なのに話が全く進まない……。
さて、突然だがここでクウェンサーの格好を思い出して欲しい。
そう、クウェンサーは現在女装している。女装工兵クウェン子ちゃんになってしまっているのだ。
だからこそ、この様な悲しい勘違いが起きてしまうのも仕方ない事だろう。
「赤のアサシン、君達の事はランサーから聞いているよ」
「ランサー…、あの時のヒゲか…」
「ああ、偵察の時の……」
そう言われて思い返すのは召喚されてからの初戦。ゴーレムに追われてサーヴァントにも追われたあの戦闘だ。
「彼からは君達を発見したら殺さずに連れて来いと言われている。おそらく自分の手で
「何って、そりぁ……」
そう言われて思い返す。
・携帯端末を顔面に投げつける
・足を引っ掛けて転ばせる
・フラッシュバンを投げつける
・目つぶし
「そりゃ怒るわ。」
「だな、こんな事されたら誰だってキレる。」
「それにアレに殺されるって事は串刺しだろ。嫌にも程があるよ!」
「知ってるかクウェンサー…、串刺しってケツの穴から刺していくらしいぞ」
「うわあ聞いてるだけでぞわぞわしてきたッ‼」
ぞわぞわぞわぞわーッ‼と悪寒に震えるクウェンサー。
「でもなんでそんな事知ってるんだ?」
「俺の婚約者の家系が昔な……」
「ああ、あの子の……」
納得するクウェンサー。貴族の家系というのは総じて闇が深いものなのだ。
「それにしてもだ、情報の伝達はしっかりして欲しいものだ。」
突然、黒のキャスターがポツリと愚痴を漏らす。
「ランサーは赤のアサシンは男の2人組と言っていたが、どう見てもそちらの金髪の方は女じゃないか。」
「「ん?」」
そう、クウェンサーは現在女装している。つまり……。
「彼も一国の城主であるなら情報の正確性の価値がわかっているだろうに……」
「「こいつ、
「フフフフフフフフフフッ…!」
「おいヘイヴィア、笑うな」
「いや、けどな、フフッ…」
「おい。」
「フフフフフうごっ!」
半ばキレかけたクウェンサーが拳をヘイヴィアのみぞおちに突き込む。
いくら訓練された軍人だとしても、みぞおちを殴られれば呼吸が詰まる。
その様子に気付いたキャスターが問いかける。
「もしかして、男なのか……?」
「ああそうだよ男だよ!」
「いや、その見た目で男……?」
「テメェ……!」
「クウェンサー、ぶっちゃけ俺からも女にしか見えない」
「フアッ◯ク‼」」
崩れ落ちるクウェンサー。彼の女装は、余りにも似合いすぎていた。
・
・
・
盛大に気が抜けてしまったが、ここは敵の本拠地、ミレニア城塞である。
そして敵の陣営のサーヴァントと対峙したならば、取るべき行動は一つだろう。
「どうした?」
「いや……、全然そんな空気じゃないなと思って……」
クウェンサーが男だと発覚してから五分、彼らはまだ睨み合いを続けていた。
いや、睨み合いと言うには語弊があるだろうか。
「ところで、この配線構造、コレには一体どんな目的が?」
「ああ、それはだな……。」
「なんで和気あいあいと話し合ってるんだテメェらは⁉」
「いや、だって自分の知らない技術を持った
「そうだぞ、赤のアサシン」
「そうだぞ、じゃねえよ……」
頭を抱えるヘイヴィア。普段からクウェンサーの行動に悩まされる事が多々あるが、今回は特に酷い。
「それにだヘイヴィア、話の合間にこっそりとあのオブジェクトの情報を聞き出す作戦なんだ、黙って見ていてくれ。」
「少なくともソレを敵の目の前で言っちゃダメだと思うぜ。」
夏に書き始めたのに気付いたら春……。