「クウェンサー、頼まれていたものはこれで全部か?」
「いや、後洗剤を買ったら終わりだ。」
「ったく、サーヴァントをパシリに使うなよ。」
賭けに負けたため、 シギショアラの町へ買い出しに来たクウェンサーとヘイヴィア、買い物を終わらせる為、入店しようとするが、
「おう、久しぶりじゃねーか。」
そう言われて肩を掴まれた。
当然だが、未来から来た二人にはこの町に知り合いなどいるはずがない。
では、肩を掴んでいる、コイツは
警戒しながら、ゆっくりと振り向く。
そこには、見覚えのない少女が立っていた。
「よっ!久しぶりだな!」
「「いや、誰だお前!」」
二人のツッコミが朝のシギショアラに虚しく響いた……。
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シギショアラで発生した連続殺人事件。潜入した魔術協会の魔術師全員が殺害され、敵サーヴァントによる魂食いが行われた。
神秘の隠匿の為、魔術協会のロード・エルメロイ二世より赤のセイバーのマスターである獅子劫界離へ、対応が要請された。
「確かにそいつは、俺の仕事だ。」
そう言って電話を切り、頭の中でこれからのプランを構築し始める。
ある程度の目処がつき、自らのサーヴァントであるセイバーへと状況を説明しようと目を向けるが、
「どこ行ったんだ、あいつ……。」
猫と戯れていたはずのセイバーが影も形も見当たらない。
「(仕方ない、探しにいくか。)」
そう思い、席を立とうとした時。
「マスター、いいもん拾って来たぞ!」
「何処に行っていたんだ、お前。」
セイバーが帰ってきた。だが、
「何を持っているんだ?」
「へっへー、これはだな……。」
そう言って手に持っていたものを前に出す。それは、
「あれ、セイバーのマスターじゃん。」
「て事はこいつがセイバーかよ。」
首を後ろから掴まれて吊られたクウェンサーとヘイヴィアであった。
「アサシンか、何故こんな所に。」
「コトミネに備品の買い出しを頼まれてな。その途中でセイバーに捕まった。」
「そうか、うちのセイバーが済まないな。それといい加減に離してやれ。」
そうセイバーに言う。
「よっと、」
手を離され、地面に着地するクウェンサーとヘイヴィア。
「そういえば、さっきの電話は何だったんだ?」
「あー、そうだな。」
チラリとクウェンサーとヘイヴィアに目を向ける。
「俺達は聞かない方がいい話題か?」
「いや、大丈夫だ。むしろお前達にも手伝ってもらいたい。」
「「は?」」
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「と、言う訳だ。」
先程までの電話の内容を説明する獅子劫。
「つまりは、俺らにそのサーヴァントの撃破を協力しろと言う訳か?」
「そうだ、頼めないか?」
「そんなんに付き合ってられるか、ヘイヴィア、とっとと帰るぞ。」
「実際に敵とやり合うのはうちのセイバーだ。お前達には援護してくれるだけでいい。」
「絶対に嫌だ。給料の出ない仕事なんてしたくねぇ。」
「多少の報酬は出すぞ。」
それを聞いてピクッと反応するクウェンサーとヘイヴィア、彼らには現在どうしても欲しい物があった。
「話だけは聞いてやる。」
そう言って座り直すクウェンサーとヘイヴィア。
「手伝ってくれるのか?」
「ああ、だが先に報酬を払って貰いたい。」
場に緊張が走る。彼らは一体何を求めて来るのか。貴重な魔術触媒だろうか。はたまた令呪そのものと言う可能性も……。
セイバーが警戒を強める。そんな中、
「「じゃあ、エロ本で」」
「エロ本……。」
「EROHON?」
「エロ本?!」
驚愕する獅子劫とエロ本が何か良く解っていないセイバー。
「お前達そんな物でいいのか?もっとこう、魔術触媒とか、情報とか。」
「そんな物よりもエロ本だ‼」
「そうだ!こちとら見た目が未成年なせいで売ってもらえなかったんだよ!」
「お、おう、そうか。」
あまりの剣幕にたじろぐ獅子劫。
「なあ、マスター。」
「どうしたセイバー、お前までエロ本が欲しいとか言い出すんじゃないだろうな。」
「エロ本って何だ?」
「……。」
「何だよ。」
「お前は、その純粋なままでいてくれ……。」
「はあ?」
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「それじゃあ、ちょっとコトミネに連絡して来るよ。」
そう言って電話を手に離れるクウェンサー、残されたヘイヴィアにセイバーが話しかける。
「お前達は何処の英霊なんだ?」
「そういえば俺も気になっていた。小銃を出すわ着ている軍服は調べても何処の物がわからないわ、一体何処の英霊だ?」
「ああ、その話か。」
顎に手をやり、少し考える。
「まあ、特に話しても問題はないか……。」
ヘイヴィアが自分たちの真名について説明しているのを横目に、コトミネに電話をかけるクウェンサー。
コール音がなり、三回目で相手が電話に出た。
「もしもし、アサシンですか。帰るのが遅れているようですが何かありましたか?」
「ああ、それが……。」
かくかくしかじか。
獅子劫に説明された事を伝える。
「そうですか、分かりました。」
了承するコトミネ。
「ですが、明日の昼までには帰ってきてくださいね。」
「何かあるのか?」
「ええ、」
少し楽しそうに、コトミネは言う。
「黒の陣営の本拠地、ミレニア城塞へと攻撃を仕掛けますので。」
ありがとうございました。