ある教会の一室、その薄暗い部屋の中で三人の男が顔を付き合わせていた。
「いいのか?その選択で。本当に後悔はしないか?」
「ああ、テメェには、テメェにだけは勝たなきゃならねぇんだよ!」
そう啖呵を切る男。だが……。
「こんな暗い所で何をしているんですか?アサシンにライダーも。」
そう言って部屋の扉を開けて入って来た男、彼はシロウ・コトミネ。
この聖杯戦争の監督役であり、キャスターのマスターでもある。
「ああ、ババ抜きとか言うゲームだ、アンタもやるか?」
そう答えるのはライダーのサーヴァント、真名はアキレウス。ギリシャ神話の大英雄である。
「因みに俺はもう上がった。」
「貴方もやっていたのですか?しかし、何故アサシンの二人はこんなにも迫熱しているのでしょうか?」
「最下位には罰ゲームがあるからな。」
「罰ゲーム、ですか?」
「ああ、負けた奴には町で色々と買って来て貰う事になっている。食いもんとか酒とかな。」
「成る程、それであんなに迫熱しているわけですか。」
「まあ、あいつらからふっかけてきて負けてるのもどうかと思うがな……。」
そう話している間にもゲームは続き、残りの札はクウェンサーが二枚、ヘイヴィアが一枚となっていた。そして現在はヘイヴィアの番、つまり此処でヘイヴィアがジョーカーを引けばゲームは続行、違う方を引けば上がりとなる。
「おいクウェンサー、どっちがジョーカーだ?」
「そんなの答えるわけないじゃん、右がジョーカーかもしれないし、左かもしれない。」
「まあ、コッチだろうけどな。」
そう言って右の札を引くヘイヴィア、引いた札は、ジョーカーでは無い。つまり、クウェンサーの負けである。
「何で、何で解ったんだ?」
「テメェ生前からジョーカーを左手側に置く癖があっただろ。治ってなくて良かったぜ。」
「マジかー。そんな癖があったんだ。」
「つー事で、罰ゲームはテメェが行ってこい。」
「めんどくさいなぁ。」
そんな彼らに話しかけるコトミネ。
「少し、よろしいでしょうか。」
「あれ、コトミネ来てたんだ。あんたもババ抜きやるかい?」
「いえ、それは良いのですが。」
「どうした、出撃か?」
「そう言う訳では無いのですが……。」
そう言ってポケットからメモの様なものを取り出す。
「幾つか切らしてしまいそうな備品が有りまして、町に行くならついでに買って来てはくれないでしょうか。」
「うわ、結構量があるな、ヘイヴィア、車出してくれない?」
「結局俺も行くのかよ!勝ったのに!」
「すみませんが、よろしくお願いします。此方は少し用事が有りまして……。」
「わかったよ行けばいいんだろ行けば!」
「俺の酒も頼むぞ。」
「ライダーもか、了解だ。」
「暗くなる前に帰って来るんですよ。」
「そんな子供じゃないんだし、大丈夫だろ。」
「いつ敵のサーヴァントが襲って来るか分かりませんからね。」
「うっわ、思ったより物騒な理由だった。」
そう言って立ち上がるクウェンサーとヘイヴィア、
「それじゃ、行って来るわ。」
「気をつけて行くんですよ、それと、お釣りをちょろまかさないように。」
「分かってるよ。」
「いや、貴方たちこの間だいぶ誤魔化してましたよね。」
「いやー、聞こえないなー。」
そう言って部屋を出る。暫く歩いていると、ぽつりとヘイヴィアが口を開いた。
「クウェンサー、サーヴァントをパシリに使うマスターってどうなんだろうな。」
「まあ、サーヴァントって元々召使いとかそう言う意味じゃなかったっけ。」
「意味としては合ってるって訳か。」
「生前から俺達何でも屋として扱われている感じは有るけどな。」
そんな事を話しながら車に向かうクウェンサーとヘイヴィア、
「にしても、敵にはこの間の黒のランサーみたいなのが後七騎もいるんだろ。あんなバケモンが七騎もいるとか、考えたくもねぇよ。」
「まあ、コッチもバケモンが揃ってるしね。」
「俺ら以外な。」
「俺達も一応、サーヴァントの筈なんだけどな。」
「神話の大英雄と一兵卒を比べちゃダメだろ。それに、あいつらは一人一人がオブジェクトみたいな物だよ。」
「はあ、戦いたくねぇな。」
「本当にね。」
そう言って車に乗り込む。
何だかんだで、彼らは今日も通常運転であった。
ありがとうございました。