「タルタルソースってあるじゃん。」
「どうしたクウェンサー、エビフライでも食べたくなったか?」
「タルタルソースってどんなやつだ?」
夕焼けに染まるシギショアラの町、その一角のベンチに三人の人影があった。
「マヨネーズにみじん切りにしたピクルスとか茹で卵を混ぜたソースだ。それがどうしたんだ。」
「あれってエビフライとカキフライを食べる時にしか使う事無くない?」
「確かにな……。突然どうした?」
「あまりにも暇だったからね、ふと思いついた事を言っただけだよ。」
「そうか、セイバー、何か話題はないか?」
「エビフライか、食べてみてぇな。」
「食べたことないのか?」
「生前はそんなモン無かったし、何より食糧事情がな……。」
「ウチも消しゴムみたいなレーションばっかりだったな。」
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「しかしお前達、よく食うな……。」
呆れた様に言う獅子劫。彼は赤のセイバーのマスターとしてこの聖杯大戦に参加した魔術師である。
「オレの食事は趣味だよ。折角肉体があるんだからな。」
そう話す少女は赤のセイバー、手にスナック菓子の袋を抱えている。
「そうそう、食べれる時に食べておいた方がいいよ。」
「いつ倒されるかわからねぇからな。」
そう言いながら手に持ったホットドッグにかぶりつく二人、彼らは赤のアサシン、クウェンサーとヘイヴィアである。
彼らは魂食いを繰り返す黒のアサシンをおびき出す為、此処シギショアラに待機していた。
「そういえばアサシン、爆弾を仕掛けるとか言っていたが、それは終わったのか?」
ふと思い出したように獅子劫が聞く。
「大丈夫だ、もう完了している。」
「むしろ戦闘後に回収するのがめんどくさくなる様な数仕掛けたからな……。」
「一応何処に仕掛けたかは地図に記入しているけど、見えにくいようにしているしね。」
そう答えるクウェンサーとヘイヴィア。
「……。」
それを物言いたげに見つめるセイバー。
「どうした?何かあったか?」
「いや、何と言うか……。」
言いよどむセイバー。
「サーヴァントらしくない戦い方だと思ってな。」
「まあ、アサシンだし。仕方ないと思うよ。」
「生前はあくまでオブジェクトのサポートとして動く役割だったからな。」
「途中から何故か生身でオブジェクトと戦うハメになってたけどね……。」
「お、おぅ……。」
テンションが急降下していくクウェンサーとヘイヴィア、見兼ねた獅子劫が声をかける。
「そろそろ行くぞ。セイバー、鎧を身に付けておけ。」
「おう!出陣だ、マスター!」
立ち上がり、一瞬の内に鎧を装着する。
「お前達も、とっとと立ち上がってくれ。」
ベンチに座り、うな垂れるクウェンサーとヘイヴィアに言う。
「はぁ、行きたくねえな。」
「本当にね、めんどくさいにも程がある。」
それでも立ち上がらない二人に業を煮やしたのか、セイバーがツカツカと歩み寄った。
そして、ガッ!と首根っこをひっつかむ。
「いいから行くぞ!」
「グェ!もうちょっと優しく運んでくれよ……。」
「テメェは子供を運ぶ母猫か何かか!」
ピクリ、とセイバーの動きが止まる。
「母、か……。」
「あん?どうした?」
「いや、何でも無い。行くぞ。」
何でも無いように歩き出すセイバー。
「ったく、仕方無ぇな。」
「さて、それじゃあ。」
「「働きますか。」」
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シギショアラのある建物、その一室に二人の人影があった。
「また魔術師が来てくれたみたいだよ?」
「それじゃ、シギショアラでの最後の食事にする?」
「うん、そうしよ!」
「でもお母さん、今日は見に来ちゃダメ。サーヴァントがいるみたいだから。」
「わかった、ハンバーグ作って待ってるわね。」
「うん!」
部屋の中には、一人の女性だけが残った。
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「やっぱりゴーレムはいいな。命令に決して逆らわない!」
ミレニア城塞の地下空間、ゴーレムを生産する為に作られたそこに一人の少年がいた。
彼はロシェ・フレイン・ユグドミレニア。
黒のキャスター、アヴィケブロンのマスターである。
「それにしても、先生は凄いな。あれだけの図面からこんな物を作り出してしまうなんて!」
興奮した様子でまくし立てるロシェ。
「でも先生の宝具はもっともっと凄いんだろうな!早く見てみたいな!」
「この聖杯戦争に勝ち抜いて、僕は先生を受肉させる。そしてゴーレムの秘術を習うんだ!」
「最強のゴーレム、何にも負けないゴーレム、その為になら、サーヴァントだろうがマスターだろうが何人来ようとコレで打ち倒してやる!」
ふと、疑問に思う。
「そういえば、この図面を落として行ったのはどんなやつ何だろう?そのおかげでコレが造れたんだけど……。」
背後に目をやるロシェ、そこには、地下空間を埋め尽くすように、余りにも巨大な物体が鎮座していた。
全長は60m程だろうか、中心の50m程の球体状の構造物の右側には、10m以上の長さの砲が取り付けられている。また、球体表面には無数の砲がハリネズミのように据え付けられている。
それは一つの世界で最強を誇った
ブォン、と、その表面に青く発光するラインが無数に現れた。
さあ、
ありがとうございました。