同じく家業の手伝いをしているらしく、どこも変わらないな、と思いつつ団子屋にたどり着いた。どうやら魔理沙も用事を済ませたようだ。美味しそうに団子を頬張っており、わきには団子の串が何本もあることから多少の時間をここで過ごしたことが窺える。

 

「おお、やっと来たか。待ちくたびれて胃の中が餡子で埋め尽くされるところだったぜ!」

「まるまる太って、団子みたい、とか言いたいのか?そのまま肥え太って箒に乗れなくなってしまえ」

「そうしたら、送迎できなくなるぜ?」

 

その減らず口、お前が食い散らかしたあとのこの団子の串で縫い合わせてやろうか。

 

「魔女稼業もお終いだな」

「なら、痩せて元通りだぜ」

「お前俺が渡した金で足りるんだろうな?もう渡せる余裕ないぞ」

「話を変えやがったな。まあいいけど。本当に無理なのか?ここは男の甲斐性の見せ所だと思うぜ?」

「ならお前はもう少し女性らしくしおらしくしたらどうだ」

「嫌ですわ。(わたくし)いつも礼節を弁えていましてよ?…………ダメだ、気持ち悪いぜ」

 

急にしおらしくなったかと思えば、すぐにやめてしまった。魔理沙は元はといえ、それなりに大きな家の、それなりの身分の出身だ。それ相応の作法は身についていると思ったが、魔理沙自身の性格にははまらなかったようだ。さも自身が普通の魔法使いだとでも言うように、舌を出して気持ち悪そうにしている。魔理沙の性格はしおらしいというより、真反対の厚かましい性格だ。こんな反応するのも無理はない。

 

他愛もない口喧嘩をしていると、どんどん辺りが暗くなっていく。さっきまで雲一つなく晴れていた空が分厚い雲で覆われ始めたのだ。しかもその雲は赤く、誰が見ても普通ではないと嫌でも理解させられる。さらに、異様な速さで広がっていく雲に誰もが戦慄する中、魔理沙はニヤリと不敵に笑い傍に立てかけていた箒に跨り、自信満々にこう言った。

 

「白鹿!これ、異変だろ?」

「…………ああ、そうだな。赤い雲なんて普通じゃない、異変の可能性は高い」

「だよな!だったらこの異変、私が霊夢より早く解決してやるぜ!」

 

返事を待たずして魔理沙がどこかへ飛んで行ったが、本来こういった幻想郷に損害を伴う場合、博麗の巫女が原因究明に動き、解決することが習わしとなっているのだが、ここ最近あったある出来事によって、スペルカードというルールが制定され、魔理沙のような人物でも解決することができるようになった。

 

だがそれで安全になったわけではなく、怪我をしてしまうかもしれない。いや、怪我をする可能性の方が圧倒的に高いのだ。もしかしたらそういった様々なデメリットに気が付いていないだけなのかもしれないが、魔理沙は独学で魔法を扱えるようになった人物だ。そういったことはないだろう。

 

「おい、白鹿」

 

魔理沙について心配していると、団子屋の店主が声をかけてきた。その厳つい顔とごつごつとした手で、どうやってこんな繊細な味の団子を作ってるかは不明だが、こうった事態だ。不安にでもなったのだろう。博麗神社の窓口役としてちゃんと対応しようじゃないか。

 

「どうしたんです?もしかして異変が解決されるか不安なんですか?問題ありません。うちの巫女ならちゃんと解決してみせますよ」

「違えよ。勘定しろ。そこにいた餓鬼の連れだろ?そいつが食った分を払えって言ってんだ」

 

直視し難い現実がそこにはあった。あのアマ、食い逃げしやがった。

 

「…………分かりました」

 

先程魔理沙にはもうお金はないといったが、あれは嘘だ。ある程度は残ってるので出しておく。幻想郷に定価なんてないからな。今日安かった物が、次に来たときには高くなってたりとかよくあるし、逆に安くなったりと、物の値段が安定することは短期間でしかあり得ない。

 

「おう、出してもらえりゃあ問題ねえ。俺もカミさんにどやされずに済む。ついでになんぼか食ってくか?少しくらいならまけとくぜ?」

「ありがたい申し出ですけど遠慮しておきます。霊夢が働いてるのに俺が遊んでるわけにはいかないですから」

「ちっ、多少は売上を伸ばしたかったんだが」

「舌打ちしないで下さいよ。聞こえてますよ」

 

甘味所は少ないから儲かってると思うんだけど、そうじゃないのか?売上高が伸びるだけ嬉しくなるのかもしれないけど。

 

「売上伸ばしたいなら、30本持ち帰りしてもいいですか?」

「お前のところ二人だろ?どんだけ食うんだよ」

「あー、そういう訳じゃなくてですね。明日、いや明後日かな?異変が終わったら宴会を開く予定なのでそれ用です。多分この異変は今日中に解決されるでしょうから」

「そういうことなら了解だ。準備しといてやる。金はどうする?今払うか?」

「流石に手持ちがないですからまた後日受け渡しの時にお願いします」

「承った。箱で用意しておいてやるから頑張れよ」

「ありがとうございます。それじゃあそろそろ行きますね」

「おう!頑張ってこい。何するかは知らねえが」

 

団子屋を出て、神社へと帰りながらこの後のやることを考える。原作頼りだが、異変が解決した後は毎回のごとく、宴会が開かれていたはず。ならばその準備を今からでも進めておかなければ、当日の準備だけでは間に合わないだろう。食材も今日買ったものだけでは足りないし、今日はもう本当にお金がない。すぐにでも帰って宴会の準備を始めなくては。

 

考え事をしながら歩いたせいか、いつの間にか周囲がまっくろな空間にいた。

 

「ようこそ、妖怪の腹の中へ」

 

現れたのはこの空間の主。大体の神隠しの原因はこの人と言われている八雲紫だった。名前同様紫色の、体のラインがよくわかるマーメイドドレスをアレンジしたような服装から、体型はちゃんと維持されているようだ。

 

「どうしたんですか?俺、忙しいんですけど」

「あら、昔みたいに『紫母さん』とは呼んでくれないの?」

 

確かに昔はそう呼んでいたが、こういう態度をとるように言ったのは貴方の方だろう。

 

『博麗の姓の者は調停役として、人と(あやかし)のどちらの味方に付くことも許されない。中立の立場としてその役目をこなさなければならない。貴方や巫女は人間だから、その生活を円滑に送るために人との繋がりを持つこと。人々に不信感を与えないために妖怪とはなるべく離れておくこと』

 

「ここには誰もいないしいいじゃない?」

「ダメです。たとえ誰も見ていなくても俺の立場でそれは許されません。諦めてください」

「いけずー」

「……年末前にはそっちに顔を出すのでそれで許してください」

「しょうがないわねぇ」

 

年末は初詣の準備やら大掃除やらで大忙しになるから、それよりも前に帰るようにしたが本当に問題ないのだろうか。冬になるとこの人は冬眠するみたいによく寝てるから、同じ家にいながら顔を合わせないことがあるかもしれない。

 

「それで、何の用?ただお喋るするためだけに、連れてきた訳じゃないんでしょ?」

「よく分かってるわね。実は霊夢が異変解決に動いてるの」

「でしょうね」

「その霊夢のあとを追ってほしいの」

 

どうやら未だにこの大妖怪は俺を殺す機会をうかがっていたらしい。

 




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