Fate/Object   作:あんぼいな

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それでは、どうぞ。


かくれんぼには十秒数えろ シギショアラ夜間市街地戦Ⅴ

ギィン‼

赤のセイバーが飛来したナイフを弾き飛ばす。

「わぁ、なかなかやるね!」

霧の中に黒のアサシンの声が響く。だが、その姿は霧に紛れて確認することが出来ない。

「ぬかせアサシン風情が!」

「一応俺もアサシンなんだが…。」

ぼそりと呟くヘイヴィア。彼らは黒のアサシンを追い、アサシンの生み出した霧の中に入っていた。

「貴様など英霊ではない!ただの殺人鬼だろうが!」

「あれ?なんでわかったの?」

「なに?」

予想外の返答に驚く赤のセイバー。その肩にフッ、と小さな重みが加わる。

 

 

 

「わたしたちの名は、ジャックザリッパー。」

 

 

「なっ!」

耳元で囁かれた声に驚きながらも払いのける。だが黒のアサシン、ジャックザリッパーは猫の様に音も無く着地する。

「ねぇねぇねぇねぇ!あなたのお名前、教えて頂戴?」

そこへ斬り下ろしとヘイヴィアの銃撃が襲いかかるが、セイバーの肩の上を側転倒立する様にして避けられる。

それを払う様に切るが、回避され、再び霧に紛れる。

「やっぱり、あなた女の人なんだ!」

「おいセイバー、このままじゃ埒が明かねぇぞ!」

うんざりした様にヘイヴィアが言う。

「分かってる!舐めんなよ、クソ餓鬼が!」

兜を解除し、素顔をさらけ出す。

「赤雷よ!」

セイバーが掲げた剣から、四方八方に赤い稲妻が撒き散らされる。それにより、周囲に充満していた霧が霧散していく。

「終わりだアサシン、今のうちに思う存分泣き叫べ。」

剣を突き付け言う。

「首を刎ねられりゃ、悲鳴も上げられなくなるってもんだ。」

「あはははっ!」

黒のアサシンが笑う。

「やだよ!まだお腹すいてるんだもん!」

そう叫び、腰からナイフを抜いて突撃を仕掛ける。

それに合わせるかの様にセイバーも踏み出す。

「ならば後悔しろ!ジャックザリッパー!」

そして二人が激突する……。

「上だ‼セイバー‼」

 

ヘイヴィアが叫んだ。

その瞬間、辺りは爆炎に包まれた。

 

その衝撃は離れた場所で待機していたクウェンサーと獅子号にも届いていた。

「なんだ、お前の爆弾か?」

「いや、起爆はしていない筈だ。」

その時、クウェンサーの無線に通信が入る。

「…クウェンサー、新手のサーヴァントだ!そいつに爆撃された!」

「ヘイヴィア、状況は?」

「セイバーも俺も無傷だ、現在ソッチに向かってる。黒のアサシンは南西方向に逃走、少なからずダメージを負っている。」

「そうか、じゃあ俺は引き続き獅子劫とここに来ると思う敵マスターを……。」

 

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「は?」

ナニヲイッテルンダコイツハ、

「いやいやいや、俺一人で倒せるわけ無いだろ。」

「いや、そうも言ってられねぇ。」

声から焦りが感じられる。

「ヤツの真名はジャックザリッパー(切り裂きジャック)だ。」

「嘘だろ……。」

「残念だが本当だ。今のヤツは傷を負っている。そのダメージを癒すために一般人をも襲いかねない。」

ジャックザリッパー、19世紀のロンドンに現れた連続殺人鬼である。そんなモノが手負いのまま動いている、それはどれだけ危険な事だろうか。

「クソッ!やるしか無いのか……。」

「コッチのサーヴァントは俺とセイバーでなんとかする。そっちはテメェに任せる!今動けるのはテメェしかいねぇんだよ!」

「ああ分かったよ、やってやるよこの野郎‼」

そう叫んで無線を叩き切る。

「話は聞いていた。敵のマスターは任せろ。」

「ああ、逝ってくる。」

「お前……。」

「流石に冗談だよ、死ぬつもりはない。」

そう言って駆け出すクウェンサー。

「大丈夫かあいつ……。」

 

「ちっ、切られたか。」

所変わって敵サーヴァントに向け走るヘイヴィアとセイバー。

「アサシン、テメェはそっちの路地から隠れながら接近しろ。」

セイバーが右の路地を指差す。

「気配遮断使えるだろ。見えない敵がいると相手が思っているだけでも大分やりやすくなる。」

「了解だセイバー。」

そう言って離脱するヘイヴィア。1、2秒でフッと先程まで感じていた気配が消える。

そこへ敵の放つ矢が着弾、爆発を起こす。

その衝撃で少し飛ばされるが着地。続けて放たれる矢を弾きながら獅子劫とすれ違う。

「敵のサーヴァントは引き受けた!」

「頼む、マスターの方は任せろ!」

それを聞き、走りながら叫ぶ。

「任せた‼」

ふと思う。

「(まさかオレが、魔術師なんて輩を信用するとはな……。)」

 

「さて、と。」

煙草を投げ捨て、視線を斜め上に向ける。

「自己紹介は、省いて構わないよな。」

「そうでしょうね、お互い名を知らない筈はありませんし。」

そう答える嫋やかな声、だが、その声は地上から7メートル程から発せられていた。

金属の四本の脚、節足動物を思わせるそれが、建物の外壁を掴む様にしてその少女、フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアの体を支えていた。

「ただ、一応警告させていただけないでしょうか。」

「どうぞ。」

「立ち去りなさい、死霊魔術師(ネクロマンサー)。」

先程とは違う、凛とした声を発する。

「ここは遍く全て、千界樹ユグドミレニアの大地。踏み入った無礼は不問に処します。この警告を看過する様であれば、」

「死という等価をもって、愚行の代償を支払っていただきます。」

「へぇ。で、俺が聞くと思ってるのか?」

「いいえ、でも、こうして宣言しておかないと、私の内側で覚悟が決まらないので。」

そう、にこやかに語るフィオレ。

「へぇ。」

何かを呟く獅子劫、壁に貼られていたチラシが、意思をもっているかの様にフィオレの顔に貼りつく。

そして、一射目が放たれた。




工兵vs殺人鬼
叛逆の騎士&レーダー分析官vs半人半馬の弓兵
死霊魔術師VSブロンズリンク・マニピュレーター

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