代表に選ばれた花瑞達は雷門中の施設を改装して出来た合宿所に個室を貰い、私物を置いて早速練習に励んでいた。対戦相手がビッグウェイブスに決まった日、やる気に満ち満ちた彼女達の熱意をそのまま仕舞い込むかのように練習禁止が言い渡された。全員が部屋の中での待機を強いられたのだ。八神達レギュラーメンバーでは無い五人を除いて。
「あーーもーーー!何考えてるのよあの監督は!」
花瑞やマキ等の女子達はひとつ上の階に部屋が設けられていた。退屈な苛立ちを隠せないマキは花瑞の部屋にやってきてそう愚痴を溢していた。
「なんで!なんで八神達は練習してるのにマキ達が部屋で引きニートみたいになんもしてないわけよ!」
「か、監督には何か考えがあるんだよ……多分」
花瑞も監督を信じたいのだが、流石に意図が汲み取れない。
「ちゃんと説明しない監督とか、マキ嫌い!」
「多分それはみんな好きではないけど…」
「マキ、さっきからうるさいんだけど……」
あまりの煩さに耐えかねて倉掛が部屋に文句をいいにやってきた。
「あ、倉掛さん、ごめんなさい。ほらぁ、多分下の階にも響いてるよ?」
「クララでいいよ、花瑞。あとマキ、お前はもっと女の子として自覚をもっておしとやかになれ」
「何よ!クララにはマキのこの美貌がわからないわけ?」
自身で"胸"を張って主張するマキ。クララは思わず自身の胸を一瞬手で触れた後に答える。
「大事なのは中身だぞ」
「何よ、中身でいったらクララだってドSでヤバイじゃないの!」
「ふ、ふたりともとりあえず落ち着きなよ」
苦情を入れに来たクララさえもヒートアップして声量がグレード2くらい上がっていそうな状態を花瑞がブロックする。
「兎に角、今出来ることを考えよう?わたしジュース買ってくるから待ってて」
花瑞は一階の食堂に設けられた自販機へと向かう。その途中、二階でヒロトに声をかけられた。
「上は随分騒がしかったけど大丈夫かい?」
「あっ、やっぱり響いてました?ごめんなさい。二人には伝えとくね」
「うん、まあ気持ちはオレも分かるけどね。マモル達も何度か抜け出して練習しようとして失敗してるんだ」
「あはは…円堂さんらしいですね」
「そういえば、連絡先交換してなかったよね?上の階には行けないから何かあったときこっちから呼びに行けないと不便だしさ。スマホある?」
「あっ、今部屋なんです。夕食のときに交換しましょ」
「うん、ありがとう。引き留めてごめんね、何か用事あったんだろう?」
「まあ、飲み物買うだけですから大丈夫ですよ。むしろヒロトさんとこういう立ち話ひさしぶりで嬉しかったですよ」
花瑞は自販機に向かった。ヒロトは嬉しかったという言葉に強く安心感を覚えた。チャンスはある。彼は心の中でそう思い部屋に戻った。
「ほら、ジュース買ってきたよ」
花瑞はクララにソーダを、マキに牛乳を渡し、自分はオレンジジュースを飲んだ。
「マキ思ったんたけど、これっていわゆる女子会ってやつ?」
「んん~まあ、ちっちゃい女子会にはなるのかな?」
「よかったなマキ、サッカーしてなかったらお前みたいな性格破綻者に寄り付くやつなんていないぞ」
「ちょっと!誰が性格破綻者ですって!」
「半分冗談だからマジにならないでよ」
「は、半分って……その半分ってなに!」
「さぁ……?」
二人はこれでいて仲が悪い訳ではないのを花瑞は理解しているが、それでも時折ヒヤヒヤしてしまう。良い意味でお互い素で話せているようなのでチームは違えど同じエイリアでサッカーをしていた仲間だから絆はあるようだ。
夕方、練習から戻った八神が花瑞の部屋に来た。
「外出もできないんだろう?必要なものがあったら言ってくれ、私達が買ってくる」
「ありがとうございます八神さん。それじゃあ、フランクフルトとかお願いできますか?」
「食べ物か、まあいいだろう」
「はいはーい! マキはクッキー!」
「私はアイス」
「皇、クララ、お前らもか…」
やれやれという様子で八神は杏を連れて近くのコンビニに出かけて行った。
夜はマネージャー含めた小さな女子会が開かれていた。
「実は私調べてたんですけど……久遠監督に良くない過去があるんだとか」
「なにそれ? 音無、早く教えてよ!」
監督に不満があるマキが食いついた。
そしてその噂とは呪われた監督であるというものであった。明日、これを確認しにいくことになったが花瑞は監督を信じ、その確認にはいかないことにした。
クララ「ペロペロ」
マキ「モグモグ」
八神「モグモグ」
杏「モグモグ」
ヒロト「……最近いろんな人来るねぇ。もう乗っ取られてるんじゃないかな」
筆者「ここは女子会会場じゃねぇからな!?」