今回はスマホからの投稿なので、もしかしたらいつも以上におかしい所があるかもしれません。
ではどうぞ!
「俺、ここに住むわ」
家族以外を交えた楽しい食事は、俺の突然の一言によって凍りついた。
「あら本当に?嬉しいわ」
「え?どうしたの急に!?もしかして、私達と一緒に暮らすことが嫌になったのかしら!?」
「今日のことで、とうとう愛想が尽きたのか!?」
博麗の巫女が言葉通りに喜んでいる反面、慌てる母さんたちに言葉が足りなかったことを察して、俺も慌てて言葉を足していく。
「ちがうちがう!別に母さんたちが嫌いになった訳じゃないよ」
「じゃあ、どういうわけかしら?」
比較的落ち着いたゆかり母さんが聞いてくるが、藍お母さんは慌てたままだ。どうやらお酒をしこたま飲んだようで、一升瓶がそこいらに転がっている。おそらく日頃のストレスから多量にアルコールを摂取して、さらに先程の拷問で体力を消耗し、酔いがまわったのだろう。俺と霊夢が食事に夢中になっている間に、大人組は酒盛りを始めて、その中で立場の低い藍お母さんが飲まされて、酔っ払ったのだろう。今もロクデナシ夫に縋り付く苦労妻みたく、俺に抱き付いておいおい泣くので、頭を優しく撫でてあげながら紫母さんに説明する。
「母さん、あの凄惨な台所を見て、この博麗神社での食生活、どんな感じだと思う?」
「酷いわね」
「ヒドイわ」
紫母さんが俺の質問に即答したことに対して、博麗の巫女が何か言っているが、知ったことではない。言われたくないのであれば、今すぐにでも台所を綺麗にして、食生活を改めるべきだ。
「そう、酷い。客観的に見て、この人の食生活は文化人にあるまじきもの。調理法なんて直火焼きのほぼ一択。生活していく上での基礎、衣食住の内、衣と住はちゃんと確保されているのに、食だけが抜け落ちているアンバランス。5世紀前の人間でももう少しまともな食生活を送っていただろうね。それに生活の乱れは心の乱れ、とも言うでしょ?聖職者として精神は統一されるべきものだし、一応、俺の役職は博麗の巫女の補佐だったはず。なら、博麗の巫女が万事に万全の状態で挑めるように補助していくのも俺の役目とも言えるんじゃない?」
「そうね」
短く俺の言葉を肯定してくれる紫母さん。しかし、直後に様子が一変した。
「でもそれは次代の巫女、霊夢の補佐よ。決して今代の巫女の補佐ではないわ。それは理解しているのかしら?」
いつもの母親としての優しい顔ではなく、幻想郷の管理者として、大妖怪としての八雲紫の顔を、覗かせる。今下手に「紫母さん」なんて呼べば喰われそうな、そんな真剣な表情だ。
「…………理解……してる」
一言言うだけなのに、あまりのプレッシャーで肺が潰れそうだと錯覚する。
「理解しているのなら、何故そんな言葉が出てくるのかしら?」
「食生活は健康に関わる重要な要因だから!」
「「え?」」
なんとか言った俺の言葉にまたも場の雰囲気が凍る。俺としては、なんでみんながこんな事に気付かないのか、はたはた疑問なのだが?
「だってこの人、肉中心の食生活を送ってそうなんだもん!どう考えても健康に悪そうじゃん!こんなお肉ばっかり食べてたら、絶対早死しちゃうよ?」
「……そうなの?」
「私達妖怪に聞かないで、専門外よ……」
いやいや、紫母さんにも関係あるんだよ。
「母さん、今まで俺と藍お母さんのご飯食べてて気付かなかったの?全体的に野菜の量も品目も多めにして、ご飯だって五目ご飯とか色々工夫して、炭水化物少なめにして、脂肪になりにくくしてたのに」
「そうだったの?」
気付いてなかったのかよ。こっちは必死こいて自分のレパートリーの中から毎日品目がかぶらないようにしながら、栄養バランスもある程度考えて作ってるのに。
「そうだったんです。栄養をちゃんとバランス良く摂ることでお肌のハリも良くなるんだから!女性として知っておいた方が良いよ」
「「知らなかったわ……」」
まあ、現代の知識だからね。でも藍お母さんは直感でそう言う事に気が付いてるから、もしかしたら幻想郷でも知ってる人はそれなりにいるのかもしれない。
「ともかく!日頃良く動いてるようで、健康だと思いがちな巫女さん!このまま偏った食生活を送っていると、早くて数年で病に倒れるかもしれないです!もしも、普段忙しくて手が回らないのなら、俺が補助します。なのでここに住まわせてください。お願いします」
「なんで最後で及び腰になってるのよ。さっきまでかなり強気だったのに」
言いながら、これってプロポーズみたいだなと思ったからです。内容は家政婦としてここで働かせてくださいってものなんだけどね。台詞だけ抜き取ったら、押しかけ妻みたいだし。
「世間様とズレてるのよ、この子。察して上げて」
「貴女達に育てられれば、ズレるのは確定事項みたいなものね」
やめて、俺を可哀想な子みたいに見ないで。だいぶ心にダメージがくるので。世間とズレているのはしかたない事なんです。3歳の頃から家事と育児を任されれば、忙しさで子どもの演技をする余裕なんて、俺の容量にはなかったのだ。
「おにーちゃん、ここにすむの?」
今まで黙っていた霊夢が俺に問いかける。俺たちの会話から俺が引っ越すことを理解したのだろう。目尻が下がって今にも泣きそうだ。でもここで嘘をついてもすぐにバレる程度には霊夢も直感が冴えているので嘘はつけない。
「うん。今のところその予定。この巫女さんご飯だけサバイバルしてる野蛮人だから、ほっとくと危ないから、お兄ちゃんが見てないといけないんだ」
「ヤダ!おにーちゃんは、わたしといっしょにくらすの!」
怒りながら縋り付いてくる霊夢を見て、自分の事ながら懐かれてるなぁと、しみじみ思う。嬉しさが赤い液体になって鼻から出そうだわ。
「ならいっそのこと、2人ともここに住めば良いじゃない?この子の修練見るのは私だし、一緒に生活できるのは何かと便利だし」
「待って!私の癒しを持ってかないで!白鹿、私と一緒にいれば、どこへだってすぐに行けるわよ!?冥界だってすぐだし、人里にだって簡単に行けるわよ!?」
「いや、でもスキマってなんか気味悪いからあんまり好きじゃなくて……」
紫母さんはその場に崩れ落ちた。大丈夫、紫母さんのことはしっかり好きだから。だからいじけないで。両手は霊夢と藍お母さんを撫でてるから離せないけど、ちゃんと紫母さんも好きだから。
「そういえば、巫女さんのことはなんとか呼びましょうか?」
「んーそうね、お姉ちゃんって呼んでくれてもいいわよ?あ、霊夢は師匠ね。お母さんも可」
「合点です、姐御ォ!」
「わたしのおかーさんはおにーちゃんだけよ、あねご」
次回はいっきに話が飛ぶ予定です。
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