ヒロト「驚いたね……物凄い濃度だよこの試合」
試合は同点のまま後半も半分が過ぎていた。豪炎寺は何度も観客席の方を意識している。この試合が終わったら、自分はサッカーをやめて留学しなければならないという約束を父としているからか、父親が観客席にいるように見えてしまっていた。花瑞はこの事を知らない。なんとかするのは他の人たちにしかできない。花瑞に今できるのは勝つために全力になることだけだ。
試合が再開し、ボールを持つアフロディに追従して南雲と鈴野が走る。こうなったらクララと杏はマンマークなどできない。二人はボールを奪うために駆け寄るが、ヘブンズタイムで突破される。
「勝つのは、我々ファイヤードラゴンだ」
アフロディが羽ばたく、ゴッドブレイク……否南雲と鈴野も飛んでいる。
「「「カオスブレイク!」」」
「!? ゴッドフラワーG3!」
花瑞のゴッドフラワーが破られたが、円堂の正義の鉄拳で何とか防ぐ。しかし、こぼれ球をチェチャンスウが拾いアフロディへと渡す。もう一度カオスブレイクが炸裂した。
「真空魔!」
今度は飛鷹の真空魔によるパワーダウンを受けて正義の鉄拳で弾くが、またアフロディのボールになる。
「これで終わりだ……! カオスブレイク!」
「正義の鉄拳G5!」
正義の鉄拳敵わず、再びファイアードラゴンがリードする。
「くっ……意地でも同点にしてみせる! みんな、俺にボールをくれ!」
緑川がチームに呼び掛ける。キックオフと同時に豪炎寺は鬼道へとボールを渡す。緑川は先行して敵陣へと突っ込む。不動との連携でパーフェクトゾーンプレスを抑圧し前へと進む。
「頼んだぞ、緑川!」
ボールを受け取った緑川、しかし目の前にディフェンスが。
「じばしりかえん!」
ボールを受け取って間もなく、ボールを奪われる。
「まだだ! このボールを奪われるわけにはいかない!」
転倒させられ地面に着く直前に、無理矢理な方向に足をだし、ありったけの力で反発してジャンプ。ボールを奪い去る。
「うぐっ、喰らえ……アストロゲート!」
緑川の新必殺技、アストロゲートが炸裂する。
「だいばくはつ張り手!」
緑川決死のシュートにより再び同点になるが、無理な動きをさせた上に日頃の過剰な練習が原因で、緑川の足に深刻なダメージが残る。何事もないようにポジションへ戻ろうとするが久遠監督がそれを見逃すはすがなかった。
「緑川、交代だ」
「っ!……さすが監督だ」
緑川の代わりには途中交代していたヒロトが入る。
「緑川…」
「すまないヒロト、折角特訓に付き合ってもらったのに一度きりの御披露目になってしまった…………あとは頼む」
「あぁ……今はゆっくり休んでくれ」
どちらも一歩も譲らない攻防戦。まさにアジア予選決勝に相応しい戦いであるが、既にイナズマジャパンは二名の負傷者を出してしまっている。アフロディがボールを持ち、南雲と鈴野が再び先程と同じ陣形で走り出す。迎え撃つのは、クララ、杏、花瑞の三人だ。
「フローズンスティール改!」
「イグナイトスティール!」
アフロディはこれを躱す。
「ゴッドルーツV2!」
更に追撃としてゴッドルーツを仕掛けるが、それすらも躱してしまう。
「そうだ!」
花瑞は避けられた根をクララと杏の方向へと伸ばす。
「なるほど…杏、これを伝え」
クララは狙いを理解して、ゴッドルーツの根に沿うようにフローズンスティールを継続する。
直線的だったスライディングが、ゴッドルーツの導きで自由により縦横無尽に動き出す。アフロディはクララのフローズンスティールを再び躱すが、ジャンプした場所に根が道を作り杏のイグナイトスティールが滑る。
「取った!」
杏はアフロディからボールを奪った。
「咄嗟の機転にしては大したものだね。けど……」
「パーフェクトゾーンプレス!」
「くっ! うわぁぁぁ!」
奪ったは言いが後方に控えるチェチャンスウ達によりボールを奪われてしまう。
「惜しかったね、花瑞。カオスブレイク!」
「ま、まだ……まだ! ゴッドキャッスル改!」
カオスブレイクと相殺しあい花瑞は地面に叩きつけられる。ボールは緩やかに跳ね返り、アフロディの元へと戻る。
「その技は体力の消耗が激しい。早く卒業するべきだ」
アフロディはさらにカオスブレイクを仕掛ける。
「ザ・ウォール!」
壁山のザ・ウォールを容易に突破して、正義の鉄拳がかろうじて防ぐがボールは南雲の元へと転がる。
「ワンダートラップ!」
「フレイムベールV2!」
黒嶋がボールを駆け寄ったが南雲のフレイムベールに返り討ちにあってしまった。
「カオスブレイク!」
今度こそ終わってしまうのか、満身創痍のイナズマジャパンディフェンス陣にカオスブレイクが放たれようとする。
「花瑞! ゴッドルーツでいい! あいつらに向かって出してくれ!」
「はぁはぁ、うん! ゴッドルーツV2!」
花瑞は杏に答えてゴッドルーツをアフロディ達の元へと伸ばす。
杏はゴッドルーツに乗り、走り出す。
「なんの真似だ杏!」
「この試合、私は晴矢…お前を止められなかった。ならばせめて……ここだけでも! イグナイトスティール改!」
重力に逆らい、天に向かって伸びる根を勢いよくスライディングでかけ上がる。
アフロディ達三人の蹴りが一点に交わる瞬間、反対から杏のイグナイトスティールが衝突する。三人の力に勝てるわけがなかった。杏はボールから生まれた衝撃波に押し返され、一瞬のうちに円堂の頭上のゴールポストへと身体を強打した。
しかしボールに勢いが生まれる直前に杏の干渉があった為に、ボールの軌道は大きく狂い、ゴールの遥か上を通過した。
「蓮池! 大丈夫か!」
円堂が杏をフィールドに降ろして呼び掛ける。
「バカなやつ……折角の出番でムチャしすぎだ………」
駆け寄ったクララが寂しそうに、しかしいつもの口調で杏に言葉をかける。
「仕方ないだろう、次の失点は致命的なんだ。チームの勝利のために……これしか思い付かなかった」
「くっ……」
円堂は自分の力が及ばないばかりに自分の身体を犠牲にしてまでゴールを守ってもらうことになり、情けなくて、悔しくて拳を強く握りしめてグラウンドに叩きつける。
「……! 杏、ゴールを守ってくれてありがとう。お前の頑張り、絶対無駄にはしない」
飛鷹が杏の代わりに入って試合が再開する。南雲のマークがなくなったことで、今まで以上に敵の攻撃に自由度が増している。
試合は最終局面、未だ完全攻略となっていないパーフェクトゾーンプレスとカオスブレイクを前に、イナズマジャパンはファイアードラゴンを倒せるか……?
杏「いててててて……」
クララ「カッコつけすぎなんだよ…」
八神「無理はするなよ、怪我が悪化する」
杏「し、しかし後悔はしてない。あそこで点を取られれば緑川もマキもいない我々では…点を取るのは容易ではない。花瑞だって消耗しているしな…‥」
クララ「とはいえ、この後どうするか。虎丸達が何かやろうとしているがそれしかないか」