「ランサー、呼び立てて申し訳ありません。」
中央に巨大な玉座のそびえる空間。そこに赤のサーヴァント達は集められていた。
「構わない。いよいよか。」
「はい、直ぐにアサシンも来ます。詳しい事はそれから……。」
「来たよー。」
「ったく、コッチはついさっきまで戦ってたんだけどな。」
そう言って扉から入ってくるクウェンサーとヘイヴィア。彼らは半日ほど前まで黒のアサシンと戦闘を行っていた。
「到着しましたか、アサシン。」
「ああ、全員集まっているって事はつまり……。」
「貴方には話してありましたか。」
「ともあれ、皆揃うたな。」
コトミネの隣、玉座に座ったキャスターが口を開く。
「準備が整った今こそ、打って出る時期だ。」
「えー、働きたく無ーい。」
「ブラック企業かよ此処は。」
茶々を入れるクウェンサーとヘイヴィア、だが……。
「せっかくの聖杯大戦だ、派手に行こうでは無いか。のう?」
「おっとクウェンサー、スルーされたぞ。」
「女王様には下々の言葉なんて聞こえないんだよ、きっと。」
ハッハッハッハ、笑うクウェンサーとヘイヴィア。
ドゴッ‼
クウェンサーとヘイヴィアの間をキャスターの放った魔術による砲撃が通り抜けた。
「「……。」」
「(…おいヘイヴィア!何も言わずに撃ってきたんだけど‼)」
「(…まずいな、キレさせたか。)」
「(まずいな、じゃねーよ!どうするんだよコレ!)」
「おい、アサシンよ。」
「「はいッ!」」
思わず姿勢を正すクウェンサーとヘイヴィア。
「次は、無いと思え。」
「「スイマセンデシタ!」」
そして飛び出すは極東の島国に伝わる伝家の宝刀、
DOGEZAであった……。
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「話は逸れたが、これより黒の陣営に強襲を仕掛ける。」
「わざわざ城を造って、立て篭もる準備を整えたのか?」
ライダーが問いかけるがその疑問も最もだろう。
城とは本来、防衛するものなのだから。
「ライダー、お主は前提が間違っておるぞ。」
「は?そりゃどういう事だ?」
「まぁ、外を見てくるが良い。」
「あ?」
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・
『
赤のキャスター、セミラミスが生前作り上げたと伝えられる空中庭園
その実態は一言で表せば "空中要塞" である。
「おいおい、こりゃ何の冗談だ……。」
思わず目を見開くライダー、その隣ではアーチャーも呆然としている。
何しろ、城が宙に浮き、移動しているのだ。驚くのも無理は無い。
「驚いたであろう。この城は、守るために存在しているのでは無い。」
「空中要塞、という事か。」
「成る程、こいつで攻め込むって訳だ。」
「大したものだな。」
滅多に感情を表に出さないランサーですら、驚愕を表している。
「この速度であれば、黒の陣営が我々を視認出来る距離まで、そう時間もかからないでしょう。」
「それでは皆さん、戦闘準備を。」
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「そういえばこれ、頼まれていた備品だ。」
「ありがとうございます、アサシン。」
「ったく、サーヴァントをパシリに使うなよ。」
コトミネにビニール袋を手渡すクウェンサー。
その中身は、洗剤や日用品など、黒のアサシンと交戦する前に買っていたものだ。
「サーヴァントと違い、この様なものが必要になるのは生身の辛い所ですね。」
「確かに、この体になってからはあんまり必要としなくなったからな……。」
「そういえば、貴方の要望もキチンと取り込んでいたとキャスターが言っていましたよ。後で確認しておいてください。」
「マジか、了解した。」
確認に向かうクウェンサーを眺めながら、ポツリと呟く。
「それにしても、あんな場所とあんなモノ、どう使うのでしょうか?」
ミレニア城塞到着まで、後四時間
まだまだクウェンサーとヘイヴィアの宝具が出せない……。