オーバーウォーズ   作:フュラーリ
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4. 白銀の騎士 in HALO-4

『......ち、たっち...目を覚ましてください』

 ...う、うん...視界がぼやけている。たしかハンターに追われて突き落とされたような...

「おい! 休憩は終わりだ」
 寝た子をたたき起こす口調で言うウルベルト。

「おっ、ようやくお目覚めか」

 2人も勢ぞろいしている。目覚めたのは自分が最後か...

『見失った直後の情報と基地の見取り図を照合しました。通風孔を使ったと推測しましたがその通りでした』

 シェラからの通信も正常で現在地を教えてもらった。突き落とされたのは使い道が無くなって放棄された区画。軍事施設特有の似たような光景がひたすら続いていて位置を見失いやすい。落とされた時は暗闇だった周りも、自分たちに反応して自動で照明が点灯したので視界は良好だ。
 クリアまであと少し。次の目的に向かう。



    *********



 指示に従い地下の原子炉制御室についた3人。自爆プログラムはここからではなく原子炉を直接操作する必要がある。ここから通風孔を伝って行ける。だが...

「ハンターから逃げる時もそうだったけど、人が通れる通風孔っておかしくないか? 」
『仕様です』

「原子炉が何で自爆できるんだ? 」
『仕様です』

「近づいて大丈夫なの? 放射線は? 」
『仕様ですから問題ありません』

 仕様って何の? さっきからシェラが妙に冷たい。このままだとらちが明かないのでその穴に身を滑り込ませる。先ほどと同様に暗くて狭い。だが進む分には問題なさそうだ......んっ? 自分らって異業種で人より大きいはずだよな。ぺロロンチーノは翼を背負っているし...

『急いでください、味方の部隊が接近中です。原子炉はそこからそう遠くありません』

 疑問が浮かんだものの催促されて忘れてしまった。う~思い出せない。まあいいか。

 

 通風孔を抜け原子炉と御対面する一行。基地の地下にこんな物騒なものがあるとは...運営は何を考えているんだ?
 ツッコミを胸に秘め、原子炉横にある制御端末のボタンを押下すると

 ---自爆プログラム作動---動作終了までしばらくお待ちください---

 液体が排出される音が響き、重々しく制御棒が抜かれる......う~ん、妙に凝ったギミックで動いている。さてはせっかく作ったからプレイヤーに見せようとしたな。

 ”冷却システム停止---圧力上昇---温度上昇---”
 ”---中性子数増大---危険域に到達---”

 ”原子炉緊急停止シーケンス作動---エラー---”
 ”原子炉緊急停止シーケンス作動---エラー---”

 ”緊急冷却システム作動不能---再起動---失敗-----”

 ”冷却材の流出を確認---冷却不能---圧力・温度なおも上昇中--”


 さっきからヤバそうな放送とアラームが響いている。自爆プログラムってなんのギャグかと思っていたが、この一連の流れはヤバい気がする......動作音が段々大きくなっていく。心なしか振動もあるような...今にも爆発しそうで体は逃げろと訴えている。

 ---自爆シークエンス実行。直ちに避難してください---

 操作した端末から発せられる機械音声が作動したことを告げる。警告を促す放送と一致していない。システムは別なのだろう。




 ジャーナル---脱出せよ---




 原子炉制御室に戻ると設置されているモニターの様子がさっきと違う。文字と何か施設のような映像が表示されている。

「増援要請!? 他のコヴナント基地に連絡されている。増援を乗せたファントムが来るぞ」
 モニターの前にいき、表示されているものを読み上げるウルベルト。

 いつの間に連絡されていた!? 通報してくる敵は全て始末したはずだ。

『ゼロットには気づかれてないですよね? 』

「大丈夫だ。演説の最中だった」

『ハンターは? 』

「ハンターに通報する知性はない」

『...戦闘中の印象はそうでしょうが、エリートと意思疎通ができます。なぜ演説に遅れたのか問いただしたはずですよ、ハンターに』

 なっ!! 初耳だぞ! シェラの指摘は衝撃的で言葉に出ない。

『ゼロットがもし不審に思っていたとしたら......情報を統合して<侵入者がいる>と判断したかもしれません。もしあの時仕留めたとしても、ハンターの個体は少ないため欠けたらすぐに気づかれます』

 意思疎通が出来るだと! 慌ててモンスター図鑑を確認するが、そんな事は書いていない。

『図鑑はあくまで著者が知っている事が書かれているだけです。現実の図鑑だって昔と今とでは違いますよね。情報は更新されるものです。事実とは限りません』

 ゲームだと後付け設定の口実でしょうけどね。シェラは口にださず独り言で補足する。

 シェラの即席講義を終え通信を終了する。納得はしたがなにかが引っかかる。今の話はどこかおかしい。情報が正しいとは限らない。その通りだが......



「妙な話だったな」
 ウルベルトが疑問を口にする。

「ああ」

「シェラはなぜハンターが意思疎通できることを知っているんだ? 図鑑が間違いだと指摘できる知識はどこから得たんだ? おかしすぎる」

 3人は黙り込む。沈黙が辺りを支配する。

「後で問い質さないといけない事が増えたな」



    *********



「うわーー!! 爆発するーー逃げろーー!!! 」
「おがーちゃーーーん!!! 助けてーーー!! 」
 放送を聞いていたのか、通路にいるグラント達が右往左往している。こちらの姿を見てもそれどころではないのか攻撃してこない。

 慌てふためいているグラントは脅威になりえない。無視して脱出路に急ぐ。


『......通信状態不良。こちらシェラ......応答してください。繰り返します、応答してください...』
 酷く不鮮明な声が聞こえる。何度も繰り返されたことでようやく聞き取れた。通信状態が悪化している。それだけではない、原子炉が暴走を始めたことで、壁にセットされているガイガーカウンターの値が大きくなっていく。放射線が漏れている。

「大気の状態が変だ。たぶんそれが原因で通信状態が悪いんだ」

『原子炉容器が溶けて放射線が漏洩しているはずです。自爆プログラムでは隔壁は閉じません。そこは危険です、直ちに脱出してください』


 ”危険レベル上昇中---職員の方は速やかに避難してください”

 自分たちは異形種だから人間より耐えられるが、HPが徐々に下がっているのは事実だ。状態異常「被ばく」がさっきからついたり消えたりしている。クエスト強制なのかスキルの効果が効かない。ここにいるわけにはいかない。


「脱出ルートは? 」

『《ゲート》で回収しますが基地内は対策されていて繋げることができません。外に出て発炎筒でマークしてください。トリニティ所属の航空機が位置情報をこちらに送信後、繋げます』

「どれだけ離れればいい? 」

『予め回収ポイントをいくつか設定しておきました。しかし周辺に敵のいる状態だと《ゲート》の使用は許可されません』

 《ゲート》は空間をつなぐ転送装置のような魔法。自主規制とはいえ周辺の安全を確保しないと使えないのはネックだな。

『敵に見られたら、プラズマ砲やミサイルを撃ち込まれる恐れがあります。航空機や車両とは違い《ゲート》は装甲で耐えることも回避することもできません』

 見透かしたように言葉を続ける。わかっているさ。出入り自由のただの穴に過ぎないことを。

「くそっ視界が......」

 「被ばく」の効果にある「視力低下」か...眼のピントが合わない。今敵の襲撃にあったらひとたまりもない。そう思いフィールド情報でルートを確認しようとするが、画像がぼけていて判別できない。嘘だろ...ここまで作用するのか。ステータス画面もアイテム一覧もぼやけていて何も確認できない。
 危機感を演出するため、クエスト強制の状態異常やダメージは多い。HPが減るのはカウントダウンのようなものだ。

「たっち、しっかりしろ!! 」

 立ち眩みにも似た症状に襲われるが、時間が経つと収まった。「被ばく」はステータス画面から消えている。長いような短いような時間だった。





 回収地点に急ぐ3人。だがユグドラシルはそのままおめおめと脱出を許すほど甘くは無い。正面から幾重もの足音が聞こえてくる。偵察部隊か? くそ!!

「ンッ?...!!!...ポイント1-0-2敵侵入、増援要請急ゲ!!」

 エリートの集団!! グラント、ジャッカルもいる。職務に忠実なのも困りものだ。
 こちらの反応をよそにジャッカルが壁に備え付けられている警報器のボタンを押す。
 

 甲高い警報音がβ基地全体に響く。ついに気づかれてしまった。
 

 何重ものエンジン始動音。基地にいるレイス歩兵戦車かファントム降下艇...おそらく全機が起動したようだ。甲高い離陸音も聞こえてくる。
 基地の戦闘体制が整ってしまう。自爆装置は作動し長居は無用。その前に脱出しなければ!!

「シェラ! 敵に気づかれた。回収ポイントの座標を至急送ってくれ」
 ザァァ...ザァァ...何度も呼びかけるものの雑音しかしない。

「ジャミング!? くそっ! 」
 忘れていた。β基地には妨害装置がある。警報で動いた敵が作動させたんだ......しまった、脱出ルートが分からない。電波塔はここから遠すぎる。通信を回復させるのは無理だ。
 フィールド情報には何も表示されてない。自力で何とかするしかない。

「敵数ハ3人! 全員ガ異形種で武装シテイル。ファントム降下艇ヲコチラニ回セ。防衛システムヲ作動サセロ!!」

 敵部隊はこちらに攻撃を加えず物陰に隠れ指示を飛ばしている。交戦より連絡を優先する冷静な対応だ。兵士ルーチンは厄介すぎる。

「エナジーシールド所持者ハ全員シールドヲ展開!! 」

「了解! 」ヴゥゥン...物陰に隠れたエリート達の全身が一瞬光るのがここからでもわかる。
 エナジーシールドは主にエリートが装備する防御兵器。ダメージを吸収するシールドを全身に張り巡らせる。こちらからの攻撃はシールドに対する攻撃と見なされるのか、ヘッドショットも急所攻撃扱いにならない。知り合いのプレイヤーが言うには、専用のシールドゲージが表示されダメージを受けるごとに減っていくとの事。0になると強制解除され本体に直接ダメージが与えられるようになるが、ダメージを受けずに一定の時間が過ぎるとリチャージされ再度使えるようになる。これを展開した敵を倒すには、休まず攻撃を続けるしか無い。
 これまでは戦闘態勢ではなかったため使われていなかったが、以降は全エリートが使ってくる。一撃で葬るのは不可能になってしまった。


 ---システムオンライン---動体反応感知---セントリーガン---発砲開始---

 先ほどから見かける通路に設置されたセントリーガン(自動機関銃)は基地防衛システムの1つである。そして今はコヴナント軍の忠実なシモベとなり果てたセントリーガンが3人に銃撃を浴びせる。
 
 咄嗟に散開して自分とぺロロンチーノは同一方向に回避することができた。だが位置が悪かったのかウルベルトは反対側に逃げてしまった。

「ウルベルト!包囲されているぞ」
 物陰から隠れていた敵が、孤立したウルベルトをあっという間に囲う。

「畜生!! 援護してくれ」

 取り囲んだエリートが、グラントが、ジャッカルがそれぞれ自分の獲物で銃撃を浴びせ、ウルベルトの体に弾が吸い込まれていく。HPがみるみる下がり大きく膝をつくウルベルト。
 エリートの嘲笑が室内に反響する。


「おのれ!! 」

「狙ワレテイルゾ。散開!!」
 ぺロロンチーノが援護するが、エリートの合図で包囲していた敵が散り矢が空しく宙を舞う。敵ながら動きがいい。

「増援部隊ト合流シ反撃二移ル。各隊後退!!」

 撤収するのか!? 被害を最小限に抑え、こちらをしとめるつもりか!!......合流前に倒す!
 ぺロロンチーノが追撃しようとするたっちを引き留める。視線の先には被弾したウルベルトがいる...

「...分かったよ。追撃はしない」

 回復アイテムを使いウルベルトを治療する。

「くそっ、あいつら、魔法職を優先して叩こうとした」

 回復したウルベルトが独り言ちる。セントリーガンのせいだが魔法職を真っ先に狙うとは...
 そのセントリーガンは銃身を空しく動かしている。弾が切れたのか発砲してこない。

 嵐の前の静けさだが、敵の襲撃がやんだのは幸いだった。ぐずぐずしていたら敵が殺到する。すぐにこの場を離れる。




    *********




「たっち、β基地のペリカンはまだ無事だぞ」

 指令室で基地情報にアクセスしていたウルベルトが叫ぶ。発着場にいる1機のペリカンが飛行可能な状態で放棄されている。

「冗談だろ? 離陸音が聞こえなかったのか」

「基地周辺は制圧されている。空から脱出するしかない」

 確かにβ基地には対空砲の備えが乏しく撃ち落とされる危険は低い。だがバンシー地上支援機とファントム降下艇がやっかいだ。何とか離陸できるか?

「さっきから探知魔法が発動しない。この妨害は通信だけじゃない。元のルートは危険だ」

「たっち急いでくれ。それ以前に走っても逃げられない。爆発まであと僅かだぞ」

 2人が各々主張する。

 警報音がなり続けているβ基地。他に選択肢はなく施設から出て発着場へ向かう。障害物は多く隠れるのに不自由はしないが、敵に何度か見つかり交戦した。臨戦態勢となったコヴナントは手強く、回復アイテムをかなり使ってしまった。



 野外にある発着場につくとバンシー、ファントムの周辺には歩哨が多かったが、幸いペリカン周辺には敵はいなかった。
 駐機してあるペリカンの横にある端末を操作する。セキュリティはかかっていないようだ。


 ----発進準備----エンジン始動開始---安定スルマデシバラク待チクダサイ---

 ペリカンのエンジンが息を吹き返したかのように轟音が響き発着場を満たす……だがまだ脱出できない。


「敵増援発見! 」

「発進準備が整うまでここを死守する」

 エンジン音を聞きつけ敵が集まってくる。グラント、エリート、ジャッカル、20は下らない数だ。それに……ハンター!? 不味い、回復アイテムが残り僅かだ。正面が重装甲な一方で背中が無防備なのは分かっているが取り巻きが多すぎて近づけない。あと当然だが敵が目の前にいるのに背を向けたりはしない。無傷で奴らを切り崩せるか?

 コンテナ、建物と位置を変えながら高台に陣取り、弓で援護するペロロンチーノ。
 散開した敵に対して的確に矢を当てていく。狙われたら空を飛び位置を変える。
 バードマンならではの戦い方。だがこの戦い方のみではグラント、ジャッカルはともかくエリートのシールドは貫けない。エリートの持つシールドは時間とともに回復する。一撃離脱ではシールドの回復する時間を与えてしまう。
 
 んっ? エリートの数が合わない?


 胸騒ぎがしてぺロロンチーノを見ると...後ろに光? エナジーソードの発光か!!

「ぺロロン、後方に敵! 」

「何っ!? 」

 咄嗟に狙撃を中止して接近していたエリートと向き合う。弓を叩きつけようと持ちかえるが左手で押さえつけられる。そして

「クタバレ! プレイヤー!!! 」
 右手に持つエナジーソードがぺロロンチーノの腹を貫く。

「がぁぁぁぁ痛い痛い………痛くないけど、クソッ!! 」
 ユグドラシルに痛覚はないが貫かれる様は痛々しい。時々痛覚は実装されているんじゃないかと思う事がある。


 ウルベルトの火球がぺロロンチーノを攻撃しているエリートに命中する。衝撃でエリートがよろける隙に、ペロロンは突き刺さっているエナジーソードを引き抜き距離を取る。


「くたばるのはお前だ、エリート!! 」
 ウルベルトがマジックミサイルを連射する。

「グァァァァァァァ!!! 」
 シールドが回復する暇もない斉射を浴びせ消滅するエリート。

「エリート排除完了。ぺロロンすぐ回復を...!! 」

 会話の途中で甲高い銃声がしてウルベルトが仰け反る。
 ジャッカルによる狙撃か。あんな距離から狙えるのか。

 体勢を立て直したぺロロンチーノが矢ですぐさまジャッカルを貫く。

「これでおあいこだ」

「やれやれ」

 自身が対峙していたハンターのもつアサルトキャノンの銃口が自分から離れた。軸線にいるのは……ウルベルト!?
 敵の注意をひきつけ、且つグラントを切り裂きながら注意をメンバーにむけるのはさすがワールドの称号を持つ男たっち・みーである。

「その場から離れろ! 」

「うおっ!!! 」

 ほとんど条件反射でその場から離れるウルベルト。直後に着弾の衝撃がきて、さっきまでいた足場がぐずぐずになって崩壊する。

「あと一歩遅かったら危なかった」


 すぐにアイテムで回復するウルベルト。このメンバーでは回復魔法は使えないが、こうも激しいと詠唱している暇がない。

 敵の数は徐々に減っていき、ウルベルトが魔法を、ぺロロンチーノが矢を放ちハンターに集中砲火を浴びせる。
 正面の重装甲で耐えているが、衝撃でたまらず後退するハンター。しめた! 周辺に気を配る余裕がなくなっている。
 すぐさま障害物に身を隠しながらハンターの背後に回り込む。そして

「!! ....ギィィィヤヤヤヤーーー!!! 」

 背中の装甲に覆われていない箇所に剣を突き立て、力尽きたハンターの巨体が地面に倒れこむ。


「ハンター排除完了。残りは一体だ」

 ハンターは2体で1組だ。相棒が倒されたせいで怒り狂ってアサルトキャノンを連発している…だが取り巻きのいなくなったハンターは敵ではない。

「ギィィィヤヤヤヤーーー!!! 」
 ぺロロンチーノの狙撃で背中を撃たれ倒れこむハンター。
 

「敵影無し。一帯を制圧」


 ----発進準備完了---直チニ離陸シテクダサイ----

 機械音声がペリカンの準備が整ったことを告げる。



「ウルベルト、ぺロロン、ペリカンに乗れ。ここを脱出する」
 
 2人が乗り込むのを確認し、たっちは最後に乗り込み急ぎハッチをしめる。
 すぐさまコクピットに駆け込み離陸準備を整える......くそっ上空にバンシー、ファントムが無数にいる。これでは離陸直後に撃墜されてしまう。
 

 歯噛みして空を睨んでいると閃光と共に爆発音が聞こえてくる。何が起きている?







「こちら00セクション、β基地上空に到達。ずいぶん苦戦しているようじゃないか、たっち」

 上空に戦闘機が多数、聞き覚えのある声、味方か!?


『通信回復。トリニティの航空部隊が到着。空への道は問題ありません、直ちに脱出を』

 α基地にいるシェラから通信が入った。航空攻撃で電波塔を破壊したのか。
 味方機と敵機がすれ違い片方が墜ちていく。空という空を飛び交い翼端から鋭く飛行機雲を描いている。無数の爆発音、甲高いエンジン音が空を支配する。戦場という世界。ヒーローのいない世界。敵も味方も死は平等に訪れる......運営さん、ちょっと世界が違いすぎますよ。

 狙いを外したミサイルが発着場に着弾する。爆発の衝撃でペリカンが揺れ、破片がキャノピーに降り注ぐ。近い、近いって!!
 若干パニックになったが、低空飛行でレイスを攻撃中のユニコーンエンブレムの機体を見たら怒りで見事に収まった。


「重役出勤だな。遅刻という概念はないのか? 」

「少数で侵入したお前らのヘマをこっちに押し付けるな。何機かはこれから発進するペリカンを護衛しろ。他は銭勘定しながら勝手にやれ!! 」

 ああ言えばこう言う。いつものことながら一癖も二癖もある連中だ。


「こちらブルーセクション、パーティ会場はここかい? ドラ猫の性能テストたぜ。上は見なくていいぜ」

『お役にたてて光栄です』


 離陸開始。口は悪いが腕は立つトリニティを信じよう。
 スロットルレバーを使いエンジンの回転を上げると発着場の床が震え始める。

「さあ、行くぞ!! 」

 ペリカンが浮上して発着場から離れ、エンジンが甲高い音で響く。さらに加速が加わり彼らの体は座席に押し付けられる。



「00セクションから基地へ、ペリカンの発進を確認。各機爆発に巻き込まれるぞ、急いで基地から離れろ!! 」

 全速で離れる味方機達。そのうち数機が護衛のため、たっち達を乗せたペリカンの周りを囲む。




 ---降下艇発進完了----ゴ武運ヲ-----


 

 半壊していたβ基地は炎に包まれた。だが炎に包まれながらも指令センターから発する無機質な声が、たっち達を見送っていた。