逃げるが勝利への布石   作:七草

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#1 産まれて現実こんにちは

 眼~を開けたら知らない場所、何もない白い空間。どうして此所に居るのか、自分が何者なのか、記憶がフワフワである。

 ラノベや二次創作を時たま読んでいた身としては、トラックとかに轢かれて神様に転生させられるのかな~と思っている。

 しかし、何時までたっても神様らしき者は現れない。あれれ?勘違いだったかな、残念!どうやら選ばれし転生者にはなれないようだ。

 すると、これは夢かな?夢なら空を飛ぼうぜ!彼女つくろうぜ!世界征服しようぜ!夢は寝ても覚めてもデカイのを持とうぜ!


 〈ハハハ。元気が良いね〉


 おやおや?何処からか男とも女ともジジイともババアともとれる不思議な声が聞こえるぞ?後ろの正面、だぁ~れっ!貴様か!生きていたのか!


 〈あれ?一応、初対面の筈だけど〉


 ああ!初対面さ!いち読み専として、こんな状況に陥ったらオーバーなリアクションをとらなければいけないからな。


 〈なるほど。頭や感情、心の焦りや不安を誤魔化してるわけか〉


 NOッ!焦っていないし不安がってもいない!俺はいたって冷静沈着頭脳明晰容姿端麗だがら何の問題も無い!


 〈知っている範囲の四字熟語を頑張って並べました感が凄いけど、まあいいや〉


 そうだぞ!人のあれこれにツッコミを入れていいのは芸人さんぐらいだからな!


 〈わかった、悪かったよ。少し戻るけど、君はこの状況に見に覚えがあるのかな?〉


 見に覚えというか、読み覚えがあるというか。あれでしょ?俺は事故か何かで死んだから転生しろみたいな?


 〈なるほど、君達の書いた創作物だね。なら話が早い、君には前の次元とは違う次元に誕生してもらうよ〉


 ちなみに地球、というか前の世界に帰らせてもらうことは。


 〈ゴメンね。誕生の流れには抗いようが無いんだ、君は新しい何かとして生まれることが決まってるんだ〉


 さようですか。あ、聞きたいんだけど。俺ってどうやって死んだの?あと、あなたは何様ですか?


 〈そうだね。まず、私は何様でもない。そこに居て、何処にも居ない。全てであり、マイナスである。始まりであり、終わりさ〉


 なるほど、真面目に答えてくれないと。


 〈ん~これでも分かりやすく言ったつもりだけどな~。ようは何でも出来るし、何もしない。それが私さ〉


 ふ~ん。まあ、いいや。それで、俺のイケてる死に様はどんなんだった?


 〈君は死んではいないさ、でも産まれてもいないけどね〉


 はて?死んでなくて産まれてもいない、どゆこと?


 〈君の自我と記憶は極少量の肉体と精神、それと魂から出来ている。それはこれからも死んでいく人達の欠片であり、これからも産まれる者達の欠片が集まり出来た。それが君さ〉


 お、おう。てことは俺の持つ記憶や感情は人様のモノを寄せ集めて出来たモノってことか、あれ?俺ってなんだ?


 〈君は君さ。誰でもない、君。そこいるだけで意味があり必要であり、可能性さ。見失うことなんて一つもない、君が心の底から思うような君で在れば良いのさ〉


 んん~、ようわからんな。


 〈そう思うならそれでいいのさ。さて、そろそろ君の誕生といこうか〉


 ん、もうお別れか。────なんか怖いな。


 〈怖がるな、とは言わないよ。それも君を育てる一部だ、だけど他にも思うだろう?〉


 ああ、少しだけワクワクしたり楽しみではある。


 〈フフ。流れるままに、いってらっしゃい〉


 俺の意識は吸い込まれるように、落ちていった。



 ☆



 暗い・・・いや真っ暗ではない。何処だ此所、薄暗くて何か狭いな。何か丸っこい、卵。────TA☆MA☆GO!?


 自身の身体に意識を集中させる。


 手がちっこくて、身体がゴツゴツしてて、尻尾がある。

 ・・・

 人間じゃねーのかよ!!!おいコラ!何でも出来るくせに何もしないニート野郎!流れ的に人間で誕生するんじゃねーのかよ!詐欺だぞ!


 身体を暴れさせるも、ガチガチと硬い音を鳴らす口からは言葉を発せられない。だが暴れるにつれゴツゴツと硬い身体が卵の壁に当たりヒビが全体に走っていく。


 ウゴッ!?


 ついに卵が割れ、暴れた勢いのまま外に飛び出る。ゴロゴロとギャグの様に転がっていき何かに当たりようやく止まった。


 イテテ。───────────いや今の嘘、全然痛くない。


 慣れていない身体を何とか起こす。そこで改めて周りを見渡す。

 森、いやジャングルに近い光景がそこには広がっていた。植物の多くは先端を丸くした、恐竜図鑑などでよく見た古代の植物そっくりだった。そして天高くそびえる樹木は巨大な根を地面に張り巡らせ、それが見える範囲遠くまでで続いている。


 ・・・あ、転生特典とか貰うの忘れた。

 ...とりあえず、水探そう。


 枝の揺れる音や何かの鳴き声がジャングルにこだまする。俺は妙に熱い喉の渇きを潤すため水を探していた。しかし、行けども行けども草ばかり。


 だが。この身体、なかなか疲れがこない。最初はトカゲかと思ったこの身体だが、立ち上がるとあら不思議。まるで肉食恐竜、ティラノの様ではないか。小さい手に長い尻尾、ゴツゴツとした身体にガチガチと硬く鋭い歯。なるほどと。どうやら白亜紀に近い時代に産まれた様だ。


 やったぜ。


 白亜紀において最強と言われたティラノとして産まれた。人間でないことは残念だがこの環境ではティラノのほうが断然良しである。育てば巨大な身体に強靭な顎、歩けば木が道を譲る最強無敵の恐竜である。

 俺は若干の浮かれ気分で水を探した。


 しかし、気になるのはこの喉の熱さだ。喉と言うかその下、内臓から込み上げてくるような熱。なんだろうか、ゲロだろうか。

 ヒリヒリする喉を我慢しながら歩き続けると、ジャングルが開け巨大な川を発見した。

 俺はガブガブと水を飲み、喉を潤した。そして、そこで見てしまった。水面に写る、自身の姿を。

 先端を真青に染めた荒々しい突起、それが頭から背中に伸びている。身体は赤銅色の甲殻に覆われている。そして、顔である。見た瞬間はカルノタウルスを連想した。だが違う、見たこともない。だが、見に覚えがある、モンスターの顔である。


 ああ。どうやら、ちと面倒くさい世界に産まれてしまったようだ。


 記憶が叩き出した、この世界の正体。水面から視線を空に向ける。そこには空を飛ぶ巨大な飛竜、ああ知っているとも。



 モンスターハンター、そのゲームの看板を務めたこともあるモンスター。名を、リオレウス。

 そして自身のこの身体。モンスターハンタークロスにおいて4匹のメインモンスターの一角にして、実質看板モンスター。

 名を、ディノバルド。金属をも叩き切る巨大な剣の様な尻尾を持つ、「斬竜」と言われているモンスター。


 ああ、やはり人間がよかった。いや、ハンターではないよ。あれは人間じゃないから、別の種族だから。


 モンスターハンターのゲームおいて、言ってしまえばモンスターは狩られる側である。

 この世界の基準がゲームからかは分からないが、ゲーム通りだとしたら。ハンターはいくら走ろうが少し休めば、ほぼずっと走っていられるほどのスタミナを持ち。その身体は生身であろうと、どのモンスターにも噛み砕けない強靭さを持ち。振るう武器は身の丈以上の大剣やボウガン、その一撃はランクや切れ味によって古の竜の鱗すら切り裂き砕く。

 それがハンターである。まあ彼らも生きる為に狩っているのだが、いざ狩られる側でになると、冗談じゃないである。



 最強無敵の恐竜ライフは無惨にも打ち砕かれ、逃げるが勝ちへの逃走生活が始まった。















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