「何だ!お前達は!」
黒のアサシンを撃破する為セイバーとそのマスター、獅子劫界離と行動を共にするクウェンサーとヘイヴィア。
彼らは黒のアサシンをおびき出すためシギショアラの路地を歩いていた。歩いていたのだが……。
「鎧……?それに銃まで…。そこを動くなよ!」
「まあ誰でもそこつっこむよね。」
「確かに、今の俺らはどう見ても不審者だからな……。」
地元の警官にピストルを向けられかけていた。
確かに、夜道に甲冑を着込んだ人間と軍服に小銃を下げた男がいたら警戒するだろう。
「どうする?気絶させる程度なら直ぐにできるぜ。」
「いや、それには及ばん。」
そう言って咥えていた煙草を持ち、空中に文様のような物を描く獅子劫。
「我々は内務省公安部の者だ、この現場は任せてくれ。」
それを受けた警官は焦点の合わない目で返事をし、フラフラと引き返して行った。
「ったく、早いとこ片ずけないと神秘の隠匿もあったもんじゃないな。」
「今の魔術か?便利そうだな。」
「おい、なんか妙じゃねえか。」
それまで黙って周囲を警戒していたセイバーが口を開く。
そう言われて気がつく。彼らの周りには先程までは無かった筈の霧に包まれていた。
「この霧は……。」
「なんだこれ、さっきまでは無かったよな……。」
それを吸った獅子劫が突如、激しく咳き込む。
「ゴホッゴホッ‼」
「どうしたんだ獅子劫!」
「毒だ!吸うな、セイバー!」
「こんなのが効くかよ!」
たまらず膝をつく獅子劫。着ていた上着を口に当て、毒を吸い込まないようにする。だが……。
「やばいナニコレ喉が痛ガホッ!」
「何やってんだクウェンサー!テメェも吸ってんじゃねぇよ!」
「ともかくこの霧から逃げるぞ!」
そう言って獅子劫に肩を貸すセイバー。同じ様に、クウェンサーもヘイヴィアが肩を貸して運ぶ。少しの距離を走り、霧の無い所へ出る。
少し広いそこで、息を整える獅子劫。
クウェンサーも大きく呼吸する。
「うっし、抜けた。」
「あー、やっと楽になった。」
息を整えた獅子劫が口を開く。
「おい、これから
だが、彼はその先を言葉にする事は出来なかった。
その瞬間、彼の喉元にナイフが突きつけられていた。あと数センチ押し込めば容易く獅子劫の生命を刈り取るだろう。
咄嗟の事にクウェンサーとヘイヴィアは反応出来ない。いち早く反応したのはセイバーだった。
獅子劫の足を払い、浮いた敵のナイフを弾き飛ばす。
そこへ硬直から回復したヘイヴィアがライフルを腰だめに構えて撃つが
ギィン‼
腰の後ろから抜いたナイフに弾かれる。そして少し離れた位置へ着地する敵、いや、このタイミングで攻撃を仕掛けて来るのであれば、黒のアサシンに違いないだろう。
そして、止まった事でようやくその姿が見える。だが、
「「なっ!子供だとッ…!」」
「切られちゃった、ヒドイことするね。」
「それにそっちのあなたも、あんなに沢山撃って。あぶないよ。」
「何がヒドイだ、魂食いをやってるテメェなんぞに言われたかねえな!」
剣を突きつけるセイバー。だが、黒のアサシンは何が駄目なのかわからない幼子の様に首を傾げる。
「別にいいじゃない?ねぇ!」
同時に何本ものナイフを投擲するアサシン。そして霧の中へ後退する。
「ここで待ってろ、マスター。」
「任せる。」
そう言って飛来したナイフを弾きながら追撃するセイバー。それを追う様に、ヘイヴィアも口元に布を巻いて走り出す。
「援護する!クウェンサー!テメェは獅子劫を護衛してろ!」
「ああ、了解だ!」
そう言って霧の中に飛び込む二人。
「そっちはテメェに任せたぞ、ヘイヴィア。」
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「これぞ懐かしき我が庭園、
「素晴らしい、私の要望もきちんと組み込まれていますね。」
「そうであろう、何故かあのアサシンの要望も聞くことになってしまったが。」
「アサシンの要望……。ああ、アレですか。」
そう会話する赤のキャスター、セミラミスとそのマスター、シロウ・コトミネ。
「黒のサーヴァント共も、流石に度肝を抜かれるであろうなぁ。」
「ええ、黒のセイバーが消滅した今が好機、こちらのセイバーも、すでに動き出しています。」
「一大決戦よなぁ、派手な幕開けを期待するとしよう!」
「行こう、キャスター。」
手を空にかざし、握り締めるコトミネ。まるで何かを掴むかのように。
「悲劇は繰り返さない、大聖杯も、俺達の物だ。」
「それはそうと、そのアサシンめは何処へ行ったのだ?」
「言って無かったですか。セイバーと一緒に黒のアサシンの撃破に向かいました。」
「明日までに間に合うのか?」
「さあ……。」
ありがとうございました。