Fate/Object   作:あんぼいな

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原作完結!!!
原作完結!!!!
原作完結!!!!!!


誰が蝙蝠を殺したか 空中庭園迎撃戦 I

 

 

 実際には、クウェンサー=バーボタージュとヘイヴィア=ウィンチェルがサーヴァントとして召喚される確率は限り無く低い。

 

 大前提として、彼らはこの時代よりも遥か未来に存在する()()()のある人物であり、またその未来、つまりは核の力が超大型兵器オブジェクトに根絶された未来が到来する可能性はゼロにほぼ等しいと言えるだろう。

 

 いわば数多に枝分かれした平行世界のさらに先。そのような位置に存在する彼らを召喚するには、余程の縁があったとしても小数点の後ろに無数の0が並び、気が遠くなるような後にようやく他の数字が現れるような確率を引き当てる事が必要である。

 

 つまりは確率論上では可能性はゼロではないが、実際に召喚する事は不可能であると断言できる。

 通常では召喚され得ない者が召喚される。それは、何らかのイレギュラーが発生したということに他ならない。

 

 

 

 

 

 

 彼等が挑んだ決戦、超大型兵器"オブジェクト"が産み出された地『島国』での、過去、因果、因縁との雌雄を決する、文字通り世界を救う為の戦い。

 

 それに彼らは間違いなく勝利した。

 

 オブジェクトの台頭により、一度はステンドグラスのようにバラバラに砕けた国々。

 それらは未だ傷を残しながらも再び1つの枠組みの下に集った。

 

 オブジェクトはその在り方を変え、戦争の形は大きく変わった。

 

 結局、戦争は無くならなかった。だが人は滅びず、彼らは確かに明日を生きていくだろう。

 

 これが昔話や童話ならば、"めでたしめでたし"で締めくくられるハッピーエンドに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、誰も気付かない、()()()()()()()()()()イレギュラーが既に発生していた。 

  

 そもそも、四大勢力などもはや関係の無い、史上最悪の「大戦」。その地獄が起きてしまった引き金は何だっただろうか。

 

『オブジェクト地球環境破壊論』

 

 総重量20万トンを越えるオブジェクトの瞬発的な高速機動による大地の地盤への深刻なダメージ。

 下位安定式プラズマやレーザービームを使った主砲砲撃による急激な温度差、気圧差による異常気象。

 

 あの日、惑星の表面を覆っていた殻は砕け、「信心組織」の本国は溶岩に沈んだ。

 

 星を覆う岩盤は既にひび割れ、様々な"自然な流れ"に影響を及ぼす。

 そしてそれは、目には見えない、彼らにとって認識できない物の流れまで歪めていた。

 

 

 ()()

 

 

 

 いわば大地を流れる魔力の流れ、魔術という概念が失われた時代において認識できない、されない無用の長物。 

 

 しかし魔術を行使するものが存在せずとも、霊脈は魔力を流し、蓄積させ続ける。

 

 大地が割れた時、霊脈もまたぐちゃぐちゃに歪められた。

 断ち切られ、ねじ曲げられ、不自然に繋げられた。

 

 例えるならば、バグのようなものなのだろう。

 

 いびつに歪められた霊脈は、まるで門のような挙動を取り、本来であれば存在し得ない場所への通り道を作り出してしまった。

 

 

 

 そして、彼ら(クウェンサーとヘイヴィア)はこの戦争へと召喚されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 視界にうっすらと光が入ってくる。

 例えるならば十分な睡眠を取った後の朝のような、そんな気だるさを感じている。

 

 「(あれ……?)」

 

 そこで違和感を覚えた。意識が落ちる直前の事が思い出せない……?

 

 「(何で俺は床で寝そべってるんだ……?)」

 

 記憶の連続性が途切れている。

 フラッシュバンの閃光を浴びて意識が飛んだような感覚に陥っていた。

 

 「(そうだ…、確かオブジェクトと戦った後に紫の光が…)」

 

 敵のオブジェクトを倒した後、巨大なビームのような光が迫ってきて、それから…?

 

 「(確か、ヘイヴィアと一緒にオブジェクトの残骸の陰に飛び込んで…。ヘイヴィア?!)」 

 

 もし自分と同じ状況であればヘイヴィアも近くに転がっているはずだ。

 そうならば限り無くまずい。

 二人とも倒れた状態で仮に敵に見つかれば、サーヴァントですらないホムンクルスが相手だろうと成す術も無く首を落とされてしまうだろう。

 

 その時、ぼやけた視界の端に人影が映った。

 

 「(ヘイヴィアか…?)」

 

 その人影がゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 そして倒れたクウェンサーの顔を覗き込み、視界に白と赤の

 

 「つッ!!」

 

 咄嗟に顔を逸らした。

 そして、顔面のあった場所に、ガチン!!と歯が噛み合わされた。

 避けていなければ顔面を食いちぎられていただろう。

 初撃は回避したが、襲ってきた何かはクウェンサーに馬乗りになり、マウントを取った。

 ようやく視界が明瞭になり、下手人の姿が捉えられる。

 

 「ホムンクルス…?」

 

 見た目は確かに何度も見た、黒の陣営が戦力として運用するホムンクルスに違いない。

 だが、元々無表情であったが、それとは大きく異なり目が血走り、口からはボタボタと唾液を垂らしている。

 例えるならば、ゾンビ映画で見るような、ゾンビに噛まれ、感染した人のような。

 それ以上に異常な点が、

 

 「(振り落とせない……?!)」

 

 クウェンサーの筋力値はEであり、これはサーヴァントとしては非力と言っても過言ではない。

 しかしそれでもサーヴァントとサーヴァント以外の戦力には天と地程の差があり、ホムンクルスに力負けする事はあり得ないだろう。

 だが、現にホムンクルスはクウェンサーの体を押さえつけている。

 そして、再びクウェンサーに噛みつこうと顔を近づけ、 

 

 バガッ!!と横からブーツを履いた足に蹴り飛ばされた。

 

 「いつまで寝てやがる!テメェは朝のコーヒーが無いと頭がスッキリしないタイプなのかよ!」

 

 「ヘイヴィア!」

 

 蹴り飛ばしたホムンクルスの脳天に弾丸を撃ち込みつつ、ヘイヴィアが吠える。

 

 「とにかく目が覚めたならとっととこっち来て働きやがれ!」

 

 ヘイヴィアに手を掴まれ、引っ張り上げられて立ち上がる。

 先程までは気が付かなかったが、オブジェクトと戦った屋外では無く、何か建造物の中に移動していた。

 この内装は見覚えがある。キャスターの宝具である空中庭園、その内部だ。

 

 そして、その廊下には、

 先程クウェンサーを襲ったのと同じ表情をしたホムンクルス達が、雪崩のように迫っていた。




まさか原作が完結するとは
最高の最終巻でした…。

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