Fate/Object   作:あんぼいな

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遅くなりました。


かくれんぼには十秒数えろ シギショアラ夜間市街地戦Ⅰ

ある教会の一室、その薄暗い部屋の中で三人の男が顔を付き合わせていた。

「いいのか?その選択で。本当に後悔はしないか?」

「ああ、テメェには、テメェにだけは勝たなきゃならねぇんだよ!」

そう啖呵を切る男。だが……。

「こんな暗い所で何をしているんですか?アサシンにライダーも。」

そう言って部屋の扉を開けて入って来た男、彼はシロウ・コトミネ。

この聖杯戦争の監督役であり、キャスターのマスターでもある。

「ああ、ババ抜きとか言うゲームだ、アンタもやるか?」

そう答えるのはライダーのサーヴァント、真名はアキレウス。ギリシャ神話の大英雄である。

「因みに俺はもう上がった。」

「貴方もやっていたのですか?しかし、何故アサシンの二人はこんなにも迫熱しているのでしょうか?」

「最下位には罰ゲームがあるからな。」

「罰ゲーム、ですか?」

「ああ、負けた奴には町で色々と買って来て貰う事になっている。食いもんとか酒とかな。」

「成る程、それであんなに迫熱しているわけですか。」

「まあ、あいつらからふっかけてきて負けてるのもどうかと思うがな……。」

そう話している間にもゲームは続き、残りの札はクウェンサーが二枚、ヘイヴィアが一枚となっていた。そして現在はヘイヴィアの番、つまり此処でヘイヴィアがジョーカーを引けばゲームは続行、違う方を引けば上がりとなる。

「おいクウェンサー、どっちがジョーカーだ?」

「そんなの答えるわけないじゃん、右がジョーカーかもしれないし、左かもしれない。」

「まあ、コッチだろうけどな。」

そう言って右の札を引くヘイヴィア、引いた札は、ジョーカーでは無い。つまり、クウェンサーの負けである。

「何で、何で解ったんだ?」

「テメェ生前からジョーカーを左手側に置く癖があっただろ。治ってなくて良かったぜ。」

「マジかー。そんな癖があったんだ。」

「つー事で、罰ゲームはテメェが行ってこい。」

「めんどくさいなぁ。」

そんな彼らに話しかけるコトミネ。

「少し、よろしいでしょうか。」

「あれ、コトミネ来てたんだ。あんたもババ抜きやるかい?」

「いえ、それは良いのですが。」

「どうした、出撃か?」

「そう言う訳では無いのですが……。」

そう言ってポケットからメモの様なものを取り出す。

「幾つか切らしてしまいそうな備品が有りまして、町に行くならついでに買って来てはくれないでしょうか。」

「うわ、結構量があるな、ヘイヴィア、車出してくれない?」

「結局俺も行くのかよ!勝ったのに!」

「すみませんが、よろしくお願いします。此方は少し用事が有りまして……。」

「わかったよ行けばいいんだろ行けば!」

「俺の酒も頼むぞ。」

「ライダーもか、了解だ。」

「暗くなる前に帰って来るんですよ。」

「そんな子供じゃないんだし、大丈夫だろ。」

「いつ敵のサーヴァントが襲って来るか分かりませんからね。」

「うっわ、思ったより物騒な理由だった。」

そう言って立ち上がるクウェンサーとヘイヴィア、

「それじゃ、行って来るわ。」

「気をつけて行くんですよ、それと、お釣りをちょろまかさないように。」

「分かってるよ。」

「いや、貴方たちこの間だいぶ誤魔化してましたよね。」

「いやー、聞こえないなー。」

そう言って部屋を出る。暫く歩いていると、ぽつりとヘイヴィアが口を開いた。

「クウェンサー、サーヴァントをパシリに使うマスターってどうなんだろうな。」

「まあ、サーヴァントって元々召使いとかそう言う意味じゃなかったっけ。」

「意味としては合ってるって訳か。」

「生前から俺達何でも屋として扱われている感じは有るけどな。」

そんな事を話しながら車に向かうクウェンサーとヘイヴィア、

「にしても、敵にはこの間の黒のランサーみたいなのが後七騎もいるんだろ。あんなバケモンが七騎もいるとか、考えたくもねぇよ。」

「まあ、コッチもバケモンが揃ってるしね。」

「俺ら以外な。」

「俺達も一応、サーヴァントの筈なんだけどな。」

「神話の大英雄と一兵卒を比べちゃダメだろ。それに、あいつらは一人一人がオブジェクトみたいな物だよ。」

「はあ、戦いたくねぇな。」

「本当にね。」

そう言って車に乗り込む。

何だかんだで、彼らは今日も通常運転であった。




ありがとうございました。

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